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  • 2-XII-22

    「そんなことはどうでも良いことです!正直申して、私が貴方の立場なら、速やかに訴えを起こしますよ」「そんなことをして何になる?今も言ったように私にははっきり分かっていることだ……ただ、ちょっとその、言い忘れていた大事な点がある……。この売買は条件付きだったのだ。しかも秘密を守るということで……。侯爵は猶予期間内に私に代金を返却すれば、彼の馬を取り戻せるという権利を留保していた。その期限というのがほんの一昨日のことだ。それで馬が正式に私のものになったというわけだ……」「えっ!どうして最初からそれを言わなかったのですか!」と男爵は叫んだ。これでド・ヴァロルセイ侯爵の不可解な詐欺の様相が掴めてきた。侯爵は破産が目前に迫っていると見て、とにもかくにも時間を稼ぎたかったのだ。それで彼は使い込みをした会計係と同じような...2-XII-22

  • 2-XII-21

    競走馬市場というのは、あらゆる種類の詐欺師が暗躍する場であるということは誰しも認めているところである。金に対する鋭い執着心がギャンブル熱やライバルの鼻を明かしてやりたいという見栄と結びつき、あの手この手の術策を生むのである。しかし、このド・ヴァロルセイ侯爵の手口ほど大胆で恥知らずなものは聞いたことがなかった。「それで貴方は、大公、何もお気づきにならなかったのですか?」とパスカルは尋ねた。その声にはありありと信じられないという響きがあった。「そんなことに私が精通しているとでも思っているのかね?」「貴方のお付きの者たちは?」「ああ、それは話が別じゃ……私の厩舎の責任者が侯爵に買収されていたとしても、私は驚かんよ」「では、どのようにして騙されたとお分かりになったのです?」「全くの偶然からじゃ。私が雇い入れようと...2-XII-21

  • 2-XII-20

    彼に話す気がないことは明らかだった。男爵は肩をすくめたが、パスカルは果敢に一歩前に踏み出した。「それでは、大公、貴方がどうしても言えないというその名前を私の口から申しましょう……」「え?」「但し、男爵と私がたった今致しました誓約は、今この瞬間から無効になるという点をはっきり申しておきます」「ああ、もちろん」「では申します。貴方に不正を働いた相手というのはド・ヴァロルセイ侯爵です」皇帝の密使が処刑の紐を携えて現れたとしても、カミ・ベイがこれほど怖れを見せることはなかったであろう。彼はぽっちゃりとした小さな脚でぴょんと立ち上がると、目を泳がせ、絶望的な身振りで両手を動かした。「シッ、声が大きい!」彼は震えあがった声で言った。「大きな声を出しなさるな」というわけで、彼は否定しようとさえしなかった。事実は確定した...2-XII-20

  • 2-XII-19

    件のトルコ人は憤懣やるかたないという顔付きで待っていた。彼が勝ち運に乗っていたところを、召使が男爵を呼びに来たのだった。こうした中断の所為でツキが逃げていくのではないかと彼は恐れていた。「おぬし悪魔にでも執りつかれたか!」と彼は習い覚えた下品な口調で叫んだ。彼の金を崇拝する取り巻き達によって『この上なくシック』と褒めそやされている言葉遣いである。「ゲームをしている途中で席を外すなどとは、食事の途中で邪魔をする以上にしてはならぬことだ」「まぁまぁ、大公」と男爵は穏やかに言った。「ご機嫌を直してください。その代わり、二時間ではなく三時間お相手をいたしますから。ただ、貴方に一つお願いがあります」カミ・ベイはさっとポケットに手を入れた。その動きがあまりに機械的でかつ自然なものだったので、男爵もパスカルも思わず吹き...2-XII-19

  • 2-XII-18

    しかし危険が切迫したものであればあるほど、彼は自信を深めた。人が運命を味方につけているかどうかを知るのは、こうしたちょっとした偶然ではないだろうか。それが人生において決定的な役割を果たすのだ。それに彼は自分がある人物を演じきったことに満足していた。その役柄は生来廉直な気質の彼にとってひどく嫌悪を催すものであったのに。彼は堂々と嘘を吐く能力が自分にあることに自分でもちょっと驚き、自分の大胆さに当惑を覚えずにいられなかった。それにしても、そこから得られた報酬は大きかった!彼はまんまとド・ヴァロルセイ侯爵の首の周りに縄を巻き付けてきた。そのことに疑いの余地はなかった。やがてその縄を絞り、侯爵を絞め殺すことになるのだ……。だが、マダム・レオンの訪問が彼を不安にさせた。「何用で彼女はド・ヴァロルセイに会いに来たんだ...2-XII-18

  • 2-XII-17

    「貴殿は抜け目のない方とお見受けする、モーメジャンさん」と彼は言った。「もし私が破産するようなことにでもなったら、貴殿に頼ることにしましょう……」パスカルはしおらしく頭を下げたが、心の中は喜びではちきれんばかりであった。ついに敵が彼の仕掛けた罠に飛び込んだのだ……。「それでは最後にはっきりさせておこう」と侯爵は言った。「その金はいつ手に入りますかね?」「四時前には必ず」「男爵のときと同じ目には遭わないと思ってよろしいな?」「それは勿論でございます。トリゴー氏が貴方様に十万フランを貸してどのような利益がありましょうや?ゼロです。ところが私はそうではありません。貴方様が私にお支払い下さる手数料がそのまま私の保証となりましょう……。金の関わる問題では、侯爵、友人に頼るのはご注意ください。それよりはむしろ高利貸し...2-XII-17

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