むかしむかし、まだ人々の信心が深かった江戸時代の頃は庚申講(こうしんこう)というものが盛んに行われていました。 当時の暦で「庚申」(かのえさる)の日の晩は、朝まで夜を徹して起きている日とされていました。 これは体の中に巣食う「三尸の虫」(さんしのむし)という虫が、自らが巣食う人間が行った悪事や嘘を閻魔さまに告げ口しに行くのが庚申の日の夜と信じられていたためです。 この日に人間が眠らないと、三尸の虫は体から抜け出せないために閻魔さまのところに告げ口ができなくなる、よって、多少の悪事は閻魔さまにバレずに極楽浄土に送ってもらえるであろう、という願いを込めて一晩中起きて語り明かしたり歌を歌ったりしたと…