※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
2020年4月大学が始まった。つくしは類と共に大学へ行くとそこから先は別行動になる。類としてはずっと一緒に居たいところだが学部が違うし学年も違う。それにいつも一緒にいてはつくしに友達が出来ない。ただでさえ理工学部は女子が少ない。その中で女性との友達は何かあった時に頼りになる存在だ。以前ほどではないが血を見ると恐怖を感じるのは変わりない。万が一の場合、つくしをサポートする存在になってくれる人が必要だ。そ...
2020年3月英徳高等学校卒業式つくしは卒業生として、類は保護者として参列している。その保護者席にはなぜか司、滋、あきら、総二郎までいる。類は怪訝な顔で問う。「なんでお前らが保護者席に?」「俺はシャルの保護者的立場だ。」「私はシャルの友達兼お姉さんだから。」司と滋は自信たっぷりに告げる。この二人もあの事件以降正式に婚約した。結婚は大学を卒業してかららしいが、既に道明寺邸には滋の部屋が作られ愛を育んでい...
※こちらの作品は『小さな恋の物語』の続編となります。まだご覧になっていない方は、そちらを先にご覧ください。2019年10月「シャル。大学は俺と同じ経営学部にする?それともほかの学部?」「どこでも良いの?」「ん。シャルが学びたい分野を選ぶと良い。」つくしは目を輝かせる。学びたい分野は色々ある。国際学部、理工学部、工学部、情報学部、教育学部、法学部、、、「英徳では二年次からその学部が更に細かな専攻学科に分か...
「よ~し! じゃあ王様ゲームするぞ!」「王様ゲーム?」「ニッシ~。 何?それ。」今日はクリスマスパーティーを行っている。参加者は司、あきら、総二郎、類、滋、桜子、つくし、優紀だ。つくしと優紀は思わず顔を見合わせ小声で告げた。「それって、、あれだよね?」「うん。 王様が好きな番号を言って、その番号の人にアレコレさせるという物だよね?」「うん。 私やった事ない。」「あたしも、、って言うか、なんでこのメ...
花沢50周年記念パーティーから一年半が過ぎた9月。桜子がボストンへ来た。つくしの代りにオリバーの秘書になる為だ。もちろん桜子が住む部屋はオリバーのつくしが住んでいた部屋だ。これからはオリバーと帯同することが多くなることから、その方が色々便利だという事なのだが、それは建て前だと分かっている。何故なら二人は順調な交際をしているからだ。「私は絶対に遠恋は向かないと思っていたんですけど、人生何があるか分か...
50周年記念パーティーに類とつくし、そしてオリバーが出席した。社長のあいさつの後、類も挨拶をする。そして記念品として用意したスパークリングワインの説明が行われた。《今回、我が社の記念品としてこちらのスパークリングワインを用意いたしました。 こちらの瓶はFutaba製の物です。 皆さんもご存知と思いますが、Futabaはエコロジーを謳い文句に商品作りに取りくんでいます。 こちらの瓶も再利用された物です。 そして...
つくしはオリバーと共にボストンへ、類はフランスへと帰る。「50周年記念の式典までにゲイツさんに会えるようにするから。 その時にNYで会おう。」「うん。」「その式典なんだけど、俺のパートナーとして出席してもらっても良いかな?」「う~~ん。 その辺はちょっと待って。 カレカノだから記念品の瓶をFutabaにしたと思われたくないから。 記念品があって再会したでしょ? 優遇されたみたいに思われるのはちょっとね、、...
類とつくしは隠れ家風レストランへ向かった。そこには総二郎とあきらがいる。そして桜子とオリバーも。「よぉ! 牧野! 元気だったか?」「うん。 久しぶり。」二人は空いている席に並んで座る。『オリバー。 元気だった?』『類も元気そうだな。』二人もあの日以来の再会だ。互いに握手を求めあう。『じゃとりあえず乾杯しようか。 ビールで良いか?』『あぁ。』『私はウーロン茶で。』『了解』総二郎はすぐに英語で会話を始...
類とつくしはイタリアの後日本へ向かった。そして花沢邸へ向かう。そこには既に連絡を入れていた事もあり両親が揃って待っていた。「ただいま。」「お帰りなさい。 そちらが牧野さん?」「そう。」「初めまして。 牧野つくしです。」つくしは急いで頭を下げる。そのつくしを優しいまなざしで見つめる聡と麗。「初めまして類の父親の聡と、母親の麗です。 長いフライトでお疲れでしょう?」「いえ、飛行機の中でぐっすり眠りまし...
オリバーは日本支社を訪れ、現状把握と売り上げ実績などの報告を受けていた。今のところ社員は二人だが、今後どうすべきかを検討することになる。『今は取次だけを行っていますが、そろそろ日本にも在庫を抱えた方が良いのではないでしょうか? 注文を受けてから店舗に荷物を置くまでに時間がかかりすぎます。』『今まで注文を受けた商品はこれらになりますが、定番商品の在庫をどこかに置き、全国展開しても良いかと思います。 ...
類とつくしはイタリアのトスカーナへ向かっている。つくしは車の後部座席で類の肩に頭を乗せ眠っている。それを微笑みながら類は見ている。さすがに昨夜は無理をさせた。三か月ぶりの再会という事も有り箍が外れたかのように愛し合った。しかも前回とは違い手の負担を考えなくて済む。その為、バックなど全方向で挿入を繰り返した。それに前回と違い、牧野の反応がかなり良かった。痛みが無い分、早々に快楽の波にのまれたからだろ...
7月。つくしは試作品の50周年記念瓶を持ちフランスへ向かった。そしてまっすぐ花沢物産へ向かう。あれから毎日連絡を取り合っている。電話やSNSが主流だが、休日はテレビ電話も活用している。それでもやはり寂しさは募るばかり。そして今回試作品が出来た為、オリバーの鶴の一言で持っていく事になった。『郵送だと割れる可能性もあるし、つくしが持参した方が安心だし直接相手側の話も聞けるだろ? その後、サマーバケーショ...
オリバーの家に二人が向かったのは14時になっていた。『ただいま』『お帰り。 遅かったな。』『うん。 いろいろ話し合ってたから。』『へぇ。 声が枯れるまでか?』途端、つくしは真っ赤になり類を見る。類はつくしの視線を受け笑みを見せる。その二人の姿を見れば言わずもがなだ。オリバーは手にしていたスマホを放り投げる。『あ~~、バカみてぇ。 夜中に何度電話をしても繋がらねぇし、朝電話しても同じだしさ。』『ごめん...
つくしが目を開けると、類がこちらをジッと見ていた。「おはよ。」「はよ。」上手く声が出せず、その理由が分かりポッと頬を染める。「昨日かなり無理させたけど、体は大丈夫?」「うん。」「手は?」「あっ。」つくしは怪我をしている手をシーツから出す。包帯が今も濡れている。「やばいかな。」「大丈夫だと思う。 縫合した場所に防水テープのような物が貼られているから。」つくしは濡れている包帯を外していく。すると確かに...
※Rあります。 ご注意ください。バスルームでキスを交わし合う二人。類は片方の手でつくしの胸をまさぐる。そしてゆっくりつくしの体を壁際へと移動させた。壁に体を預けさせた後、キスをしながら下へ下へと降りていく。既に暗闇に目が慣れている。胸の形も頂もはっきり分かる。類は片方の胸は手で優しく触れながら頂を刺激する。そしてもう片方の胸は先端を口に含み舌で転がし円を描きを繰り返す。上部からはつくしの甘い吐息が聞...
類は角度を変え何度も何度もキスを繰り返す。つくしの後頭部や背中を優しく撫でながら。つくしも初めは驚いたものの嫌と言う感情は全く湧かない。キスを受け入れ舌が入れられてもされるがままだ。ただ、だんだん気持ちが高揚してくるのが分かる。類はゆっくり唇を離すと、コツンと額をくっつける。「俺は酔っていない。 酔った勢いじゃないことは分かって欲しい。 その上で、あんたを抱きたいと思っている。 あんたを悩ませてい...
「あのキスが俺からの卒業? じゃあその時には連絡先を削除しようと思っていたんだ。」「うん。 ずっと類に甘えてきたじゃない? 道明寺と付き合っている時もずっと助けてもらって、それが当たり前に思ってて。 あいつと何度も駄目になりそうになった時、類の支えがあってそれで元サヤに戻ってた。 だから今度こそ自分の足で歩こうと思った。 すぐに連絡先を削除しなかったのは道明寺との別れを誤魔化す為。 連絡先が途絶え...
「でも、、類と付き合うことは出来ない。 もう遠距離はこりごり。 好きとか愛しているという言葉を信じても、距離がそれを紛い物にしていくのが分かったから。 そして顔が見えないと平気で嘘をつくことが分かったから。」つくしの絞り出すような声が類には辛い。やっと心の傷が癒えてきたかもしれないが、既に遠距離に対するネガティブ感情が植え付けられている。当然、俺と付き合うとなれば遠距離になる。もちろん牧野が仕事を...
ホテルに着いた類とつくしはレストランへと向かう。「箸で食べられるレストランは無いな。」「あっ、イタリアンがある。 これならフォークでいけるんじゃない?」「かな? じゃそこにしようか。」「うん。」二人はイタリアンレストランへ向かった。類はワイン、つくしにはジュースを頼む。「怪我はどう? まだ痛い?」「二日ほどは微熱が出たけど、薬を貰っていたからなんとかね。」「でもほんとビックリした。 メープルでその...
類は、定時を見計らいブラウンカンパニーまで迎えに行く。話をするという事で納得してもらっているが、万が一のことがある。逃げる選択をする可能性も無きにしも非ずだ。ロビーで待っていると、オリバーとつくし、そして二人の男性がやってきた。『やあ、お待たせ。 こちら兄の副社長と父の社長。 どうしても類に会っておきたいんだってさ。』類は緊張しながらも手を差し出す。『初めまして。 花沢物産専務の花沢類です。 仕事...
オリバーが立ちあがり今にも掴みかかりそうな様子に、つくしが急いで諫める。『オリバー! 怒らない! 確かにその通りでしょ? 今までここまでズバズバ言う人がいなかっただけで、将来的にはそうなるのは分かっているでしょう?』確かにその通りだ。今は順調だがそのうち頭打ちする。他社も追随した商品を出す可能性も十分あり、今後は不透明だ。再びオリバーは席に座る。『ですから共に持続可能な商品を作りませんか? トスカ...
翌日、類は田村と共にボストンへ向かった。そしてまっすぐブラウンカンパニーへと向かう。『花沢物産の花沢ですが、Futabaの牧野さんをお願いします。』『はい。』受付が電話をするとすぐに社員が降りてきた。『お待ちしておりました。 ただいま会議が少し長引いていますので、私が代わりに受け賜ります。 花沢50周年記念の担当をしていますマリーです。』『お世話になっております。 会議が終わり次第、牧野は来てくれるんで...
ブラウンカンパニーの会議室にはオリバー、兄のジョージ、そして父親の社長が目の前の男性に睨みを利かせていた。そこには大河原社長がいる。もちろんつくしもブラウン側に座っているのだが、あまりのピリピリムードに一人アタフタしていた。『もう済んだことですし、私が無謀にもナイフの刃を握ったのが悪いんです。 ですので顔を上げてください。』『本当に申し訳ありませんでした。 まさか滋がこのような重大な事件を起こすと...
五日後、類はNYのメープルに居た。司がそこで仕事をしていたからだ。どういう事?と思いながら案内された部屋に入ると理由が分かった。顔の左側がかなり青あざになっている。「誰に殴られた?」「オリバー・ブラウン。 Futabaの責任者だ。」「なるほどね。」類は空いている椅子に座る。あの事件から一週間が経っているにも拘らず未だに顔が変わる程青くなっているという事は、その当時は顔が変わるぐらい腫れていたはず。そんな顔...
丁度会議を終え執務室へ帰ってきたところだった。そこに内線が入り田村が出た。そしてすぐに俺に聞かれた。「類様。 ブラウンカンパニー日本支社の三条桜子さんから類様にお電話だそうですが、、。 日本支社とは取引はありませんよね? いかがいたしましょうか?」三条? ブラウンカンパニーから俺への問い合わせは全て繋ぐように受付に連絡していた。一応、三条の個人アドレスは知っているし向こうも知っている。もちろん一度...
日本では、あきらからの誘いで総二郎と桜子が個室レストランに集まっていた。「昨日、滋から電話があったんだが、、、牧野が怪我をしたらしい。」「えっ!!」総二郎は驚きの声を上げる。そして桜子を見る。「そうですか。 美作さんの所に電話が。 まあこの中で連絡を取るなら美作さんでしょうね。「おいおい、そんな言い方はないだろ?」「まあまあ、、」冷たい言い方をする桜子に、あきらは文句を言う。その二人を総二郎が止め...
オリバーが部屋に入ると、既に部屋着に着替え終えたつくしがいた。『あっオリバー。 道明寺に何もしなかったよね?』『あぁ。 文句は言ったけどな。』『まあ文句は分かるけど、でもあたしも悪いんだよね。 もっと冷静になってナイフを持つんじゃなくて、それを蹴飛ばすとか、、あ~でもそこを狙って蹴りを入れられるほどの技能はないんだけど、とにかく他の方法を取れば良かったんだから。』『分かったから。 とにかく痛み止め...
裏口にはダニエルが車に乗って待機していた。その車に乗り込むと、サッとタオルをオリバーに渡す。『これで出血を抑えて。』『ありがとう。』『つくし! あれほど無茶するなと教えたのにお前と言う奴は!』ダニエルも開口一番つくしを諭す。そしてすぐに車を発進させた。『ごめん。 これダニエルの車? 血がついたけど落ちるかな?』『そんな事はどうでも良い。 何なら会社からもっと良い車を買ってもらうから。』『おいつくし...
つくしはトイレを済ませ手を洗っていると外で日本語が聞こえてきた。耳を澄ますと良く知った声だ。瞬時に道明寺が自分の後を追ってきたと分かったが、滋も来ていた事には驚いた。しかも内容は別れ話のもつれだと分かる。ここで自分が出て行っては冷静になれないかもしれないと、タイミングを窺っていた。「きちんと話し合ったよな?」「司が一方的に話をしただけじゃない。 私は納得していない。 ねぇ、一緒に連れていた女性と今...
つくしとオリバーはメープルNYで行われる創立記念祝賀パーティーに出席していた。パーティー会場は着席型のコース料理が振舞われ、テーブルの水を入れるグラスはFutabaの物が使われている。普段は客室にしか置かれていないはずが、こうして皆の目に留まる場所に置かれている。楓らしいサプライズにオリバーもつくしも感謝しかない。初めに楓社長の挨拶があった。そして料理がテーブルに運ばれてきた。広い会場内は大勢の出席者がい...
「ブログリーダー」を活用して、りおりおさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。
※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
類は社長室を訪れた。「社長。フランスへの異動の件ですが、私はもうしばらく日本で過ごすことにします。」「という事は、ライバルを蹴散らすという事か?」「そのつもりですがまだ他にもライバルがいるみたいです。それに牧野にとってフランスへ行くことが最善な方法なのか分かりません。言葉も通じないだろうし環境も変わります。私も仕事へ行くのでずっとついていられません。それを考えると負担が大きいような気がします。」類...
GWも開け、類は仕事へと向かった。それを見送った後、掃除洗濯を終わらせ花壇の野菜の手入れをする。きゅうりも順調に上へと伸びてきている。ただ重さがありネットからずり落ちそうになっている為、固定するようネットと茎部分をひもで結ぶ。トマトも大きく育ってきており支柱に紐で括り、脇芽を摘み取る。ピーマンとなすびも枝が伸びそこにも支柱を立てる。それぞれ順調に花が咲き、キュウリは一本食べごろに実った。それを収穫す...
残りのGWは自宅で過ごす。庭の野菜の成長を見ては笑い、一緒に買い物へでかけて献立を考えて類も手伝ったり。そんなのんびりとした時間が二人にとっては心地良い。そんな中、つくしはあきらの件をそろそろどうにかしようと考えていた。一度食事をしながら悩み事を聞いて欲しいと言われているが、どういう話かも分からないし深刻な悩みの場合良いアドバイスも思い浮かばない。その点、類さんならば良いアドバイスが出来るのではない...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...