2-XII-22
「そんなことはどうでも良いことです!正直申して、私が貴方の立場なら、速やかに訴えを起こしますよ」「そんなことをして何になる?今も言ったように私にははっきり分かっていることだ……ただ、ちょっとその、言い忘れていた大事な点がある……。この売買は条件付きだったのだ。しかも秘密を守るということで……。侯爵は猶予期間内に私に代金を返却すれば、彼の馬を取り戻せるという権利を留保していた。その期限というのがほんの一昨日のことだ。それで馬が正式に私のものになったというわけだ……」「えっ!どうして最初からそれを言わなかったのですか!」と男爵は叫んだ。これでド・ヴァロルセイ侯爵の不可解な詐欺の様相が掴めてきた。侯爵は破産が目前に迫っていると見て、とにもかくにも時間を稼ぎたかったのだ。それで彼は使い込みをした会計係と同じような...2-XII-22
2024/10/31 12:09