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  • 乗代雄介「それは誠」

    ★京都新聞、渡邉英理さんの「いま、文学の場所へ」で紹介されていたので、乗代雄介さんの「それは誠」(「文学界」6月号)を読んでみた。★現代日本版「スタンド・バイ・ミー」という印象を感じた。高校の修学旅行。1人の少年は自由時間を利用してある冒険を試みる。最初一人で行動するつもりだったが、彼には数人の仲間が伴った。★作品のほとんどは高校生たちのたわいもない(ある意味ナチュラルな)会話で進められる。★私には作品そのものより、渡邉英理さんの解説の方が魅力的だった。★「いま、文学の場所へ」では、他に永井みみさんの「ジョニ黒」(「すばる」6月号)、滝口悠生さんの「反対向き」(「新潮」6月号)、九段理江さんの「しをかくうま」(「文学界」6月号)が紹介されている。★紹介文はともかく、渡邉さんの中上健次論が興味深かった。乗代雄介「それは誠」

  • 堀内孜「公教育経営概説」

    ★京都教育大学で指導して頂いた堀内孜先生が亡くなられてまもなく2年になる。先生との思い出は尽きない。先生との出会いがなければ今の私はなかったであろう。★それは、同じ研究室で学んだ教え子に共通する思いではなかろうか。この度、その教え子たちで論文集を刊行することになったという。私も寄稿させていただくことになった。★とはいえ、果たして何を書こうかと思案中。とりあえず今月中にタイトル案を提出しなければいけない。★私が先生の論文でまず感銘を受けたのは「近代公教育分析に関する方法論的諸問題」(京都教育大学紀要No.571980年)だ。マルクスの「資本論」並みに難解な論文で、当時学生の私など全く理解できなかった。およそ40年近い時を経て、先生が追究されていたのは、「解釈の教育学」ではなくて「変革の教育学」なのだというこ...堀内孜「公教育経営概説」

  • 東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

    ★日曜日はどっぷりと本が読める。年を重ねるごとに目の方が辛くなってきたので、読めるうちにしっかり読みたい。★さて、今日は東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(角川文庫)を読んだ。オムニバスを綴り合わせたような作品。それぞれの出来事が時間軸を超えてつながり合っているのが面白かった。★時代は昭和。まだ小さな商店が軒を連ねる街並みに「ナミヤ雑貨店」という商店があった。文具や駄菓子などいわゆる「よろずや」だ。ここの店主、あるときから奇妙なことを始めた。顧客の中心である少年少女の相談に応えるというもの。★中には悪戯半分のものもあったが、将来の進路を決める真剣な悩みも多くあった。店主はそのそれぞれに頭を悩ませ心を込めて、時にユーモアを交えて回答していた。★やがて店主は病に倒れるが、彼は息子に遺言を残し、その息子(つま...東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

  • 芥川龍之介「玄鶴山房」

    ★今日は朝から英検。無事終了。★芥川龍之介「歯車」(岩波文庫)から「玄鶴山房」を読んだ。芥川と言うと理知的なイメージがあるが、この作品はドロドロとした感じが漂う。★ゴム判の特許で一財産を築いた玄鶴は、家の外に愛人を囲い子までできていた。ところが玄鶴は結核に倒れ、正妻と愛人が同居するという気まずい環境になった。★表面は大人を装いながらも、嫉妬に燃える内面が印象的だ。★芥川の晩年の作で、死の影が見え隠れする。芥川龍之介「玄鶴山房」

  • 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

    ★高校の中間テストが終盤。近隣の中学校は日曜日から研修(修学)旅行だ。明治村、信州、ナガシマスパーランドの行程。最終日が雨予報で心配だ。★伊坂幸太郎さんの「陽気なギャングが地球を回す」(祥伝社文庫)を読んだ。偶然出会った4人がそれぞれの能力を生かして銀行強盗をする話。★強盗団とは不謹慎は面々だが、フィクションであるから楽しめる。計画通りに強奪に成功した一団だが、逃走中に思わぬ出来事に出くわし、戦利品を奪われてしまう。裏にはカラクリがあるようで。★伊坂さんの初期の作品。人間関係が複雑で、登場人物の個性がイマイチ伝わってこなかった。しかし、軽快なセリフ回しは絶品だ。★この世の出来事は偶然なのか、必然なのか。★最近、ネットフリックスのドラマが面白い。まずは「クイーンズ・ギャンビット」。★事故で両親を亡くし孤児と...伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

  • ドラマ「サンクチュアリー聖域ー」

    ★昨夜から今日までネットフリックスでドラマ「サンクチュアリー聖域ー」を全8エピソードを観た。★主人公は九州で荒れた時代を過ごした少年。父親の借金で家業の寿司屋は廃業し、一家は離散。彼はカネのために角界に入る。確かに強かったが、「勝てばいいんだろう」という破天荒な振る舞いは、やがて品格を問われることに。★彼自身は品格などは糞喰らえという格闘技感覚で臨んでいたが、自己流では力の限界を感じ始める。★彼のライバルは北海道出身の力士。体に恵まれ快進撃演じる。しかし彼には辛い過去があった。借金まみれの生活。遂に母親は弟を道づれに無理心中。彼は一人残された。★この2人が土俵で相まみえる。★2人を取り巻く人々も魅力的だ。対戦場面ではスローモーションを使った演出が効果的だ。★相撲道と「道」がつく意味が分かる気がする。相撲が...ドラマ「サンクチュアリー聖域ー」

  • 水野敬也「夢をかなえるゾウ」

    ★高校が中間テスト前なので、今日(日曜日)は1日中、テスト対策。★合間を縫って、水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」(文響社)を読んだ。世に自己啓発本はあふれている。しかし、小説仕立てと言うのが面白かった。それも説教を垂れるのが、関西弁バリバリで反面教師を自負するゾウ(一応神様だというが)なのだ。★変わりたくても変われない男の元に突如現れたガネーシャと名のるこのゾウ、男に1日1つの課題を与えていく。果たして男は自らの夢を実現していけるのか。★ガネーシャの課題、「なるほどなぁ」と思えるのがいくつもあった。早速実践してみたいと思った。★夜、ネットフリックスで「サンクチュアリー聖域ー」というドラマを観始めた。大相撲が舞台のドラマだ。想像以上に面白い。九州出身の問題児。家庭の問題から道を反れたようだ。そんな自分でも...水野敬也「夢をかなえるゾウ」

  • 湊かなえ「Nのために」

    ★後味の悪いミステリーを「イヤミス」と言うらしい。そして「イヤミスの女王」と言えば湊かなえさんだ。★湊かなえさんの「Nのために」(双葉文庫)を読んだ。★セレブが暮らすタワーマンションの高層階で、夫婦が殺された。妻と不倫関係にあった男が犯行を自供したのだが、彼には共犯者がいた。★Nというのは登場人物の氏名から来ている。本筋はDV夫に監禁されている女性を救出するために、夫婦と関係がある4人がある計画を実行するというもの。高い塔に閉じ込められたお姫様を助けるというメルヘンのようなものだ。★しかし、物語は実にドロドロとしている。登場人物はそれぞれにトラウマを負っている。特に幼少期に父親や母親の歪んだ愛に直面している。★登場人物の一人、杉下希美の母親はお嬢さん育ちで、夫が愛人をつくり、子どもと共に家から追い出された...湊かなえ「Nのために」

  • 川端康成「笑わぬ男」

    ★雨降りなので今日は1日中ひきこもり。★川端康成の「掌の小説」(新潮文庫)から「笑わぬ男」を読んだ。小説というかエッセイのような作品だった。★川端は原作の小説が映画化されるとあって京都に来ていた。映画製作の現場にも参加していた。この映画、「狂った一頁」(1926年)といい、精神病院が舞台。今から見ればかなり劣悪な環境にある病院の様子、そこの収容されている患者の様子が前衛的な映像で描かれている。サイレント映画。今はYouTubeで観ることができる。★「笑わぬ男」では撮影の裏話が語られている。特に終盤、患者が微笑する面をかぶるところ。穏やかな能面をつけ、病んだ彼らも、ひと時の平穏を得たような感じだ。(私たちがそう感じているだけなのだが)★大学入試のとき、和辻哲郎さんの「ペルソナと面」を読んだことを思いだした。...川端康成「笑わぬ男」

  • 宮本輝「力」

    ★最近、近隣の中学校では1学期の中間テストが行われない。単元テストあるいは小テストが教科ごとに行われる。期末のテスト範囲が広くなるのは苦痛だが、塾としてはテスト対策期間が1回減るのでありがたい。★一方、高校はいよいよ今週から中間テストだ。★さて、今日は宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「力」を読んだ。夕暮れの公園のベンチで時間をつぶす男性。仕事にも家庭にも小さいながらも問題を抱え、茜色に彩られながら黄昏気分に浸っている。★そして、ふと、小学1年生の頃を思い出す。小学校へはバスで通学した。どうにも頼りない少年を心配した両親。最初の2日間は一緒に登下校し、そして3日目。ついに一人で登校することに。果たして無事に小学校にたどり着けるのか。★当時、彼の父親は商売に失敗し、困窮した生活を送っていた。鬱憤を...宮本輝「力」

  • 劉慈欣「二〇十八年四月一日」

    ★授業を終えて午後10時からが夕食時間。火曜日は、ちょうどNHKBSPで「ヒューマニエンス」という番組をやっている。昨夜は「再生」がテーマだった。水棲生物がもっている再生能力を、私たちはなぜ失ったのか。★再生が可能となれば、臓器移植や失われた機能を回復することできるかも知れない。もしかすると不老不死まで。しかし、まだまだハードルは高そうだし、不老不死は果たして幸福なのだろうか。★さて、今日は劉慈欣さんの「円」(ハヤカワ文庫)から「二〇十八年四月一日」を読んだ。近未来、遺伝子を操作することで人間の寿命は300歳まで延ばせるようになったという。とはいえ、遺伝子操作には多額の費用が掛かり、当面全人口の1%の富裕層だけが享受できるシステムだという。★会社のカネを横領し、そのカネで300年の寿命を手に入れようとする...劉慈欣「二〇十八年四月一日」

  • 森村誠一「禁じられた墓標」

    ★長編の作品が一段落したので、今日は短編。森村誠一さんの「鬼子母神の末裔」(光文社文庫)から「禁じられた墓標」を読んだ。★「猫婆」とあだ名される女性が殺された。彼女は金貸しで、法外な高利で貸し付けるが、背に腹は代えられぬ客は後を絶たず、高額なタンス預金をしていた。★犯人は早々に登場し、彼は盗んだ金で事業に成功するのだが、やがて追い詰められて自滅するというもの。★カギを握るのが猫。「猫婆」はその名が示す通り多くの猫をかわいがっていた。★エドガー・アラン・ポーの「黒猫」を思い起こした。森村誠一「禁じられた墓標」

  • 浅田次郎「地下鉄に乗って」

    ★ドラマ「FBI:特別捜査班」は第3シーズンを観終わって、第4シーズンに入った。第2話「見過ごされた死」というのは葉真中顕さんの「ロスト・ケア」のような内容だった。★さて、浅田次郎さんの「地下鉄に乗って」(徳間文庫)を読んだ。今では世界的な企業に成長した小沼産業グループ。その次男が主人公。次男といっても長男は大学進学前に、父親と対立して自ら命を絶ち、次男もまた強権的、暴力的な父親を認めることができず、母と共に家を出る。父親が興した会社は三男が跡を継いでいる。★そんな折、三男から次男に父親が倒れたと知らせが入る。とともに彼に身に不思議な出来事が起こり始める。彼は時間の壁を越え、過去の父親と出会うのだ。そして父親の真の姿を知る。★父親と息子の物語に、周りの人々の奇妙な因縁が絡んでいく。★この作品は2006年に...浅田次郎「地下鉄に乗って」

  • 東野圭吾「夢幻花」

    ★朝の授業が時間変更になったので読書三昧。東野圭吾さんの「夢幻花」(PHP文芸文庫)を読み終えた。★花を余生の楽しみとしていた老人が殺された。発見したのは孫娘。彼女はオリンピックも目指せる水泳選手だったが、精神的なストレスからか挫折し、期待の膨らんだ両親から距離を置き、祖父との時間を大切にしていた。★警視庁と共にこの事件に興味を持った警察庁の職員がいた。祖父を失った娘は事件の真相を知るためにこの職員と接触を試みるが、そこで職員の弟と出会う。彼も志していた原子力の研究に疑問をもち、進路に迷っていた。★この二人が協力しながら事件の真相に迫っていく。カギを握るのは黄色い花を咲かすアサガオ。それは古来から「夢幻花」と呼ばれるものだった。★出来過ぎなところは小説ならではだが、二人はある因縁で結ばれていた。★東野さん...東野圭吾「夢幻花」

  • 劉慈欣「メッセンジャー」

    ★銀座の白昼仮面強盗は小説を絵にかいたような事件だ。実行犯たちが10代から20歳の若者だというのも実に興味深い。裏があるに違いない。★劉慈欣さんの「円」(ハヤカワ文庫)から「メッセンジャー」を読んだ。★アメリカ、プリンストンで余生を送る物理学者は、鬱々とした心を和ませるためバイオリンを弾くのを日課にしていた。彼はあるとき、階下でその音色を聴いている青年に気づく。★この物理学者がアインシュタインであることはすぐにわかり、青年は彼に2つのメッセージを届ける。★彼を悩ましていた量子力学と日本に落とされた原子爆弾について。★果たして青年は何者なのか。彼のメッセージよれば、量子力学の不確定性は正しく、また原子爆弾は遠からず廃棄されるという。アインシュタインが彼の言葉を信じたかどうかはわからないが、彼が去った後もバイ...劉慈欣「メッセンジャー」

  • 連城三紀彦「私の叔父さん」

    ★連城三紀彦さんの「恋文」(新潮文庫)から「私の叔父さん」を読んだ。★叔父、姪の関係ながら年が近かったせいかまるで兄妹のように育った二人。お互いに魅かれながらもそこは禁断の関係。結局、それぞれ違う道に進むことに。★姪は他の男性と結婚し、出産。しかし時を経ずに事故で亡くなる。そして10数年が経過し、彼女の娘が大学受験のため彼のところに滞在する。大叔父と姪孫の関係、年も親子ほど離れているので、まさか恋愛関係に進展するとは思えなかったのだが。★見方によっては近親間のドロドロとした関係に見えるのだが、それに奇異さを感じさせず、最後はジーンと胸に迫るのは作家の筆の巧さだろうか。★四親等だから、結婚できなくはないが。★ドラマ化されているようなので、観てみたいと思った。連城三紀彦「私の叔父さん」

  • 薬丸岳「神の子」

    ★薬丸岳さんの「神の子」(光文社文庫)を読んだ。上下それぞれ500ページを超える大作だった。★戸籍をもたないようは過酷な少年期を送った町田博史。彼には特殊な能力があった。生きていくために彼はその能力を使って犯罪組織に加担する。そして、ある出来事で殺人事件に巻き込まれ少年院に送られる。★少年院での生活が記述され、退院後は、少年院の教官の紹介で町工場に就職。ごく普通の工員として日々を過ごしていた。★その町田博史に、かつての犯罪組織の手が迫っていく。★町田を中心として、さまざまな人々が交錯し、物語が広がっていく。盛りだくさん過ぎて(拡散して)、物語がどの方向に進むのか(収束するのか)予測が不能。それもまた味わいなのだろう。★日本社会を陰で操る黒幕の存在は興味深い。フィクションなので現実味に欠けるが、案外、裏の世...薬丸岳「神の子」

  • 川越宗一「熱源」

    ★川越宗一さんの「熱源」(文春文庫)を読み終えた。時代に翻弄されながらも熱く生きていく人々の物語だった。第162回直木賞受賞作。★主な舞台は樺太。時代は日本が猛烈な勢いで近代化を進め、一方、世界で領土拡張の帝国主義が隆盛した時代。具体的には日清、日露の戦役を経て、第一次世界大戦、第二次世界大戦の終戦までのおよそ50年間。★樺太で穏やかに暮らしていたアイヌの人々も急激な変化に直面する。ロシア帝国、大日本帝国そしてソビエト連邦と支配する政治体制が変わっていく。★主人公はこの樺太で暮らすアイヌの人々だ。そしてもう一人の主人公は、当時、ロシア帝国に支配されていたポーランド人の男。彼は皇帝暗殺計画の罪を問われ、樺太に流刑された。その流刑地で地元のアイヌの人々と親しくなり、その研究が認められて、民族学者として自由を得...川越宗一「熱源」

  • 乃南アサ「禁漁区」

    ★YouTubeに「Gメン’75」と「非情のライセンス」が数本上がっていたので観た。70年代の刑事ドラマ、脚本がしっかりしているから今観ても面白い。音楽もいい。★アマゾン・プレミアムでオーストリアのサスペンスドラマ「血痕」を観た。言葉がドイツ語で馴染みは薄いが、なかなか面白かった。原版のタイトルが「守護天使」で、これがなぜ「血痕」ど題されたのかは不明だが。(もしかして最後の狩り小屋のところから来てるのかな)★マービン・ゲイとエド・シーランの著作権をめぐる訴訟。YouTubeに2つの曲をマッシュアップした映像が上げられていた。これが実に良い感じだ。コード進行が同じだとこんなことができるんだね。時代を超えたコラボに感動した。★さて、小説は乃南アサさんの「禁漁区」(新潮文庫)から表題作を読んだ。最初は非行少年の...乃南アサ「禁漁区」

  • 宮部みゆき「魔術はささやく」

    ★連休を利用して韓国ドラマ「ある日~真実のベール」を観た。女性を殺したと逮捕された普通の大学生。物証は彼の犯行を示唆したが、彼自身は当時ドラッグを服用していて記憶がない。★彼は無実を主張するが誰も耳を貸さない。そんな時、(三流)弁護士と出会う。弁護士は学生の冤罪を晴らすため事件の真相に迫るが、学生には過酷な監獄での生活が待っていた。そして裁判所が下した判決は・・・。★司法制度の盲点を突いていた。映画「ショーシャンクの空に」も思い起こした。最後は意外とあっさり終わった気がする。★さて、宮部みゆきさんの「魔術はささやく」(新潮文庫)を読み終えた。タクシー運転手の叔父が女性をひいた。女性は死亡した。叔父は女性が突然飛び出してきたというが目撃者がおらず、不利な状況に。甥の日下守は事件の真相を突き止めようとする。★...宮部みゆき「魔術はささやく」

  • 宮本輝「眉墨」

    ★快晴の憲法記念日。ゴールデンウィークは曜日感覚がマヒする。★宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「眉墨」を読んだ。なかなか良い作品だった。★胸を病んだ主人公は母や叔母を伴って、軽井沢でひと夏を過ごすことにした。別荘での避暑など思いもよらなかった母親。叔母と共にはしゃいでいたが、数日して体調に異変を感じるようになった。★早速、近隣の病院で検査をするとどうやら癌らしい。主人公は告知しないと決める。★「生きるも良し、死ぬもまたよし」という母親の諦観が印象的だった。若い頃から苦労を重ねた母親がたどり着いた境地なのかも知れない。★すっかり髪が白くなった母親は、寝る前に必ず眉墨を塗るという。彼女がなぜ眉墨を塗るのか、主人公にもわからないが、それは生死の流転を超越した彼女の1つの信仰を表しているのかも知れない...宮本輝「眉墨」

  • 葉真中顕「ロスト・ケア」

    ★葉真中顕さんの「ロスト・ケア」(光文社)を読んだ。第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。なかなか面白く、また考えさせられる作品だった。★43人を殺した男に死刑判決が下される。「彼」は、介護地獄に陥っている人々を見つけ、家族も知らないうちに「処分」を行うのだ。★彼もまた介護の苦しさを体験し、自らと同じような苦しみを抱える人を救いたいというのが、彼なりの理屈だった。★「ドクター・デス」は末期患者に依頼されて安楽死を提供していたが、「彼」はより積極的に手を下している。★「彼」の行いは法的に許されない殺人で、彼自身もそれを自覚している。しかし、法を超えた宗教的な使命感で殺人を実行しているところが印象的だった。★この作品が2013年に刊行され、2016年には「相模原障がい者施設殺傷事件(やまゆり事件)」が起...葉真中顕「ロスト・ケア」

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