つくしは類と離れバッフェへと向かう。「イギリスだから料理には期待してなかったけど、伯爵がフランス育ちならもしかしたら美味しいかもしれない」世界一不味くて有名なイギリス料理から逃れられる可能性に胸を躍らせて料理を吟味していると、急に照明が暗くなり、オーケストラの演奏が始まる。会場の真ん中がダンススペースとなっているようで、周りの女性はパートナーにエスコートされ中央へと移動している。「これじゃどれが美...
「ねえ、類。本当にこんなの付けるの？」「俺も嫌だけど、ドレスコードに入ってるんだよね。主催者のこだわりらしいよ」まるで中世ヨーロッパのような仮面を手につくしと類は会場へ向かう。欧米ではチャリティーの資金集めのため、著名人がパーティーを行うのは一般的だ。今回も花沢家と懇意にしているイギリスの伯爵が主催者となり、先日旧イギリス植民地で起きた自然災害に対する寄付金集めのためのチャリティーガラをロンドン郊...
***Scandalの番外編です。時系列てきには26話あたりです。やや大人の表現があります。そういった内容がお嫌いな方はお戻りください。***つくしはまるで初陣に向かう武士の様に覚悟を決めた顔でベッドに正座していた。いや、初陣というよりは、切腹を待つといったほうが正しいかもしれない。つくしもこのままではいけないのは分かっていた。でも、司はつくしの意に反することはしない、そういって寝室をわけたまま、つくしが司のマ...
いつも夜集まるT4（滋、桜子、優紀そしてつくし）だが、休日のこの日は久し振りに昼間ホテルのラウンジでアフタヌーンティーをする約束をしていた。だがというか、当然というか、案内されたのは豪華な個室、部屋の中にはアフタヌーンティーというよりはバッフェといったほうがふさわしいように、所狭しと、スコーン、フィンガーフード、ケーキ、そしてチョコレートが並んでいる。「こっちのほうが落ち着いて食べれると思って」それ...
いつもご訪問いただきありがとうございます！非常にベタな展開のため、先の展開の予想が当たっている方も多くコメントを頂く度「おおお、、、」と動揺しておりました。およそ1か月に及んだScandalですが、ひとまずここでFinとします。一つ番外編を準備しているので、後程更新する予定です。若干Rになるかもしれないので、もしかしたらパスつけるかもしれません。今回の話で、結局マスコミに最初に手紙を送ったのは誰なの！と思って...
なんとも色気のない話だが、VISAの関係でNYに移る前に日本で入籍をすることになった。アメリカで先に籍を入れるといろいろめんどくさいらしい。周りに気付かれないよう、記入した婚姻届けは西田さんが夜間に区役所に提出してくれた。西田さん自身の結婚と間違った区役所の窓口の方が撮ってくれた、婚姻届けを持つ西田さんの写真が送られてきたときは、腹筋が崩壊すると思うほど笑った。入籍手続とともに、会社にはテレビの最後の出...
「もっと早く答えろよ。心臓がもたねーじゃねーかよ」抱き締められた姿勢で、道明寺の服越しに聞こえる鼓動は、今までにないほど早かった。「だって、突然のことでびっくりしちゃって」「なんでだよ。俺がNYに戻るんだったらお前も一緒だろ？」「うん。一緒に行きたい」高校時代とは違い、素直に言葉が出てきた。すると、道明寺があたしの肩に顔を置く。「わりい、安心したら気持ち悪くなった」「え、大丈夫？」「かっこわりーな、...
あたりはもう真っ暗だ。そろそろ帰ろっか、と声をかけると、最後に一つだけ乗ろうぜ、と向かったのは観覧車だった。「うわー、懐かしい！」昔いろいろあったことも、今ではいい思い出だ。「道明寺、もう観覧車大丈夫なの？」そういって対面に座る司を見ると、いつになく真剣な表情をしていた。「牧野、俺NYに戻ることになった」思いもしなかった言葉に、息が止まる。「・・・いつ頃戻るの？」「1か月後だ」「あんまり時間ないんだ...
同期の市川ちゃんが、育休から戻ってきた。そして復帰後1か月は時短勤務をし、その後以前担当していたワイドショーに戻ることが決まった。つまり、つくしがテレビに出るのもあと1か月となった。その後、以前いた政治部に戻るのか、もともとの目標だった経済部に行きたいのか、珍しく上から希望を聞かれた。気がつけば30歳、キャリアの岐路に立っている。道明寺と今後のことについて、一度しっかり話し合わないと。そう思い、お互...
***短編を書こうと思ったら中途半端な長さに。途中で切るのも何なので一話にまとめましたが、長いです。***「牧野がおかしい？」久し振りに4人で集まると、辛気臭い顔をした司が相談を持ち掛ける。「あいつがおかしくないことなんて今まであったか？」「たしかに、いつも俺達の予想を超えるもんな」笑いながら軽く言う西門・美作コンビとは対照的に、司の表情は暗いままだ。「そういえば、こないだあいつが他の男と一緒に居るの見...
司との関係を公表してからしばらくして、久しぶりにみんなで集まった。以前、つくしが初めてテレビに出たとき花を送ってくれた友人たちに。あのとき、電話でお礼を伝え、近いうちに集まろうと話をしていたのだが、皆社会に出て忙しい。全員の予定がそろったのは、あの電話からずいぶん時間がたってからになってしまった。「つくしー！！！」あきらが手配してくれた店に入ると、滋が熱烈に歓迎してくれた。横にいる桜子も、優紀もあ...
つくしの新しい部屋探しは、司の住んでいるマンションで同棲するという方向で最終的に落ち着いた。まだ付き合い始めて日が浅く、つくしは一人暮らしを強く希望していたのだが、司の要求するセキュリティを備えたマンションは目が飛び出るほど高く（賃貸であんな家賃のマンションがあるなんて初めて知った）、かといって司に家賃を出してもらうのも嫌だった。結局今あるものを有効活用するという形で納得させられ、晴れてつくしと司...
まるで警察の取り調べの様に、部長から矢継ぎ早に質問される。うんざりしていると、デスクが口を開く。「部長、昔同じように御曹司の彼女がマスコミに追いかけられてたの覚えてませんか？」暫く考えた後、「ああ、あったな、そんなこと。人手が足りなくて、俺たしかその彼女の住んでいるアパートに当時取材に行ったぞ」お前か、つくしは心の中で突っ込む。「牧野ですよ、その彼女。当時御曹司と付き合ってたの」「ほんとか？」と部...
つくしがメープルに泊まるようになって5日目、部屋に入った犯人が分かったと報告があった。犯人はタクシー運転手だった。まだつくしがテレビに出始めたころ、帰りが遅くなりタクシーを使ったつくしを乗せたらしい。その時につくしの部屋は特定されていた。その後も、婚姻届けを送り続けたが、つくしからなんの音沙汰もないばかりか、最近部屋に帰ってこない日があることに気付き、部屋に侵入して盗聴器を設置したらしい。余罪を洗...
仕事柄つくしは会社にほど近い23区内に住んでいるため、司は電話をうけてからものの15分で駆け付けてくれた。いつものリムジンではなく目立たない黒い車から出ると、コンビニの中まで迎えに来てくれる。「大丈夫か？」「うん」そういうが、司を待ってる間嫌な汗が出たせいで、手が少し湿っていた。車に乗った後、事情を話す。壁の時計の位置がずれていた気がすると。司はすぐさまSPに部屋の中の捜索を命じたところ、つくしの1LDK...
司と再び付き合うようになって1カ月。つくしは会社員であって恋愛禁止のアイドルではない。そして司も独身だ。別に付き合っていることを隠す必要はなかったが、無駄に騒がれたくもない。会う場所は、人目を避けた会員制のレストランや、メープルホテルと限られていた。なんだかあんたのお母さんに反対されてた高校時代に戻ったみたいだね、そういうと司は渋い顔をする。会社への往復は相変わらずタクシーを使っていた。定期的につ...
「ねえ、なんでこんな回りくどいことしたの？」ずっと疑問に思ってたことを聞く。あたしに話があるだけなら、こんな風に取材の形式を取らなくてもよかったはずだ。「おまっ、おまえがそれを聞くか？」「どういうこと？」「おまえ、ババアに会った後、俺からの連絡拒否したろ。おまえに連絡とるの、あの時以来だったからな」まだ頭がはてなマークばかりだ。「おまえは逃げ足速いからな。逃げられねーよーにお堀を埋めといたんだよ」...
いつも拙い話を見ていただきありがとうございます。前回総つくのお話を書いた際、まさかのあきつくのリクエストを頂いたので、調子に乗って書いてみました。個人的には、結婚するならあきら一択なのですが（絶対にいい夫になりそう）、はたしてあきつくが好きな人はどのくらいいるのかまったく未知数です。。。つかつく以外のCPも大丈夫！という方は温かい目線で読んでいただけると嬉しいです^^***CPはあきら×つくしです***「あー...
「悪い、いじめすぎたな」そういって道明寺があたしを抱きしめる。「婚約なんてデマだ。提携先が外堀を埋めるためにわざと婚約のニュースを流させたんだよ。まんまと乗せられやがって。お前の口から婚約のニュースを聞かされた俺の気持ちを考えてくれよ」そう言いながら、まだ涙のとまらないあたしの顔を見る。「そんなデマ信じるなよ。俺がお前以外と婚約するわけねーだろ」「でも、、、でもあたしは、、、」嗚咽で言葉が出ない。...
目が覚めると、白い天井が見えた。のどが渇いているからか、咳が出る。すると横からストローのついた水が差しだされた。「大丈夫か？」心配そうにあたしを見る、道明寺が横に座っていた。「あんた、、、なんでここに・・・」「お前、取材中に倒れたんだよ。過呼吸だって。過去にも同じようなことがあったのか？」首を縦に振る。そして気づく「今何時？」「夜7時を回ったところだ」あたしは半日以上気を失っていたらしい。「道明寺...
副社長室は、先ほどまでいた応接間とはガラッと雰囲気が変わり、必要最低限のものしかない、シンプルで、無機質な部屋だった。デスクに座っていた道明寺はあたしたちが部屋に入ると、立ち上がりこちらへ向かってきた。まずはディレクターが名刺を渡す。道明寺の名刺は西田さんが渡していた。そしてあたしの前に立つと、口を開いた。「先日は質問ありがとうございます」そういって手を差し出してくる。懐かしいあいつの大きな手。こ...
いつも訪問いただきありがとうございます！このブログを開設して2カ月弱、気が付けば10万アクセスを超えておりました。これもひとえに訪問して頂く皆さま、ランキングのボタンを押してくださる皆さま、拍手を送ってくださる皆さま、そしてコメントを下さる皆さまのおかげです。ありがとうございます。連載の途中ですが、10万アクセス記念の短編を置いておきます。CPは総二郎×つくし以前アップしたCloserの前日譚です。つかつくじゃ...
時間は万人に平等である。あたしがどんなに時が遅く進めと願ったところで、取材の日はやってくるのだ。道明寺副社長に会うということで、メイクさんはいつも以上に気合が入っていた。「つくし、どうする？今日はカラコンいれちゃう？」「入れない、入れない。いつも通りでいいから」「そんな、世界の道明寺司に会うのよ。気合入れなくてどーするの！」「お願いだからいつも通りにして」そうお願いしたが、いつもよりビューラーは念...
何か重大事件が起きたのかと駆け付けると、道明寺があたしが出演するワイドショーのスポンサーについた、というニュースだった。「牧野の質問が好印象だったからかもな」「その後の映像の使い方もいい感じでしたしね」「道明寺副社長の婚約について番組内で突っ込まなかったの、うちだけらしいですよ」万年資金難のテレビ局にとって、新しいスポンサーほどうれしいことはない。道明寺HDのメディア戦略が変わったのかな、そう考えて...
つくしの質問の後も、当たり障りのない質問が続く。司も淡々と答えていく。必死に下を向いてメモを取りながら、顔をあげないようにした。もしまた目が合ったら、、、そう思うと怖かった。記者会見が終わった後、会場の外でカメラマンと合流する。「牧野、いい画が撮れたぞ」そう褒められたが、このニュースをこれから自分で伝えるのかと思うと憂鬱になる。だが、社に戻り原稿を書きながら、初心を思い出す。あたしは何のために記者...
司が着席し、フラッシュがひと段落したところで、記者会見が始まる。まず、司会者が司のこれまでの経歴を語る。すでに調べてきていたことだったが、改めてこの8年間の司の成長を実感する。司会者がまだ話をしていたが、ふと目線を司会者から檀上の司に戻すと、彼と目が合った気がした。そんなはずはない。この人数だ、見つけられるはずない。そう思うが、司の視線はつくしの方向に注がれている。司が話し始めてもその視点は変わる...
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