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  • 小説 死神 第三十八章 吉凶にて

    第三十八章吉凶にて割烹料亭吉凶の玄関を入ると、和服姿の鬼の仲居さんが私たちを出迎えてくれた。カラ~ンコロ~ンと下駄の音を鳴らしながら案内係の仲居さんがやってきた。鬼ではなく幽霊と思われるその案内係の仲居さんは幸薄そうな美しい人で、その隣には、腰の曲がった老婆が付き添っていた。老婆の仲居さんが手にする提灯には芍薬の花の絵が描かれ、美しい娘の仲居さんのその手には、牡丹の絵が描かれた提灯が握られていた。牡丹灯籠のお露さん?そう思ったら、その薄幸の美女はこちらに向かって会釈をした。カラ~ンコロ~ン、カラ~ンコロ~ン。牡丹の提灯を手にしたお露さんの後をついて、料亭の奥へと連れて行かれた。「こちらにてお待ち下さいませ。」と、私たちは大広間の手前のあいの間に案内された。大空萌林居士さんと執事の下邊さんとコーヒーショップのマス...小説死神第三十八章吉凶にて

  • 小説 死神 第三十七章 コーヒーショップで

    第三十七章コーヒーショップで賽の河原のロビーに立っていた。忍さんの姿はなかったので、大方、袴姿から小紋か付け下げか、フォーマルな着物に着替えてくるのだろうと思った。ロビーの入国申請書のカウンターには亡者達が行列をなしており、鬼の警備員がその周りを巡回していた。行列の多いカウンターと少ないカウンターがあったので、注意深く観察していると、それぞれ宗教別に分かれていることに気が付いた。一番のカウンターは神道で、烏帽子をかぶり神衣(カムイ)と呼ばれる狩り衣に笏(シャク)と呼ばれる神主さんが手にする木の杓子(シャクシ)を手にした人が並んでいた。皆が皆そうではないが、それぞれの宗教の装束を身に着けていた。行列が多い二番・三番は経帷子を身に着けていたので仏教徒だろう。浄土真宗のようにこうした衣装を身に着けない宗派もあるし、背...小説死神第三十七章コーヒーショップで

  • 寂しいやねぇ

    ほとんど一日雨降りでした。霧雨が次第に雨粒が大きくなり、夕方には土砂降りになりました。スキー場にいたのですが、霧がだんだんと下がってくる。絵柄的には表層雪崩のようでした。20日の夕方に宮城県で津波を警戒する地震があったらしいのですが、クルマを運転していたものだから全然気がつかなかった。家にいた人たちが言うのはこちらもそこそこ揺れを感じたらしいです。それよりももっと大きな事件がその後に起きました。私は昨日はなんだか異様に疲れて9時半頃には寝てしまったのですが、12時半頃救急車の音で目が覚めました。その音がなんだか近所に停まったみたいだ。一人暮らしのお年寄りや老人世帯も多いので、何事かあったのかな?と、小雨が降る中外に出て行くと、消防署の工作車までやってきました。救急車が止まった場所が温泉の共同浴場の付近。こりゃ誰...寂しいやねぇ

  • 小説 死神 第三十六章 馬鹿息子

    第三十六章馬鹿息子私たちは衆議院第一会館の中にいた。忍さんは「八重の桜」スタイルでスペンサー銃を手に堂々と快感の中を歩いている。え?セキュリティーは?と思いつつも、いいのか、どうせ見えないんだし。古川代議士の事務所に入ると、大橋元大臣の訃報が伝えられたのか?事務所の中は賑やかになっていた。会派議員の秘書たちが古川代議士の事務所にご意見を伺いに参じていたが、事務所の中で待機しており、奥の部屋に古川代議士がいるようだった。私たちはその奥の部屋のスルリと入ると、大きな机の前に座り腕を組む腕を組む古川代議士と秘書の影山が立っていた。「会派の件はお前に一任するよ。少し一人にしてもらえんか。」古川代議士がそういうと、影山秘書は一礼してぞの部屋を出て行った。古川代議士は立ち上がると、折りたたみ椅子を手に窓の前に行き、その椅子...小説死神第三十六章馬鹿息子

  • 曲げわっぱ

    「馬鹿の考え休むに似たり」と申しますが、馬鹿が一生懸命になると何もしないより悪くなるもんです。脱プラスチック化に向けて社会協力してみようと思い、曲げわっぱで弁当を作ってみました。私が小学生の頃はまだ学校給食がなかったので弁当を持っていきましたが、アルマイトの弁当箱と言うのがステータスでした。衛生的にも好ましいのですけど。杉の木の曲げわっぱの弁当箱の子供も結構いたんですよ。大方自分の家で作った弁当箱でした。メンパなんて呼んでましたが、意外と量が入るんですね。ただ木製弁当箱は手入れが難しかった。今の時代に曲げわっぱなど買おうものなら弁当箱だけで4~5千円するんじゃなかろうか?それで材木が売れるなら有り難いけれど、割り箸で「森林伐採が」なんて難癖つける連中がいるくらいだから、「弁当箱で森林伐採」なんてまた騒ぐのでしょ...曲げわっぱ

  • 小説 死神 第三十五章 求名求利

    第三十五章求名求利先ほどの貧乏アパートとはうってかわって、瀟洒な洋風の豪邸の前に私たちはいた。芝が張りめぐらされた庭にはパラソルを立てたテーブルと、椅子が並べられていた。その椅子には恰幅の良い男が座っており、その隣にはひょろっとした細面の男が立っていた。彼らの手招きに応じて私が歩み始めると、忍さんは私の手を握って一緒に歩きだした。近づいてみると、その二人の顔に見覚えがあることに気が付いた。恰幅の良い男は大臣も経験した大橋真一郎。隣に立っているのは不正疑惑か何かで失踪した秘書だ。週刊誌で見た顔だった。浮遊霊?にしては、多分この屋敷は大橋真一郎の自宅だろうし、この政治家が死んだという話は聞いていない。歩み寄っていくと、大橋大臣は瞬きしているが隣の秘書は瞬きをしない。もしかしたら、大橋代議士は生きていて、隣の秘書は亡...小説死神第三十五章求名求利

  • 何だったんだろうね。

    昨日のことなんですけど、ちょいと曰く付きの場所で3時休みをしておりまして、3時15分頃だったかな、なんか白い雲のような物が高さ2.5メートル当たりのラインを飛んでおりまして、そのまま道路を渡って沢筋を下に降りていきました。一緒にいた60代後半のおじさんが、そういえば、昨年末の今頃の時間帯にここを通ったら、同じ白い物が道路を渡って沢筋に降りていくのを見た。と言ってました。今回は4人が目の当たりにしたのですが、何なんだろうね。昔から雷が良く落ちる場所で、火事になったこともあるのですが、私も雷の最中にこの場所を車で通ったことがあります。ラジオをつけていたのですが、パチパチ鳴って音が聞こえない。車はタイヤというゴムで絶縁されていると理屈ではわかっまっただ中は恐い物です。稲光が真横に走ったり、先ほど白い物が降りていった沢...何だったんだろうね。

  • 小説 死神 第三十四章 貧乏神の館

    第三十四章貧乏神の館小さな公園の遊歩道に私はいた。四車線の大きな通りに面していてひっきりなしにクルマが通っている。とても閑静な公園とはいいがたいが、桜が植えられそれが育って日の光をさえぎっており、桜の大木の隙間にはツツジと思われる小木が並んでいた。忍さんの仕事というのでそのつもりでいたが、どこにもその姿は見当たらない。そのうち忽然と現れるだろうと、遊歩道わきのベンチに座った。四車線の道路から歩道を挟んで一段高い場所にこの公園があるようで、道路の歩道と公園の遊歩道の間には先ほどのツツジが茂っていた。そのツツジの根元に犬の死体があった。大きく口を開けて息絶えていた。道路を横断しようとしてはねられたのだろう。必死でここまだたどり着き、子供たちに乳を与えているうちに息絶えた。そんな光景が思い浮かんだ死後、日にちが立って...小説死神第三十四章貧乏神の館

  • インディペンデンス

    重機の講習会に前橋に行ってきました。え?ダークファンタジー「進撃の巨人」の映画?と、思ったら厚生労働省のコロナ対策のポスターでした。ついに厚生労働省も巨人に乗っ取られたか!10年ちょっと前だったかな?よく行くラーメン屋に少年マガジンが置かれていて、別冊だったか月間だったか、週間ではない雑誌に掲載されて「進撃の巨人」という記憶はあるのですが、それほど夢中になって読んだ漫画ではありませんでした。その頃は少年漫画よりもビッグコミック系の大人向け漫画の方が肌に合っていましたが、年齢を考えれば当然か。その前にこの年で漫画ってのはいかがなものか?きっと、子供の頃に漫画読みたかったのに「馬鹿になるから」と読ませてもらえなかったことが反動になっているんだ。ダークファンタジーと言えば拙著「猫と座敷童」。キンドルアンリミテッドと言...インディペンデンス

  • 小説 死神 第三十三章 事情聴取

    第三十三章事情聴取檻の前に大きな木製の机が置かれ、その中央にさっちゃんが座り、机の上にはオムツを取り換えてもらって爽やかになった赤ちゃんが哺乳瓶咥えてお座りし、(尊敬をこめて)まり子さんがノートパソコンを机の上に出して座った。私と風丘先生は左側、ドラマなどでは弁護側に座り、反対側には赤鬼と青鬼が一人づつ座った。最初に連れてこられた男は痩せこけて目が落ちくぼんでいた。「あんた、なんであないな所に行ったんや?」と、さっちゃんが聞くと、男はぼそぼそと話し始めた。「僕は長年家電会社の開発部門で製品開発の技術者として働いてました。でも、製造が国外に移転し、製品もより高性能なものより安価で手軽なものに移行するなか、僕たち開発者の必要も少なくなってきました。そんな時、国外の企業から破格の条件で開発者として雇い入れたいと誘いが...小説死神第三十三章事情聴取

  • いつもの年なら

    渓流釣りを趣味にしている釣り師の知り合いにいました。三月一日から一年間の鑑札を買ったそうですが、ヤマメ・イワナの鑑札が年間9600円。昨年は一日しか釣りに行けなかったので、釣り上げた魚がイワナ7匹。鑑札が9600円だから一匹当たり1300円ちょっと。めっちゃ高級魚じゃない!大したもんだよ!と、誉めておきましたが、今年は意地でも月二回は渓流釣りに行くんだと気張ってました。いつもの年ならひな祭りなんですけどねぇ。ひな祭りはやっているのか!疫病に関係なく。例年ならこの頃になるとホカホカあったかい感じがするのですが、今朝は雪が降ってました。その影響か疲れのためか?今日はやけに体が寒く感じてます。今は迂闊に風邪もひけないご時世ですから、とにかく早めに寝よう!と早寝しては、まだ夜が明けないのに目が覚めてしまう。この10年少...いつもの年なら

  • 小説 死神 第三十二章 山の神様

    第三十二章山の神様奥深い森の中に私一人取り置いて行かれたようだ。たびたびのことなので慣れてきたが、久米さんが私をここに置いて行ったということは、この場所で何かが起きるということなのだろう。なんだか、一種の教育プログラムを受けているような気分がしなくもないが、それにしても人など気配もないこんな森の中で何が起きるのか?鹿狩りか?それとも熊でも出てくるのか?周辺を見渡すとブナの森。時折独特のヤニの香りを放つオオシラビソが見えるので標高千メートルくらいだろうか?白神山地?と、頭をよぎったが、ヒバの種類が違う。もっと南、長野県の山奥かもしれない。登山道なのか?木こり道なのか?人一人が歩く程度の踏み後の道が尾根筋にあったので、この道を下っていけば人里に出られるだろう。そう思って尾根道を下っていくと大きな岩が飛び出しており、...小説死神第三十二章山の神様

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