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天野響一さんのプロフィール

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ブログタイトル
Novel life musashimankuns blog
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https://musashimankun.hatenablog.com/
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小説「闇が滲む朝に」を週刊で連載しています。 (第1弾「海に沈む空に」は電子書籍として発売予定)
更新頻度(1年)

34回 / 189日(平均1.3回/週)

ブログ村参加:2018/07/28

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ハンドル名
天野響一さん
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天野響一さんの新着記事

1件〜30件

  • 闇が滲む朝に」🐑章 第17回「えっ?スーパーで偶然に会った人が」

    夕方のスーパーで発見 徹の妻・多恵子が働くスーパー「モリダクサン」は1階が食品売り場で2階には衣類や日用雑貨を中心に販売している。店舗によって面積や形態も違うスーパーだが、「モリダクサン」は大型の物とは違い食品に特化した店舗だ。 だから平日とはいえ、もちろん夕方は夕飯用の買い物をする主婦たちで混んでいる。 店内には魚類を販売する店員の大きな声が響いている。「さああ、らっしゃい、らっしゃい」という、男の喉の奥から出る、あのだみ声のような大きな声だ。この声は、どんなに時代が変わっても、スーパーではずっとなくなったことがないんだろうと徹は思う。そう、いつの時代もずっとなくならないものはあるんだよ。 …

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第16回「一日、一日を精一杯に生きるということ」

    ふたたび、「戦時下を思え」 夕方の5時半過ぎ、徹はスーパー「モリダクサン」の方に向かいながら思う。いつもなら一人でテレビを見ている時間帯だ。テレビといっても特に自分が見たい番組を見るわけではない。 ただ、コーヒーを飲みながら、ぼんやりとニュースを見る機会が多かった。最近では阪神・淡路大震災のニュースを覚えていた。 「辛い時は戦時下を思え・・・・」 また春香さんの言葉が徹の脳裏をよぎった。 大きな震災はまさに戦争状態と変わらないだろうと徹は思う。多くの人が犠牲になるのだ。本当に被災した人たちは生きるか死ぬかを、経験するのだから。 震災国・日本で生きるということ 阪神・淡路大震災が発生して25年が…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章第15回「家族の冬風には、冗談も笑っていられないなあ」

    すれ違いの増えた家族 徹が図書館を出る頃には午後4時を過ぎていた。そのまま、「ラッキー園」に戻り駐輪場のバイク置き場にいく。徹はいつも「ラッキー園」まで50㏄のバイクで通っているのだ。 ヘルメットをかぶりながら、徹はついさっきに会った春香さんといい、「中華屋・ぶんぺい」で昼間からビールを飲んでいた五十六といい、清掃の仕事をし始めてから、自分は妙というか何か変な、今までに会ったことない人物に会うようになったことに気づいていた。 「無我・・・・か。んなこといってもなあ。自分は自分だし現実は現実だし」 春香さんの言ったこといが、もう一歩、理解できないまま、徹はバイクのアクセルを踏んだ。ここから15分…

  • 闇が滲む朝に」🐑 章第14回「忘我の時、全ては満たされると、春香さんは笑った」

    プライドが邪魔するとマイナス 徹には図書館館内の喫茶店で、皿やコップを洗う音が聞こえてくる。静粛の中の図書館で、ここだけは少し違う雰囲気を醸し出している。 正面に座る春香さんはコーヒーを飲みほした。 「コーヒー、もう一杯、飲もうか」「自分はまだありますから、どうぞ」 春香さんは後方のアルバイトに手を上げた。二人の間に沈黙が続いた。「ゴミの回収なんてってね、やれないって。どうしてもプライドが邪魔するんだなあ」 春香さんがポツリとこぼした。 「プライド・・・・そうですかね。自分が今までに経験したことのない仕事なんで。慣れないというか」 徹が水を飲んだ。「でも時間的には、それほど長くはないでしょう。…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章第13回「辛い時は戦時下を思え、と春香さんは言った」

    図書館であの人に再会「初心・・・・大事だよなあ、やっぱ」 徹は控室の壁に貼ってある「初心忘るべからず」の言葉を頭の中で反芻しながら「ラッキー園」の外に出た。 午後3時過ぎ、冬の空は晴れているとはいえ、どこかグレーの色合いを漂わせつつあった。この時間帯は「中華・ぶんぺい」には暖簾は掲げられていない。午後5時までは休息時間なのだ。 徹は向かい側の道路に「中華・ぶんぺい」の店舗を見ながら、そのまま真っすぐに●●駅へと向かった。10分も歩けば駅に到着するが、「ラッキー園」で仕事を始めてから、徹は駅近くの図書館に寄ることが増えていた。新聞を読めるからだ。 図書館はまだ建築されてそれほど時間が経過していな…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第12回「絶望するなかれ。今が大事よ。身体が動けば何でもできる」

    身体が動かないと苦痛になる仕事 徹は目を覚ますと、ずずっと椅子からずれ落ちそうになった。な、なんだ、今の夢は・・・。そのまま椅子に座ったままで、ぼおおっとしていた。いつもゴミの回収をし終わるのが午後2時過ぎだから、終業時間の午後3時までは1時間ほどの余裕ができるようになっていた。 本来なら、施設内を見回って汚れているところがないか確認すべきなのだが、そこまで徹は仕事熱心ではない。一般的には1時間も余裕のある現場などないに等しい。しかし、ここはなぜか時間的に余裕があった。ま、それは徹の仕事の様子を見なければ、どんな感じか分からないという会社側の思惑でもあった。ま、信じられていないのよ。 他の女性…

  • 闇が滲む朝に」🐑 章 第11回    「夢をバクに食べられたい」

    新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。 令和2年 元旦 天野響一 五十六は一体、何者なんだ 徹は目の前で何が起こったのか分からなかった。一瞬、自分はかまいたちに切られたのではないか、顔面の左ほおに強烈な痛みを感じたのだ。あと、ほんの数ミリの差だった。何とか徹の顔は無傷のままだった。 徹は五十六の背中を見ながら、ただ立ちすくむだけだった。 「・・・・・・・な、なんだ一体」 徹はゆっくりと五十六とは逆の方向に歩き始めた。「キタキツネビル」で働く高戸七八の兄となれば70歳近い年齢の筈だ。しかし、五十六の顔を見ても到底70歳には見えない。もちろん、ついさっき、自分の目…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第10回「ぶうん!! ん?突然の五十六の足蹴りに怯む」

    中華屋の客はほとんどが建設作業員 「中華屋・ぶんぺい」はいつの間にか満席になった。客のほとんどが建設作業員だ。 騒がしい中で徹は「ちゃんぽん麺」をすすりながら目を閉じた。熱いのだ。 「弟さん、クリーンモリカミで働いてどれくらいになるんですか」 徹は五十六の顔を見た。 「七八か、さあ、どれくらいかなあ。結構、長いんじゃねえの。『キタキツネビル』で働いているよ」 五十六がぐびっとビールを飲む。 「『キタキツネビル』には面接にいきました」 徹が水を飲む。 「そうか。でかいビルだよな。そこでは仕事してないのか」 五十六がくみ子に手招きすると空のビールグラスを渡した。 「ええ、面接で『ラッキー園』に行く…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第9回「昼間からビール三昧の五十六の鋭い眼光にヒヤリ」

    昼から生ビールを飲む顔の大きな男 徹は文平の言う、たかど、という名前を聞いたことがなかった。 「たかどさん・・・・ですか」 「確か、『キタキツネビル』で働いているって言ってたな」 顔の大きなベートベン似の男が言った。 「『キタキツネビル』ですか・・・・」 クリーンモリカミは●●市内では「ラッキー園」のほかに「キタキツネビル」や「エゾリスビル」で清掃業務を行っているが、徹は「ラッキー園」でしか仕事をしていないから、「たかど」という人物のことも顔も知らないのだ。 アルバイトのくみ子がベートベン似の高戸五十六に焼き肉定食を運んできた。「ありがちょう、これおかわり」 五十六はくみ子に空になったビールジ…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第8回「ジャジャジャジャーン、ベートベン男と会った」

    中華屋で会った顔が大きい男 徹は「ラッキー園」を出ると道の向かい側の「中華屋・ぶんぺい」の暖簾が出ているのを確認した。信号が青に変わったのを確認すると、急ぎ足で歩道を渡る。 「こんちわ」 「中華屋・ぶんぺい」の戸を開ける。ガラガラと音を立てて開いた。まだ中には客は1人しかいない。午前11時40分過ぎ、これがあと数十分もすればいつの間にか満員になる。ほんの20分の差で待たなければいけないか待たなくてすむか。 「どうも、いらっしゃい」 いつもの文平の声が店の奥から聞こえた。昼間は厨房の中に2人、客対応に1人の3人で対応する。厨房の中では文平の妻・ゆう子、接客はアルバイトの井戸くみ子が手伝っている。…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第7回 「中華屋の文平が宝くじを当てた理由」

    昼飯は中華屋のぶんぺい しばらくして伸江に続き明子も控室も出た。高齢者施設「ラッキー園」の午前中の清掃の仕事はこれで一段落する。午前11時40分過ぎ、徹はクリーンモリカミのスタッフが常駐する控室を出ると、そのまま施設のエントランスへと向かった。 午後からは徹がゴミの回収をする。回収を終えるとこれといった業務は終了する。大型のポリシャーがけやワックス業務などの定期清掃は数か月に数回、土日を使って専門のスタッフが行う。この日、徹は実務は行わないが手伝いをする。つまり、現在の徹の業務は清掃の中では初歩的なものになる。だから、ベテランの明子のチェックが入るのだ。仕事を始めて3か月程度だから仕方ない。 …

  • 闇が滲む朝に」🐑章 第6回。「かえるぴょこぴょこ 、超早口で仕事も早い人」

    仕事も早いが話しぶりも早い人 「とにかく、明日、チェックするから、綺麗に磨くのよ」 明子は話を戻すとお茶を飲んだ。 シングルマザーの飯山伸江も戻ってきた。「お疲れさまです」 伸江はいつもの早口で言うと控え室奥の自分のロッカーの方に向かう。「おつかれ」 明子が湯飲み茶わんを両手で支えながら伸江のいるロッカーの方を見た。 「お茶、飲むかい」 カーテンで遮断されたロッカールームで着替え始めた伸江に聞いた。「あ、今日は大丈夫です。すみません」「今日はテニスの練習か」「ええ、すみません」 ロッカーの方から伸江が返事した。 「ノブちゃんも何かと忙しいね。お茶くらい飲んでいけばいいのに」「また、今度、いただ…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第5回  「綺麗に磨けば心も洗われるのよ」

    ひたすら身体を動かし続ける仕事 徹は「ラッキー園」の総務の部屋を過ぎ、奥の小さな清掃員用の休憩所に入った。午前11時、そろそろ明子も伸江も休憩にはいる時間帯だ。 徹の仕事は午前6時から午後3時までと契約されているが、実際には午前中は11時半ごろまでに終わることが多い。そして午後1時から3時まで。この間に、施設の掃除機がけ、ゴミの回収、トイレ清掃、そして庭掃除などをこなす。 清掃の仕事は契約時間の3時間から4時間は、業務を急いでこなしていかなければいけない所が多い。多くが3時間のパートタイム契約だから、これが普通なのだ。身体を使う、いわゆる頭脳労働ではないパートの仕事はとにかく、いそがしいことが…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第4回「渡り鳥のように飛び続けることができるか」

    渡り鳥の飛来に感謝する 徹はカートから落ち葉の入った90ミリリットルのビニール袋を取り出し、高齢者施設「ラッキー園」の庭の隅にある横用具入れ隣のゴミ収集倉庫に置いた。 ピーッ、ピピピ、どこからかツグミの鳴き声が耳に届く。 目の前に広がる青い空と黄色い葉が広がる庭を眺めながら、ツグミはなぜ、日本に飛んでくるのかと考えたりする。ま、暇なんだ、ようは。 そういえば、ツグミに限らず、決まって冬になると日本に飛来する渡り鳥たちは多い。 徹は若い頃に新潟市内の佐潟でハクチョウを見たことがある。偶然に出かけた湖だった。このハクチョウは冬になるとシベリアやアイスランドから飛来するのだ。ツグミは確か中国あたりか…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第3回「人間も冬眠すればいいのに」

    人間も夏眠や冬眠すればいいのに 清掃の仕事の悪さを指摘されるたびに、森木徹は一体、このばあさんどうしたの?と思うくらいに、突然に雷神のような顔に豹変し、睨みをきかす明子を思い出しながら、(・д・)チッと舌打ちする。『ったく、るせいババア』だと思う。 しかし、そんな明子も日ごろは、慣れない徹に、「これ食べるかい、これ家に持っていくかい?」と、菓子や果物を持ってきたりする。仕事では何かとうるさいが、いつもは優しい人なのだ。 徹が周りを見渡した時に既に、その明子は庭にはいなかった。徹は落ち葉を掃き続けながら、ふと庭中央の池を覗き込む。 夏場は鯉たちが所狭しと池の中を泳ぎ回っているそうだが、冬の時期に…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第2回「AIの庭掃除ロボットができたら、ますます仕事がなくなるだろうなあ」

    やっぱ、人の命を奪う自然は恐い キーンと冷気が張る静かな金曜の午前9時過ぎ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピ・・・銀杏の木々が青空にそびえ立つ園内に、ツグミのさえずりだけが森木徹の耳に響く。徹の3メートル程先に立つ柿の枝々で2羽のツグミが行き交う。園内にはもっと来ている筈だ。徹はあたりを見渡すが、今は2羽しか見当たらない。あの多くの命を奪った台風が嘘のように晴天の空がまぶしい。 自然というのは怖いものだ。人の命を平気で奪っていく。 今後、どんなに人間が素晴らしい物を開発し続けても、宇宙に誰もが行ける時代が来ても、一方では環境を破壊し続けるという行為をやめることはできない。生き残るためだ。こんなに食料…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章第1回 「巨大台風が去った秋に、何かが変わろうとしていた」

    一寸先は闇でも、俺は生きている 俺はまだ、こうして生きている。 バイクを降りヘルメットを前の籠に入れながら森木徹は、ぽつりと言う。 9月から10月にかけて日本列島をモンスター台風が襲った。 かつて日本人が経験したことのない巨大な台風は、ここ数か月、ふさぎ込みがちな徹に追い打ちをかけるように、ビビりさせた。 車がほんの数分たらずで雨水にほとんど沈むなんて考えたことがあったろうか。家の一階が瞬く間に川の濁流に埋もる・・・。やっと二階に逃げて、ベランダから洪水におびえ、家が濁流に押し流される恐怖を必死でこらえながらSOSのタオルを振る。 人生の黄昏をやっと自宅で過ごせると安堵していたのに、突風に屋根…

  • 闇が滲む朝に」第☆章17回(最終回)「人は死なない。苦しみ他界して死者となる」

    あらすじ 片山と良子たちは客の柴田たちを送ると料亭に戻った。そこで片山が意外な柴田の状況を聞かされる。第☆章の最終回。 客の柴田の意外な容態 「今日、四階に来たお客さん」 ふと良子が言った。「柴田さん・・・ですか」 片山がボードに記入されていた名前を思い出した。「そう柴田さん。ご家族でいらっしゃった」「奥さん、綺麗ですね」 片山が冗談ぽく言った。「片山さん好み、ゆかりさんみたいな人?」 良子も冗談を返す。 「でも柴田さんね。ガンなの」 良子が話しを戻した。「だんなさんの方ですか」「そう、紀夫さんね」 片山は柴田を料亭で初めて見た時、少し痩せ具合が気になっていた。初めて会う人でも何か病的な痩せ方…

  • 闇朝第☆章16回「ただ笑顔で、花束をあなたに」

    料亭「鈴音」での土曜の自動車メーカーの宴会は終了した。続いて4階のお客である柴田の食事会も終わろうとしている。片山は女将の良子に頼まれた通り、マーガレットの咲く庭に出て、花を切り始めた。 料亭の庭に咲くマーガレットとコスモス 片山は「鈴音」の外に出ると料亭の右側に回り庭に出た。20メートル四方の庭には白のマーガレットとピンクのコスモスが所狭しと咲き乱れている。片山は一瞬、深呼吸した。ゆっくりと庭に入ると手にしていたハサミで、マーガレットを切り始めた。 「片山ちゃん」 鶴子の声が聞こえてきた。「そろそろ引き上げるよ。今日は直帰するから」「お疲れさまです。自分はもう少しいます」「女将さんから花を頼…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章15回「マーガレット・・・・花言葉は真実の愛と信頼」

    「鈴音」では自動車会社の客たちの宴会が終わり、片山たちは「ひまわり」の部屋に清掃に入った。今日はもう一軒、客が来ている。4階の「紅葉」には柴田紀夫が家族を連れてきていた。良子は柴田にメニューの説明を始めた。 庭に咲くマーガレットの意味 「鈴音」入口付近が騒がしくなった。次々に2階から客人らしい者たちが下りてくる。良子は玄関で客人たちを見送り始めている。鶴子が清掃用具を持ちながら2階へ向かう。片山も掃除機を左手に持ち続いた。「じゃあ、今日は洗面とトイレは私がやるから」 鶴子が言う。「お願いします」 片山が返事をしながら「ひまわり」の部屋に入る。 すでに15人ほどの客たちはもういない。 片山は部屋…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章14回「何があっても挫けない、諦めない、思いが現実を作る」

    土曜日の午後2時、片山は「鈴音」に着いた。ビルの中では昼から自動車会社の宴会が開催されていた。今日はもう一件、予約が入っているという。まだ、宴会が終了するまでには時間がある。片山は鶴子と倉庫で立ち話を始めた。九州には台風が上陸し、やがて関東地区にも上陸する恐れがあるらしい。 夏の盛りなのに台風が心配 土曜の日、時計が午後3時になりかけた頃、片山二郎は人通りの少ない◎◎ 駅からの通りを抜け「鈴音」ビルの玄関先に着いた。入口付近の看板の予約看板には2階「ひまわり」の部屋に◎◎自動車会社様、3階「かえで」に柴田様と記入されている。 自動車会社とは別にもう一人客が入っていたのだ。いつも通り入口から外側…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章13回「ある日、自我を捨て奉仕せよと月が言った」

    今まで本など読む時間がなかった鶴子が、本を読みだしたのは最近のことだ。それも時代小説ばかり読んでいた。そんな鶴子は宮沢賢治の「雨にも負けず」の詩のことを、息子から紹介されて気に入ったのだ。鶴子が「銀河鉄道の夜」を読んでいるのは、必ずわけがあると片山は思う。 夜の銀河に魅せられて 鶴子が「銀河鉄道を夜」を読んでいるのは、依然に鶴子の息子に宮沢賢治のことを聞いたことがきっかけになったことは片山にも理解できた。大阪で生まれた鶴子は、新潟で短い期間だが居酒屋を経営していたことがある。不況の影響で店をたたまざるをえなくなったが、居酒屋を営んでいた時期には本など読むことができなかった程、忙しかったらしい。…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章12回「くふふと笑いながら銀河を旅した日」

    片山は1階に降りると、ビル続きの倉庫に入った。倉庫では鶴子が用具類の整理をしていた。鶴子は良子の様子を聞いてくる。数か月前に体調を崩し1週間ほど休んだのだという。元気そうな鶴子も料亭の女将となると何かと大変なんだと片山は思う。そんなことを考えていると、鶴子がふと「最近、『銀河鉄道の夜』を読んでいる」とこぼした。 ビール飲めるかもよ、くふふ 片山は「なでしこ」で良子から業務連絡表を受け取るとエレベーターに乗り1階に降りた。倉庫に入ると鶴子が用具類を整理していた。「お疲れさん」 片山に気づいた鶴子が声をかけた。「お疲れさまです」「どうだった。なんか言われたかい?」 鶴子が気になる表情を見せた。 「…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章11回「花言葉は幸福と、人間技を超えたプロレスの力」

    片山は「鈴音」の4階「なでしこ」で良子に業務連絡表を渡した。いつも仕事が終わり次第、良子にサインしてもらうのだ。この部屋は主に良子が仕事をする料亭の事務所になっていた。良子の座る机にはパソコンがおかれ、周りには本が数冊、並べられている。そういえば、片山は以前に平から、良子が百貨店で広報の仕事に就いていたことを聞いていた。 とにかくどんな仕事でも好きになる 「お疲れ様です。明日、悪いけどお願いします。土曜だから、本当はお休みでしょう?」 良子が業務連絡表にサインし片山に渡した。 「いえ、土曜はいつも仕事の日が多いですから」 片山は連絡表のサインを確認しながら答える。 「そうなの?でもここはお休み…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章10回「辛い時はジョークで笑いながら乗り越える」

    鶴子は清掃から休憩所のある倉庫に戻ると、片山に「鈴音」三階の「もみじの部屋」前の洗面が詰まりかけていることを告げた。洗面の詰まりなどすぐに改善するのだけど、通常の仕事では、あまり発生しない仕事が入った場合、片山はジョークを言って自分を奮起させる妙な癖があった。「もみじ饅頭!」でっかと片山が言うと、鶴子は「あほか」とあきれた顔を見せた。 「鈴音」で土曜に仕事の日 「お疲れさん」 平が休憩所のある倉庫に戻ってきた。「ボード拭きありがとうございます」 今日は平がお客様ボード拭きをやってくれたのだ。「夏場は適当に分担してやらないとな。お互い結構、仕事の量が多いから」 平がペットボトルの水を飲みながら言…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章9回「この宇宙の片隅で生きている 一瞬の偶然と奇跡について」

    片山は料亭に外に出ると植栽の水撒きを始めた。カエデの木は夏でも緑の葉を青々とつけている。長いホースの先を全開にして勢いよく水を撒く。暑い空気が一瞬、涼しい風に変わる。そういえば、人間はこの水がなければ生きていけない。日本は四方を海水に囲まれているが、ふと、不思議な地形をした日本の、この地球の片隅で、生きている100年の一瞬の偶然を思う。 虫よけスプレーと庭掃除 片山はモップを駐車場の倉庫の奥にしまった。「少しは涼しくなったけど、まだ暑いから気をつけてな」 平がバキュームを片付けながら言った。「そうですね。今日は日差しも少し和らいでいますから大丈夫ですよ。本当に夏場は丁度、太陽の日差しが直線的に…

  • Novel「闇が滲む朝に」第☆章8回「明日、世界が終わっても、今日、僕はリンゴの木を植える」

    片山は「鈴音」の一階に戻ると、いつものように大きな花瓶の花に気づいた。この花瓶に入れられたバラやヒマワリなどの花や、ビルの植栽が自分に話しかけていることを感じることがあるのだ。同様に片山は元気になるリンゴが好きで毎日、食べるが、きっかけは幼い頃に偶然に知った「明日、世界が滅ぶとしても、今日、リンゴの木を植える」の名言だった。 花や植栽が話しかけてくる 良子から洗面のハンディーソープ交換の件を聞いた片山は、そのまま「鈴音」の一階に戻った。一瞬、疲労からめまいを覚える。めまいは深呼吸を繰り返すうちに収まった。 「鈴音」の大きな窓から片山は空を見上げながら、もう自分がこうして都会のど真ん中で、清掃業…

  • Novel「闇が滲む朝に」第★章7回「ええいっ!危険な暑さにバッドウォーターマラソンを意識も・・」

    片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると料亭の外に出た。異常な暑さが襲う。最高気温が35度と発表される日が続く毎日に、重い疲労を感じる。常日頃から毎日の肉体労働生活をトレーニングと考えている片山は、こんな時にアメリカのカリフォリニアで開催されるバッドウォーターマラソンレースのことを思い出す。最高気温が40~50度と発表されるレースでは、たぶん体感的には気温55度の中を217キロを48時間以内に走るのだ。暑さに耐えきれず吐く選手もいるという。 異常な暑さが疲労に拍車をかける 片山はボード拭きを終えるとタオルを洗いに「鈴音」の外に出た。床のモップ拭きを始めた。今日はついさっきまで雨が降り続いていた…

  • Novel「闇が滲む朝に」第★章6回「今日も元気だしていきましょう」

    片山二郎は「鈴音」の洗面の清掃を終えると、一階のお客の予約状況が記してあるボードをタオルで吹き始めた。そこに女将の武田良子が出勤してきた。Vネックの深緑色のTシャツに白いパンツ、カーキ色のショルダーバッグというラフな格好だ。いつも通りに挨拶すると、片山の前に香水の香りが漂った。料亭の女将というより、どこかの女性誌のモデルをしているといっても不思議ではない。ヨガが趣味で野球は詳しくはないが、イチローのファンだと、平が話していたことを片山は思い出した。 女性誌のモデルのような女将の出勤 片山二郎は二階の洗面所を終了すると、「鈴音」の入り口付近に出してある事務所内のゴミを回収し外に出た。一時間前まで…

  • Novel「闇が滲む朝に」第★章5回「暑さと疲労と不安で、おろおろしても」

    片山二郎は鶴子との世間話を終えると「鈴音」のエレベーターを押し4階に上がる。ここで洗面所の清掃をするのだ。仕事は簡単だから誰でもできる。そんな誰でもできる仕事で片山は生活しているのだ。時折、疲労からむなしくなることもある。そんな時にふと思い出したのが、鶴子が話していた宮沢賢治の「雨ニモマケズ」だった。 iPodが手放せない 二郎は鶴子としばらく話しながら、「料亭」のビルに入るとエレベーターのボタンを押した。休息時間は平も鶴子もたわいのない話をするが、あくまでも仕事が始まるまでの気分転換だ。もちろん、仕事が始まったら一言も話さず、仕事を次々とこなしていかなければいけない。 この時から片山の空想が…

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