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小説「闇が滲む朝に」を週刊で連載しています。 小説第1弾「海に沈む空に」を電子書籍として発売。

天野響一
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2018/07/28

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  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第10回「ぶうん!! ん?突然の五十六の足蹴りに怯む」

    中華屋の客はほとんどが建設作業員 「中華屋・ぶんぺい」はいつの間にか満席になった。客のほとんどが建設作業員だ。 騒がしい中で徹は「ちゃんぽん麺」をすすりながら目を閉じた。熱いのだ。 「弟さん、クリーンモリカミで働いてどれくらいになるんですか」 徹は五十六の顔を見た。 「七八か、さあ、どれくらいかなあ。結構、長いんじゃねえの。『キタキツネビル』で働いているよ」 五十六がぐびっとビールを飲む。 「『キタキツネビル』には面接にいきました」 徹が水を飲む。 「そうか。でかいビルだよな。そこでは仕事してないのか」 五十六がくみ子に手招きすると空のビールグラスを渡した。 「ええ、面接で『ラッキー園』に行く…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第9回「昼間からビール三昧の五十六の鋭い眼光にヒヤリ」

    昼から生ビールを飲む顔の大きな男 徹は文平の言う、たかど、という名前を聞いたことがなかった。 「たかどさん・・・・ですか」 「確か、『キタキツネビル』で働いているって言ってたな」 顔の大きなベートベン似の男が言った。 「『キタキツネビル』ですか・・・・」 クリーンモリカミは●●市内では「ラッキー園」のほかに「キタキツネビル」や「エゾリスビル」で清掃業務を行っているが、徹は「ラッキー園」でしか仕事をしていないから、「たかど」という人物のことも顔も知らないのだ。 アルバイトのくみ子がベートベン似の高戸五十六に焼き肉定食を運んできた。「ありがちょう、これおかわり」 五十六はくみ子に空になったビールジ…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第8回「ジャジャジャジャーン、ベートベン男と会った」

    中華屋で会った顔が大きい男 徹は「ラッキー園」を出ると道の向かい側の「中華屋・ぶんぺい」の暖簾が出ているのを確認した。信号が青に変わったのを確認すると、急ぎ足で歩道を渡る。 「こんちわ」 「中華屋・ぶんぺい」の戸を開ける。ガラガラと音を立てて開いた。まだ中には客は1人しかいない。午前11時40分過ぎ、これがあと数十分もすればいつの間にか満員になる。ほんの20分の差で待たなければいけないか待たなくてすむか。 「どうも、いらっしゃい」 いつもの文平の声が店の奥から聞こえた。昼間は厨房の中に2人、客対応に1人の3人で対応する。厨房の中では文平の妻・ゆう子、接客はアルバイトの井戸くみ子が手伝っている。…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第7回 「中華屋の文平が宝くじを当てた理由」

    昼飯は中華屋のぶんぺい しばらくして伸江に続き明子も控室も出た。高齢者施設「ラッキー園」の午前中の清掃の仕事はこれで一段落する。午前11時40分過ぎ、徹はクリーンモリカミのスタッフが常駐する控室を出ると、そのまま施設のエントランスへと向かった。 午後からは徹がゴミの回収をする。回収を終えるとこれといった業務は終了する。大型のポリシャーがけやワックス業務などの定期清掃は数か月に数回、土日を使って専門のスタッフが行う。この日、徹は実務は行わないが手伝いをする。つまり、現在の徹の業務は清掃の中では初歩的なものになる。だから、ベテランの明子のチェックが入るのだ。仕事を始めて3か月程度だから仕方ない。 …

  • 闇が滲む朝に」🐑章 第6回。「かえるぴょこぴょこ 、超早口で仕事も早い人」

    仕事も早いが話しぶりも早い人 「とにかく、明日、チェックするから、綺麗に磨くのよ」 明子は話を戻すとお茶を飲んだ。 シングルマザーの飯山伸江も戻ってきた。「お疲れさまです」 伸江はいつもの早口で言うと控え室奥の自分のロッカーの方に向かう。「おつかれ」 明子が湯飲み茶わんを両手で支えながら伸江のいるロッカーの方を見た。 「お茶、飲むかい」 カーテンで遮断されたロッカールームで着替え始めた伸江に聞いた。「あ、今日は大丈夫です。すみません」「今日はテニスの練習か」「ええ、すみません」 ロッカーの方から伸江が返事した。 「ノブちゃんも何かと忙しいね。お茶くらい飲んでいけばいいのに」「また、今度、いただ…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第5回 「綺麗に磨けば心も洗われるのよ」

    ひたすら身体を動かし続ける仕事 徹は「ラッキー園」の総務の部屋を過ぎ、奥の小さな清掃員用の休憩所に入った。午前11時、そろそろ明子も伸江も休憩にはいる時間帯だ。 徹の仕事は午前6時から午後3時までと契約されているが、実際には午前中は11時半ごろまでに終わることが多い。そして午後1時から3時まで。この間に、施設の掃除機がけ、ゴミの回収、トイレ清掃、そして庭掃除などをこなす。 清掃の仕事は契約時間の3時間から4時間は、業務を急いでこなしていかなければいけない所が多い。多くが3時間のパートタイム契約だから、これが普通なのだ。身体を使う、いわゆる頭脳労働ではないパートの仕事はとにかく、いそがしいことが…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第4回「渡り鳥のように飛び続けることができるか」

    渡り鳥の飛来に感謝する 徹はカートから落ち葉の入った90ミリリットルのビニール袋を取り出し、高齢者施設「ラッキー園」の庭の隅にある横用具入れ隣のゴミ収集倉庫に置いた。 ピーッ、ピピピ、どこからかツグミの鳴き声が耳に届く。 目の前に広がる青い空と黄色い葉が広がる庭を眺めながら、ツグミはなぜ、日本に飛んでくるのかと考えたりする。ま、暇なんだ、ようは。 そういえば、ツグミに限らず、決まって冬になると日本に飛来する渡り鳥たちは多い。 徹は若い頃に新潟市内の佐潟でハクチョウを見たことがある。偶然に出かけた湖だった。このハクチョウは冬になるとシベリアやアイスランドから飛来するのだ。ツグミは確か中国あたりか…

  • 「闇が滲む朝に」🐑 章 第3回「人間も冬眠すればいいのに」

    人間も夏眠や冬眠すればいいのに 清掃の仕事の悪さを指摘されるたびに、森木徹は一体、このばあさんどうしたの?と思うくらいに、突然に雷神のような顔に豹変し、睨みをきかす明子を思い出しながら、(・д・)チッと舌打ちする。『ったく、るせいババア』だと思う。 しかし、そんな明子も日ごろは、慣れない徹に、「これ食べるかい、これ家に持っていくかい?」と、菓子や果物を持ってきたりする。仕事では何かとうるさいが、いつもは優しい人なのだ。 徹が周りを見渡した時に既に、その明子は庭にはいなかった。徹は落ち葉を掃き続けながら、ふと庭中央の池を覗き込む。 夏場は鯉たちが所狭しと池の中を泳ぎ回っているそうだが、冬の時期に…

  • 「闇が滲む朝に」🐑章 第2回「AIの庭掃除ロボットができたら、ますます仕事がなくなるだろうなあ」

    やっぱ、人の命を奪う自然は恐い キーンと冷気が張る静かな金曜の午前9時過ぎ、ピピピッ、ピピピッ、ピピピ・・・銀杏の木々が青空にそびえ立つ園内に、ツグミのさえずりだけが森木徹の耳に響く。徹の3メートル程先に立つ柿の枝々で2羽のツグミが行き交う。園内にはもっと来ている筈だ。徹はあたりを見渡すが、今は2羽しか見当たらない。あの多くの命を奪った台風が嘘のように晴天の空がまぶしい。 自然というのは怖いものだ。人の命を平気で奪っていく。 今後、どんなに人間が素晴らしい物を開発し続けても、宇宙に誰もが行ける時代が来ても、一方では環境を破壊し続けるという行為をやめることはできない。生き残るためだ。こんなに食料…

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