かけちがい
シャツのボタンをかけ違えた。それは最近しょっちゅうあることなのに、私はいつもそれを忘れてしまっていて、同じ失敗をする。今度はゆっくりと下から順番にかけてゆき、-これで大丈夫よね?と鏡越しに自分を映し、何度も確認した後に家を出た。彼と会う時は決まって、どこか自分ではない自分がいる。なんていうか、ヨソユキの私がいる。笑うときはくちもとに手を添えて声を小さくして笑うことや、ミルクを入れたコーヒーが好きなのに、ブラックで飲んでいる私がそこにいることは苦痛ではないのだけれど、彼と別れたあとに自分の部屋に帰ると何かから解き放たれ、解放感を感じることも確かなこと。いつもの駅前で待ち合わせをし、約束の時間にぴったり合わせて着く私に対して、彼は決まって先にそこに居る。それはいつものことだし、自分が待ち合わせの時間に遅れたわけでも...かけちがい
2020/04/27 19:28