chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 小説 死神 第三十一章 呪いと祝い

    第三十一章呪いと祝いにわかに雰囲気があわただしくなり、死神御一同は一瞬にして深夜食堂から姿を消した。「突然の上司の退職か。勤め人ってのは大変だねぇ。」青鬼のマスターが腕を組んで言った。自分にも身に覚えがある雰囲気だった。バブル崩壊、銀行の合併、リストラ。私が地方出向や、取引先企業出向を命じられた時、部署や部下たちはどうだったんだろう?おそらく、誰一人動揺せず、気に留めてくれる人もいなかっただろう。否、うかつに動揺したら自分がターゲットにされるような険悪なご時世だったので、村松管理官の円満退職とはわけが違うのだが、急に周囲の対応がよそよそしくなり、視線も合わせてもらえない白々しい気配の中、出向先へと赴いた気がする。外からにぎやかな声が聞こえ、次第にこちらに近づくとガラガラと店の戸が開いた。神々しい美しさの女性と数...小説死神第三十一章呪いと祝い

  • 猫と座敷童

    私事ではございますが、このたび、Kindleの電子出版で小説を発売しました。題名は「猫と座敷童」780円。恐怖のホラー小説でございます。決してほら話ではございません。本来昨年末に出す予定で、原稿は仕上がっていたのですが、編集が病気でどうにもならない状態になりまして、結局自分で出す結果となりました。創作だけに専念したかったんですけど。ホント言えば紙という固定観念から抜け出せないので、電子出版というのがいまいちよくわからないのですが、やはりまだ液晶画面より紙の方が扱える情報量がいいのだな、と、試行錯誤しながら思いました。ペーパーオンデマンド、と言う形で紙の本にする出版方法もありますが、現在検討中です。と言うのも、印刷コストが高いので本の値段がずいぶん高くなってしまう。版下を作ってインクで印刷するのではなく、データー...猫と座敷童

  • 小説 死神 第三十章 少年

    第三十章少年「おつかれさんでしたぁ。」お揃いの緑のシャツを着たボランティア集団、鬼の絆会の鬼たちが荷物を積んだライトバンに乗って去っていった。青山霊園に面した公園に残っているのは私一人、さぁさぁどういたしましょう?と街灯の下のベンチに座って編みかけの靴下を編んでいた。青山霊園は元々は会津出身の桐生氏と言う人物が明治五年に作った墓地で、東京に寄贈したとされており、その後、青山家の敷地跡地が提供されて現在の大規模な霊園になっていると聞いている。世界屈指の大都市のど真ん中にこれだけの大きな霊園を持つというのは珍しいお国柄なのかもしれない。日本では町中にごく普通に墓地が存在するが、これも世界的に見れば珍しい習慣かもしれない。ごく普通に身近に死者がいて、生活している。オリンピックの翌年の夏、父はこのあたりに仕事に来ていた...小説死神第三十章少年

  • 小説 死神 第二十九章 ワークショップ 前編

    第二十九章ワークショップ(前編)乃木坂あたりだろうか?日の暮れかけた青山霊園に隣接した公園のような場所にいた。桜の木の下に赤い毛氈(もうせん)が掛けられた床几(しょうぎ)と呼ばれる和風のベンチが置かれ、床几の後ろには赤白蛇の目の野点傘が立っていた。その床几に腰かけた袴姿の忍さんが、さっちゃんから託されたウナギの白焼きの折り詰めを膝の上に置いて食べていた。その隣には佐藤市さんが座って、同じようにウナギの白焼きを食べていた。二人の間には秋田の日本酒、鳥海山の一升瓶が置かれていたが、これはたぶん忍さんの趣味だろう。「さっちゃんもいい仕事をするようになったなぁ。」「さっちゃんの気配りには頭が下がります。デザートに浜松餃子も用意して下さったようでございます。佐々木様もよろしければ餃子、お召し上がりください。」脈絡はわから...小説死神第二十九章ワークショップ前編

  • 小説 死神 第二十九章 ワークショップ 後編

    第二十九章ワークショップ(後編)~(前編から)~会場の外に白い衣装をまとった人影がいた。気になったのでそちらに向けて歩いていくと、桜の木の陰にその人はいた。「傷痍軍人さんですか?」恐る恐る声をかけてみると、「お恥ずかしい限りでございます。」と、その人は桜の木の陰から出てきた。片足がなかった。「もはや戦後ではない」と、経済企画庁の発行した経済白書に謳われたたのは昭和三十一年のことだったが、それから十数年経っても田舎には戦後の気配は残っていた。大きなお祭りや縁日に行くと、白い着物を着てハーモニカやアコーディオンを演奏し、木戸銭を集める元日本兵がいたものだった。それは時として古めかしい軍服であったりもしたが、厚手の浴衣のような白い着物を着た元兵士は、片腕がなかったり、足がなかったり、盲人であったり、いわゆる傷痍軍人と...小説死神第二十九章ワークショップ後編

  • たまには

    このところネットとも疎遠になっているので、余計な情報が入らなくてすっきりした生活をしています。メディアから離れて直感を取り戻して来た感じです。今日はお寺の総会があったので午前中はその会議に行ってきたのですが、例の疫病で亡くなった人の話を聞きました。こちらの人ではないのですが、家族四人だけで見送り。しかも、その家族も感染していたとか。これが平安や室町の都だったらどうなるのだろう?「○○野」と付く野辺に放り置かれて風葬かな?かつても日本には疫病の流行はあった。まぁ、大体隣国から持ち込まれていたのですが。で、最後に出てきて疫病を抑え込むのが帝のご祈祷なんですね。なんてことを、檀家衆と雑談したのですが、疫病に関係なく葬儀に行っても受付を済ませて離れた場所で焼香しておしまい。なんだか、踏ん切りが付かないものだねぇ。久々に...たまには

  • 小説 死神 第二十八章 ウナギ

    第二十八章ウナギ海の見える庭にいた。草ぼうぼうで手入れをされていない庭だったが、家屋の後ろには遠いものの富士山が見えたので静岡県あたりだろうか?忍さんの姿が見えないので、どうやら私一人ここに置いて行かれたらしい。新幹線の駅でも見つかれば、今日中に東京に戻れるかな?大きな工場が見えるから駅も近いかもしれない。「誰だね!あんたは。警察呼ぶよ!」庭に入ってきた白髪の老婆が声を借り上げた。この世の人だが私の姿が見えるのだろうか。「い、いえ、決して怪しいものではありません。」とは言ったものの、本人は怪しくないと思っていても世間一般に見たらこれ以上怪しいものはない。さてさて自分をどう説明すればよいのやら?「もしかして、あんた死神さんかね?」老婆は腰をかがめてこちらを凝視した。「死神ではありませんが、関係者と言ったところでし...小説死神第二十八章ウナギ

  • 小説 死神 第二十七章 成りすまし

    第二十七章成りすまし岩崎部長が去った病室に私はまだ残っていた。計器の異様を察して医師とナースが病室に入ってきて、ナースの一人はすぐナースセンターに走っていった。岩崎部長のつながれている計器はまだ呼吸と心臓の動きがあることをモニターに示していたが、呼吸の感覚が次第に長くなり、ついに止まり、心臓の鼓動も二分後に停止した。病室の外に出ると昼食の時間らしく、入院病棟の廊下には食事を入れたカートが置かれていた。せわしく食事を配膳するナースと、岩崎部長の個室に向けて走って来るナースがいた。「ご家族に連絡が取れました。」「着替えさせるから手を貸して。浴衣とシーツ持ってきて。」そんな病室のやり取りが聴こえる。そんな場にいるのも無礼なので階段を下りて待合室に行き、玄関の外に出てベンチに腰掛け駐車場を眺めていた。正午を告げるサイレ...小説死神第二十七章成りすまし

  • 如月

    如月。いにしえの二月の呼び方ですが、まだ寒くて重ね着するから如月なんだという説もあります。確かに今朝は寒かった、氷点下二桁行ってたもん。陰暦じゃまだ如月ではないんですけどね。願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃by西行法師。如月の望月ってなると2月15日で、桜なんぞ咲くかい!ってなりますが、未だに国会で桜がどうのこうのいってる議員がいるんですね。このご時世、銀座の夜のクラブ活動にでた議員もいるみたいで、しばらくはそっちで賑わうのかな?今日はこの地区の85歳のおばさんの葬儀に行ってきましたが、受付をして焼香してすぐに外に出され、お疲れ様。なんだか、踏ん切りがつかない思いです。斎場だって疫病パンデミックの現場になってしまっては大変ですからね。気持ちもわからなくはありません。告別式最後にお寺さんの法話があるの...如月

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、のすたる爺やさんをフォローしませんか?

ハンドル名
のすたる爺やさん
ブログタイトル
のすたる爺や
フォロー
のすたる爺や

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用