小説 死神 第三十一章 呪いと祝い
第三十一章呪いと祝いにわかに雰囲気があわただしくなり、死神御一同は一瞬にして深夜食堂から姿を消した。「突然の上司の退職か。勤め人ってのは大変だねぇ。」青鬼のマスターが腕を組んで言った。自分にも身に覚えがある雰囲気だった。バブル崩壊、銀行の合併、リストラ。私が地方出向や、取引先企業出向を命じられた時、部署や部下たちはどうだったんだろう?おそらく、誰一人動揺せず、気に留めてくれる人もいなかっただろう。否、うかつに動揺したら自分がターゲットにされるような険悪なご時世だったので、村松管理官の円満退職とはわけが違うのだが、急に周囲の対応がよそよそしくなり、視線も合わせてもらえない白々しい気配の中、出向先へと赴いた気がする。外からにぎやかな声が聞こえ、次第にこちらに近づくとガラガラと店の戸が開いた。神々しい美しさの女性と数...小説死神第三十一章呪いと祝い
2021/02/25 00:00