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  • ヴァイグレ/読響

    ヴァイグレ指揮読響の定期演奏会。1曲目はモーツァルトの「フリーメイソンのための葬送音楽」。茫漠とした悲しみを湛えた情感豊かな演奏だ。2曲目がこの演奏会の目玉のひとつの細川俊夫の新作、ヴァイオリン協奏曲「祈る人」なのだが、その前にモーツァルトのこの曲を置いたのはだれのアイデアなのだろう。そのアイデアに脱帽だ。細川俊夫のヴァイオリン協奏曲「祈る人」は、ベルリン・フィル、ルツェルン響、読響の共同委嘱作品だ。すでにベルリン・フィルとルツェルン響は初演を終えている。当夜は読響の初演。ヴァイオリン独奏はいずれもベルリン・フィルのコンサートマスター、樫本大進だ。細川俊夫のプログラムノートによれば、独奏者はシャーマンを表すそうだ。樫本大進のヴァイオリン独奏はまさにシャーマンだった。何かに憑かれたように曲に没入し、激しく何...ヴァイグレ/読響

  • フェスタサマーミューザ:高関健/東京シティ・フィル

    フェスタサマーミューザ。高関健指揮東京シティ・フィルの演奏会。曲目はガーシュウィン2曲とバーンスタイン2曲というアメリカ音楽プログラム。いかにもサマーコンサートらしいプログラムだが、それにとどまらずに、以下述べるように、音楽ファンにさまざまな話題を提供する点が高関健らしい。1曲目はガーシュウィンの「パリのアメリカ人」。もう何度聴いたかわからない曲だが、今まで聴いてきたこの曲は、じつは短縮版だったらしい。原典版は(とくに後半を中心に)約100小節も多いとのこと。短縮版ではそれがごっそりカットされていた。高関健がプレトークで「なんかあっという間に終わるなと感じていた」と語っていたが、そういわれると、わたしもうなずけるところがある。実際に聴いてみると、原典版はたいへんおもしろかった。たしかに後半に耳慣れない箇所...フェスタサマーミューザ:高関健/東京シティ・フィル

  • 津村記久子「この世にたやすい仕事はない」

    友人と隔月に読書会を開いている。テーマは交代で選ぶ。7月はわたしの番だったので、村田紗耶香の「コンビニ人間」と津村記久子の「とにかくうちに帰ります」を選んだ(二人は同世代だ)。ところが読書会の前に友人と連絡を取ると、友人は勘違いして津村記久子は「この世にたやすい仕事はない」を読んでいるという。わたしはそれを読んだことがなかったので、良い機会だからと、読んでみた。そういうわけで、偶然のきっかけから、「この世にたやすい仕事はない」を読んだ。これもおもしろい。芸術選奨文部科学大臣新人賞の受賞作品だが、そのような晴れの舞台はふさわしくないと思えるほど、目線の低い、弱い者・うだつのあがらない者に寄り添う(つまり津村記久子ワールドが展開する)作品だ。本作品は5編の短編小説からなる。主人公は大学卒業以来働いていた職場で...津村記久子「この世にたやすい仕事はない」

  • ノット/東響

    ノット指揮東響の定期演奏会。エルガーのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第2番というオーソドックスなプログラムだ。エルガーのヴァイオリン協奏曲は5月に三浦文彰のヴァイオリン独奏、沖澤のどか指揮読響で聴いたばかりだ。率直にいうと、あれほど淡々として一本調子なヴァイオリン独奏は聴いたことがないと思った。いったい何のためにこの曲を弾いているのかと。それにくらべると、今回は神尾真由子のヴァイオリン独奏だったが、三浦文彰とは対照的に“濃い”演奏だった。どこを取っても濃厚な表現だ。だが、正直にいうと、だから良かったかというと、かならずしもそうとは言い切れない自分を見出す。三浦文彰の演奏に退屈したのに、それとは真逆の神尾真由子の演奏にも満足できないのはなぜか。エルガーのヴァイオリン協奏曲は意外に難しい曲なのかもしれ...ノット/東響

  • 外山雄三さんを偲ぶ

    指揮者・作曲家の外山雄三さんが7月11日に亡くなった。慢性腎臓病だった。享年92歳。ご冥福を祈る。すでに多くの音楽ファンに知られている出来事だが、外山さんは5月27日のパシフィック・フィルハーモニア東京の定期演奏会を振った。曲目はシューベルトの交響曲第5番と第8番「ザ・グレート」だった。外山さんは3日間のリハーサルと当日午前中のゲネプロを無事終えたが、午後になって体調を崩した。本番では1曲目の第5番は指揮者無しで演奏し、第8番「ザ・グレート」は外山さんが振ったが、第4楽章で外山さんが倒れた。外山さんは楽屋に運ばれた。演奏は指揮者無しで最後まで続いた。カーテンコールでは外山さんは車椅子にのって現れたが、やつれた表情を見せたそうだ。その出来事があった直後、音楽ファンの一部からは、「たとえ外山さんが振るといって...外山雄三さんを偲ぶ

  • オペラ「道化師」をめぐって

    レオンカヴァッロのオペラ「道化師」を観たことは何度かあるが、その中でもフィンランドのサヴォンリンナ音楽祭で観た記憶は鮮明だ。中世の古城の中庭で演じられる野外オペラだ。古城の壁が反響板になり、意外に音は良かった。例によってマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」とダブルビルで上演された。「カヴァレリア‥」が抒情的な悲劇に演出され、「道化師」が喜劇仕立てで演出されたのも定石通りだ。なぜ記憶に残っているかというと、オペラは日が暮れてから上演されるのだが、日中に街を歩いていると、賑やかで騒々しい一団が歩いてきたからだ。サヴォンリンナ音楽祭には世界中から観客が集まるが、街自体は静かな小都市だ。そのひっそりした日常を破るかのような一団が場違いだったので忘れられないのだ。だが、夜になって「道化師」が始まり、わたしは...オペラ「道化師」をめぐって

  • 広上淳一/日本フィル「道化師」

    広上淳一が指揮する日本フィルのオペラ「道化師」の演奏会形式上演。日本フィルはラザレフの指揮で2019年5月に「カヴァレリア・ルスティカーナ」の演奏会形式上演を行った。それ以来4年越しのダブルビルの完成のようにも見える。それほどこの2作は緊密に結びついている。ラザレフの「カヴァレリア・ルスティカーナ」も素晴らしかった。ロシアの指揮者がイタリア・オペラを?と思う向きもあるかもしれないが、ラザレフほどの大指揮者であれば、イタリア・オペラも見事だ。音色は明るく透明で、全体の構成もゆるぎない。今回の広上淳一の「道化師」も良かった。ゴージャスな音色でダイナミックな演奏だった。歌手はともかくオーケストラは、劇場ではピットの制約のため、これほど豊麗に鳴らすことは難しい。また劇場は基本的にデッドな音響なので、歌手をふくめて...広上淳一/日本フィル「道化師」

  • 秋山和慶/東京シティ・フィル

    秋山和慶が客演指揮した東京シティ・フィルの定期演奏会。1曲目はリャードフの交響詩「キキーモラ」。リャードフの交響詩は「ババ・ヤガー」とか「魔法にかれられた湖」とか、いまでも(稀にだが)演奏される曲がある。「キキーモラ」もそのひとつだ。冒頭のイングリッシュホルンの旋律がいかにもロシア的だ。全体を通して精緻なアンサンブルとクリアな造形が保たれた演奏だった。2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。ヴァイオリン独奏は周防亮介。バレエ音楽「ロミオとジュリエット」と同時期の曲なので、尖った個性が影を潜め、穏やかな大衆性を持った曲だが、その割には周防亮介のヴァイオリンには甘さがなく、ひたむきに何かに迫っていく演奏だった。少々意表を突かれる思いがした。アンコールに演奏された曲はいかにも現代曲風で(演奏会終了後、...秋山和慶/東京シティ・フィル

  • 津村記久子「サキの忘れ物」

    津村記久子の短編小説集「サキの忘れ物」には9編の作品が収められている。初出の時期も媒体もばらばらだ。テーマと方法も異なる。それでいて全体は確固たる津村記久子ワールドになっている。平明で、目線が低く、小さいもの・弱いものに温かい視線を注ぐ文学世界だ。表題作の「サキの忘れ物」は高校を中退した千春が主人公だ。病院に併設された喫茶店でアルバイトをしている。アルバイトの先輩の女性や男性の店長が点描される。ほとんど毎日来店する年配の女性客が、ある日、忘れ物をする。それが題名の「サキの忘れ物」だ。サキとは何だろう。読んでからのお楽しみだ。千春は長編小説「水車小屋のネネ」の第1話の主人公・理佐の前身のように見える。18歳の理佐は高校を卒業した後、8歳の妹を連れて、山間のそば屋で働き始める。理佐も千春も人生に問題がある。で...津村記久子「サキの忘れ物」

  • 津村記久子「水車小屋のネネ」

    津村記久子は好きな作家だ。最新作の「水車小屋のネネ」も期待して読んだ。期待通りの作品だ。18歳の理佐と8歳の律の姉妹は、母子家庭で育った。最近母親に婚約者ができた。母親は婚約者の事業のために理佐の短大の入学資金を使ってしまう。婚約者はすでに同居している。律につらく当たる。理佐は職安に行く。山間のそば屋を紹介される。求人票には「鳥の世話じゃっかん」と不思議な付記がある。ともかくアパートを安く借りられ、かつ、まかない付きなので、理佐はそこで働くことにする。律にいうと、律もついてくるという。理佐は律を連れて山間のそば屋に行く。理佐と律の二人暮らしが始まる。そば屋の経営者の夫婦と近所に住む画家の女性、その他の人々が見守る中で、理佐はそば屋で働き、律は小学校に通う。ある日、母親の婚約者が現れる。二人はぎょっとする。...津村記久子「水車小屋のネネ」

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