昼休み、おにぎりを頬張っていたとき、 ふと呟いた。 「……なんか、奥歯のあたりがイタイ。」 ——いや、正確には三日前から痛かった。 しかし社会人たるもの、 虫歯ごときで仕事を休んではならぬ。 プレゼン、上司の顔色、金曜の飲み会。 すべてが優先されるべき案件だった。 だが本日13時47分、奥歯が「ズドン」と鼓動を打ったのを最後に、彼女は観念した。 歯医者、即予約。 そして17時、会社から逃げるようにして駆け込んだ。 「虫歯ですねー。それから、親知らずも暴れてますねー。」 白衣の歯科医はサラリと言った。 「今日、抜いときましょう」 (えっっっ ちょ ぬ、ぬく……今!?) 「今がチャンスです。ほら、…