「…久しぶり、司。隣は…」『よぉ、類。』『類君!ひっさしぶり~!滋ちゃんのこと、覚えててくれた? って、つくしはいないの?』相変わらず遠慮のない声に、フッと肩の力が抜ける。司はともかく、隣の女…大河原、だっけ?…とはそんなに仲良くなった覚えはないんだけど。「つくしもいるよ。 でも、今ちょっと風邪引いてて…」『えっ?うっそぉ~! あの超健康優良児のつくしが風邪? 信じらんないっ!』「ここは日本じゃないか...
「それじゃ、始めようか。」薄暗いミーティングルームにライアンの声が響く。と、何故かライアンはさっきまでの穏やかな表情ではなく、真剣な視線を俺へと向けた。「…何?」「『何?』じゃない。 君がプロジェクトリーダーなんだろう? さっさと始めたらどうだ。」「あ…」モニター越しの父さんと美作社長も同じように、ジッと俺を見ている。「それじゃ…」いつもとは違う雰囲気に少し戸惑いながらも、心地よい緊張感に背筋を伸ば...
ダニエルの後ろを付いて行くと、リビングとは違う方向へと案内される。その背中に不穏な雰囲気はないけど、何だか釈然としない。「どこに連れていかれるわけ?」「ミーティングルームだよ。 主に、親族会議なんかで使われる部屋さ。」「そんな部屋に、俺が行っていいの?」「さぁね?けど、親父が呼んでるんだからいいんじゃない?」淡々とした物言いに、微妙な違和感を覚える。隣を歩く関の表情が幾分硬いのも気になる。「ずっと...
「ふふっ…あなたもいろいろ大変ね。」「あ、はは…」背中越しに聞こえる声は楽しそうで、邪気はない。それに、久々に耳にした日本語はコロコロと鈴を転がすような、可愛い声。「それにしても、つくしの肌はほんとに綺麗ね。」「そ、そうかな…自分じゃよくわからないけど…」「なのに類ったら、こんなに痕付けて…ひどい男ね!」「え、っと…いや、それは…」それは、まぁ、何というか…合意のもとの行為なんだけど。まさか、類以外の誰か...
目が覚めて、真っ先に視界に飛び込んできたのは、類の綺麗な寝顔。でも、周りの景色は見たことのない物ばかり。「ここ、どこ? って、あたし…」ぼんやりとした記憶を辿ると、思い出すのは見知らぬ女性との遣り取り。その後、確か部屋を飛び出して…。「…どうしたんだっけ?」頭に靄がかかったみたいに記憶が曖昧で、思い出そうにも思い出せない。あの時、類は仕事に行ってたはずなのに、今は目の前でスヤスヤと寝息を立ててる。そ...
音を立てないよう、静かに部屋の扉を開ける。ベッドにはまだ眠っているつくしの姿があって、少しホッとする。「ただいま、つくし。」つくしの隣に横たわり、すっかり温かさを取り戻した体を抱き寄せる。と、その様子が少しおかしいことに気付く。「つくし?」薄く開いた唇から吐き出される呼吸は少し荒くて、苦しそうに見える。頬も僅かに赤らんでいて、触れると驚くほど熱かった。「ちょっ!つくし?」「ん…る、い…寒い…」ブルっ...
眠るつくしを胸元へ引き寄せ、柔らかな黒髪に鼻先を埋めながら思考を廻らせる。これから、どう動くべきか。さっきのパトリシアの様子から、おそらくQuatremerは俺たちを好意的に受け入れてくれている。でなければ、ここにいられるはずはない。プロジェクトの始動はまだ先で、今はまだそれぞれが各方面への足場を固めている段階。ただ、ここでQuatremerの協力が確約できれば、時期を待たずに動き出せるかもしれない。おそらく、今の...
家族専用にしては広い箱が、音も立てずに静かに上昇する。機械音も浮遊感もないその空間はとても心地よく、ここがエレベーターの中であることを一瞬忘れそうになる。窓の外に広がる空は灰色の雲に覆われていて、今にも雪が降り出しそうなほど重々しい。そんな静寂の中に、関の控えめな声が響く。「パトリシアには兄と姉がいて、それぞれ結婚して家を出ている。 姉のアガットはアラブの石油王の息子と結婚して、今はドバイで暮らし...
意識を失くしたつくしを抱えて車に戻ると、心配そうな田村がドアを開けて待っていた。「大丈夫ですか?」「ん…たぶん。 泣きたくなくて、気張ってたんだと思う。」「そうですか…。 今日はお邸へ戻った方がよろしいですね。」「ん。田村、あの部屋は解約しといて。荷物は…」「でしたら、私が行って参ります。 さすがにパスポートなどの貴重品を業者に任せるわけにはいきませんし。」「…それもそうだね。じゃ、任せた。」「はい。...
「いくらクリスマスが終わったからって、翌日に打ち合わせとかあり得ない…」ブツブツと文句を言う俺に、田村は苦笑を漏らす。「ですが、年内はこれが最後ですから。」「本当に、正月休みが終わるまでもう仕事しないから。」「…承知致しております。」せっかくのクリスマスバカンスなのに、他の役員たちもそれを返上して出勤してきている。いくら自分だけじゃないって思っても、苛々するのは当然だろ。「さっさと終わりにして帰る。...
明けましておめでとうございます(喪中ですが…笑)昨年は多くの方に来ていただき、本当にありがとうございました。今年もよかったら、足を運んでくださいませ。…いつまで続けられるのか、私にもわかりませんが💦平成最後の年、皆様が心穏やかに過ごせますように。お話はまだ年を越してませんが(笑)いつになったらつくしの誕生日になるんでしょうね?(^▽^;)☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆--:*:--☆夢のようなクリスマスが終わった、翌日。...
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