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  • 遠藤周作「病める女」

    ★朝日新聞の集金。担当の方は申し訳なさそうに値上げの説明の紙を渡された。値上げするのは朝日新聞の本社で、新聞を販売するのは地域の販売店だ。集金担当者はただ購読料を集金するだけなのだが、購読者との矢面に立ち、ご苦労な様子だった。★私も今回の契約で(といっても2025年までの長期契約だが)購読をやめるつもりだが、それまではせっかくなのでしっかり読んでやろうと意気込んで目を通す。今日は文化欄の「北方謙三が語る直木賞」が面白かった。★5回シリーズで、今日は第4回目。山本一力さんの「あかね雲」が受賞した経緯。ベストセラー作家、東野圭吾さんの受賞が難航した理由。同じく、7度も候補に挙がりながら受賞できなかった馳星周さんのエピソード(8回目にして見事に受賞されたが)。裏話は面白い。★京都新聞の文化欄は渡邉英理さんが「い...遠藤周作「病める女」

  • 宮本輝「トマトの話」

    ★宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「トマトの話」を読んだ。★今は広告代理店に勤めるある男性。ふと同僚たちと学生時代のアルバイトについて語り合うことに。★当時彼は働きながら大学に通う苦学生。少しでも割の良いバイトを探した結果、紹介されたのが深夜の交通整理。道路工事に伴う交通整理だ。★四方から来る乗用車を渋滞させず行き来させ、一方工事場所にアスファルトを積んだダンプカーを誘導する。気を抜くと事故に巻き込まれかねない危険な職場だった。★そこで彼はある年輩の男性と出会う。現場に出はしたものの体が悪いらしく、飯場で寝たきりの生活。彼はその男に頼まれトマトを買ってくる。とはいえ、数日たっても男はトマトを食べない。ただ大事そうに撫でるだけだった。★また彼は男から手紙を託される。快く引き受けたのだが紛失してし...宮本輝「トマトの話」

  • 大薮春彦「野獣死すべし」

    ★大薮春彦さんの「野獣死すべし」(光文社文庫「伊達邦彦全集1」より)を読んだ。★松田優作さん主演の映画では、冷徹な犯罪を繰り返す男の姿が描かれていた。その男は戦地カメラマンで、戦場のあまりに悲惨な現実を見て、心が崩壊してしまったようだ。今の言葉で言えばPTSD(心的外傷後ストレス障害)。★原作は主人公、伊達邦彦の生い立ちを記述する。彼の心的外傷の背景は太平洋戦争だ。ハルピンで育った彼は、戦局の悪化に伴って、北朝鮮、南朝鮮へと移動し、何とか海路日本にたどり着く。その行程がいかに悲惨であったか。★現実世界の価値観、法体系がいかに砂上の楼閣であるかを感じさせる。同時に、悲惨な生育が彼のような「野獣」を産んでしまうのだろう。★理屈はともかく、映画の中の松田優作さんのポーズはカッコいい。狂気の中で彼は何を聞き、何に...大薮春彦「野獣死すべし」

  • 「とっときのとっかえっこ」

    ★サリー・ウィットマン「とっときのとっかえっこ」(童話館出版)を読んだ。小学校の国語教科書に載っていた懐かしい作品だ。★おじいさんのバーソロミューと隣の家の娘ネリーの歳の離れた友情の物語。★赤ちゃんだったネリーの乳母車を押すバーソロミュー。月日は流れ、ネリーは成長し、バーソロミューは老いていく。★やがてネリーがバーソロミューの車いすを押すことに。★立場が逆転しても二人の友情は変わらない。自分が歳をとったせいか、妙に感動した😊★選挙に行ってから映画「野獣死すべし」を観た。何度観ても松田優作さんのエキセントリックな演技が最高だ。「とっときのとっかえっこ」

  • 劉慈欣「郷村教師」

    ★ドラマ「スタートレック:ピカード」は大団円で第3シーズン(そして多分最終章)を終えた。「新スタートレック」のメンバーが一堂に会し(数十年ぶりの同窓会のような感じ)、懐かしかった。俳優はもちろん、声優陣もオリジナル作品と変わらずで良かった。★劉慈欣さんの「円」(ハヤカワ文庫)から「郷村教師」を読んだ。山間の寒村の物語と広大な宇宙のエピソードが交錯する。★寒村の物語は、どこか懐かしい原風景で、これだけでも一つの作品になっている。私財を投じて学校を営み、因習に囚われている貧しい人々の子弟に教育を授ける教師の話。彼もまた貧村に育ち、志ある教師に助けられて成長したのだ。(因習に囚われる人々の様子は魯迅の「故郷」のように感じた。)★彼は病に冒され、最期の瞬間を迎えようとしている。しかし、その最期の時に際しても子ども...劉慈欣「郷村教師」

  • 映画「決戦は日曜日」

    ★選挙戦もいよいよ終盤。ということで、今日は映画「決戦は日曜日」(2022年)を観た。★強い地盤を持ち、政権にあっては防衛大臣を務めた代議士が病に倒れた。後継をめぐって、地元の代議士などの意見が統一せず、結局、代議士の娘が公認を得て出馬することに。★しかし、この娘、政治の世界は全くの素人。更にお嬢さん育ちのわがままときている。★父親の代から引き継いだ政治秘書たちが何とか形を整えようとするが、彼女にとってみれば、あたりまえの政治的慣習が気に食わない。彼女の暴言、暴挙にメディアは群がり、年寄りが仕切る後援会とも険悪なムード。他の代議士たちは隙あらばと利権を狙っている。★嘘がまかり通る政界の常識に嫌気がさし、何度も出馬を辞退しようとするが、その都度、担当の秘書がなだめたり、すかしたり。しかし、遂に限界。いっそ落...映画「決戦は日曜日」

  • 劉慈欣「円」

    ★不思議な数字がある。分数にならない数(循環しない数)を無理数といい、中でも円周率πやネイピア数eは超越数と呼ばれる。★久しぶりに本屋をのぞくと劉慈欣さんの「円」(ハヤカワ文庫)を売っていたので、表題作を読んだ。★中国の史実を援用しながら、架空の世界を描いているSF作品だ。燕の刺客が秦の始皇帝を襲うが、始皇帝は彼の才能を惜しんで、自らに仕えるよう言う。刺客は円の不思議さを説き、円周率の神秘を語る。始皇帝は彼に円周率の計算を命じ、彼は人力計算機をつくり計算に挑むのだが・・・。★2進法を利用した人力計算機は面白いアイデアだ。☆2020年代、今や人工知能(AI)が実用化に向かっている。やがて訪れるのがユートピアなのか、それともデストピアなのか。人間はAIを使いこなすことができるのか。それとも、その奴隷と化すのか...劉慈欣「円」

  • 馳星周「不夜城」

    ★統一地方選挙後半。以前に比べ選挙カーの騒音は比較的控えめだ。立候補者の票割(住み分け)が徹底しているせいか、それとも連呼型の街宣はもはや時代遅れか。★さて、馳星周さんの「不夜城」(角川文庫)を読んだ。東京、歌舞伎町を舞台に中国マフィアたちが覇権を争う話。★昔、出張で東京を訪れたとき、何度か歌舞伎町を歩いたが、危ないところだったんだね。昼間歩く分にはそれほど身の危険を感じなかったが、表と裏の顔があるようだ。★この作品、金城武さん主演で映画化(1998年)されている。歌舞伎町でよくロケができたなと思った。馳星周「不夜城」

  • 東野圭吾「放課後」

    ★小学5年生の生徒が鼻歌で「私そんなに似てるのかな、ウエストランド井口」って歌っていた。何のことかわからず調べてみるとYoutubeで見つけた。なんとも耳から離れないメロディ。「100%勇気」に似ている。子どもたちは流行に敏感だと改めて感心した。★さて、今日は東野圭吾さんの「放課後」(講談社文庫)を読んだ。東野さんの初期の作品。1985年の第31回江戸川乱歩賞受賞作だ。★ある女子高で起こった密室殺人事件。生徒指導の教員が殺された。続いて第2の殺人事件。今度は体育教員。犯行に使われたのは青酸カリ。★密室殺人はどのようなトリックで行われたのか。二人の教員の共通点は。殺人の動機は何か、そして犯人は誰なのか。盛りだくさんの内容だった。★最後にはもう一つの事件が・・・。★東野さんは私と同世代。小峰元さんの江戸川乱歩...東野圭吾「放課後」

  • 重松清「パンドラ」

    ★スクールカーストなどという言葉が言われるようになったのはいつからだろうか。新学期から3日。ノリの良さなどで今まさにカーストが形成されつつあるようだ。子どもたちの世界は大人が考える以上に過酷だ。★さて、今日は重松清さんの「ビタミンF」(新潮文庫)から「パンドラ」を読んだ、中学生の娘がいる家族の物語。★娘が万引きで補導された。共犯で年上の男にそそのかされたらしい。その男、スケボーで世界を目指すというがジゴロで有名。その娘も男の餌食になってしまったようだ。★「あんな男」と思うのは大人の視点。幻想に溺れてしまった娘の洗脳を解くのは容易ではない。父親は自らの無力を感じ落ち込む。★子どもの成長は早い。手の届かなくなる存在に父親は困惑する。かつて自分たちも同じ経験をしたことなど、この時ばかりは忘れている。このあたりは...重松清「パンドラ」

  • 横山秀夫「ペルソナの微笑」

    ★黄砂が襲来しているという。気のせいか喉がカサカサして、たまにせき込む。★新学期が本格的に始まった。塾としては、朝ゆっくりできるのがありがたい。さて、今日は横山秀夫さんの「第三の時効」(集英社文庫)から「ペルソナの微笑」を読んだ。★この短編集、秀作ぞろいで多くがドラマ化されている。「ペルソナの微笑」も放映された。★この連作の面白さは捜査一課内にある3つ班がしのぎを削っていること。班長の同士の対立も面白い。本作は笑わない男「朽木」率いる第1班が捜査に当たる。★隣県で青酸カリを使った殺人事件が起こった。朽木は13年前の未解決事件を思い起こした。まだ8歳だった無垢な少年を「道具(実行犯)」として使用した卑劣な殺人事件だった。★今回の事件はその事件と関係しているのか。朽木は部下に調査を指示する。★自分を防御するた...横山秀夫「ペルソナの微笑」

  • 石田衣良「4TEEN」

    ★4月10日。中学校も高校も入学式。新しい年度が始まる。★今日は石田衣良さんの「4TEEN」(新潮文庫)を読んだ。「4TEEN」とは4人の十代の子どもたちという意味か、それとも14歳という意味か。★14歳の男の子4人が主な主人公。子どもと大人の中間点。14歳から15歳にかけての1年間の出来事を東京・月島を舞台にオムニバスのように描いている。★死体を見つけに冒険をするわけではないが、「スタンド・バイ・ミー」のように様々な経験をしながら、男の子は青年へと成長していく。第129回(2003年)直木賞受賞作。★ドラマ(2004年)では、自転車の滑走シーンが印象的だった。☆久しぶりに卒塾生が訪ねて来た。1人は龍谷大学に進学し、まもなくアメリカに短期留学するという。もう1人は医科大学の看護科に進学し、将来への抱負を語...石田衣良「4TEEN」

  • 東野圭吾「沈黙のパレード」

    ★統一地方選前半戦。維新が自民党(保守対立)の間隙を縫って、ジワジワと勢力を伸ばしているようだ。維新と公明の対立が激化し、国政レベルの連立組み換えまで進むのか。★政治の世界はさておき、今日は東野圭吾さんの「沈黙のパレード」(文春文庫)を読んだ。ガリレオ・シリーズ。湯川教授(教授に昇進したんだ)に定番の草薙警部(彼も今では係長だ)と内海刑事が登場。★歌手を夢見る女子高校生の失踪事件。3年後に彼女の遺体が、遠く静岡でゴミ屋敷の焼け跡から見つかった。捜査の線上に浮かんできたのは一人の男性。彼をめぐっては、警察(特に草薙警部)に苦い思い出がある。★かつて起こった児童誘拐殺人事件。その犯人を起訴するも、完全に黙秘されたため、裁判で無罪となってしまったのだ。★再び、彼は黙秘で逃げ切るのか。そんな時、予想外の事態が起こ...東野圭吾「沈黙のパレード」

  • 恩田陸「夜のピクニック」

    ★最近の新聞は、通信社の記事を切り貼りしたような紙面が目につく。そんな中、今朝の朝日新聞、「くらし」紙面の「追い詰められる女性たち」の記事は面白かった。★子ども二人を抱え、急遽生活苦に陥った女性の話。役所に相談しても埒が明かず、もはやこれまでと死が心をよぎった時、ふと手にしたNPOのメッセージ。これが最後と電話したことで、生をつなぐことができたという。★「子育て支援だ」「少子化対策だ」と政治家たちの声だけは大きいが、本当に必要な支援はこういう共助(即効性、実効性のある対応)なのだと改めて思った。そしてこうした活動が寄付によって支えられているという現状をどう考えるべきだろうか。★さて、今日は恩田陸さんの「夜のピクニック」(新潮文庫)を読んだ。第2回本屋大賞(2004年)受賞作だ。★その高校では高校生最後のイ...恩田陸「夜のピクニック」

  • 安東能明「片識」

    ★春期講座が終わった。10日間と比較的短期だったが、季節の変わり目は身体にこたえる。特に今年は花粉症に悩まされた。★ドラマ「スタートレック:ピカード」の最新回を観る。最終シリーズということだけあって、「新スタートレック」の懐かしいメンバーが勢ぞろいした。オリジナルの放映が1980年代だから、さすがにキャストたちも年をとった。しかし30年を経て再び演じれるというのがすごい。★安東能明さんの「撃てない警官」(新潮文庫)から「片識」を読んだ。人事を担当する警察官が活躍する物語。「片識」とは業界用語でストーカーのことをそう呼ぶらしい。★一方的に好意を寄せ、その気持ちが受け入れられなければ被害妄想的につけまわすストーカー。今回は警察官にストーカーされているとの通報を受け、ことの真相を探り、できれば穏便に解決を図ろう...安東能明「片識」

  • 吉田修一「最後の息子」

    ★今日は近隣の小学校の始業式。明日は中学校の始業式。新しいクラスや担任を想像して子どもたちは戦々恐々。塾の春期講座は明日が最終日。高校生と入学前の新中学1年生だけがやって来る。★ちょっと暇になって、吉田修一さんの「最後の息子」(文春文庫)から表題作を読んだ。★愛にも生き方にもいろんな形があるもんだなと思った。年上の男性(閻魔ちゃんという)と暮らす男性が主人公。閻魔ちゃんはゲイバーを経営し、趣味を同じくする人々が夜な夜な通ってくる。★主人公の男性は特に仕事を持たず、ヒモのような生活をしている。それはそれでバランスを保っているようだ。微妙なバランス。★終盤、男性の母親が田舎から上京する。男性は母親に閻魔ちゃんを紹介しようとするが、閻魔ちゃんは姿を消してしまう。この手の経験は閻魔ちゃんの方が一枚も二枚も上手のよ...吉田修一「最後の息子」

  • ドラマ「運命の人」

    ★朝日新聞が購読料を値上げするという。★前回の値上げから2年。最近、紙面がイマイチで、また購読者が減っているせいか、広告が重複して折り込まれていることもちょくちょく見かけるようになった。★次、値上がりする時、購読をやめようと思っていたが、予想より早い値上がりとなっってしまった。★今さらながら契約書を見ると、なんと2025年7月までの契約になっている。契約日は2022年の8月だからクーリング・オフはとっくに過ぎている。★どうやら2022年の8月に23年の8月から25年の7月まで24カ月の契約をしてしまったらしい。当時、販売店から電話で契約更新の意向を聞かれたので何気なくオッケーを出してしまったのが悔やまれる。★契約だから仕方ないとはいえ、中途で値上げするというのは「公器」としていかがなものか。新聞社と販売店...ドラマ「運命の人」

  • ちんすこう

    沖縄に旅行した塾生から、「ちんすこう」をいただきました。おいしいです😊。「かめ-かめ-」って何かと思ったら「食べで〜」という意味だそうです。ちんすこう

  • 恩田陸「蜜蜂と遠雷」

    ★この週末はちょっとゆっくりできた。明日から春期講座後半戦を頑張りたい。★恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)を読んだ。上巻、下巻合わせて1000ページに迫る大作だった。★ストーリーは映画の予告を観ていたので何となく知っていた。ピアノの国際コンクールに挑む人々の物語だ。エントリー、第一次予選、第二次予選、第三次予選、そして本選と参加者が絞られていく。本選に出れるのはわずかに6名。★キャスティングを見ると、ことの顛末はだいたい予想がつく。予想はつきながらも登場人物の揺れ動く心理状況がスリリングだった。★最初は「ピアノの森」のイメージだったが、主人公は次々と移り変わり、最後はかつて天才少女と呼ばれた栄伝亜夜に行き着く。★才能と努力。どの世界もプロの世界は厳しい。ライバル同士が刺激し合う切磋琢磨が印象的だっ...恩田陸「蜜蜂と遠雷」

  • 吉田修一「横道世之介」

    ★吉田修一さんの「横道世之介」(文春文庫)を読んだ。★大学に進学するため長崎から上京した横道世之介。彼の1年間の東京生活が描かれていた。★何でも損得勘定の世の中にあって、彼の純朴さが際立つ。彼は「いいやつ」なのだ。だから、すぐに友達もできて、バイトも見つかり、そして彼女もできる。★彼は彼なりに一生懸命に生きているのだが、どこかコミカルだ。まずもってサンバクラブに入ったこと、肝心の本番では熱中症で倒れてしまう。★この作品を読むと甘酸っぱくちょっと気恥ずかしい学生生活を思い出す。あの頃は時間が無限にあるように感じていた。★青春小説だが、切なさも残る。時々作品の中で学生時代と現在が行き来する。20年の歳月を一瞬で飛び越せるところは小説の面白さだ。「いいやつ」が短命なのは世のならいだろうか。★併せて映画(2012...吉田修一「横道世之介」

  • 小川洋子「博士の愛した数式」

    ★春期講座の前半戦が終わった。今年は年度末と重なり、バタバタとした日が続いた。★ホッと一息。小川洋子さんの「博士の愛した数式」(新潮文庫)を読み終えた。★交通事故が原因で80分しか記憶が保てない数学博士と彼の身の回りの世話をするために派遣されたヘルパーさん親子の物語だった。★自らの障がいと直面しながら、数学との交流を楽しむ老博士。若くして単身で子を産み、ヘルパーをしながら息子を育てる女性。素直に育った彼女の10歳の息子(博士は彼のことをルートと呼ぶ)。★たまたま出会ったこの3人(そして事情ありげな母屋の義理の姉)が、博士の80分の記憶の中で楽しい時間を過ごす。今を生きることの大切さを教えてくれる。★作中、いくつかの数学の話が出てくる。中でもオイラーの公式は実に興味深い。★作品と合わせて、映画(2006年)...小川洋子「博士の愛した数式」

  • 柴田哲孝「九絵尽し」

    ★春期講座や新旧塾生の入れ替えで忙しく、しばらくぶりの更新となりました。★読書は着々と進んでいます。今、一番面白いのが小川洋子さんの「博士の愛した数式」(新潮文庫)。読書の進み具合に応じて映画の方も観ている。★続いて、吉田修一さんの「横道世之介」(文春文庫)。こちらも映画と同時並行。そして、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎文庫)。コンクールの一次予選まで読み進めた。読み進めるほどに面白い。こちらも映画を観ながら。★次が川越宗一さんの「熱源」(文春文庫)。作品は面白いのだが、登場人物の名前が私の中で定着しない。荒俣宏さんの「レックス・ムンディ」(集英社文庫)は異様な世界に入ってきた。宮部みゆきさんの「魔術はささやく」(新潮文庫)。誰に焦点を当てて読むか思案中。薬丸岳さんの「神の子(下)」。これからどう展開...柴田哲孝「九絵尽し」

  • 乃南アサ「夕立」

    ★暑さ寒さも彼岸までというけれど、今日の宇治は少々肌寒い。冷たい雨がぱらついている。祝日とはいえ、高校に合格し課題を出された生徒が朝から勉強。夕方からは平常通りの授業。★合間を縫って、乃南アサさんの「不発弾」(講談社文庫)から「夕立」を読んだ。★これも美人局というのだろうか。女子高校生が、通学の電車でターゲットを物色。ターゲットが見つかれが、男にさりげなく近づいて痴漢をさせるというもの。★男も最初は素知らぬ顔だが、挑発が数日続けば、魔がさすようだ。★警察につき出し、その場はシブシブ許したことにして、あとからがっぽり慰藉料を頂く魂胆だ。その日も男をうまくハメた。男は中学校の教員で教頭だという。★早速、慰藉料を頂く手はずだったのだが・・・。☆結局は挑発にひっかかる大人が悪い。でも、何か怖い話だった。☆ポケベル...乃南アサ「夕立」

  • 重松清「カカシの夏休み」

    ★重松清さんの「カカシの夏休み」(文春文庫)から表題作を読んだ。★主人公は37歳の小学校教員。今は5年生を担当している。中学生時代の同級生の事故死を知り、その葬儀にかつての仲間が集まった。中学を卒業して以来だ。★彼らの故郷はもうない。ダムの底に沈んでしまったのだ。20余年を経て、家族、仕事などみんな背負うものが増えた。かつての日々を懐かしむ者、過去を封印し前に進もうとする者。★37歳。ふと気づけばがんじがらめで、前にも後ろにも動けない。★主人公も問題を抱えていた。ある児童がクラスに適応できず、時々パニックを起こして荒れまくる。クラスのメンバーはいら立ち、同僚のベテラン教員からは、指導力不足を指摘される。教頭は事なかれを貫く。★それに、子どもの問題はどうやら親に原因があるようだ。しかし、教員にできる範囲には...重松清「カカシの夏休み」

  • 葉真中顕「コクーン」

    ★葉真中顕さんの「コクーン」(光文社文庫)を読み終えた。この作品も面白かった。★いくつもの物語がつながり合ってこの世界が形成されている。コクーンとは繭を意味する。この繭(コクーン)にもいくつもの意味がある。★1995年に銃乱射事件を起こした「シンラ智慧の会」。彼らがある山麓に築いた施設がコクーンだ。モデルはオウム事件で、コクーンは「サティアン」と呼ばれた施設を思い起こさせる。★時代や場所をつなぐのが黄金の翅をもつ蝶だ。バタフライ・エフェクト、パラレルワールドが展開される。★すべてのものはつながり、すべては「なるようになるし、なるようにしかならない」。この諦観が心に残る。★戦中から戦後の復興。高度経済成長にバブル経済。1995年のオウム事件に2011年の北日本大震災。それに性的マイノリティも作品に盛り込まれ...葉真中顕「コクーン」

  • 横山秀夫「クライマーズ・ハイ」

    ★横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)を読み終えた。面白い作品だった。★地方新聞社が舞台。今までの特ネタといえば連合赤軍事件と大久保清事件。ベテラン記者たちは当時の高揚感を懐かし気に語る。古き良き思い出。新聞社はもはや斜陽に入っているのかも知れない。記事よりも派閥争いや縄張り争いで忙しそうだ。★そんな時、日航ジャンボ機123便の事故が起こった。全権を任された悠木という記者が主人公。事故から1週間余りの出来事が熱く語られていく。★怒号飛び交くオフィス。今にも殴り合いが始まるのではという気迫。炸裂する記者魂。スクープを前にした記者たちの高揚感が伝わってくる。抜くか抜かれるか、他者とのスクープ争いも熾烈を極める。★終盤はいささか盛りだくさんになった感がある。しかし、事故原因を巡るクライマックスは手に...横山秀夫「クライマーズ・ハイ」

  • 新田次郎「聖職の碑」読了

    ★今日は公立高校の合格発表。全体としては1倍を切る広き門だが、人気校では5倍を超えるところもある。最近は高校間の格差が顕著だ。塾生たちはそれぞれの志望校に向かってよく頑張った。ホッと胸をなでおろす。★さて、新田次郎さんの「聖職の碑」(講談社文庫)を読み終えた。私は奈良教育大学の院生時代、日本教育史の上沼八郎先生の授業を受けさせていただいた。先生は伊那出身で、授業の中でこの作品について言及された思い出がある。それから40年あまりを経て、やっと読むことができた。★時代は明治から大正にかけて、画一的な教育から子どもの個性を尊重した教育を目指そうとしていた時代の変革期。伝統的、実践的な教育を重んじる校長が推進する修学登山。理想主義を掲げる教員の中には反対論もあったが、校長は決断し実行する。★運悪く、暴風雨に見舞わ...新田次郎「聖職の碑」読了

  • 相場英雄「ガラパゴス(下)」

    ★昨日は近隣中学校の卒業式。明日は公立高校中期試験の発表。季節は確実に動いている。★さて、相場英雄さんの「ガラパゴス」下巻(小学館文庫)を読み終えた。身元不明の自殺者として処理された遺体。コールドケースを扱う田川刑事は鑑識に転属した木幡刑事とともに、その自殺が偽装殺人であることを見抜く。★2人は被害者が沖縄の離島出身者であることを突き止め、彼が本土に渡ってからの足取りを追う。そして見えてきたのは、派遣労働者の過酷な生活だった。★事件を解決した刑事は語る。「普通に働き、普通にメシが食えて、普通に家族と過ごす。こんな当たり前のことが難しくなった世の中って、どこか狂っていないか」。自供を終えた犯人は叫ぶ。「運が悪けりゃ、人間として扱ってもらえない世の中にしたのは誰だよ」と。★「貧乏の鎖は、俺で最後にしろ。」被害...相場英雄「ガラパゴス(下)」

  • 薬丸岳「神の子(上)」

    ★今までが忙しすぎたのか、中学3年生の受験が終わると拍子抜けしたほど、時間が余っている。今日は4月からの月謝袋をつくった。60余名のうち、何人継続してくれるやら。そして新規生は。★そんなことを考えながら、薬丸岳さんの「神の子(上)」(光文社文庫)を読み終えた。超越した知能をもちながら、家庭環境に恵まれず、生きるために犯罪者組織で働いた町田博史。ある出来事で人を殺してしまい少年院に送られる。そこでも異次元の才能を見せた彼は少年院を出てからある工場で働くことに。★一方、彼が属していた組織は、再び彼の背後に現れる。そして物語は下巻へと進む。★話は変わって、youtudeで「愛染かつら」(1938年)が上がっていたので垣間見ている。もう80年も前の映画だけれど、これはこれで面白い。高石看護婦役の田中絹代さんが案外...薬丸岳「神の子(上)」

  • 大江健三郎「人間の羊」

    ★大江健三郎さんの訃報に接し、大江さんの「死者の奢り・飼育」(新潮文庫)から「人間の羊」を読んだ。★アルバイト学生は、酔っぱらった外国兵たちとたまたまバスに乗り合わせてしまった。ささいなことからトラブルとなり、学生は下着をはがされ、尻をむき出しにされ、羊のように扱われる。★外国兵の興奮はエスカレートし、学生以外にも何人かの男性が同じように尻を丸出しにされてしまう。★外国兵たちがバスから降りた後、バスに乗り合わせて自らは犠牲にならなかったものの一部始終を見ていた教員が被害者の学生に警察へ訴え出るように言う。★教員は彼を強引に交番に連れて行くものの、学生は口を閉ざしてしまう。教員は正論を述べるのだが・・・。★加害者、被害者、傍観者。現代の「いじめ」にも似た構図を感じた。大江健三郎「人間の羊」

  • 宮本輝「蝶」

    ★好天が続く。まだ3月だというのに夏日だという。半年ぶりにほとんど授業のない1日。1年間積もり積もった書類や授業用プリントを片付ける。ポリ袋4つ、A4のコピーの箱4つ分。★ドラマ「スタートレック:ピカード」第3シーズンは面白い。「ザ・スウォーム」は第2話、第3話を続けて観た。海洋生物の異変に新種のバクテリアが絡んでいるようだ。日本の俳優では木村拓哉さん、平岳大さんが登場してきた。★大掃除の休憩時間に、宮本輝さんの「星々の悲しみ」(文春文庫)から「蝶」を読んだ。ガード下の「パピヨン」という名の理容室。深夜まで明かりが点いているかと思えば、長期の休業もたびたび。知人の話によると「お化け屋敷」のようだという。向かいのアパートに住む主人公は好奇心半分で行ってみた。★想像とは裏腹に、普通の清潔そうな店で、店主も普通...宮本輝「蝶」

  • ドラマ「ザ・スウォーム」

    ★中学3年生が卒塾したので、時間に余裕ができてきた。手当たり次第に読書三昧。★今、読み進めているのは11冊。好きな本を好きなペースで読んでいる。1番進んでいるのは薬丸岳さんの「神の子(上)」(光文社文庫)。400ページ辺りまで読み進めたが、550ページ以上の大作で、更に下巻もある。★次に進んでいるのが、横山秀夫さんの「クライマーズ・ハイ」(文春文庫)。日航機事故を受けて緊迫する新聞社の雰囲気がリアルに伝わってくる。次が新田次郎さんの「聖職の碑」(講談社文庫)。荒天の中、次々と斃れていく生徒たち。寒さが伝わってくる。★続いて、相場英雄さんの「ガラパゴス(下)」(小学館文庫)。ドラマを先に観たので後追い。葉真中顕さんの「コクーン」(光文社文庫)。オウム事件をモデルにしている。いろいろと考えさせられる。★恩田陸...ドラマ「ザ・スウォーム」

  • ドラマ「相棒21」

    ★公立高校の中期入試が終わり、今年度の行事はすべて終了。ほっと一息ついて、税務署へ確定申告。そのあとおよと半年ぶりに散髪に行った。1000円カットのお店、しばらく前に1100円になっていたが、今日行くと1200円になっていた。★さて、録りだめしてあった「相棒21」を観る。いよいよ終盤。視聴者を飽きさせない工夫を感じる。★「相棒」シリーズも大団円に向け、着々と準備が進んでいるようだ。第19話では杉下警部が捜査の途上で歴代の相棒にちなんだ名前の人に再会するし、第20話では2代目相棒で今は警察庁に勤めている神戸尊や元鑑識の米沢さんが登場する。★第20話、第21話は今シーズンの最終話であるとともに400回記念になるとか。鉄道ミステリーや田舎の塾に集う子どもたちがカギを握る面白い展開になっている。15日の最終回は見...ドラマ「相棒21」

  • 江國香織「晴れた空の下で」

    ★中学校の学年末テストが終わり、今は高校の学年末テスト対策。公立高校の中期試験まではあと3日となり、もはやここまで来れば開き直るしかない。★ある高校2年生の現代文のテスト範囲は、評論が2つ。竹内啓さんの「偶然とは何か」と村上陽一郎さんの「科学・技術と社会」をテーマにしたもの。どちらも教科書用に原典よりは簡易にしてあるが、それにしてもややこしい文章だ。★教科書に採用されている作品ということで、江國香織さんの「晴れた空の下で」(「つめたいよるに」新潮文庫所収)を読んだ。★「デューク」で感動させられた江國作品。「晴れた空の下で」もジーンとくる。★桜が美しい春の日。食卓では老夫婦が食事の様子。この夫婦、最近物忘れがひどくなってきたようだ。今日もゆっくりと食事をとった後、夫婦そろって川べりを散歩。★のどかな日々なの...江國香織「晴れた空の下で」

  • ドラマ「First Love 初恋」

    ★学年末テスト1日目。そして、今日は高校の卒業式なので、1,2年生は休みということで、塾で学年末テストの勉強。★本を読む時間がなかったので、ネットフリックスドラマ「FirstLove初恋」をダイジェストで観る。★宇多田ヒカルさんが「Automatic」「FirstLove」と鮮烈に登場してから早くも20年が経つんだね。今さらながらビックリする。この20年間、自分はどのような歩みをしていたのか。毎日毎日は一生懸命に生きていたはずなのに、振り返ってみると何も残っていない気がする。★さてこのドラマ、高校生の2人が恋に落ち、それからいろいろあって離れ離れになり、20年の時を経て再会するという話。時間軸が行き来するので少々混乱する。とはいえ、ハッピーエンドで良かったなぁと思った。★現実問題として、どんなに燃え上がっ...ドラマ「FirstLove初恋」

  • 映画「PLAN75」

    ★公立高校中期テストまであと9日。近隣中学校の学年末テストまであと2日。いよいよ今年度の締めくくり。今日は新年度に向けて在塾生向けの継続案内をつくった。スポーツ選手の契約更改のように1年の成果が判定される。★新規生の募集も急がねば。急に需要が増えたとかでラスクルは受け付けを止めていた。回復次第広告を発注しなければ。最近は新聞購読者が激減し、折り込み広告の効果も下がっているが。★さて、昨夜は映画「PLAN75」(2022年)を観た。少し前に、ある人が「高齢者は集団自決すべき」と言って話題になっていたが、この作品に通じるものがある。★75歳以上の高齢者は安楽死を選択できるという法律が通った。主人公の女性は78歳。高齢を解雇され、月15万円程度の収入を断たれる。この分では住居からも退去させられそうだ。新たな仕事...映画「PLAN75」

  • 「トランプ」を知らない子どもたち

    ★「トランプ」といっても某国の前大統領のことではない。カードゲームのトランプだ。★中学2年生、数学の学年末テストの範囲は「平行四辺形」と「確率」。ところで、確率の問題で「トランプ」の問題が出される。★たとえば、トランプでジョーカーをのぞく52枚のカードがある。1枚ひいたとき、「ハートが出る確率はいくらか」とか「7が出る確率はいくらか」「絵札が出る確率はいくらか」といった感じ。★至極簡単な問題だが、これがわからない生徒が意外と多い。そもそもトランプのことをよく知らないのだ。「7ならべ」や「ババ抜き」などで遊んだことはあるようだが、カードについてよく知らないのには驚いた。★マークが4種類(ハート、ダイヤ、スペード、クローバー)あることや、1つのマークについて13枚あること、絵札(J、Q、K)がそれぞれのマーク...「トランプ」を知らない子どもたち

  • 韓国ドラマ「ナルコの神」

    ★公立高校前期試験の結果が出そろい、まずまずの戦績をおさめる。息つく間もなく中学校そして高校の学年末テストだ。★今日は、ネットフリックスで韓国ドラマ「ナルコの神(原題スリナム)」を観た。南米の小国スリナムで麻薬ビジネスを営む男と彼を捕まえようとする国家情報院のドラマだった。★一旗揚げようとスリナム入りした民間人の男が国家情報院と協力して活躍する。民間人にしては肝が据わっている(銃を向けられてもビビらないし、自ら銃撃戦にも参加する)のはドラマだからか。★「工作」で北に潜入するスパイを演じたファン・ジョンミンがこの作品では麻薬王を演じる。★ネットフリックスは次々と映画やドラマを制作しているけれど、よく資金が続くなぁと思った。韓国ドラマ「ナルコの神」

  • 中嶋博行「検察捜査」

    ★中嶋博行さんの「検察捜査」(講談社文庫)を読んだ。法曹界の現実と裏側を知ることができた。★検察官は裁判官や弁護士と同じく、司法試験合格者が就任するという。近年、検察官を志望する司法修習生が減少。案件は増える一方なのに、このままいけば検察という組織さえ崩壊しかねないという。★そんな折、弁護士会の次期会長になろうかという重鎮が拷問の上殺害される。事件を担当したのは横浜地検の若い女性検事。男社会の法曹界、上司たちにも真っ向から意見を言うその態度は煙たがられる。しかし、彼女はそんなことは苦にもせず、県警と情報交換をしながら真相に迫っていく。★事件の裏には、検察制度をめぐる2つの改正案があった。★こんなことで連続殺人が行われるのかは疑問に思ったが、権力の座にある狂信的な人の考えることは計り知れない。検察官を増やそ...中嶋博行「検察捜査」

  • 相場英雄「ガラパゴス」(上)

    ★ここにきて猛烈な寒波。寒暖の差が大きいので体にこたえる。いよいよ明日は公立高校前期の発表だ。★さて、今日は相場英雄さんの「ガラパゴス」(小学館文庫)の上巻を読み終えた。先日、NHKのドラマを観たので、おおよその流れは知っている。しかし原作はさらに詳しく、日本における企業の実態、日本の資本主義を支える底(あるいは裏)の部分が描かれていた。★警視庁捜査一課継続捜査担当の田川刑事は鑑識課に異動した同期の木幡に依頼され、身元不明者の捜査に当たる。その中で「自殺」と処理された不審な遺体を見つける。★田川刑事たちは他殺と見て、再捜査に踏み切る。そこから見えてきたものは、派遣労働者、偽装請負といった社会の底辺で働かざるをえない人々の実態だった。★文庫の帯には「聞こえるか。人間の壊れてゆく音が」と書かれている。人間も壊...相場英雄「ガラパゴス」(上)

  • 伊坂幸太郎「ホワイトラビット」

    ★伊坂幸太郎さんの「ホワイトラビット」を読んだ。タイトルは作品の中で主要な役割を演じる兎田孝則の名前から来ているのだろうか。★兎田は焦っていた。愛妻を誘拐され、彼女を殺されたく無くば、ある人物「オリオオリオ」を捜して連れて来いというのだ。★兎田はオリオオリオを追っていたが、ところが、どう間違ったのか、ある家に籠城するする羽目に。その家にもまた秘密が隠されていた。★さまざまな出来事が次々と絡んでくるところは伊坂作品ならではだ。ただ、この作品はところどころで作者が顔を出す。これにはちょっと違和感がある。作品の中で何度も出てくる「レ・ミゼラブル」へのオマージュなのか。★伊坂作品の中ではイマイチだったが、とにかくハッピーエンドで良かった。伊坂幸太郎「ホワイトラビット」

  • 澤田瞳子「若冲」

    ★公立前期テストの結果待ち、学年末テストまではあと10日ということで、束の間の平穏。★今日は澤田瞳子さんの「若冲」(文春文庫)を読み終えた。力のある作品だった。★伊藤若冲、1716年の生まれというから江戸時代中期から後期にかけての画家だ。京都は錦通りの青物問屋の主だが、旧家に馴染めない妻を若くして亡くし、これがトラウマとなったのか、家督を譲り隠居。妻を救えなかった悔恨の気持ちを好きだった絵に込める。奇抜な構図や色使いが人気を得る。★絵の評判は高まり、寺院などから依頼が相次ぐが、心は晴れない。一方、妻の弟は若冲を姉の仇のように思い、その憎しみを自らの絵(主に若冲の贋作)に込める。★憎しみ合い、すれ違いながらもこの両者はお互いがライバルのように切磋琢磨する。★この作品には日本史の授業で習った画家たちが次々と出...澤田瞳子「若冲」

  • 瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」

    ★入試は前半の山場が過ぎ、朝から夜遅くまで教室を埋めていた塾生も少なくなった。ホッとする気持ちと一抹寂しさを感じる。★さて、今日は瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」(文春文庫)を読み終えた。★幼い頃に母を病気で亡くした優子。わけあって親がコロコロと変わり、苗字が3回も変わる。ただ、どの親も良い人で、優子にあふれんばかりの愛情を注いでくれた。★無事に高校を卒業するシーンは第1章のクライマックスだ。ジーンとくる。★第2章は、優子が今の父親、森宮さんに彼氏を紹介するシーンで始まる。結婚を考えているという二人、森宮さんは強く反対する。若い二人はなんとか賛成してもらえるように努力し、そして遂に結婚式の場面に。この辺りになると号泣だ。★出会い、別れた親たちが一堂に集まり、二人を祝福する。★読み進めるうちに感...瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」

  • ドラマ「スタートレック:ピカード」

    ★高校受験、公立の前期が終わり、その結果を待つとともに中期に向けた最後の追い込みが始まる。大学受験の方は私立の結果が発表され、立命館大学、龍谷大学を受験した生徒は無事に合格。あとは国立の前期を残すのみとなった。★録画しておいたNHKのドラマ「ガラパゴス」を観た(原作はまだ上巻を読んでる途中だが、待ち切れず観てしまった)。非正規労働者(派遣労働者)の過酷な現実、企業は正規労働者→非正規労働者→外国人労働者と労働者を変えて人件費を削減、更には原材料費までケチって利潤を上げようとする。そのツケは安全性の低下。★そして企業の知られたくない秘密を知った派遣労働者が偽装殺人されるというもの。久々に見る織田裕二さんの刑事姿。悪徳刑事を演じるのは伊藤英明さん。二人の対決が見ものだ。★物価が上昇し、政府は企業に賃上げを求め...ドラマ「スタートレック:ピカード」

  • 京都府公立高校前期入試

    ★私立高校の入試が10日から12日。その結果発表が12日から14日。今年も無事に全員合格。ありがたい。そして今日は、京都府立高校の前期入試だ。★国語は、李禹煥さんの「両義の表現」、野間秀樹さんの「言語存在論」からの出題。どちらも比較的新しいものだ。結構難解な文章なので、中学3年生でどれほど読めたか。古文は「沙石集」から「常州に、観地房の阿闍梨と云ふ真言師・・・」というもの。要は、会場の空気を読まず、長い説教をする導師を戒めたもの。★式典でのスピーチなど、長い話をする人は確かにいるなぁ。「目出たき事も、人の心に飽く程になれば、益無し(どんなに素晴らしい話も人が飽きるほどでは意味がない)」という。★生徒たちが受験に行っている間は結構暇なので、ネットフリックスで「メシア」を観た。内戦が続くシリアに1人の若者が現...京都府公立高校前期入試

  • 新田次郎「聖職の碑」

    ★京都府の私立高校入試が始まった。受験した皆さん、お疲れさまでした。あとは結果を待つのみ。実力をイマイチ発揮できなかった人、受験はまだ始まったばかりです。公立の前期、私学の1.5次、公立の中期と続きます。次のテストで頑張りましょう。★さて、今日は塾生が少ないので、ネットフリックスでドラマ「真夜中のミサ」を観た。天使(いや悪魔)が人々を襲い、それに血を吸われた者は悪魔化(吸血鬼のような感じ)するというもの。基本はゾンビが人を襲うホラームービーだが、それに宗教色が練り込まれている。★エンディングは仏教的な宇宙観、諸法実相的な境地を語っているような気がした。★読書の方は、新田次郎さんの「聖職の碑」(講談社文庫)を読み始めて、これがなかなか面白い。明治時代、近代化を駆け足で進める日本は、富国強兵のため画一的な教育...新田次郎「聖職の碑」

  • 野沢尚「殺し屋シュウ」

    ★遂に明日は京阪神の私立高校入試。天気が荒れそうなのが気がかりだ。早くも奈良の私学を受験した生徒からは合格の知らせ。今年も緊張の高まる季節がやってきた。★さて、呉勝浩さんの「スワン」(角川文庫)は200ページでリタイア。ネットで知り合った3人組がショッピングモールで無差別テロ。大量の死傷者が出て、犯人も自ら命を絶った。破滅的な犯罪だ。★たまたま事件に遭遇し、生き残った女子学生が無慈悲なバッシングを受け、一方で事件を体験した人々が「お茶会」と称する集まりに呼ばれる。★テロの描写や女子学生への心のない非難は興味深かったが、「お茶会」あたりからわけがわからなくなってきた。多分、この後でいろいろな真相が暴露されるのだろうが、耐えきれなくなった。★野沢尚さんの「殺し屋シュウ」(幻冬舎文庫)を第4章の途中まで読んだ。...野沢尚「殺し屋シュウ」

  • 受験まであと3日

    ★京都の私立高校入試が10日から始まる。最近は幅広く受験生を確保するため(まぁ受験料を稼ぐために)前期・後期(あるいはA日程・B日程)と2回受験機会を設ける高校が増え、10日から12日まで、受験は続く。★一方、京都府の公立高校前期入試まであと9日。昨夜、教育委員会から志願者数が発表された。全体としては私学志向がさらに増え(就学援助が充実してきたのも理由に1つ)、公立全体としては過去最低の倍率となった。★人気のある学校とそうでない学校の格差はますます広がりつつある。多くの高校で前期で合格できるのは全体の30%なので、倍率が3倍以内なら、中期試験でほぼ全員が合格できる。(なぜ、前期、中期があるのかは大人の事情だ。優秀な生徒を私学にとられたくないという公立側の本音だ。この方式に落ち着くまでには紆余曲折があった。...受験まであと3日

  • 吉田修一「熱帯魚」

    ★明日は奈良の私立高校入試。塾生が一人受験する。そして京都の私立高校入試は今週の金曜日。さすがに切羽詰まってきた。★忙しすぎる毎日。しかし少しずつでも読書を進めたい。今日は吉田修一さんの「熱帯魚」(文春文庫)から表題作を読んだ。★大工をしている若い男・大輔が主人公。行きつけの雇われママ(そしてその幼い娘)と同棲をはじめ、それに父母が離婚したため生き別れていた弟・光男も加わる。★弟は熱帯魚を見て日々を過ごし、あまりに無為なのを見かねて大輔は建築現場に連れていくが、やはり役には立たず、みんなの笑われ者になって、やめてしまう。★大輔は心優しいのだが、どうも人づきあいが不器用だ。彼はこれからどう生きていくのか、気がかりを残して作品は終わる。★随所に、吉田さんの筆の巧さを感じる。★読みかけの本がたまってきた。瀬尾ま...吉田修一「熱帯魚」

  • 吉村昭「死顔」

    ★高校入試前あと8日。自分が受けるわけではないが、何かそわそわワクワクする。★さて今日は、吉村昭さんん「死顔」(新潮文庫)から表題作を読んだ。長編作品の合間に、五十音の後ろから比較的短い作品を読んでいるが、たまたま昨日に続き「死」をテーマとした作品になった。★「死顔」は吉村さんの遺作だという。9男1女に恵まれた吉村さんの兄弟も、戦中、戦後を経て、4男だけになってしまった。その内、弟が病で亡くなり、そして今また次兄が死の床にある。★もはや70代も半ばの自分と6歳年上の兄だけになってしまった。自分にも遠からず死は訪れるであろう。その日を思い浮かべながら、淡々と筆は進む。☆死を気にしすぎてビクビクしても仕方がない。有限の時間をいかに有意義に過ごすか。そんなことを感じた。とはいえ、日々の多忙に死さえ忘れる毎日だ。...吉村昭「死顔」

  • 渡辺淳一「宣告」

    ★高校受験までと9日。年末から通っていた歯医者が今日で一段落。痛みなくものが噛めるありがたさを痛感する。★さて今日は、渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)から「宣告」を読んだ。「宣告」といえば先ごろお亡くなりになった加賀乙彦さんの作品も読んでみたいが、今回は渡辺作品。★末期がんに冒された著名な画家。主治医は「宣告」を迷った挙句、残された時間を作品に費やしてほしいと「宣告」に踏み切る。★覚悟はしていたとはいえ、余名宣告は死刑の執行を待つようなもの。画家も困惑する。衰弱も進んでいく。主治医は宣告したことを後悔し始める。★そんなあるとき画家は外泊を申し出る。故郷を描きたいという。それから数か月。衰える身体とは裏腹に目は輝きを増し、画家は遂に作品を完成させ、死を迎える。★画家は確かに作品を残したが、死期を早めたの...渡辺淳一「宣告」

  • 筒井康隆「モナドの領域」

    ★YouTubeを見ていると「帰ってきたウルトラマン」のエピソード「怪獣使いと少年」(1971年)が問題作だというので観てみた。身寄りのない少年が地球探査に来た宇宙人に助けられ生活を共にするが、隠された宇宙船を見つけるために穴を掘り続ける少年を気味悪がる町に人々が、彼らを迫害するというもの。★彼らの住処が河原の廃屋で、人間に変身した宇宙人が「金山」と名のっていたのも意味深だ。★いじめにせよ、迫害にせよ、自分たちと異なる人々を排除しようとする人間の残酷な性向がよく描かれていた。時代は移り変わり「多様性を認めよう」といわれるようになった時代でも、いじめは根絶しない。人間の性(さが)は結構深そうだ。★さて、今日は筒井康隆さんの「モナドの領域」(新潮文庫)を読んだ。80歳を越えられた作者の「最高傑作にして、おそら...筒井康隆「モナドの領域」

  • 角田光代「ツリーハウス」

    ★中学3年生の学年末テストが終わり、高校受験まであと10日になった。バタバタと時が流れじっくり読書もできなかったが、ようやく角田光代さんの「ツリーハウス」(文春文庫)を読み終えた。★新宿西口に店を構える「翡翠飯店」。その店を経営する3世代の人々の物語だった。★初代の祖父の死から物語は始まる。残された祖母を伴って、息子と孫はかつて祖父母が暮らした満州(中国東北部)を訪れる。時代は一気に戦前へ。★ふたりはどうして満州に渡ったのか。そして、いかに祖父母が出会い、いかに戦火を切り抜け、生き延びて日本に帰ってきたのか。終戦直後、高度成長、やがてバブルもはじけて、店は祖父から息子へと受け継がれる。★本書の主人公は「ある家族」であるが、同時に「時代」であると感じた。時代の変遷の中で、人はどう生きたか、そしてどう死んでい...角田光代「ツリーハウス」

  • 吹雪

    ☆60年あまり生きてきて、経験したことのないような猛吹雪です。わずか1時間で雪景色。☆明日から中学3年生の学年末テストですが、予定通りあるのやら。☆塾も今日は開店休業です。吹雪

  • 有栖川有栖「蝶々がはばたく」

    ★寒さが身に沁みる。連日、鍋で束の間の暖をとる。昨日は寄せ鍋、今日はごま豆乳鍋。最近は出汁を売っているので手軽に鍋がつくれる。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選35どたん場で大逆転」(講談社文庫)から、有栖川有栖さんの「蝶々がはばたく」を読んだ。★お馴染みの火村助教授と作家のアリス、今回は冬の醍醐味、越前ガニを食べに北陸に行くという。★アリスがたまたま出会った中年男性。車窓からビックリしたように向かい側のホームを見ていた。小説のネタにでもできればと興味を持ったアリスは、その事情を聴くと、35年前に蒸発したカップルを見かけたという。★なぜ二人は足跡も残さずに姿を消したのか。火村たちは謎解きに挑む。★相場英雄さんの「ガラパゴス」(小学館文庫)が織田裕二さん主演でドラマ化されるという。楽しみだ。有栖川有栖「蝶々がはばたく」

  • 小杉健治「絆」

    ★京都の私立高校入試まであと19日。いよいよ迫ってきた。こんな折、猛烈な寒波が来るという。何とか無事に試験までたどり着いて欲しいものだ。★さて、今日は小杉健治さんの「絆」(集英社文庫)を読み終えた。法廷小説の最高峰の1つかな。★ある女性が夫殺しで起訴された。本人も自供しているので、誰もが簡単にケリがつく事案だと考えていた。ところがただ一人、法曹の表舞台から引退していた原島弁護士だけが、彼女の無罪を主張し続ける。★なぜ彼女は自ら罪を被ろうとしているのか。事件の背後には、複雑に入り組んだ人間模様と障がい者のいる家族の葛藤が見え隠れする。★最初は検察官、弁護人が交互に証人に証言を求める裁判の形式になじめなかった。しかし読み進めるうちに、原島弁護士の謎解きに興味がそそられる。真相を早く知りたい読者、もったいぶるよ...小杉健治「絆」

  • 福永武彦「廃市」

    ★新聞で小谷野敦さんの「直木賞をとれなかった名作たち」(筑摩書房)の広告を見て、心ひかれた。先日、今期の芥川賞、直木賞の発表があったが、受賞作の影には候補作があり、中には何らかの理由で候補にも上がらない名作がある。★早速、小谷野さんがどのような作品を選択されているのか、目次を見る。既に読んだ本もあるし、聞いたこともないような本もある。そのリストの中から、今日は福永武彦さんの「廃市」を読んだ。★ある田舎町が大火で焼けたと聞いて、主人公は10年以上前、その町に滞在したひと夏の出来事を思い出す。★当時、主人公は大学生で卒業論文を仕上げるためその町に滞在していた。そこで出会った姉妹。姉は結婚していたが夫とは別居中だという。夫は外に愛人がいるとも。妹は決して美人ではなく、どちらかといえばお転婆だが、主人公は仲良くな...福永武彦「廃市」

  • 佐伯一麦「還れぬ家」

    ★少しずつ読み進めていた佐伯一麦さんの「還れぬ家」(新潮文庫)を読み終えた。★作家の「私」に実家から電話があった。父親が認知症になったという。父親の面倒は母親が見ていたが、父親の病状の進行と共に母親も高齢となり、手に負えなくなったらしい。★それから1年間。父親が誤嚥性肺炎で亡くなるまで、認知症の家族を抱える苦労が語られていく。☆家族では手に負えなくなったとき、最近は施設などが充実しつつあるが、それでもタイムリーに利用できるかはどうかは運しだいだ。☆自らの病気にしても、家族の介護にしても、その苦労は結局は経験したものでないとわからない。誰もが直面する課題ではあるが、最初はみんな初体験で、右往左往しながら、何とか手立てを模索していく。☆私も20年間父親を介護し(私の父は認知症ではなかったが脳出血にともなう半身...佐伯一麦「還れぬ家」

  • 柴田哲孝「鯨のたれ」

    ★淀川河口に迷い込んだクジラの「淀ちゃん」は結局死んでしまった。そもそも弱っていたのかも知れない。死んだら死んだで、「怪獣」ではないが「海獣のあとしまつ」が大変なようだ。★鯨といえば、私が小学生の頃は給食の定番だった。その後捕鯨が制限されたのですっかり高級品となり、おでんのコロや鯨ベーコンなどなかなか口にできなくなった。★ハリハリ鍋など懐かしいが、今食べると独特の生臭さがあって、あまり積極的に食べようとは思わない。★さて、今日は柴田哲孝さんの「狸汁」(光文社文庫)から「鯨のたれ」を読んだ。麻布十番に店を構える「味六屋」の物語。「鯨のたれ」は、アパレルで一世を風靡したものの競合との競争に敗れ会社をつぶした男がネタを振る。この男、生計を立てるために食い物商売を始めようというのだ。★このエピソードに出てくるのが...柴田哲孝「鯨のたれ」

  • 梅崎春生「飢ゑの季節」より

    ★今日も高校受験に向けての日曜特訓。入試まで4週間を切った。★朝日新聞「日曜に想う」の曽我豪さんの「分断社会小林秀雄はこう想う」が興味深かったので、小林秀雄の「無私の精神」を読む。「ごもっとも」「ご覧の通り」が口癖の有能な実業家を例に挙げ、物の動きを尊重し、それに応じて自己を日に新たにする「無私」を説く。★曽我さんの文章は虚しい対立を続ける政治状況を批判し、古い解釈や知識を捨て、課題に挑戦できる新世代のリーダーの登場を期待する。政治のみならずジャーナリズムにも警鐘を鳴らしている。★今年の共通テスト、梅崎春生さんの「飢ゑの季節」から出題されていたので、問題文を読む。太平洋戦争後、食糧難の時代に広告会社に職を得た主人公。生活もままならない薄給に嫌気がさして会社を辞める。★それにしても1日1食の食事にありつくこ...梅崎春生「飢ゑの季節」より

  • 柚月裕子「朽ちないサクラ」

    ★今日は今年度第3回目の英検。無事に終了した。共通テスト第1日目はどうだっただろうか。★さて、今日は柚月裕子さんの「朽ちないサクラ」(徳間文庫)を読んだ。「孤狼の血」のような凄味や「盤上の向日葵」のようなスリリングな展開には欠けるが、それなりに面白かった。★本作の主人公は警察官ではなく警察で事務を執る職員。友人の新聞記者との会話で不用意な発言をしたばかりに、それがスクープになり、所轄署は窮地に陥る。★新聞記者は自分のせいではないと弁解し、真相を解明するといった矢先、殺される。★どうやら事件の背後にはカルト教団の影が。しかし、その背後に更に黒幕が。底の浅い話だと思わせておいて「実は」とどんでん返しをするところが面白かった。刑事警察と公安警察の駆け引きも面白かった。★この作品、どうやらまだまだ続きそうだ。柚月裕子「朽ちないサクラ」

  • 連城三紀彦「裁かれる女」

    ★明日は大学入試の共通テスト。塾生の高校3年生は高校を休み、朝から塾で自習。中学入試の前、学校を休む小学生の話はよく聞くが、高校にもこの風潮が浸透しているようだ。とにもかくにも彼らの健闘を祈りたい。★そして明日は英検の今年度第3回目テスト。朝から受験生がやって来る。何かとバタバタした日が続く。★さて、そんな時間の合間を縫って、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選36殺ったのは誰だ?!」(講談社文庫)から連城三紀彦さんの「裁かれる女」を読んだ。★ある女性弁護士のところに依頼人らしき男がいやってきた。自分は「妻」殺しの容疑者としてまもなく警察に逮捕されるから弁護してほしいという。突然の依頼にとまどいながら、話だけは聞くことにした弁護士。彼女に記憶はなかったが、男は弁護士の同じ大学で同じく法曹界を目指して...連城三紀彦「裁かれる女」

  • 貫井徳郎「子を思う闇」

    ★塾生、特に小学生の女子の間で「ストプリ」が大人気だ。「わたしの推しは、りーぬくん」とかなんとか賑やかだ。ドームコンサートの映像などを見ると人気の凄さがわかる。★録りだめしてあった「相棒」を観る。亀山刑事が容疑者となる第3話、「最後の晩餐」と題する第4話を観る。特に第4話は面白かった。チャップリン男「街の灯」の引用が泣かせる。脚本が良いと感じた。刑事ドラマであると同時にヒューマンドラマだ。★ドラマで視聴率10%得るのが難しい時代だが、人気を維持し続けるドラマはさすがにすごい。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選36殺ったのは誰だ?!」(講談社文庫)から、貫井徳郎さんの「子を思う闇」を読んだ。両親が息子の暴力に耐えられず、息子を殺すという話。★子の親殺し、親の子殺しというのは実に悲惨だ。愛情が...貫井徳郎「子を思う闇」

  • 吉行理恵「小さな貴婦人」

    ★日曜日は模試。そして月曜日で冬期講座が終わった。今日から新学期。学校から下校する生徒たちを見て、季節の移ろいを感じる。そしていよいよ受験までカウントダウン。京都の私立高校入試まで31日となった。★さて、読もうと思ってなかなか読めなかった吉行理恵さんの「小さな貴婦人」(「女性作家シリーズ16」角川書店所収)を読んだ。★この「女性作家シリーズ」、全24巻刊行され、女性作家のなかなか良い作品が収められている。何かと世間を騒がす角川書店だが、良い仕事もしていると思った。★「小さな貴婦人」、題から幼いながらも気品を備えた少女をイメージしていたが、内容は全然違った。主人公がかつて飼っていた「雲」という名の猫の話あり、雑貨屋で買ったぬいぐるみの話あり、雑貨屋で知り合った詩人の話あり、作中作ありという感じだった。★実体...吉行理恵「小さな貴婦人」

  • 黒川博行「カウント・プラン」

    ★年末年始と好天が続いたが、今日は久しぶりに小雨がぱらついた。正月気分もあっという間に去り、明日は今年度最後の五ツ木の京都模試だ。高校受験まであと5週間。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選36殺ったのは誰だ?!」(講談社文庫)から黒川博行さんの「カウント・プラン」を読んだ。★スーパーマーケットチェーンに脅迫状が届く。店内に毒物を置くという。店から連絡を受けた大阪府警の刑事が現場に向かう。★犯人の目的は何か。本当に毒物が使われるのか、それとも悪いイタズラなのか。そんな折、ペット売り場で熱帯魚が大量死する。毒物、青酸化合物が使われたようだ。警察は青酸化合物を扱う業者を懸命に洗い、ある人物にたどり着く。★その男は計算症という強迫神経症に苦しんでいた。★短い作品だが面白かった。刑事たちの大阪弁も良...黒川博行「カウント・プラン」

  • 伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

    ★月日が駆け足で進んでいく。今年ももう6日が経過した。★伊坂幸太郎さんの「ラッシュライフ」(新潮文庫)を読み終えた。★「泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う・・・」裏表紙の概略通りの作品だった。★泥棒のプロを自認する黒澤、リストラされ失業中の豊田と彼が拾った老犬が特に印象に残った。★主に4つの出来事が互いに交錯していく。世の中は全くかかわりのないような人々がどこかで関わって進んでいく。毎日、主役が変わって、リレーのようにつながっていくという視点が面白かった。同じような日常だけれど、全く同じ日は決してない。日々新たに、そう考えれば惰性の日々も新鮮に感じる。★「ラッシュ」に込められた意味を...伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

  • 中村文則「教団X」

    ★冬期講座はあと4日。ピークは過ぎた感じがする。またまたコロナ感染の波が襲ってきたようで、受験期を前に気がかりだ。★さて、中村文則さんの「教団X」(集英社文庫)を読み終えた。村上龍さんの「愛と幻想のファシズム」(講談社文庫)、村上春樹さんの「1Q84」(新潮文庫)の延長線で読み始めたが、ストーリーがよくわからず読み切るのに苦労した。★ある男が行方不明になった女性を捜して、2つのカルト教団に関わっていくのだが、結局どうなったのか未消化なままで読み終えた。★「教祖の話」として教説が解かれているが、ここまで引用じみた内容が必要だろうか。★教祖にまつわるエピソードの紹介はそれはそれで物語だが、なんかごちゃまぜ感がする。暴発してテロを起こそうとする場面も何か中途半端な気がする。性交描写に至っては、ここまで必要だろう...中村文則「教団X」

  • 「欲望の資本主義2023」

    ★今年は元旦から教室を開けているので、比較的規則正しい生活が送れた。「仕事に勝る健康法なし」って感じかな。8日には高校受験に向けての最後の模試があり、14日には英検がある。中学3年生の学年末テストは25日から27日。そして入試に突入する。そして、あっという間に確定申告の季節が来る。★さて、録画しておいたNHKBS1スペシャル「欲望の資本主義2023」を観る。2017年から始まったこの番組。正月の楽しみだ。★毎年、視点を変えて世界の著名人のインタビューで構成されている。わずか5年あまりなのに、世界は激変している。アメリカ分断の象徴・トランプ政権の誕生、新型コロナウイルスの蔓延、ロシアのウクライナ侵攻。そして、食糧危機、物価高等が世界を襲っている。★今回の番組でも述べられていたが、世界経済におけるアメリカの相...「欲望の資本主義2023」

  • 松本清張「帝銀事件の謎」

    ☆新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。☆冬期講座に追われて、元旦にやっと年賀状をつくることに。いざ印刷の段階で、プリンターが不具合。ほぼ年に1回しか使わないので、インクのノズルが詰まってしまったようだ。何度かクリーニングを試みるがうまくいかず、結局、パソコンで作り直した。夕方ようやく投函。近年年賀状の枚数は激減。せめて頂いたところにはお送りしなくては。★NHKスペシャル「未解決事件」で「松本清張と帝銀事件」を観る。第1部が「松本清張と『小説帝銀事件』」というタイトルでドラマ仕立て、第2部は「74年目の”真実”」と題してドキュメンタリー形式で描かれていた。★「下山事件」と並んで、「帝銀事件」も謎が多い。そしてそのどちらにもGHQの影がちらつく。★番組が面白かったので松本清張さ...松本清張「帝銀事件の謎」

  • 冬期講座

    ★12月26日から始まった冬期講座。今年は暖房費(電気)節約のため、例年より30分遅く午前9時スタート。朝の部は午前9時から12時まで、昼の部は午後1時半から4時半まで。4時半からはレギュラーのクラスが午後9時45分まで。ぎっしりと充実した日々を送っています。★年末年始がないのはこの業界にいる限り仕方がない。★近隣の中学校2年生、島田真央さんが全日本選手権で3位になった。ほかにも20位までに多くの宇治市内中学生が入っており、スケートリンクができて、お茶と観光しかなかった宇治市の新たな町おこしになるかも。★塾生の1人は、学校で島田さんの隣の席に座っているという。彼はバスケットボールで活躍を目指している。★読書の時間がなかなかとれない。筒井康隆さんの「モナドの領域」(新潮文庫)を買って、読み始めている。「わが...冬期講座

  • 喜多川泰「君と会えたから・・・・・・」

    ★小学6年生の塾生と話をした。彼女は実に聡明な生徒で、将来の夢は作家だという。それにスウェーデンのグレタさんのように環境問題に取り組みたいとも。★彼女に「どんな作家が好き」かと尋ねたら、喜多川泰さんの名前を挙げた。私は喜多川さんの作品を読んだことがない。彼女にどの作品を読んだのかと尋ねたら「君と会えたから・・・・・・」を紹介してくれた。★彼女に便乗する形で、喜多川泰さんの「君と会えたから・・・・・・」を読んだ。★かつてコヴィーさんの「7つの習慣」という作品を読んで豊かな人生を送るための示唆を得た。本書も小説の形をとりながら、自己実現の方策を教えてくれている。★画家の主人公は自らの個展を訪れた女性の名前を聞いて、20年前、彼が18歳だったときの出来事を思い出す。★当時、彼は高校3年生で、家業の小さな書店を手...喜多川泰「君と会えたから・・・・・・」

  • 小杉健治「絆」第1章

    ★近隣の小中学校は明日が終業式。高校は19日、20日で終わりなので、高3生なのは朝から塾に来て自習をしている。一方で、コロナが再燃。塾生やその家族で感染する人が増えている。★そんなこんなで、今年もあと9日。年賀状の準備も遅れている。来週からは冬期講座が始まる。少々焦る。★さて、読書は遅々として進まないが、今日は小杉健治さんの「絆」(集英社文庫)の第1章を読み終えた。★第1章は法廷のシーンで幕が開ける。「夫を殺した」と起訴された女性、自らも罪を認めるが、ただ彼女を担当する弁護士は無実を主張する。★話者は記者。被告の女性とは知らない中ではなさそうだ。第1章は、記者が若い頃の被告の家族との関りが描かれていた。☆今日、甥っ子からクリスマスカードをもらった。第二子が誕生したという。おめでたいことだ。小杉健治「絆」第1章

  • 永井龍男「枯芝」

    ★NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は最終回だった。途中から観始めて半年。久々に大河ドラマに付き合った。見事な大団円。義時の最期に際し、尼将軍・政子の「ご苦労様」が心を打つ。最後は政子のすすり泣きでタイトルバック。しばらく余韻に浸った。★さて、今日も朝の10時から夜の8時まで授業。塾生たちも入れ替わりながらよく頑張るね。中には10時間居続ける子も。受験の神様が微笑みますように。★永井龍男さんの「青梅雨」(新潮文庫)から「枯芝」を読んだ。東京から一時間ほど離れた別荘地だろうか。40を過ぎた男性と20代の若い奥さん。芝生のある家というのが昭和っぽくて懐かしい。★今までいろいろあったようだけれど、何かのんびりした雰囲気が伝わってくる。★文章が巧いので、読んでいて心地よい。★明日からまた1週間、頑張りますか。そう...永井龍男「枯芝」

  • 赤本

    ★受験が迫ってきて塾生が受験する学校の赤本がたまってきた。★合間を見て読書に励んでいます。今読書中なのは、中村文則「教団X」(集英社文庫)多分一度読んだだけでは意味が解らない。伊坂幸太郎「ラッシュライフ」(新潮文庫)「教団X」と同じように教祖が出てくる。佐伯一麦「還れぬ家」(新潮文庫)私小説でここまで書けるのはすごい筆力。角田光代「ツリーハウス」(文春文庫)角田さんの実力に感心する。瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」(文春文庫)数奇なる人生。澤田瞳子「若冲」(文春文庫)時代小説も常に1作は読んでおきたい。小杉健治「絆」(集英社文庫)法廷ドラマか。柚木裕子「朽ちないサクラ」(徳間文庫)こちらは警察ドラマ。呉勝浩「スワン」(角川文庫)ショッピングモールでの無差別テロ。おもしろそうだ。★年末にかけて、松本清...赤本

  • 原田隆史「本気の教育でなければ子どもは変わらない」

    ★保護者様から紹介して頂いて、原田隆史さんの「本気の教育でなければ子どもは変わらない」(日経ビジネス人文庫)を読んだ。★原田さんと私は同じ大学だ。ただ原田さんが卒業された年に私は大学院に入学したので丁度すれ違い。★さて本書は、体育教師として大阪の公立中学校に赴任された原田先生の奮闘の記録だ。先生が就職されたのが1983年というから、まだまだ校内暴力が社会問題化していた時代だ。★私の近隣の中学校も全国的に有名な荒れた学校で、授業中に校舎内をバイクが走るは、爆竹は鳴り続けるは、器物の破壊行為、対教師暴力、生徒同士の暴力、近隣の中学校とケンカをするため鉄パイプをもって駅に集結していたところを凶器準備集合罪で捕まったなんてこともあった。テレビの「金八先生」が人気だった時代だ。★今となってはとても懐かしくも感じるが...原田隆史「本気の教育でなければ子どもは変わらない」

  • 中島らも「ガダラの豚」

    ★12月も中盤になると中学校では三者面談が始まる。そのため中学生たちは45分の5時間授業、午後2時半には家路につく。ということは、塾は2時ごろから開けておかねばならない。★なかなか集中して読書もできなかったが、なんとか中島らもさんの「ガダラの豚」(集英社文庫)を読み終えた。★テレビでも人気の民族学者、大生部多一郎教授。彼と妻の逸美には辛い過去があった。アフリカでの現地調査中に愛娘を気球の事故で亡くしたのだ。それ以来、多一郎は酒に溺れ、逸美は新興宗教にはまる。★私が読んで一番面白かったのは、逸美が新興宗教にはまっていくところ。心玉尊師(彼の語り口調は懐かしい桂枝雀さんの語り口調をイメージすればよい)を崇める「聖気の会」。逸美は友人に誘われて「ご縁の日」と称するイベントに参加する。そこで目にした尊師のパフォー...中島らも「ガダラの豚」

  • 藤原伊織「銀の塩」

    ★来年度のブロック役員の引き受け手が見つかり、まずは一安心。うちのブロックは26世帯。毎年本部役員1世帯、ブロック役員1世帯だから単純に計算すると13年に一度どちらかの役員が回ってくる。しかし、急速に進む高齢化で、動ける世帯は年々減少。担当年齢を75歳まで引き上げても5年に1度回ってくる計算になる。この先どうなるやら。★以前、PTAの役員を業者が引き受けると言った記事を目にしたが、町内会でもこうした業者が現れるかも知れない。(地方議会議員のなりても不足しているようだから、こちらも業者に委ねる時代が来るのか)★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選36殺ったのは誰だ!」(講談社文庫)から藤原伊織さんの「銀の塩」を読んだ。★藤原さんの「テロリストのパラソル」の主人公、島村がここでも活躍する。島村とい...藤原伊織「銀の塩」

  • 湊かなえ「母性」

    ★今日は塾生のお母様に昼食を作っていただいた。ありがたいことだ。★湊かなえさんの「母性」(新潮文庫)を読んだ。母を溺愛する「私」。しかし、自分の娘を愛することができない。台風の惨禍の中、母と娘の二者択一を迫られた試練が尾を引いているのか。★惨禍で家を失った「私」はそれから夫の実家に身を寄せるが、それは自らの選択の誤りの報いを受けるような地獄の日々だった。鬼のような姑、彼女は自分の娘たちには親バカぶりを発揮する。彼女の娘たちもそれを良いことにわがまま勝手に生きている。負担を強いられるのは嫁の「私」だ。★さらに苦しいのは夫が力強く私を守ってくれないこと。かつて封建的な父親への反発からか学生運動にのめり込み、そのせいで思い通りの就職ができなかった夫は、物事に正面から向き合うことを放棄したようだ。★妻であり嫁であ...湊かなえ「母性」

  • 沼田真佑「影裏」

    ★沼田真佑さんの「影裏」(文春文庫)から表題作を読んだ。第122回(2017年)文學界新人賞、第157回芥川賞受賞作。マイノリティー文学とか震災後文学とか何かと評価の高い作品だが、私はあまりピンとこなかった。★医薬品の営業をしている今野は岩手にある子会社に出向している。そこで釣りを通じて日浅という友人ができる。東日本大震災を経て、日浅は行方不明となる。今野は日浅を捜し、彼の実家を訪ね、彼の父親から秘密を知らされる。★ざっとこんな話だろうか。眠い時に読んだせいか、作品に入り込めず、感情移入ができなかった。釣った鮎を塩焼きにするシーンは何となく記憶に残ったが、男同士の恋愛感情的なものに魅かれなかった。沼田真佑「影裏」

  • 佐野洋「わざわざの鎖」

    ★今日は朝から進路相談。京都府の公立高校の希望調査の結果が公表され、その数字を見て不安になる人、胸をなでおろす人。しかし、数字はまだまだ動く。★町内会では次期役員選定の時期。高齢化が進み、役員候補を探すのに一苦労。引き受けてもらうのに二苦労。誰が考えたのかどうでもいいような行事が多すぎる。ご近所とのコミュニケーションが大切というけれど、もはや時代にそぐわなくなっている。若い世帯の中には役員を担当しないために退会する人達も増えてきた。★さて、今日は時間がなかったので日本推理作家協会編「ミステリー傑作選37殺人哀モード」(講談社文庫)から、佐野洋さんの「わざわざの鎖」を読んだ。★元刑事の高梨。家庭内のもめ事を発端に警察を退職し、今は市の公園課に勤務している。公園にも警察が管轄するような事案が増えてきたからとの...佐野洋「わざわざの鎖」

  • 朝井まかて「恋歌」

    ★朝早くから模擬テストがあり、さすがに昼過ぎは睡魔に襲われた。しかし、今日はしっかり読書できた。★朝井まかてさんの「恋歌」(講談社文庫)を読み終えた。素晴らしい作品だった。★幕末、江戸にある水戸藩御用の宿屋の娘・登世と水戸藩士・林以徳が恋に落ち、娘は武家・林家に嫁ぐことになった。攘夷と開国で国論が二分される時代。「桜田門外の変」を経て、時代は大きくうねり出す。★水戸藩内でも派閥争いが激化。改革を迫る天狗党は遂に蜂起する。しかし、幕府の勘気を被った藩は天狗党に与したものやその妻子を弾圧、処刑する。登世と以徳の妹も囚われの身となり、劣悪な獄中で処刑を待つ日が続いた。★月日が流れ、登世たちは出獄するが、もはや行く当てもなく江戸へと向かう。登世は和歌を学びながら夫の帰りを待つことに。★「君にこそ恋しきふしは習いつ...朝井まかて「恋歌」

  • 天埜裕文「灰色猫のフィルム」

    ★物は言いようで、「反撃能力」といえば、攻撃を受けた場合の対処能力あるいは報復能力を言うのだろうが、政府の言う「反撃能力」はかなり先制攻撃力に近い気がする。★これが抑止力になればよいが、敵方から見れば脅威として、「先制攻撃」(「反撃能力」)の口実にされるのではと気がかりだ。疑心暗鬼が災いを招く。★さて、今日は天埜裕文さんの「灰色猫のフィルム」(集英社)を読んだ。いろいろなものがぎっしり詰め込まれた作品で読み易くはなかった。第32回(2008年)「すばる文学賞」受賞作。★母親を殺した青年が逃走し、その途中でホームレスと生活を共にする話。青年の心象風景で粘っこく綴られていく。★なぜ母親を殺さねばならなかったのか、私には読み取れなかった。ホームレスとのやり取りは面白かった。最後は人格が崩壊していくような感じだっ...天埜裕文「灰色猫のフィルム」

  • 我孫子武丸「猟奇小説家」

    ★遂に第3回目のコロナワクチンを接種。集団接種会場だったが、平日だからか想像以上に空いていた。危機感が大分薄れているのかも知れない。(今のところ副反応がないのでありがたい)★帰りにケーキ屋さんに立ち寄ったが、その値上がりに驚いた。ショートケーキが1つ1000円近い。私が幼かった昭和30年代後半から40年代、ケーキはクリスマスぐらいしか食べられない高級品だったが、再びそんな時代になりつつあるのか。あまり高額になり過ぎて、客離れするのではと心配になった。高騰はケーキ屋さんのせいではないが。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選37殺人哀モード」(講談社文庫)から我孫子武丸さんの「猟奇小説家」を読んだ。★ある作家の所に警官がやって来る。あいにく作家本人が不在だったので奥さんが応対することに。用件は、...我孫子武丸「猟奇小説家」

  • 生田紗代「オアシス」

    ★師走だ。寒くなると鍋物、おでん、ラーメンなど温かいものが恋しい。しかし、1日塩分6gではどれも厳しい。みそ汁を1杯飲むだけで2gに達してしまう。濃いお茶で我慢するか。★さて、今日は生田紗代さんの「オアシス」(河出書房新社)を読み終えた。第40回(2003年)「文藝賞」受賞作。★父が福岡に転勤し、母と姉妹の家族。ある日から母が家事を放棄し、25歳の姉と21歳の私、そして近くに住む叔父が生活を支えることに。★まだ介護には早すぎる。それに当の母親は慢性疲労のようではあるが、外見は元気そうだ。これからずっと母親の面倒を見なくてはならないのかと考えると姉妹の心は重い。★家族小説なので、戦争や革命が起こるわけでも、殺人や誘拐が起こるわけでも、変な宗教や詐欺に巻き込まれるわけでもない。淡々と日常が描かれている。★作品...生田紗代「オアシス」

  • 歌野晶午「プラットホームのカオス」

    ★高校の期末テスト対策。1年生の数学は指数・対数。ルールさえ覚えてしまえばそれほどの難問ではないが、まず高校卒業後に使うことはあるまい。★京都府の中学3年生の進路希望調査の結果が公表された。値上げラッシュのあおりで、公立回帰が起こるのではと思っていたが、公立退潮、私立優勢の傾向は変わらなかった。★公的な修学援助の取り組みの成果ともいえるが、公立側としては、一部の進学校を除いて恒常化する定員割れをどうするか、考えてもらう必要がありそうだ。本来なら統廃合やむなしの学校もあるが、政治的な思惑(行政区の圧力)でなかなか進まないようだ。★さて今日は、日本推理作家協会編「ミステリー傑作選37殺人哀モード」(講談社文庫)から歌野晶午さんの「プラットホームのカオス」を読んだ。★ある中学だろうか。その学校では数年前に体罰が...歌野晶午「プラットホームのカオス」

  • 中嶋博行「鑑定証拠」

    ★久々の雨。一雨ごとに冬が近づきそうだ。副反応が怖くてコロナの第3回目のワクチン接種を躊躇していたが、遂に観念して予約を入れてしまった。副反応が出ませんように。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選37殺人哀モード」(講談社文庫)から中嶋博行さんの「鑑定証拠」を読んだ。★どうも不景気な弁護士事務所に電話が入った。今日は非番であるはずなのに、人手が足りないから被告の接見に行ってくれという。弁護士会の重鎮からの依頼なので仕方なく引き受けることにしたが、罪状が殺人、それに自白までしているという。にもかかわらず公判で一転無罪を主張するという難しい案件だった。★(弁護士費用も払えないということで)弁護士は依頼を断ろうとしたのだが、資産家の親族がいるということで、思い直した。いざ弁護と公判に臨むと、今度は...中嶋博行「鑑定証拠」

  • 黒名ひろみ「温泉妖精」

    ★朝起きて、身支度をして、買い物をして、仕事(授業)の準備をして、塾生の保護者の方に電話して、月に一度掃除に来てくれるニチイさんと12月の予定をすり合わせて、キャノンのコピー機のエンジニアの方が点検に来られて、授業をして、今日も1日が終わる。★合間に、黒名ひろみさんの「温泉妖精」(集英社)を読み終えた。第39回(2015年)すばる文学賞受賞作。★容姿にコンプレックスを持ち整形を繰り返す27歳の女性。楽しみといえば、あるブログを見て、そこで紹介されている温泉宿を訪れること。それもカラコンを入れ、外国人のフリをして、エリザベスと名のって。★今回訪れた温泉宿は全くの期待外れ。収穫といえば、そこで例のブログの主らしい40歳代のおっさんに出会ったこと。★「影」という名のブログ主。カネに不自由はしていないようだが、1...黒名ひろみ「温泉妖精」

  • 小池真理子「彼なりの美学」

    ★今日も日曜特訓。着々と受験の準備が進んでいる。★昨夜は映画「サイレント・トーキョー」を観た。渋谷の交差点で爆弾テロが起こるというのは、先日読んだ野沢尚さんの「魔笛」の場面と似ていた。ただ、「サイレント・トーキョー」に宗教的な背景はなく、犯人がテロを実行する意味がイマイチわからなかった。★「あんな動機」のために無差別に人を殺傷してよいものか。★今日は、日本推理作家協会編「ミステリー傑作選37殺人哀モード」(講談社文庫)から小池真理子さんの「彼なりの美学」を読んだ。★26歳の女性、彼氏が他の女と浮気している場面を見てしまう。心の整理がつかず、あてもなく映画館で時間を過ごす。その帰り道、中年男から声をかけらえる。こざっぱりした清潔感はあるものの、容姿は醜く、どう考えてもタイプではない。★しかしこの男、審美眼だ...小池真理子「彼なりの美学」

  • 重松清「鉄のライオン」

    ★中学校の期末テストが終わり、次は高校の期末テスト。中学3年生は、いよいよ過去問をやり始め、高校3年生は公募制推薦入試の結果待ち。だんだん慌ただしくなってきた。★そうそう、年末年始の予定、冬期講座の案内を配布。今年は31日まで冬期講座があり、1月1日から自習室を開ける予定。早速塾生から「行きますよ!」という頼もしい声。★さて、今日は重松清さんの「鉄のライオン」(光文社文庫)を読み終えた。私とほぼ同年代の「僕」が主人公。1980年ごろの風景を懐かしく読んだ。★一人の主人公が体験した出来事を断片的に描いた短編集。★「東京に門前払いをくらった彼女のために」は、高校生時代付き合っていた男女が東京の大学を受験。男性だけが合格し、女性は地元に帰ったという話。竹の子族が一世を風靡し、ジュリーが「TOKIO」を歌っていた...重松清「鉄のライオン」

  • 野沢尚「魔笛」

    ★中学校の期末テストが終わった。連日熱心に通ってくれた塾生たちが、その成果を実感できるよう祈るばかりだ。★さて、ちょっと一息ついたので、野沢尚さんの「魔笛」(講談社文庫)を読み切った。面白い作品だった。★新興宗教教団「メシア神道」の教祖に死刑判決が下された日、渋谷の交差点で無差別爆弾テロ事件が起こる。犯人は、その教団の残党だと思われた。★主犯の一人はかつて警察官だった。公安課の刑事として教団に潜入していたのだ。潜入中に洗脳されたのか、それとも彼女の中にテロリストになる基礎があったのか。彼女は女性教祖と深い関係になることによって地位を高めていく。★物語は、彼女と彼女を追う鳴海という刑事を中心に進む。それぞれに苦難を抱え、二人は一つの肉体に宿る二つの人格のように、引き合い、そして反発しあう。★この二人のドラマ...野沢尚「魔笛」

  • 唯川恵「過去が届く午後」

    ★中学校の期末テスト対策が連日続く。1年でこの時期が一番忙しいかも知れない。最近は社会科で時事問題が出題されるので、予想問題を作る。★人口が80億人になったことは出るかな。あとは、EEZ(排他的経済水域)やJAXA(宇宙航空研究機構)といった略称もの。マイナ保険証はどうかな。NASAのアルテミス計画は穴場かも。★政治ものでは、習近平、アメリカ中間選挙関連(共和党と民主党)、G20の舞台となったバリ島。スポーツ・芸能ネタでは、紅白の司会者(大泉洋、橋本環奈)、サッカー・ワールドカップの開催国、ジブリパークなどはどうかな。★イギリスのスナク首相やトヨタやNTTが出資して次世代半導体を生産する新会社「ラピダス」、ツイッターを買収したイーロン・マスク氏などは少々難しいか。韓国の梨泰院事故も出るかも。★さて、時間が...唯川恵「過去が届く午後」

  • 加納朋子「裏窓のアリス」

    ★期末テスト対策のすき間を縫って、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選39完全犯罪証明書」(講談社文庫)から加納朋子さんの「裏窓のアリス」を読んだ。★脱サラして開設間もない仁木探偵事務所。閑散とした日々を送っていたが、一人の少女(といっても本人の申告では20歳。結婚更に離婚の経験ありという)が事務所に飛び込んできた。探偵志望だという。★何となく押し切られて、彼女は事務所にいついてしまった。そこで依頼が舞い込む。夫が自分の浮気を疑っているので、夫が出張の3日間、自分を監視してほしいというのだ。★奇妙な依頼だったが、貴重なお客なので引き受けることに。3日間、何の問題もなく過ぎ、報告書を渡すことに。しかし、実は彼女の夫からも依頼を受けていたのだ。☆蔵書の整理をしようと、文学賞受賞作を調べて一覧表にした。文...加納朋子「裏窓のアリス」

  • 原尞「240号室の男」

    ★中学校の期末テストまで1週間となった。土曜、日曜、勤労感謝の日(水曜)は、1日中テスト対策に追われそうだ。コロナ第8波も心配だ。暖房、換気、電気代。★さて、今日は原尞さんの「天使たちの探偵」(早川書房)から「240号室の男」を読んだ。探偵・沢崎が活躍するハードボイルド。★今回の依頼人は、喫茶店チェーンのオーナー。マネキンが人になったようなイケメンが高級外車に乗って事務所にやってきた。依頼は、娘の素行調査。★それから1週間。報告を聞きに男が再びやってきた。沢崎が調査結果を男に告げると、男は顔色を変え、最後は不満そうに帰っていった。★それからしばらく時がたち、今度は刑事がやってきた。その男が殺されたという。どうやら沢崎にも容疑がかかっているようだ。しかたなく、沢崎も事件解決に寄与することに。★オーソドックス...原尞「240号室の男」

  • 森村誠一「途中下車」

    ★日本推理作家協会編「ミステリー傑作選特別編457人の見知らぬ乗客」(講談社文庫)も残り少し。今日は、島田一男さんの「猿羽根峠」と森村誠一さんの「途中下車」を読んだ。★「猿羽根峠」はある女衒の話。女を売り返す稼業もそろそろ潮時。50歳を前にして、寒村を訪ねて雪深い道を歩くのが苦痛になってきた。そんな女衒が女を足抜けさせる途上で経験した不思議な体験。★雪深い北陸の情景がよく伝わってくる。★「途中下車」は、事業に行き詰まり借金まみれ。もはや生きていても仕方がない。いっそ命を断とうと決意した男が主人公。その男の元に小学校の同窓会の案内が届く。★今さら同窓会に出ている場合ではないが、これも最後。死に場所を求めて久しぶりに故郷に帰るのも悪くない。30年ぶりに旧友と再会し、それを最後にあの世へと旅立とうと考えた。★古...森村誠一「途中下車」

  • 笹沢佐保「老人の予言」

    ★11月15日、今日は坂本龍馬の命日だね。大学生の時、司馬遼太郎さんの「竜馬がいく」を読んで、すっかり龍馬信者になり、この日に寺田屋、円山公園、霊山歴史館前の龍馬さんの墓を訪れたなぁ。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選特別編457人の見知らぬ乗客」(講談社文庫)から笹沢佐保さんの「老人の予言」を読んだ。★ちょっとホラーの入った作品。短い作品だが、プロはうまい。★主人公の小説家はある旅館に閉じこもって創作に励んでいた。たまたま宿が混んで、相部屋を頼まれた。相部屋といってもふすまで仕切られ、しかも寝るだけだというので了解した。★相部屋の主は好々爺とした老人。すぐに床に入ったと見えて、物音ひとつしない。しかし、深夜になって老人の苦しむうめき声が。どうやら悪夢にうなされているようだ。主人公が老人を...笹沢佐保「老人の予言」

  • 小松左京「コップ一杯の戦争」

    ★期末テスト対策期間に突入。良い成績を残して楽しいクリスマス、お正月を迎えたいものだ。といっても、今年も年内は31日まで、年始は2日から授業が入ります。★さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選特別編457人の見知らぬ乗客」(講談社文庫)から小松左京さんの「コップ一杯の戦争」を読んだ。わずか5ページのショートショートだけれど、短い作品の中にドラマと風刺画込められていた。★とある居酒屋で、うだつが上がらない男がお店のママを相手に安酒を飲んでいた。有線放送などと言った気の利いたものはなく、BGMは故障しかけのラジオ。それも電波の具合が悪いのか、ブツギレ状態。男はお気に入りの演歌を聴きたいのだが、うまくいかない。★あれこれチューニングをしているところに臨時ニュースが飛び込んできた。ソ連とアメリカ、東側陣...小松左京「コップ一杯の戦争」

  • 燃え殻「ボクたちはみんな大人になれなかった」

    ★この前中間テストが終わったと思たのに、もう期末テストまであと10日。今日も朝の10時からテスト対策。★先週の土曜日に中学校の授業参観があったものだから、学校は明日月曜日が代休。学校が休みになると塾は忙しい。明日も朝から生徒がやって来る。ありがたいことだが。★今日は燃え殻さんの「ボクたちはみんな大人になれなかった」(新潮社)を読んだ。軽薄な恋愛小説かと思って読み始めたが、なかなか面白かった。他の本を残して一気に読んでしまった。★主人公の男性は将来への夢もなく、これといった才能もない。つぶれかけの専門学校を出た後は、エクレア工場でのアルバイトで食つなぐ日々。まだ携帯電話は普及せず、インターネットやSNSがなかった1990年頃。アルバイト誌の文通コーナーがコミュニケーションの舞台だった。★男性はそのコーナーで...燃え殻「ボクたちはみんな大人になれなかった」

  • 天童荒太「孤独の歌声」

    ★朝から町内会の避難訓練。近くの小学校で消火器やAEDの使い方、簡易担架の作り方等の講習。地震車も来ていた。★「孤独のグルメ10」を観ながら昼食。昨夜はNHKドラマで山本周五郎の「晩秋」を観た。ほぼ原作通りだった。★今日は天童荒太さんの「孤独の歌声」(新潮社)を読み終えた。コンビニ強盗と連続女性殺人事件がリンク。女性刑事の活躍で解決するというもの。★コンビニの風景が新鮮だった。連続女性殺人事件の暴行シーンは18禁レベルだ。★本作は「日本推理サスペンス大賞」(今はもうないが)の優秀賞の選ばれている。巻末に選評が載せられているが、どれも手厳しい(文章のうまさは評価されている)。プロの眼から見ると猟奇的な犯人の異常さの表現が物足りないようだ。天童さんはこの作品の後、「悼む人」で直木賞を受賞されている。★素人目に...天童荒太「孤独の歌声」

  • 山本周五郎「晩秋」

    ★法相更迭。陳謝しても心が伝ってこないから火に油を注いだ。辞任ドミノの始まり。この内閣は長くは続くまい。政治がごたついている間に、急速に円高が進んでいる。とはいえ、いったん上がった物価は簡単には下がるまい。果たして誰が得をするか。★政治家といえば、山本周五郎さんの「晩秋」に出てくる進藤主計(かずえ)のような人物はもはやおるまい。★山本周五郎さんの「晩秋」(青空文庫)を読んだ。都留は居候先の主から、ある人物の世話をするよう申し付けられる。その人物とは、藩政の実権を握り、民に負担を強いた人物、進藤主計であった。そしてこの人物こそ、重税政策を批判し切腹に至らしめたられた都留の父の仇であった。★今は主君の代が変わり、主計は政治を私物化したのではないかと詮議されている。★都留は母から譲り受けた懐剣を胸に、本懐を遂げ...山本周五郎「晩秋」

  • 石沢英太郎「視線」

    ★増税批判の高まりや閣僚の舌禍。政権は末期症状に入りつつあるようだ。★さて、日本推理作家協会編「ミステリー傑作選特別編457人の見知らぬ乗客」(講談社文庫)から石沢英太郎さんの「目撃者」を読んだ。★極秘裏に進められる地方銀行と信金との合併事案。経営陣の秘密会合を段取りした総務部長がある殺人事件を目撃してしまう。そのことを警察に話すべきか。そうすれば合併話が表に出てしまうのではとの葛藤の末、彼はある決心をするのだが。★短い作品ながらよくまとまっていて面白かった。石沢英太郎さんの作品は初めてだ。1960年代から80年代にかけて活躍された方で、小林桂樹さんが演じられた牟田刑事官シリーズの原作者だそうだ。★石沢さんの作品をもう一つ。日本推理作家協会賞短編賞(1977年)を受賞された「視線」を読んだ。★刑事が主人公...石沢英太郎「視線」

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