終電にはまだ早いが、心はもう最終下車。 スーツ姿のOLは、腕まくりしながら駅前のバッティングセンターに吸い込まれた。 今日のランチは5分で胃に押し込み、会議では「それ、前回言いましたよね?」と無言の圧を受け、 帰りがけにはエレベーターの「閉」ボタンを全力でプッシュされた。 つまり、打ちたかった。 何かを。 もう、何でもよかった。 レンタルヘルメットを深めにかぶり、バットを手に取る。 右手のネイルとバットの無骨さがまったく噛み合わないが、気にしない。 目の前のピッチングマシンから、球速120kmの球が放たれ―― 空振り。 そして、腰が「ピキッ」と鳴った。 2つとなりの高校生(明らかに野球部。坊主…