※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
類は二週間の休暇を貰っていたが、そろそろ仕事を始めなければならなくなった。その前に、、、と、葵と共に動物園へ向かった。園内に入ると葵は大喜びだ。「あっ!」何かを見つけては駆け出していく。それを追いかけ興味を示したものを説明し、しっかり手を繋いで歩く。「ママは?」「ママはお空に行った。」「おそら?」類は葵を抱き上げ空を指差す。その指先を追い、空を見上げる。もちろんつくしの姿はない。「ママは?」「ん。...
翌日の夜、聡と麗が帰国した。そしてつくしを見て泣き崩れる。「どうしてこんな事に?きっと私の責任だわ。私が研究開発よりも子供と過ごす時間を大切にして欲しいと言ったから。きっともっと研究に没頭したかったのよ。だから悩んで、、、私の責任だわ」「それはない。麗の所為じゃない。シャルちゃんはそんな事で自ら命を落とすようなことはしない。絶対にな。」聡は麗を慰める。類は葵を下すと優しく声をかける。「ばあばにハグ...
その夜、あきらと総二郎が花沢家を訪れた。あきらに至ってはスーツ姿で仕事の帰りと分かる。二人とも神妙な面持ちで類に掛ける言葉がないようだ。「こっち。」類は二人をつくしの元へ連れていく。そこには眠っているような姿のつくしが居る。二人は信じられない表情で手を合わせた。「シャルちゃん。何があった?」「なあシャルちゃん。目を開けてくれよ。」二人の声は涙声だ。鼻をすすりながら声をかけている。「類。何があった?...
類はサッと風呂場の周りを見ながら問う。「妻以外の痕跡はありませんか?」「今はまだ分かりません。指紋を採取している段階ですので。」「ナイフを握っていたと言いますが、どのナイフですか?」それを受け、鑑識が袋に入れたナイフを見せる。「こちらになります。」「このナイフに不審な点はありませんか?」「こちらからも指紋が出ていますので奥様以外の物があるかどうかを調べます。それとこのナイフの入手先を調べます。」「...
類はジッとつくしを見つめながら佳代に問う。もちろん冷静ではいられない。だが自殺するはずがないし、犯人を突き止めたい気持ちだ。「どういう事?何があった?俺が仕事へ行ってからの事を話して。」「はい。午前中は葵様と絵本を読んだりブロックで遊んでいる姿を拝見しております。至って普通に笑いながら遊ばれておりました。そしてランチも普通に食べられました。その後、葵様がお昼寝をされ、つくし様は一人で公園へ散歩へ行...
葵は、ドンドンとバスルームのドアを叩き続ける。何時もなら明るい声で返事があるのにそれが一向にない。ドアが開く気配もない。「ママ、、、ママ、、、ママ、、、」つくしの名を呼ぶが一向に返事がない。寂しいという気持ちがあふれ出て、いつしか泣きながら名前を呼んでいた。そこに佳代が入ってきた。そろそろ葵が起きてくるころだと思ったからだ。「つくし様?葵様は起きられて、、、」佳世は部屋に入るなりピタリと足が止まる...
つくしは歩きながら必死に考える。10年前に自殺しているという事は、何かがあったのは確実。自殺する理由なんて何一つないんだから。類とも変わらず愛し合っているし可愛い娘もいる。そろそろ二人目が欲しいと話しているし週末には動物園にも行く。じゃあなんで自殺を?データが流出したことを知ったから?でもそれなら類に話して何か手立てを考え犯人探しをするはず。自殺はしない。何があった?分からない。分からないけどこの...
ヒュンッと体が無重力のように宙に浮く感覚を覚えた後スッと重力がかかった。自分の体を見るが特に変化はない。恐る恐るトイレから出るとそこには見た事もない遊具が設置されている。「本当に10年後に来た?」もちろん周囲にボディガードの姿はない。つくしは急いで公園から出ると近くのコンビニへ向かった。そこには見たことの無いデザートや商品が並んでいる。だが新聞が見当たらない。「あの。新聞はありませんか?」「新聞?...
2024年10月つくしは大学を無事卒業して7か月が経った。葵ももうすぐ3歳で言葉も活発になった。二人は仕事に向かう類を玄関前で見送る。「いってらっしゃい。」「パパ。チュッ」葵は投げキッスでエールを贈る。その可愛い姿に類は目を細め葵の頭を優しく撫で、つくしにはキスをする。「行ってくる。日曜日は動物園に行こう。そろそろ葵も喜ぶんじゃない?」「うん。絵本だと大きさが分からないもんね。」「だな。葵~。本物の像と...
楽しい沖縄旅行が終わり、五人は東京へ戻った。その翌日、聡と麗は揃ってフランスへ戻ることに。聡は分かっていたが麗まで一緒に戻る事は初耳だ。「私だけが葵ちゃんに触れ合っていたから聡さんが嫉妬してね。だから一度帰るわ。でもまた来るから。」そう言うが、実のところは聡が寂しがっているからだと類は思っている。もちろん麗だけが孫に会えること、久しぶりに会った孫が少し人見知りをしてあまり懐いてくれなかったこと等も...
聡も合流し、皆で美ら海水族館へ向かう。類とつくしは新婚旅行以来となり、あの当時を思い出し懐かしく感じる。「そうそう、入り口にジンベイザメの銅像があったね。」「ん。さてどこから回る?」類はベビーカーを引いている。その隣につくし、三人の後ろに麗と聡が案内図を見ている。「ショーもあるのね。先にショーを見る?」「葵ちゃんは起きてるかな?」「ん。今はまだ起きてる。」という事で五人は先にショーを見る事に。類は...
翌日、麗とつくしは葵と共にプライベートビーチに向かった。そしてパラソルの下に葵を下す。すると砂を手に取り遊び始めた。そこにスコップやバケツを置き、つくしも一緒に砂遊びを始める。麗はサングラスをかけサマーベッドに横になり日光浴を始めた。もちろん購入した水着を着ている。暫くすると三人の前を男たちが通り過ぎる。そして再び踵を返しチラチラ見ながら通り過ぎる。その声が二人の耳に届く。「親子だよな?」「年の離...
沖縄に着いた三人はタクシーでホテルへ向かう。そこはメープル沖縄だ。「メープル?司の?」「えぇそうよ。『知り合いの』って話したでしょ?楓さんに聞いたのよ。そうしたら空きがあるというから予約したって訳。」麗はウインクをしながら告げる。西田の一件以来、楓は花沢に頭が上がらない。もちろん仕事で優遇を依頼したことは一度もない。今回初めて無理をお願いした。「さあ部屋に入りましょう。フロントで受付をしましょうか...
2022年8月葵は8か月になりハイハイが盛んになった。その姿がまた可愛く、類と麗はメロメロだ。「今年の盆には聡さんも来るそうよ。」「あの人、急に暇になった?」もちろん皮肉だ。凄く苦労してスケジュール調整をしているのは分かっている。ただ今まで碌に日本に帰国しなかったのに葵が生まれた途端帰国回数が増えた事に厭味の一つも言いたくなっただけだ。「それ嫉妬ね。自分の時は放ったらかしにしたくせに!ってことでし...
4月類は大学四年、つくしは大学三年になった。大学四年の類は前期に少し授業があるだけで後期はほとんどない。卒論に当てる機関だと思うが類は早々に提出しようと考え既に取り掛かっている。つくしは久しぶりの対面授業でワクワクしている。自宅に残す葵も気にはなるが麗が居るし、大学は気分転換にもなる。それにまだ目を通していない卒論もある。空きコマはその卒論を読み漁ろうと考えている。そこに友達のしおりがつくしの姿を...
3月子供の成長は早いというが、たった三か月で葵の体重は6キロほどになった。生まれた時の倍だ。顔も丸くなり手足はぷくぷくとしてはちきれんばかりだ。表情も豊かになりよく笑うようになった。そうなると見る人を魅了する。聡も日本に出張という形で3月初めに帰国している。滞在期間は約1か月と言うが、葵の姿に半年に伸ばそうかと真剣に考え始めている。麗に至ってはずっとここに残りたいと何度も口にしている。それに辟易して...
クリスマスが終わった12月26日に親友達が花沢邸を訪れた。「「いらっしゃい。」」「おめでとう。これ出産祝い。」四人はそれぞれプレゼントを類とつくしに渡す。「「ありがとう。」」「おい、葵はどこだ?」類とつくしの腕には葵の姿が無い。「リビングに居る。今、寝てるから。」「寝てるのか。類によく似てるな。」総二郎は茶化す。もちろん赤ちゃんは一日のほとんどを寝ていることぐらいは知っている。「今はね。でも良く泣...
分娩室から病室へ移動したつくしを類は労わる。「ありがとうシャル。お疲れ様。」「こちらこそありがとう。凄く心強かった。」二人は互いを労う。すると綺麗に顔や体を拭いた赤ちゃんを看護師が連れてきた。「かわいい赤ちゃんですよ。」その赤ちゃんをつくしの腕に抱かせる。つくしも初めて抱く小さな赤ちゃんにおっかなびっくりだが、赤味が少し取れ顔が良く分かる。「可愛い。」「ん。凄く可愛い。」類もつくしの腕の中の赤ちゃ...
11月つくしはオンラインで講義を受けている。今日はブラックホールに吸い込まれた星はそのままの形で別次元で存在しているのかという事を講義している。と言っても相手はつくし一人。講義というよりディスカッションのような形だ。『つまり異次元に行った星はそのままの形を保てるか?という事だと思うんだが、ここで素粒子が空間移動に耐えられるかが問題になる。』「はい。素粒子は電子によって結合されていますが異空間にも電子...
7月下旬。つくしはテストを受けるために類と共に大学へ向かった。お腹はあまり膨らんでいない物の、既に妊娠の事実はある程度広がっていた。その為、二人を見る目も色眼鏡を帯びていたりするが、それを類は無視する。「シャル。変な事を言う人がいても無視しな。」「うん。妊娠は悪い事じゃないのにね。でも大学に出席していないのは気が引ける。」「特例だから大丈夫。確かに妊娠はレアなケースだけど、病気とかで来られない人も...
7月つくしの悪阻が収まり安定期へと入った。そこでやっと皆が集まった。「おめでとうシャル!」「ありがとう。」「悪阻は辛かっただろ?」「うん。大変だった。」「でもまだまだ気をつけろよ。これからお腹が大きくなるんだから。」「うん。気をつける。それに類が居るし。」「類が?」「うん。どこに行くにも類が手を引いてくれる。類が居ない時は佳代さんが手を繋いでくれる。」過保護すぎるとも思うが、万が一を考えればそうな...
類はGWが終わると大学へ行っている。つくしと違い大学は卒業しなければならない。もちろん自宅に残しているつくしの事は心配だ。だが佳世が付いてくれていると思い、渋々通っている。そしてつくしの妊娠は親友達の耳にも届いた。今すぐにでもお祝いしようとはしゃぐ親友達を類が制した。「まだ安定期じゃないし、悪阻もあってしんどいんだ。だからもう少し後にして欲しい。」「そうか。それじゃあ仕方ねぇなぁ。」「大学はどうする...
類は大学三年、つくしは大学二年になった。類は空きコマが増え一日講義が無い日も出てきた。だが毎日つくしの送り迎えをする。つくしも空きコマが増え、その時はラウンジでパソコンを使って色々調べていた。担任から教わった論文を一通り目を通し、なにかヒントはないかと考えながら。するとあきらがラウンジに入ってきた。「シャルちゃん。空きコマ?」「うん。前期はこの時間は空いてて、ここを使わせてもらってる。」「あぁ、い...
大学一年の後期も終わり春休みに突入した。類とつくしはイタリアへ向かった。そこでのんびりと過ごす予定だ。というのも、大学から帰宅したつくしはすぐに両親とマリアの残したデータ解析に取り掛かる。休日もまったりとした時間が勿体ないと感じるのか暇が出来ると部屋に閉じこもるようになった。もちろん早く実現可能か調べたいという気持ちもわかる。だが休憩も必要だと考え、敢えてパソコンもテレビも無い場所を選んだ。そこが...
クリスマスが近づいた。つくしは類と共にツリーにオーナメントを取りつけている。「去年と同じ飾りだけど新たに何か買う?」「良いかも!!毎年一人一個買う事にしよう!」「そうしようか。」「ついでに両親へのクリスマスプレゼントも買おう。」「うん。」という事で二人は買い物に出かけた。まずはオーナメントを選ぶために数店舗を回る。そしてつくしは天使を、類はソリに乗ったサンタのオーナメントを買う。「この天使、類みた...
つくしが専攻した宇宙科学科はつくしを入れて数人しかいない。もちろん女性はつくしだけだ。そこに講師が入ってきた。「え~~、このクラスを担当する小山田です。宇宙は広く解明されていない物が沢山あります。例えばブラックホール。その原理が解明されていません。知られているのは沢山の星を吸い込んでいる事。では吸い込まれた星はどうなるのか?それを考えるでも良いし、スペースシャトルやロケット、飛行機、ドローンなど空...
夏休み後半は映画へ行ったり二人でまったりと過ごした。その中でつくしが喜んだのがネズミーランドだ。一歩中に入ると魔法にかかったかのようにテンションが上がった。キャラクターを見つけると子供のように走っていきハグをする。長い列の乗り物を待っている間もウキウキしている。そして皆が付けていたカチューシャを購入し頭に着けポーズをとる。「どう?似合う?」「ん。可愛い。帰りにお土産も買おう?ぬいぐるみも買うだろ?...
フランス邸に戻った類とつくし。麗は早速つくしにマリアの家にあったパソコンを渡す。「パスがかけられていて見る事が出来ないわ。シャルちゃんならパスが分かるかもしれないわね。」つくしは起動させてみる。するとパスワード入力画面が出てきた。思いつくパスをすべて入力してみるが開かない。ガッカリするつくしに類が励ます。「ゆっくりで良いんじゃない?」「そうね。時間のある時にゆっくり入力して見ると良いわ。それより明...
つくしは自室にある隔離部屋で両親のデータに基づき検証を行っていた。理工学部に入ったことで沢山の教材を購入した。それを読み漁り足りない知識を得て実現可能か考えていた。と同時に時空間に対しての興味がわいた。タイムマシンやタイムリープやタイプスリップの事だ。もしこれが可能なら過去へ戻って両親に会える。未来ならどんな風に類と過ごしているのか分かる。そこに類が入ってきた。「シャル?そろそろ休憩しな。」「うん...
大学の授業が始まった。つくしは女子生徒数人と一緒に受けている。授業の中には物理や数学ももちろんあるが、この学部を選んでいるだけあり女子生徒も頑張っていた。だがつくしは群を抜いている。物理の教師が授業中「それでこの場合の空気抵抗は、、、。」と説明を始めた。するとつくしが手を挙げる。「先生。その場合は真空中で落下する物体に働く力は重力のみのはずだから、物体の質量をM〔kg〕とすると~~になると思いますが...
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我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...
スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...