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小説「闇が滲む朝に」を週刊で連載しています。 小説第1弾「海に沈む空に」を電子書籍として発売。

天野響一
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2018/07/28

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  • 「闇が滲む朝に」🐏章 第19回「ちみの瞳に恋してるってか!?」

    秘めた二人の逃避行? 「この前に外出したのはいつだったかねえ。夏ごろだったかなあ」 はなえがタクシーの窓の外を眺める。「8月頃・・・・?」「そうだね。確か・・・・」 タクシーが信号待ちで停車した。「確か息子夫婦と食事したんだね・・・・」 再び、タクシーが動き出す。 「息子さんたち、たまに来るの?」 徹が聞いた。「そう。たまにね・・・・」 やがてタクシーが「キツネ駅」近くの繁華街に入った。繁華街の街燈で一瞬、車内が明るくなった。 「その辺で止めてください」 「キツネ駅」に通じるエスカレーターの前でタクシーが止まった。徹が料金を確認すると運転手に千円札を渡した。「はい、710円ですね」 運転手は言…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第18回「二人の逃避行~それでも見つかるわけにはいかない」

    土曜日、「ラッキー園」の近くで 結局、その日、徹はスーパーでは妻の多恵子には会わずに自宅に戻った。マイ子にも妻に会いに来たとはいえず、夕方のレジ打ちで忙しい多恵子に会ったところで迷惑な顔をされるだけだと思ったのだ。マイ子と別れ仕方がなくスーパー内を一周した後で、そのまま自宅に戻ったのだった。 翌日の土曜日の早朝、徹は「ラッキー園」近くの駐車場にバイクを止めた。もちろん土曜日は仕事は休みになっているから、中に入る必要はなかった。 やがて、「ラッキー園」入口から、一人の老婆が歩いてきた。すぐに徹にはその女性が町田はなえだということが分かった。早朝にもかかわらず、はなえは午前六時という時間に遅れるこ…

  • 闇が滲む朝に」🐑章 第17回「えっ?スーパーで偶然に会った人が」

    夕方のスーパーで発見 徹の妻・多恵子が働くスーパー「モリダクサン」は1階が食品売り場で2階には衣類や日用雑貨を中心に販売している。店舗によって面積や形態も違うスーパーだが、「モリダクサン」は大型の物とは違い食品に特化した店舗だ。 だから平日とはいえ、もちろん夕方は夕飯用の買い物をする主婦たちで混んでいる。 店内には魚類を販売する店員の大きな声が響いている。「さああ、らっしゃい、らっしゃい」という、男の喉の奥から出る、あのだみ声のような大きな声だ。この声は、どんなに時代が変わっても、スーパーではずっとなくなったことがないんだろうと徹は思う。そう、いつの時代もずっとなくならないものはあるんだよ。 …

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第16回「一日、一日を精一杯に生きるということ」

    ふたたび、「戦時下を思え」 夕方の5時半過ぎ、徹はスーパー「モリダクサン」の方に向かいながら思う。いつもなら一人でテレビを見ている時間帯だ。テレビといっても特に自分が見たい番組を見るわけではない。 ただ、コーヒーを飲みながら、ぼんやりとニュースを見る機会が多かった。最近では阪神・淡路大震災のニュースを覚えていた。 「辛い時は戦時下を思え・・・・」 また春香さんの言葉が徹の脳裏をよぎった。 大きな震災はまさに戦争状態と変わらないだろうと徹は思う。多くの人が犠牲になるのだ。本当に被災した人たちは生きるか死ぬかを、経験するのだから。 震災国・日本で生きるということ 阪神・淡路大震災が発生して25年が…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章第15回「家族の冬風には、冗談も笑っていられないなあ」

    すれ違いの増えた家族 徹が図書館を出る頃には午後4時を過ぎていた。そのまま、「ラッキー園」に戻り駐輪場のバイク置き場にいく。徹はいつも「ラッキー園」まで50㏄のバイクで通っているのだ。 ヘルメットをかぶりながら、徹はついさっきに会った春香さんといい、「中華屋・ぶんぺい」で昼間からビールを飲んでいた五十六といい、清掃の仕事をし始めてから、自分は妙というか何か変な、今までに会ったことない人物に会うようになったことに気づいていた。 「無我・・・・か。んなこといってもなあ。自分は自分だし現実は現実だし」 春香さんの言ったこといが、もう一歩、理解できないまま、徹はバイクのアクセルを踏んだ。ここから15分…

  • 闇が滲む朝に」🐑 章第14回「忘我の時、全ては満たされると、春香さんは笑った」

    プライドが邪魔するとマイナス 徹には図書館館内の喫茶店で、皿やコップを洗う音が聞こえてくる。静粛の中の図書館で、ここだけは少し違う雰囲気を醸し出している。 正面に座る春香さんはコーヒーを飲みほした。 「コーヒー、もう一杯、飲もうか」「自分はまだありますから、どうぞ」 春香さんは後方のアルバイトに手を上げた。二人の間に沈黙が続いた。「ゴミの回収なんてってね、やれないって。どうしてもプライドが邪魔するんだなあ」 春香さんがポツリとこぼした。 「プライド・・・・そうですかね。自分が今までに経験したことのない仕事なんで。慣れないというか」 徹が水を飲んだ。「でも時間的には、それほど長くはないでしょう。…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章第13回「辛い時は戦時下を思え、と春香さんは言った」

    図書館であの人に再会「初心・・・・大事だよなあ、やっぱ」 徹は控室の壁に貼ってある「初心忘るべからず」の言葉を頭の中で反芻しながら「ラッキー園」の外に出た。 午後3時過ぎ、冬の空は晴れているとはいえ、どこかグレーの色合いを漂わせつつあった。この時間帯は「中華・ぶんぺい」には暖簾は掲げられていない。午後5時までは休息時間なのだ。 徹は向かい側の道路に「中華・ぶんぺい」の店舗を見ながら、そのまま真っすぐに●●駅へと向かった。10分も歩けば駅に到着するが、「ラッキー園」で仕事を始めてから、徹は駅近くの図書館に寄ることが増えていた。新聞を読めるからだ。 図書館はまだ建築されてそれほど時間が経過していな…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第12回「絶望するなかれ。今が大事よ。身体が動けば何でもできる」

    身体が動かないと苦痛になる仕事 徹は目を覚ますと、ずずっと椅子からずれ落ちそうになった。な、なんだ、今の夢は・・・。そのまま椅子に座ったままで、ぼおおっとしていた。いつもゴミの回収をし終わるのが午後2時過ぎだから、終業時間の午後3時までは1時間ほどの余裕ができるようになっていた。 本来なら、施設内を見回って汚れているところがないか確認すべきなのだが、そこまで徹は仕事熱心ではない。一般的には1時間も余裕のある現場などないに等しい。しかし、ここはなぜか時間的に余裕があった。ま、それは徹の仕事の様子を見なければ、どんな感じか分からないという会社側の思惑でもあった。ま、信じられていないのよ。 他の女性…

  • 闇が滲む朝に」🐑 章 第11回 「夢をバクに食べられたい」

    新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。 令和2年 元旦 天野響一 五十六は一体、何者なんだ 徹は目の前で何が起こったのか分からなかった。一瞬、自分はかまいたちに切られたのではないか、顔面の左ほおに強烈な痛みを感じたのだ。あと、ほんの数ミリの差だった。何とか徹の顔は無傷のままだった。 徹は五十六の背中を見ながら、ただ立ちすくむだけだった。 「・・・・・・・な、なんだ一体」 徹はゆっくりと五十六とは逆の方向に歩き始めた。「キタキツネビル」で働く高戸七八の兄となれば70歳近い年齢の筈だ。しかし、五十六の顔を見ても到底70歳には見えない。もちろん、ついさっき、自分の目…

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