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  • かけちがい

    シャツのボタンをかけ違えた。それは最近しょっちゅうあることなのに、私はいつもそれを忘れてしまっていて、同じ失敗をする。今度はゆっくりと下から順番にかけてゆき、-これで大丈夫よね?と鏡越しに自分を映し、何度も確認した後に家を出た。彼と会う時は決まって、どこか自分ではない自分がいる。なんていうか、ヨソユキの私がいる。笑うときはくちもとに手を添えて声を小さくして笑うことや、ミルクを入れたコーヒーが好きなのに、ブラックで飲んでいる私がそこにいることは苦痛ではないのだけれど、彼と別れたあとに自分の部屋に帰ると何かから解き放たれ、解放感を感じることも確かなこと。いつもの駅前で待ち合わせをし、約束の時間にぴったり合わせて着く私に対して、彼は決まって先にそこに居る。それはいつものことだし、自分が待ち合わせの時間に遅れたわけでも...かけちがい

  • 包まれて

    やさしい心で人に接すればきっと今すぐではなくともやさしい言葉は返ってくる素直な言葉が言えたのならきっと今ではなくてもいつかその言葉は相手に響くはず過度な期待はしてはいけないけれど報われる日はきちんとやってくる包まれて

  • 前進

    ゆっくりでいい他のひとのペースに惑わされないで半歩ずつでも前に進めば2歩歩けば1歩になるそれはいつの日か大きな前進になるからゆっくりでいい自分のペースを忘れないで前進

  • 美徳

    理由を求めていた言い訳なんて認めたくなかった信じることが美徳だと感じていた裏切られてもまた信じられることが美徳だと考えていたただ行き場のない感情の行き場となる理由が欲しかった言い訳なんて認めたくなかったはずなのに。美徳

  • レール

    誰かの決めたレールの上を走るだけの電車なんて嫌だったそれと同時に色々な景色を見ること様々な人に出会うことに憧れていた少なくともあの頃のあたしは自分の進むべき道は自分で決められると思っていたねレール

  • 交差点

    運命の交差点で人々は行き交うそこで出逢って同じ道を歩むこともあるし別れて別々の道を歩むこともある交差する出会いと別れに挨拶が必ずしもあるとは限らないこと今の私たちは理解しているつもり。交差点

  • 醒めない夢

    醒めない夢がないようにいつか本当のことを知る時はやってくる本当のことを知らないままでいられるのはきっと誰かに守られているからわたしが泣かなくて済むように怖がらなくても済むように心地いい夢のなかから目覚めないように、と。醒めない夢

  • 忘れられない

    -早く、忘れなさい。そう言われたけれどとても忘れられる出来事ではなかったのその事を忘れたいけれど忘れてしまったら感情をそこに置いてきぼりにしてしまったら貴方も消えてそして私も消えちゃう気がして忘れられる出来事ではなかったの-まだそんな事を言っているの?そんなことを言わないであなたには寄り添ってほしかったそれだけだったのよ忘れられない

  • 理由の訳

    あの頃頭ごなしに物事を言う人が苦手だったよねだけど淡々と理由の訳だけを述べる人も同じく苦手だったよねこどもから見れば大人の意見は絶対でだけど絶対に間違えない大人なんていないって知ったとき気付いたとき反論する理由の訳を考えたとき理由の訳

  • 単語

    やたらと難しいことを覚えたての単語で考えていた今は逆かなやたらに簡単なことを忘れてかけている感情を単語で並べている単語

  • こたえ

    ありきたりな幸せに包まれた日常そんな日々がずっと続くと思っていたそう大したことを望んでいたわけでもないし小さな事柄をそこまで悔やむ必要もなかった永遠なんてこの世界にないのだと悟ったあの日いちばん聞きたくない言葉はいちばんに知りたかった答えだったこたえ

  • 心に刻む

    貴方の言葉や顔を思い出すたびにもう戻れないあの日々が悲しくて悔しくて辛くてもう戻れないあの日々のすべてが愛おしかった過去に縛られて生きていても楽しくないし途方にくれるだけなのならばそれ以上に素敵な想い出を心に刻むんだ心に刻む

  • 小さなうそ

    貴方に小さなうそを吐いてしまったその瞬間に申し訳なく思うけれどさっきはうそを言ってしまってごめんねなんて言えないまま時は無防備にながれた吐き出した小さなうそが大きなかたまりになってそれはやがて抱えきれない程の重さになりなみだに変わった時本当のことを言っても貴方は私の吐いた嘘を憶えていないことよくあったよね小さなうそ

  • たとえば

    たとえば教科書に書かれたことを全て覚えたらそれでいいの?誰とも喧嘩しなければいい子って言われるの?自分の思っていることをくちにすれば反抗期だと言われてだけどあなたの思っているよりも自分はずっと大人だと粋がっていたたとえば

  • くすぐる言葉

    家族だから居て当たり前だとか友だちだから言わなくても伝わるだとか心がくすぐられるような言葉をわざわざくちにしなくてもそれはそれでいいのかもしれないけれどその言葉で私の心がくすぐられるということは言われたひとも心がくすぐったくなるような言葉なんじゃないのかなくすぐる言葉

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月のぬくもり、星のなみだ。
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