小説 死神 第三十八章 吉凶にて
第三十八章吉凶にて割烹料亭吉凶の玄関を入ると、和服姿の鬼の仲居さんが私たちを出迎えてくれた。カラ~ンコロ~ンと下駄の音を鳴らしながら案内係の仲居さんがやってきた。鬼ではなく幽霊と思われるその案内係の仲居さんは幸薄そうな美しい人で、その隣には、腰の曲がった老婆が付き添っていた。老婆の仲居さんが手にする提灯には芍薬の花の絵が描かれ、美しい娘の仲居さんのその手には、牡丹の絵が描かれた提灯が握られていた。牡丹灯籠のお露さん?そう思ったら、その薄幸の美女はこちらに向かって会釈をした。カラ~ンコロ~ン、カラ~ンコロ~ン。牡丹の提灯を手にしたお露さんの後をついて、料亭の奥へと連れて行かれた。「こちらにてお待ち下さいませ。」と、私たちは大広間の手前のあいの間に案内された。大空萌林居士さんと執事の下邊さんとコーヒーショップのマス...小説死神第三十八章吉凶にて
2021/03/30 00:00