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2018/09/20

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  • Euphoria 42 最終話

    グランドメープルニューヨークバンケットルーム道明寺ホールディングスの株主総会の後、カクテルパーティが催されている。株主総会で、司の代表取締役社長兼CEO就任が3分の2以上の同意を持って承認された。このカクテルパーティは、司の就任祝い及びお披露目を兼ねている。そんな司の晴れ舞台に、幼少期からの友人達ももちろん招待されていた。「類も来てたんだな」会場であきらと落ち合った総二郎は目ざとく類の姿を見つける。昔...

  • Euphoria 41

    留学期間を終え、イギリスの大学に正式に編入した際、つくしは専攻を英文学から法律に変えたどうすれば司の側にいられるか。すでに法曹の道へと進んでいた静の後押しもあった。国際的な大型プロジェクトでは未だ英国法で契約書が作成されることが一般的だ。経営と違って法律は学んだことがダイレクトに活かせる。それに、司と同じ視点ではなく、違う視点を持つことでサポート出来るからこそ側にいる意味が出てくる。下心ありきの進...

  • Euphoria 40

    クリスマスも、つくしの誕生日も、司と二人で過ごすのは初めてだった。いつも、類や総二郎、あきら、そして椿や静が一緒にいた。時が止まればいいのに司が笑った時に目尻に皺がよるとき、話しかけたとき必ず目線を合わせてくれるとき、「つくし」と名を呼ばれるときこれが当たり前じゃないことをつくしは知っている。欧米では新年を祝う習慣はない。クリスマスが終わり、年末が過ぎれば1月2日から日常に戻る。学校が始まるのも1月2...

  • Euphoria 39

    「やっぱり寒いね」「だから言ったじゃん、寒いよって!」人気のない大学を二人は肩を竦めて歩く。「今は授業も休みだし、特に見るものはないよ、ほんとに」「ん」「他にも見る場所あるのによりによってなんで大学を見たいって言ったのよ」「ほら、一度来てれば想像しやすいじゃん。今頃つくしは大学で授業かーとか、図書館かーとかさ、俺が日本に戻った後も」「何その理由」つくしは類の言葉に吹き出す。「じゃあ今度から風景もメ...

  • Euphoria 38

    「司から連絡くれたの初めてだね」司の前の椅子に座ると、言葉の内容とは裏腹に滋は寂しそうな顔で告げる。滋の椅子を引いたウェイターにコーヒーを注文したあと司に話しかける。「紅茶頼むとすごい種類の中から選ばなきないけないでしょ。最初は、さすがイギリス!って思って興奮したんだけど、毎回ダージリンとか、セイロンとか選ぶの大変だし、その中でもファーストフラッシュとか更に細かく種類が分かれてるじゃない?だから毎...

  • Euphoria 37

    「お前に話がある」司の耳元で類はそう告げた。「大河原の猿、来てるんでしょここに」「ここっつーか、ロンドンで昨日会った。追い返したけどな」「昨日の夜、このホテルの近くで見かけた。いつもと違って真っ青な顔して歩いてたけど、間違い無いと思う」類の思いもよらぬ言葉に司は動揺を隠せない。「昨晩ってあいつここまで来てたってことか?」「俺も昨日の夜こっち着いたんだよ。車の窓から見ただけだけど、間違い無いと思う」...

  • Euphoria 36

    「お前の母親とじーさんはどこで知り合ったんだろうな」翌日、ゆっくりと起きた司はインルームダイニングで朝食を頼む。ここ数日、つくしの食べる量が減っているのが気がかりだった。「お母さん、東京で結構大きい会社で秘書として働いてたんだって。だから仕事で出会ったみたいだよ」さつきの言葉が蘇る。私たち、早くに父を亡くしたから母が自立しろってうるさくて。これからは女も手に職をつけないと生きていけないって。千恵子...

  • Euphoria 35

    つくしが店を出ると、司が壁にもたれかかり待っていた。「聞きたいことは聞けたか?」つくしは司に思わず抱きつく。「こんなところで待ってなくてよかったのに」普段は体温の高いはずの司の手はひんやりとしていた。「また雨が降り始める前にホテルに戻ろうぜ」司は優しくつくしの肩を抱きながら道を歩き始める。「あたしのお母さん、亡くなってたよ」「そうか」なんとなくそんな気はしていた。幼い子供が母親と離れて暮らす理由は...

  • Euphoria 34

    「そろそろ来る頃かなって思ってた」つくしと司がギャラリーに着くと、サツキが待ち構えていた。「オリビエから連絡もらってたの」司の横に佇む青白い顔をしたつくしのほうへ歩み寄ると、そっと抱きしめた。「黙っててごめんね。口止めされてたってのもあるけど、あなたが今幸せならわざわざ思い出させることはないかなと思って。」何も言わずに涙を流すつくしを、サツキは店内へと招き入れる。「はじめまして。道明寺司くんよね」...

  • Euphoria 33

    司はキャブに乗ると、一旦ホテルに戻り荷物をまとめてそのままターミナル駅であるKing’s Cross駅へと向かう。「ねえ、どうしたの?」つくしの疑問が解消したのは、ダラム行きの電車に乗り込んだ時だった。「ダラムに戻るの?」司はしばらく考え込んでいるようで、つくしはそれ以上の質問を控える。ロンドンからつくしがホームステイしているダラムまで3時間。司が口を開いたのは、乗車時間が残り1時間を切ってからだった。「なあ、...

  • Euphoria 32

    「俺は、誰になんと言われようとお前の側にいる。絶対にだ。」不安な気持ちを見透かされていたようでつくしの目から涙がこぼれ落ちる。「悪かったな、嫌な気持ちにさせて」司のせいじゃない。ただ、自分の覚悟が足りてなかったことを自覚させられ、それなのに、当然のように滋に嫉妬した自分の浅ましさがこの上なく恥ずかしかっただけ。あの場から適当な言葉で逃げようとした。最低だ司は堂々としていたのにあたしは司の顔色を窺う...

  • Euphoria 31

    翌日、雨は止んだものの引き続き天気は曇っていた。二人は手を繋いで街中をぶらぶらと歩いていく。少しずつ蘇ってくる記憶を話しながら、二人のことを誰も知らない場所にいる。ずっと司に知ってもらいたかった。本当は妹じゃないってでも、司が自分に執着するのは妹だからなのかもしれない。怖かった司の側にいられなくなるのがだから自分が妹じゃないと知ってなお司が会いにきてくれたこと、手を握り、キスをしたこと信じられなか...

  • Euphoria 30

    「なあ、いつから親父が父親じゃないって気づいてたんだ」司は濡れたつくしの髪をタオルで優しく拭いていく。「ん、、、いつからっていうか、最初からかな」「最初から?」司の手が止まる。「薄らとだけど、本当のお父さんがたまに会いに来てくれたの覚えてる。ロンドンかどこかの都会のホテルで何回かご飯食べたんだよ。父親ってはっきりと名乗られたわけじゃないけど、たぶんお父さんなんだろうなって思ってた」「じゃあお前は引...

  • Euphoria 29

    「昔のこと、どのくらい覚えてんだ」「ん、正直言って分かんないんだ。誰にもずっと話してなかったし、本当に自分が覚えてることなのか、想像なのか曖昧で。もしかしたら、こうだったらいいのにって思ったことをいつのまにか思い出と履き違えてるのかもしれないし。ほら、過去は美化しがちじゃない」特に、道明寺に引き取られてからのつくしの生活は、幼いつくしには精神的にとても辛かったはずだ。何を言っていいのか、何を言って...

  • Euphoria 28

    その日は遅いからと司の宿泊する部屋に泊まらされ、翌日荷物をとりにサマセット公の邸に戻った。「流石に司が来ること伝えてないから、ホテルで待ってて」つくしは司にそう念を押すと一人で邸へと戻る。昨日は結局、司は飲みすぎたのかたわいもない話をしている間にリビングのソファで眠りに落ちていた。あんな風に話したのはいつぶりだろう。昔に戻ったみたいだった。とりあえず2週間分の荷物をまとめると、サマセット公へメール...

  • Euphoria 27

    突然現れた司に、状況が飲み込めないままホテルへと連れて行かれるとそのまま部屋へと引きづられていく。「とりあえずあったまってこい」そう言ってバスルームに閉じ込められたものの、つくしには状況が掴めなかった。暖かい部屋に入ると、自分が思ったより濡れていたことに気がつく。ホームステイさせてもらっている身だ、病院のお世話になることは避けたい。つくしは服を脱いでシャワーブースに入ると暖かいお湯を浴びた。「ごめ...

  • Euphoria 26

    『つくし、本当にここに残るのかい?』『はい、ご迷惑でなければ』『でも、年末は使用人もクリスマス休暇取らせるし、邸に誰もいなくなるんだよ。そんな中、つくし一人で留守番させるだなんて』『私ももういい年ですし、自分の身の回りのことくらい自分でできるので大丈夫です。せっかくなのでご家族水入らずで過ごしてください』何度目かのやりとりが繰り返しされる。サマセット邸は普段、サマセット公と夫人の二人暮らしで、すで...

  • Euphoria 25

    「お前、ふざけてんのかよ。誰かって、つくしの父親は親父だろ」司の声に怒りが混ざっている。どうしようもない事実 つくしが血を分けた妹だと口にするたびに、心から血が流れ出る。だが、そんな司の言葉を無視して類は続ける。「つくしの母親を探ってたら、パンドラの箱に行き着いたんだよ。つくしの出自を秘密にしなければならない理由。まだ確信がない。だからお前には伝えるなってねえちゃんには言われた。でも、俺は、司には...

  • Euphoria 24

    「遅かったね」司が類のフラットを訪れたのは日付が変わってからだった。「これでもいつもより早く終わらせてきたんだよ」そう言ってズカズカと家の中に入ると司はソファにどかりと座り込む。「で、話って何だよ」「司、念のためスマホの電源切ってくれない?念には念をおきたいからさ」類の意図を察した司は、スーツの内ポケットにあるスマホの電源を落とすとテーブルに置く。すると類は「家系図書いて」と徐ろに紙とペンを差し出...

  • Euphoria 23

    「よお司」授業を終え、迎えの車に乗ろうと歩いていると突然日本語で呼び止められる。「お前、何してんだよ」目の前には類が立っていた。「司にわざわざ会いに来てやったんだよ。ってかさ、留学するんなら俺たちに一言あってもいいんじゃない?」「うっせーな。急いでんだよ。これから会社いかなきゃなんねーし」司は迎えの車が止まっている車寄せに向かって歩き出す。「会社終わったら、うちに来てよ。話あるから。場所は前と一緒...

  • Euphoria 22

    「総二郎、どういうこと?」類が尋ねる。「いや、つくしちゃんと司とねーちゃんの血が繋がってるって言っても、兄弟とは限んねーだろ。」「っていうと?」「つくしちゃんに道明寺の血が入ってる。でもおじさんが父親である可能性が低いってことはさ、別の道明寺家の誰かの子供なんじゃねーか?」3人は総二郎の言葉がようやく理解できた。「財閥とかだとあんまないのかもしれねーけど、うちみたいな伝統芸能だとそんな話ししょっち...

  • Euphoria 21

    授業の後、課題のために図書館に行くのが日課になっていた。たがこの日は運悪くメンテナンス中とのことで休館になっている。すぐに自室に戻ってもよかったか、雨が多い季節にもかかわらずこの日は天気がよかったため、ふと寄り道をしてみようも思いつく。一人では絶対に入らなかったであろう店に行くと、重厚なドアをそっと開けた。「Hello」中に入ると笑顔で挨拶を投げかけてくれたのは、先日会ったばかりの女性。「あの、こんに...

  • Euphoria 20

    「まあ、実母を探すのは手段の一つであって目的ではないんだけど。どうにも引っかかるんだよな。そうだ、ねえちゃん。つくしちゃんがガキのころイギリスにいたって話聞いたことあるか?」あきらが尋ねると、椿は驚いた顔をする。「イギリス?つくしちゃんが?」椿はしばらく考え込んだ後、「聞いたことないわ」と述べる。「ねえちゃんも知らなかったのか、、、うちの社員が入管の記録にTsukushi Domyojiの名前を見つけたんだよ。パ...

  • Euphoria 19

    F4専用のラウンジで、総二郎、あきら、類は思い思いに時間を潰していた。類はソファに沈み込み起きているのかどうかも怪しい。総二郎はタブレットで雑誌を読み、あきらは携帯でメッセージを返信している。いつも通りの光景遠くからいくつもの靴音が近づいてくる。革靴の音にピンヒールの音が混じる。3人とも異変を感じ顔をあげる。なぜなら、ヒールの足音のペースが異常に早い。ピンヒールを履いて全速力で走る人間の心当たりは少...

  • Euphoria 18

    短い夏が終わり、あっという間に冬の気配が近づいてきた。大学から寄宿しているサマセット邸まで徒歩で30分程度。当初は車で送迎されていたが、慣れたからと丁重にお断りし、歩いて通っている。英徳時代も学校の行き帰りは当たり前のように車だった。普通の学生のように、歩いたり自転車だったり自分で登校し、友人と寄り道するのが憧れだった。懐かしい空気を吸いながら紅葉が進む木々の中を歩く。幼い頃、どの辺りに住んでいた...

  • Euphoria 17

    「は?どういうことだ?」あの晩から1ヶ月、司は類に呼び出され久しぶりに顔を合わせた。「だから、お前の親父さんの周辺を調べたけど、子供を産んだらしき人は見つからなかったんだよ」同じく類に呼び出されたあきらが説明する。「この1ヶ月美作は何しての?」思っていたのとは違う情報がもたらされ、類は不機嫌だ。「いや、俺もびっくりなんだって。普通子供まで産んでたら全部情報隠すなんて無理なんだよ。隠そうとしてもどっか...

  • Euphoria 16

    『つくしおはよう。昨晩はしっかり眠れたかな?』『おはようございます、サマセット公。お陰様でゆっくり休めました。今日はいい天気ですね』朝日が差し込むダイニングは、イギリスで最もおいしいと言われる朝食のために設計されたかのように清々しい朝を演出している。『ええ、とてもいい天気ね。気持ちまで明るくなるわ。まるでつくしが最高の季節を運んできてくれたみたいだわ』つくしのホストファミリーであるサマセット夫妻は...

  • Euphoria 15

    どうやって帰ってきたのか。気がつけば、大学に入って使っていた道明寺が保有するマンションではなく、久しぶりに邸に戻っていた。父も母も、姉もいない、そしてつくしがいなくなった邸へ。司が戻ってくることを想定していなかったからか、出迎える人間も、働いてる人間も少なかった。そして恐ろしいくらい静かだった。俺が邸に寄り付かなくなってから、つくしは一人でこの静寂に耐えていたのか。誰も味方のいない邸で、暗闇に溶け...

  • Euphoria 14

    類には、つくしの気持ちが分かっているのだろうか。そういえば高等部のとき、つくしが類のことを「ソウルメイト」と言ったことがある。類が何を感じているのか不思議とわかるのだと。類にもつくしの気持ちがわかるのかもしれない。司が知りたくて、だが怖くて、目を逸らしているものが。「つくしは知ってんのか、お前がやろうとしてること」類は首を横に振る。「まだ言ってない。今話しても混乱するだけだろうしね」すでに炭酸の抜...

  • Euphoria 13

    司は、類の質問の真意を探ろうとする。「母親って、、、」「お前んとこのおばさんじゃなくて、つくしの生みの親」「いや、、、」つくしが楓から生まれてない以上、実母がいるはずだ。だが、今までつくしからも楓からも一度も実母については何も語られていないことに司は初めて気がついた。「俺は何も聞いことがない」「そうか、、、つくしから小さい時どこに住んでたとか、誰と住んでたとかは?」司は幼い時の記憶を振り返る。つく...

  • Euphoria 12

    大音量の音楽の中、踊る人間をかき分けて進むとカウンターに目当ての人間が座っていた。「お客様、何になさいます?」スツールに腰を下ろすとともにバーテンが尋ねる。こんなバカ騒ぎを許している一方、スタッフの教育は行き届いているようだ。さすが、極限られた人間しか入ることが許されていない会員制のクラブと言うべきか。「コーラ」「飲まねえなら帰れよ」類が注文すると同時に隣から突っ込みが入る。「俺、飲みにきたわけじ...

  • Euphoria 11

    「わざわざ見送りなんていらないのに」「そんなわけ行かないでしょ。それに俺がパリに行く時もつくし見送りに来てくれたしね」「あのときは類の見送りじゃなくて静さんの見送りだったんだけどね。急に一緒にいっちゃったからびっくりしたよ」笑いながら話す類とつくしを、あきらと総二郎は驚いた目でみる。「静の話しって類にとって地雷じゃなかったのかよ」静と破局し傷心のまま類が帰国したと思っています二人は、普通に静のこと...

  • Euphoria 10

    「なあ、情報多すぎんだけど、類とつくしちゃんは付き合ってんのか?」あきらは1番大きな疑問を口にする。「お前、あれが付き合ってるように見えんのか?」聞いておきながら、あきらは首を横に振る。二人の空気は恋人特有の甘さがない。どちらかというと仲の良い兄妹だ。「付き合ってるとしたら色気なさすぎだろ」「だな」「っていうか、つくしちゃんいつ留学行くなんて決めたんだよ」総二郎は桜子に尋ねる。「先輩は結構前から考...

  • Euphoria 9

    「そういえばつくしちゃん、司は最近何してんだ?学校にも顔出さねーけど」総二郎の質問に桜子はハッと現実に引き戻される。「さあ、寝てんじゃないの」困った顔のつくしの横にいる類が代わりに答える。「お前に聞いたんじゃねーよ」「常に寝てるのはお前だろーが」あきらと総二郎は口々に突っ込みを入れる。「そうだ先輩。例の件でお話ししたくて」類の意図を汲み取った桜子はつくしの方へ歩いていくとあえて話を逸らした。資料を...

  • Euphoria 8

    『つくしーーー!』一人歩くつくしに猛烈な勢いで突進してきた人物を見て二人の顔は歪む。「おい、あれ大河原滋だろ?」「ああ、司の婚約者のな」「あいつ学校違うだろ。なんでしょっちゅううちにいるんだ?」「将を射んと欲すれば先ずなんとやら、ですわ」突然ラウンジに現れた桜子の声にあきらと総二郎は振り返る。「お前、なんでここに入ってくるんだよ」過去に桜子と色々あった総二郎とあきらはどうしても桜子に対して疑いの目...

  • Euphoria 7

    「ったくあいつはフランスにいるのか日本にいるのか分かんなーな」あきらが携帯を手にぼやく。「類か?」総二郎の問いかけにあきらはため息で答える。「いきなりフランスに留学に行ったと思ったら突然英徳に復学するなんて、無茶苦茶というかあいつらしいというか」「お前のとこにも類から事前に連絡なかったのか?」「あるわけねーだろ。いきなりラウンジ来たらあいつが寝てんだぞ。一時帰国かって行ったらフランスには戻らないっ...

  • Euphoria 6

    気がつくと車は総二郎の家に着いていた。いつまでも車から出てこない司を不審に思って総二郎が車の窓を叩く。「おい、死にそうな顔してどうしたんだよ!」窓を開けて出てきた司の顔色に総二郎は驚きの声を上げる。「、、、なんでもねーよ」司はドアを開くと総二郎に乗るように促す。「おい、司、お前邸に帰った方がいいんじゃねーか?」心配する総二郎の言葉を無視した司は思いもよらぬことを口にする。「いつもお前が遊んでるとこ...

  • Euphoria 5

    2人は無言のまま道明寺の車に乗り邸につくと、いつも出迎えに出てくる人間ではなく、母親の秘書である西田が待ち構えていた。「司様、社長が社でお待ちです。」「そんなん知らねーよ。用があるならテメーが来いって言っとけ」そういうと二人のやり取りを心配そうに見ているつくしの肩に手をあて邸の中に入ろうとする。「司様の婚約の件でお話があるそうです」その言葉に司は足を止め西田を振り返る。「俺は婚約なんてしねーからな...

  • Euphoria 4

    司はいつものように授業の終わったつくしを教室まで迎えに行く。「教室には入ってこないで。この年でお迎えとか恥ずかしすぎる!」とつくしに強く念押しされている司は教室の外に立つと、教室から出てきた男子生徒は司を恐れて視線を逸らしながら早足で歩き、女子生徒は「きゃー!道明寺様!!!」と黄色い声をだす。いつもの変わらない光景だ。だが、待てど暮らせどつくしはこない。忍耐力など皆無に等しい司は痺れを切らして教室...

  • Euphoria 3

    大きな瞳が悲しみを映さないようにと司は子供ながらに、一つしか歳の変わらない妹のために心を砕いた。それが、実の親にさえ年に数回しか会えない司の生き甲斐となった。だが、広い邸の中、無数の使用人に囲まれながらも幼い兄妹ただ二人が身を寄せ合って暮らしていく中で、だんだんと距離感が分からなくなってくる。つくしを誰よりも大切に思うこと。つくしのことを幸せにしたいと思うこと。つくしを傷つけるものから守りたいと思...

  • Euphoria 2

    つくしと初めてあった日のことを司ははっきりと覚えている。無表情の母にある日突然連れて来られたのがつくしだった。『あなた方の妹です』母の言葉が司は理解できなかったが、すでに分別のつく年齢の椿がとても狼狽えていたことを覚えている。司を出産後、母が妊娠していた様子はない。『お母様、その子は私達と血が繋がっているのですか?』椿の質問に、母は静かに頷く。と言うことは、異母兄弟と言うことだ。道明寺の様な家柄に...

  • Euphoria 1

    「司、今日も行くだろ?」総二郎が屋上にいる司のところまでわざわざ声をかけにくる。「ああ」司は校庭を見つめたまま生返事を返す。「じゃあ10時にこないだのクラブな。あきらと類にも声かけてっけど、まあ類はこねーだろーな」そう言って総二郎は扉に向かうと、一言司に声をかけて姿を消した。「いい加減妹離れしろよ」司が何を見ているのか総二郎には分かっていた。碌に授業にも出席せず、カフェテリアの上にあるF4専用のラウン...

  • 24 hours

    CP 司×つくし声を殺す。押し寄せる快感に口から漏れそうになる嬌声を必死で抑えるため、口からは断続的に言葉にならない音が漏れる。「牧野、、、」切なそうに自分の名を呼ばれると快感はさらに増していく。ああ、、、流される。恥ずかしさしかなかったはずなのに、あたしの身体は、頭はこの快楽を覚えてしまった。会って、そのコロンの香りを嗅ぐだけでキスがしたくて仕方がなくなってしまう。目を見て、手が触れ合うだけで身体が...

  • Work in progress

    炎天下の中、アンバランスな影が2つ揺れている。「道明寺さ〜ん。私もう暑すぎて死んでしまいます」情けない声を出す主は体型に合ってない黒のリクルートスーツと、真夏だというのに白シャツの第一ボタンまできっちり留めている。話しかけられた男はタバコを加えながらだらしなく立っている。「だからお前はついて来なくていいっつっただろ、牧野」めんどくさそうに煙と共に言葉を吐き出す。道明寺司と牧野つくし。ともに警視庁捜...

  • 秘書のお仕事 WFH編

    1年前、未来からタイムトラベラーが訪れ、多くの人が在宅勤務になると言われてもこの残業大国日本で信じる人は誰もいなかっただろう。だが世界は変わった。Dramaticallyに他の先進国と比べても非常に特殊な、法的構成力を持たない「自粛」と呼ばれる外出規制が終わった後、街中や電車に人が戻った後も引き続き従業員の在宅勤務を認める会社も出てきた。グローバル企業である道明寺財閥はいち早く、グループ会社を含めて在宅勤務の...

  • Wheel

    窓の外を見るふりをして、ガラスに映る横顔を眺める。ああ、なんて美しいんだろう。反対側に座る相手は、長い足を持て余し左足を前の席に行儀悪く乗せ、同じく窓の外を見ている。同じ空間にいるのに目線は合わない。だんだんと高度を上げる観覧車は、夜の静けさの中に溶けてしまいそうだ。眼下に広がるビルや車の光が恒星のようで、まるで重力のない宇宙にいるような気分になる。そんなつくしの体を地上に留めているのは繋いだ右手...

  • お久しぶりです

    気がつけば前回の更新からだいぶ時間が空いてしましました。久しぶりに管理画面に入ってみたら、幽霊サイトにも関わらず訪問してくださったり、拍手してくださった方がいて喜びに震えています。わざわざこのサイトにたどり着いてくださり、お話を読んでいただき、拍手までクリックしていただきありがとうございます!前回、といっても5月の更新時に書いているといったつかつくの話ですが、短くまとめるつもりが長くなり、そうこう...

  • Cafe time あきつく

    レジでホットティーとチョコレートチャンクスコーンを注文し、お金を払う。スコーン温めますか、の問いに食い気味でお願いしますと答えた後で窓際の椅子に荷物を置く。店内が空いているからか、紅茶と温めたスコーン、そしてカラトリーを店員さんが席まで持ってきてくれた。一日神経をすり減らした後でこういった優しさに触れると心が少し浄化された気がする。スマホをテーブルに置き、温かいスコーンを齧ると、口の中に幸せな甘さ...

  • 真夜中のランデブー 後編

    「牧野さん、普段こういう店に来るんですか?」つくしに連れていかれたのは、予想に反してファミレスだった。「あれ、ファミレスじゃ不服だった?」24時間営業のファミレス店内から家族連れの姿は消え、店内の客はまばらだった。「いや、そういうんじゃなくて意外だなって。ほら、女性ってスペインバルとか、エスニックカフェとか好きじゃないっすか」いい雰囲気に持ち込もうと思っていた田中の下心は、店内の煌々とした照明と懐か...

  • 深夜のランデブー 前編

    4月世の中には新しいものがあふれ出る。新入生たちはまだ折り目の付いた真新しい少し大きめの制服を着心地悪そうに身にまとっている。そして新社会人たちは、就職活動の時に購入した真っ黒なスーツと革靴に身をまとい、長い学生生活を終えこれから数十年続く労働人生のドアを開けることとなる。大学を出て、法科大学院に進み、司法試験に合格した後司法修習を終えた弁護士の卵たちも今日から法律事務所や各企業の法務部での勤務を...

  • Can you keep a secret? 類つく

    CPは類×つくしです。「つくし、今日の夜空いてる?」他校生である滋が当たり前のように英徳のカフェテリアにいるのもいつもの光景だ。「ごめん滋さん、今日はちょっと、、、」つくしはそういうと、斜め右にあるソファで眠っている類のことをちらっと見る。「えー、今日バイト入ってない日じゃなかった?」つくしのスケジュールをつくし以上に完璧に把握している者の一人が滋だ。せっかくのバイトがない日、つくしとやりたいことが...

  • Who do you love? 6 最終話

    「空いてる」つくしの呟きに、エレベーターに向かっていたあきらは足を止める。つくしが玄関のドアを開くのと同時に、あきらは部屋の中からは死角になるが、すぐにつくしの元へと駆けつけられる場所に身をひそめる。「後藤くん、なんでいるの?」つくしの言葉から、部屋の中にいるのが後藤だとわかる。部屋からは騒がしいテレビの音が聞こえてくる。「なんでって俺は彼氏だろ。お前の部屋にいたって問題ないだろ」相手はすでに出来...

  • Who do you love? 5

    永遠に続くかと思う沈黙にあきらは耐える。つくしはあきらと目線が合わないよう、下を見たままだ。二人で過ごした日々を思い出す。少しずつ近づいていたはずだった。見えない亡霊に怯え逃げ出したのは俺だ。「牧野、たとえ司がお前のことを思い出したとしても、俺はお前の一番近くにいたい。もう一度だけチャンスをくれないか?」あきらの言葉につくしは顔を上げる。「もう、あたしのこと置いていかない?」震える声でつくしは尋ね...

  • Who do you love? 4

    あきらの言葉に、つくしはしばらく無言だった。自分が口を挟む立場にいない事は分かっていたが、言わずにはいられなかった。「なあ、牧野。あいつのことが好きなのか?」あいつが、後藤のことを指しているのか、記憶をなくした司のことを指しているのか、もしくは両者を指しているのか問いかけたあきらにも定かではない。やや間を開けた後、つくしは重い口を開く。「なんで、どうして美作さんがそれを聞くの?」「それは、、、」「...

  • Who do you love? 3

    何とか日本に出張する予定を調整し、久しぶりに東京に戻ったのは総二郎の電話から3日後のことだった。その間つくしがら付き合っている男のことは気になっていたが、総二郎から送られた情報以外に調べることはせず、つくしの仕事が終わる時間を見計らって会社のロビーで待つことにする。外部情報ではなく、先入観なくつくしの様子を知りたかった。たとえ総二郎がいうような男だったとしても、つくしが幸せなら自分の出る幕じゃない...

  • Who do you live? 2

    それを見たのは総二郎だった。つくしを雑踏の中で偶然見つけた。だが何やら様子がおかしい。慌てて駆けつけると、側にいる男と揉めていた。もう一軒くらい付き合えよ、明日朝早いから、つまんねーこと言ってんじゃねーよ一杯くらいいいだろ男は苛立ちを隠そうともせず、次第に声も大きくなっていく。つくしは顔をしかめ、よく見ると左手の肘のあたりを男に強く握られていた。野次馬をかき分け側に駆け寄ろうとする総二郎に気がつい...

  • Who do you love? あきつく 1

    CPはあきら×つくしです。どこにでもある大衆居酒屋、横に座ったつくしからタバコの残り香がたつ。「これこれ、仕事終わりはやっぱりこれだよね!」生ビールを一口飲み込み、美味しそうな顔をする。「お前、おっさんみたいなこと言うなよ」内心を悟られないように軽く突っ込むと、つくしも「女子に向かったおっさんってひどい!」とむくれた振りをする。仕事終わり、サラリーマンが溢れる居酒屋でよく見られるやり取り。「ホタルい...

  • Belated birthday

    CP あきら×つくし です。「どうせ俺はあいつらに比べれば影が薄いよ」「ちがっ、違うんだよ、美作さん!」つくしは慌てて手を大きく振り、全身であきらの言葉を否定しようとする。「いや、気を使わなくていいんだよ、牧野。こういうの慣れてるからさ。むしろ俺の存在をこのタイミングででも思い出してもらっただけでありがたいっていうかさ、」「もー、本当に違うんだって!忘れてたわけじゃないんだってば!」つくしの顔は真っ赤...

  • ポラリス

    例年より早く桜が開花したと世間が賑やかになったのを嘲笑うかのように、週末に吹雪く。強風に煽られ散る花びらは雪とともに儚く消えていく。まるで、昨日咲き誇ったのが幻だったかのように。顔に触れる冷たさが、雪なのか花びらなのか、目を閉じて立ち尽くすつくしには分からない。いや、季節外れの北風の中長時間外にいるため、あまりの寒さのため感覚も麻痺し、頬に感じるものが冷たいのか温かいのかさえわからなくなっている。...

  • Sparkling 蛇足

    Sparkling、長らくお付き合いいただきましてありがとうございます。以前呟いたのですが、前半部分の設定はある作品をモチーフにしています。分かるかたにはタイトルから分かっていただいたようですが、江國香織さんの「きらきらひかる」という小説です。(のちに同名のドラマが放送されましたが、そちらは解剖医のサスペンスでこちらはこちらで大変大好きでしたが、全くの別の作品です)この小説を読んだのは中学生の時、まだネッ...

  • Sparkling 45

    「パーパー!」「ほら、パパって言ったぞ!」嬉しそうに司が笑うので、本当はパンのことをパパといっていることは教えないでおいた。「そうだぞ、俺がお前のパパだぞ。」菫(すみれ)を抱き上げると、べたべたと手で司の顔を触るのを止めずに受け入れている。「あの司が、涎まみれの手で触れらることを嫌がらないなんて、やっぱり愛って偉大ね」そう感想を漏らす椿とともに、いちゃいちゃとする父と娘を見つめる。「この間朝すごく...

  • Sparkling 43

    親族の葬儀の後、親しい人を招いての告別式(それでも優に千人は超えていた)、その後は会社関係者を招いた社葬、そしてお別れの会と目まぐるしい日々を送っていった。葬儀は忙しさで悲しみを忘れさせるためにある、いつか耳にした言葉に心から納得した。あの晩、楓が亡くなった晩に3人だけで過ごした夜が、唯一純粋に楓のことを思っていた時かもしれない。告別式には、司とかつて結婚していたあかねも参列していた。「色々ありま...

  • Sparkling 42

    「犬がしっぽをまいて逃げていくみたいに出て行ったわね」道明寺家の血を色濃く受け継いでいる椿が退出した伯父を鼻で笑う。「あとでぎゃんぎゃん吼えないようにあえて同席させたんだろ」そういうと司は弁護士を見る。日本語を理解しているのかどうかわからないが、弁護士は涼しい顔でたたずんでいる。「それにしても、お母様には最後まで驚かされるわね。つくしちゃんを養子にしていたなんて」「どうせ相続税のことを考えてだろう...

  • Sparkling 41

    弁護士が厳かに口を開く。『全員お揃いになりましたので、遺言状を開封したいと思います。』楓の形をしたシーリングスタンプが付いている封筒を、アシスタントがペーパーナイフで開いていく。これは、楓が私文書に用いていたスタンプだったはずだ。中から取り出されたのはわずか2枚の紙。『それでは読み上げていきます。まず、NY、東京、ロンドンにある邸宅は司様に、ロサンゼルス、カナダ、モルディブにある別荘は椿様に、京都に...

  • Sparkling 40

    「〇月×日司が初めて歩いたと連絡があった。側で見られたかったのが悲しい〇月×日椿のピアノの発表会に間に合わなかった。謝る時間もなくNYへと行かなくてはならない。〇月×日司に久しぶりに会うと泣かれた。私の顔を忘れてしまったようだ」日にちと、その日の出来事が淡々と記されている。会えない子供の成長を記す様に、口にできない感情を表す様に、毎日のように日記は続いていく。次第にその内容は懺悔に近くなる。子供の側に...

  • Sparkling 39

    楓の部屋のドアはすでに開いており、様々な人が楓の部屋へ慌ただしく出入りしている。司は秘書に葬儀の指示を出しているようで、部屋の出口からすこし離れたところに立っていた。さっと楓の部屋へと入ると、ベッドルームの横にある執務室へと入る。長らく部屋の主が入っていなかった場所は、ひんやりとした空気が漂っていた。楓の手紙に会った通り、サイドデスクの2段目を開けると裏側を確認する。そこには楓が指示した通り、鍵が...

  • Sparkling 38

    「つくしさんへまずは、あなたに謝らせて頂戴。かつて私があなたにしたことは、言い訳の余地がないほど酷いことだと分かっています。ずっと苦しめてごめんなさい。そして、司の側にいてくれてありがとう。司があなたと出会ってなかったら、そう思うと心からぞっとするわ。母親らしいことが全くできなかった私が、最後に息子とこんな穏やかな時間が過ごせるなんて考えてもいなかった。これからも司をよろしくお願いします」そこまで...

  • Sparkling 37

    当初言われていた余命より、はるかに長く楓は生きた。「最初はもって数カ月って言われたとは思えねーな」そう呟く司の手を、つくしはぎゅっと握る。「ババアが死んでもせいせいするだけだ、ずっとそう思ってたんだけどな」司の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。つくしは、司が楓と最後の時間を過ごせるよう、そっと部屋を出た。「奥様、これを」外で待っていた使用人に手紙を渡される。つくしはあふれ出てくる涙をふくこともせず...

  • Sparkling 36

    司は仕事があるため、一旦ジェットに乗ってNYに戻った。そして入れ替わりにやや小型のジェットがテキサスに到着した。病院から空港まではドクターヘリで、そしてその先はジェットでJFK空港まで飛び、そこからお邸までもドクターヘリで移動する。万が一の事態に備え、移動には常に医師と数名の看護師が付きそう。なるべく楓の負担を減らすため、薬の影響で眠っている間にNYへと移動した。つくしも移動には付き添う。楓が目を覚まし...

  • Sparkling 35

    目が覚められたようです、そう声をかけられたのは待合室に入って1時間弱経ってからだった。看護師の指導の下、手を洗いマスクをしっかり身に着けてから司の母がいる病室をノックする。「お入りになって」依然と変わらない、闊達とした声が聞こえる。そっとドアを開けつくしが部屋に入ると、ベッドの上で背筋を伸ばし、凛としたたたずまいで座る楓がいた。その姿は、最後につくしがNYで会ったときと何ら変わらないように見える。だ...

  • Sparkling 34

    すでに話が伝わっていたのだろう、司の母が入院している病院へ行くと、病院長という見るからに偉そうな男性が出迎えてくれた。『これはこれは、道明寺社長遠いところをわざわざお越しいただきありがとうございます。まずはご連絡いただいた通り、お母さまの症状についてお話させていただきたいので、こちらへいらしてください』必要以上に丁寧に接する様子は、日本でもよく見る光景だ。歩きながら司が、「この病院、ババアが口封じ...

  • Sparkling 33

    「今日も邸に行ってたのか?」日が変わる頃に帰ってきた司が尋ねる。「うん。久しぶりにタマ先輩と会って、話が積もっちゃって」「せっかくこっち来たんだから、暇な年寄りの相手しねーで観光でもすりゃーいーのに」「あたしも話したいことがたくさんあったから。それに観光して迷子になっても困るしね」「お、方向音痴だって自覚がようやく出てきたか」「うっさいなー、もー」風呂上がりの司の背中をバシバシ叩くと、急に振り向き...

  • Sparkling 32

    司の仕事の都合もあり、司の母に会いに行くのは最短で一週間後だ。「お前、仕事は大丈夫なのかよ?」「うん。有給たくさん余っていたから消化しろって上から言われてたの。まとまった休みを取らなきゃいけなかったからちょうどよかった」日中は適当にぶらぶらしてるから大丈夫だよ、そう言い張るつくしに気付かれないようにSPを配置した。司は分かっていた、トラブルを呼び込む体質のつくしが言うは信用できないと。慌ててNYに来た...

  • Sparkling 31

    それから一週間後、司は秘書から「今日の夜は予定がありませんのでお帰り頂いて大丈夫です」と告げられ、自分の耳を疑った。今まで仕事を詰められることは数え切れないほどあったが、早く帰宅するよう促されたのは初めてだ。「お前、熱でもあるのか?」つい聞いてしまった。通勤に便利なミッドタウンの最上階が司の部屋だ。いつも通りペントハウス専用のエレベーターに乗って部屋に入ると、愛おしい恋人の後姿が見えた。「おまっ、...

  • Sparkling 30

    「今日はね、つくしちゃんにお願いがあってきたの。久しぶりに会ってこんなお願い事をする失礼を許してちょうだい」「いえ、そんな、、、」「母のこと、司から何か聞いてるかしら?」「いえ、、、あまり。もう一線を退かれたとしか。。。」司が追い出したという言葉を使うことがためらわれ、曖昧に答える。「そうなの。結婚してからすぐに司は動いてたんでしょうね、離婚までの間に水面下で動いて実権を握って、実質母を名ばかりの...

  • Sparkling 29

    噂は音よりも早く伝わる。とりわけ悪いニュースは広まるのが早い。司がNYに戻っている間、院長に睦月とつくしがパートナーを解消したと報告したのが2日前(病院の上のほうには、二人が事実婚であることは伝えていたため、離婚という言葉を使わなかった)、そしてその翌日には全スタッフの知るところとなり、今日はすでに10人の医師とナースから事実関係を確認された。独身でイケメンの医者は天然記念物よりも少ない。職場の独身女...

  • Sparkling 28

    「あたしね、あかねさんはあんたの事故に絡んでないと思うんだけど」久し振りに時間が合い、家で夕食を食べながら話をする。不規則な勤務体系のつくしの負担にならないよう、なるべく食事はメープルかお邸から調理済みの料理を運び、温めるだけにしていた。先ほどまで医者の離婚率の高さについて話をしていたはずなのに、急に変わった話題に司は一体何の話をしているのか理解するのに数秒を要した。「事故って俺の事故のことか」「...

  • Sparkling 27

    朝目覚めると、いつのまにかベッドで寝ていることに驚いた。「嘘っ、今何時?」普段の習慣から急いで時計を見ようとするつくしを再びベッドに戻そうと、腕が伸びてくる。腕?振り向くと、満面の笑みの司がいた。「よぉ、起きたか」そう言いながらつくしを胸に抱こうとする。「ちょっとやめてよ、っていうかなんであんたがここにいるの?そしてなんで上半身が裸なのよ!?」「お前、覚えてないのか。昨日俺に抱き着いてきて一緒に寝...

  • Sparkling 26

    「で、なんでつくしがここにいるの?出戻りにしては早くない?」テーブルに頭を突っ伏したまま動かないつくしに、蒼が問いかける。あかねが帰った後、司からは何度も携帯に着信があったが、頭が混乱して話をする気分にはなれなかった。前に住んでいたマンションに行く、そうメールを送った後、つい最近まで住んていた家に向かった。「んー、ちょっとね、、、」顔をあげずに答えるつくしを見て、夕食の準備をしようとキッチンに立っ...

  • Sparkling 25

    あかねはつくしとは視線を合わせることなく言葉を口にする。「もっと、、、派手な方かと思ってました」「よく地味と言われます」真面目に返答するつくしに、皮肉じゃないんです、とあかねは訂正する。「あの人、司さんがずっと想ってた方だってのは知ってたんです。司さんずっと想うくらいの人だから、椿さんのようにきっと華やかな人なんだろうってずっと思ってて・・・。いや、本当は牧野さんがすごく意地悪で、浅ましくて、お金...

  • Sparkling 24

    有言実行とばかりに、すぐさまつくしの住民票は司の住むマンションの住所へと移された。そしていつの間にかつくしの私物が運び込まれ、つくしの新生活は思ったより早く始まった。「牧野主任、大丈夫?」職員用カフェテリアでげっそりした顔をしているつくしを見つけた睦月が、空いている前の席に座る。「大丈夫じゃないですよ。昨日の今日でこんな展開になるって誰が予想できます?」「ふふ、そう言いつつ、つくしいい顔してるよ。...

  • Sparkling 44

    司が3週間ぶりにNYの邸へ帰ると、いつも玄関で出迎えてくれているつくしの姿がない。「つくしは?」出迎えた使用人に聞くと、「部屋でお休みになっております」と返事がある。「体調が悪いのか?」「ここ最近は横になられている時間が多いです。先日お医者様に診察していただいております」電話ではまったくつくしの不調は伝わってこなかった。つくしの体調が悪いのであればすぐに帰国したものを、と不調に気付けなかった自分を責...

  • Sparkling 23

    「んで、いつ離婚届出すんだよ」睦月とつくしが住む家に、つくしの荷物を運び出すという名目で訪れた司の質問に、つくしは飲んでいた緑茶を豪快に吹きだす。むせるつくしの背中を摩ろうとする睦月の手を跳ね除け、つくしの背中を司が優しくさする。妊娠中の雌を守るライオンのような様子に、睦月も苦笑いしかできない。「ちょっと、突然なんていうこと聞くのよ」「突然じゃねーだろ。俺は早く離婚しろってずっと思ってたぞ」「もー...

  • Sparkling 22

    翌朝、司の元妻の居場所が分かったと連絡があった。つくしに危害が加えられる可能性が低いことを確認すると、病院にいかなきゃと言うつくしと、念のため司のマンションにいるようにいう司とで翌朝激しい口論が交わされた。結局、行き帰りは司の手配した車で送迎、病院内でも単独で行動しない、その2つを約束させることで司が折れた。「変だと思ったらすぐに知らせるんだぞ」まるで子供みたいな扱いを受けながら出勤する。「あの、...

  • Sparkling 21

    「ねえ、頭だけ後ろに倒して」司が風呂につかったまま、つくしは司の髪を洗っていく。いつもくるくるの髪が、濡れてストレートになっている。「これ、すげー気持ちいいな」目をつぶり本当に気持ちよさそうにいう。なんだこの色気は、、、異性の色気に長いこと当てられてなかったつくしには、司から駄々洩れる色気にすでにいっぱいいっぱいだ。普段入院患者の入浴補助をしてもこんなに動揺することはなかったのに。動揺を悟られない...

  • Sparkling 20

    部屋でフレンチ風の和食だか、和食風のフレンチだかの、どちらにしてもすごくおいしい食事を食べながら話をする。「いつ日本に帰ってきたの?」司の本拠地はNYだ。前回は入院というアクシデントがあり日本に滞在していたが、退院後すぐにNYに戻ったと聞いていた。「さっきだ。」司はしばらくの間日本とNYを行ったり来たりするらしい。「そうだ、さっきのあんたの奥さんの話、なんであたしが関係するかいまだにわかんないんだけど」...

  • Sparkling 19

    「傷が酷くなるよ」そういうと、つくしは司の手に自分の手を重ねた。「あたしね、NYであんたに追い返されてからも、どっかで期待してたの。いつかあんたが帰ってきてくれるんじゃないかって。だからね、あんたが結婚した時すごく悲しかったの。気が狂いそうなくらい悲しかった。馬鹿だよね、勝手に期待して、勝手に落ち込んで」司は自分の手を開くと、優しくつくしの手をつつむ「ごめんな、お前のところに戻れなくて」つくしは首を...

  • Sparkling 18

    仕事が終わると、つくしなりにニュースを調べてみた。すると、道明寺は岸田を支援しないことを表明した後、すでに司と奥さんの離婚が成立していたことも正式に発表したようだ。前に司が言った通り。でも、あの人はわざわざ病院にお見舞いに来ていた。なのにどうして。蒼は本人に聞けと気安く言ったが、それができるなら苦労しない。あたしはいつも蚊帳の外。大事なことはあたしが知らないうちに決まっていく。どれくらい茫然として...

  • Sparkling 17

    蒼の携帯の着信音はすぐに消えた。「電話?」つくしが尋ねる。「ううん、メール。ごめん、音消してなくて」蒼はマナーモードに変えようとスマホを鞄から取り出したあと、画面を見ながらしばし固まる。「ねえ、つくし。これって、、、」そういって差し出したスマホの画面には、ニュースが表示されていた。それはつくしには見慣れないもので、どうやら経済紙のアプリから配信される速報」ニュースの様だった。つくしは睦月からスマホ...

  • Sparkling 16

    連日日勤と夜勤で忙しかったつくしには、その時世の中で何が起きているか知る余裕がなかった。つくしの日々はいつもと同じように過ぎていく、司と再会する前と同じように。遅い時間にランチを取ろうと、職員用のカフェテリアに足を向ける。今日の日替わりはまだ残っているかな、それとも久しぶりに奮発して和牛ハンバーグ(日替わりより300円高い)にしようかな、頭の中が食べ物でいっぱいになったので、見慣れた顔があることに気...

  • Sparkling 15

    「あんな彼女を見るの久しぶりです」睦月はつくしの大きな変化に触れながら、司に向き合う。「つくしは話したがらないと思いますが、道明寺さんには知っていてもらいたいことがあります。」自分以外の男がつくしの名前を呼ぶのが気に食わなかったが、なんとか手が出そうになるのを抑えて、先を促す。「僕たちが結婚したのは6年前です。その時期、道明寺さんは何をされていましたか」その時司はNYにいた。NYの大学を卒業し、そのま...

  • Sparkling 14

    とりあえずみんな落ち着こうということで、応接間に座る。司の座る一人掛けの椅子の前につくしと睦月は並んで座っている。「この距離だと手出しできないわよね」司のリーチを考えたうえでの配置だ。「おい、なんで牧野がそっち座ってんだよ」「だって、書類の上では夫婦だもん。連帯責任だよ」つくしから発せられた「夫婦」の言葉に、偽造とは分かっていても司はダメージを受ける。「で、一体どういうことなんだよ」西田が入れたく...

  • Sparkling 13

    「あんたに殴られることなんて、睦月はしてない」つくしは華奢な体で手を目一杯広げ、睦月を守ろうとする。髪がまだ濡れていることから、睦月が家を出た後すぐに追いかけてきたことが分かる。「お前、、、知ってんのかよ」司は写真に写っていた事実をつくしに伝えるべきかどうか、一瞬思索する。「知ってるよ。睦月に恋人がいることは。それを分かったうえで結婚したの」堂々と宣言するつくしに、耐えられなくなった司は、震える声...

  • Sparkling 12

    司の病室を抜け出した後、朝日が昇る前の暗闇の中つくしは一旦家に帰る。内科医である睦月はドクターコールでいつ呼び出されるかわからない。二人のクラスマンションは病院からほど近い場所にあった。睦月を起こさないよう、そっと玄関のドアを開けリビングに行くとすでに睦月は起きていた「おや、朝帰りかい?」そういう睦月も、昨日と同じ服を着ているところを見ると先ほど帰ってきたようだ。「そっちもでしょ」そういうと、お互...

  • Sparkling 11

    カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ます。いつの間に寝てしまったんだろう、体を起こそうとしても動けない。そういえば昨晩は椅子に座っていたはずなのに、いつの間にかベッドに横になっている。動かない体をひねり後ろをみると気持ちよさそうに眠る司がいた。司が後ろからつくしをホールドしているため、身動きが取れなくなっていることに気付く。ちょっと、声を出そうとして止める。熱も下がり気持ちよさそうに寝ている司を見...

  • Sparkling 10

    つくしが睦月について部屋の外に出ると、ちょっとお茶でも飲みながら話をしようかと誘われる。「診察でなにかありましたか?」仕事モードのつくしは敬語を崩さない。「心ここにあらずって感じだったよ、問診してるとき」さすが長く一緒にいるだけある。「気づいてなかった」そういって自分の顔を触る。「だと思った。ちょっとリフレッシュしよう」そういうと、職員用のカフェテリアに入り、人目に付きにくい奥の席に座る。はい、と...

  • Sparkling 9

    睦月の質問に、司の代わりに西田が答えていく。「アルコールは」「寝る前に毎晩スコッチをロックで飲んでおります」「ロックですか。食事はとられていますか?」「気が向いたらつまむ程度で、碌に食べておられません」「では胃の具合が心配ですね。喫煙は?」「たばこを1日2箱ほど」「最近は吸ってねーよ」たまに司が口を挟む。質問の回答から、つくしの知らない司が見えてきた。もうあの頃とは違う、そう言われているような気がし...

  • Sparkling 8

    翌朝、気まずい思いを抱きながら、仕事だと言い聞かせて司の病室を訪ねる。「検温させてください」そうベッドに横たわる司のもとに歩み寄りながら言うと、非接触式赤外線温度計をもつ手をつかまれる。「なあ、昨日言おうとしたことって」司が言いかけたとき、ドアが2度ノックされる。「どなたでしょう」存在を消して特別室の中にいた西田が応対する。「、、、あかねです」鈴のようなかわいらしい声が聞こえてきた。「あの、、、司...

  • Sparkling 7

    いくら入院中とはいえ、司は骨折だ。四六時中付きっ切りで看護する必要はない。それに側には優秀な秘書もいる。必要な時だけお呼びください、そうお願いしていたはずが、ナースコールがひっきりなしになる。「牧野主任、また特別室の方がナースコールを・・・」明らかにテンションの低いつくしに気を使ってか、若手の看護師が恐る恐る知らせてくれる。「ありがとう。特別室からの連絡は無視していいから」だが相手もこれくらいでや...

  • Sparkling 6

    8Fにある特別室から外来のある1Fまで、つくしはエレベーターを使わず階段を使って降りた。ぐるぐるぐるぐる、まるで今のあたしの頭の中見たい。いったいあいつは何のつもりでこんなことを。10年前に振ったくせに。自分は勝手に結婚したくせに。足元を見ながら階段を下りていたからか、1Fまであと少しの時誰かにぶつかりそうになる。「すみません!」条件反射のように声を出すと、目の前にはよく知った顔があった。「なんだ、石田先...

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