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2014/10/11

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  • 蜃気楼

    内田康夫/文春文庫2005年6月1日初版、シリーズNo.73。今回の「旅と歴史」は富山県を中心にしたもの。魚津市の蜃気楼、天の橋立、戦友歌碑、埋没林博物館や鬼の博物館が話の中で背景となって使用されている。主要な舞台は富山なのだが、東京にも縁があり、豊島区駒込、文京区本駒込、港区赤坂、品川区大崎、レインボー・ブリッジなどの背景を使う。豊島区、文京区、台東区、荒川区は先日読んだ「上野谷中殺人事件」でも背景に使用された「染井川」である。そして、ファッション界の後継者問題、伝統的な富山の売薬さん、薬学会で出世欲をつのらせる権化が絡み合う悲哀の籠った話だった。話の結末は「すべては蜃気楼だった」の一言に尽きる。「砂上の楼閣」と同様に、見えているものが実態の伴わない幻視、幻覚であることの例えによく使用されるように、犯罪によっ...蜃気楼

  • ループ

    鈴木光司/角川ホラー文庫2000年9月10日初版。著者はホラー作品の名手ということで、角川ホラー文庫なのだから、どんな恐ろしいホラーかと身構えながら読んだのだが、その点ではちょっと予想外の作品だった。これはホラーというよりもSFである。より科学的でスタイリッシュなフランケンシュタインかと思えるような話。現代ではスーパーコンピュータやAIによってビッグデータの解析やDNAの解析も難しくなくなった。更にDNA編集技術も進んでいることだろう。実際にとても似たような話がある。2015年、中国の医療関係者が人間の受精卵を使ってゲノム編集を応用したと発表したことがある。ニュートリノの存在の可能性は早くから理論的に知られていたが、近年遂にその存在が証明された。空間は勿論の事、あらゆる物質、地球の核さえも抵抗なく通過してしまう...ループ

  • 上野谷中殺人事件

    内田康夫/角川文庫1991年2月10日初版。シリーズNo.46。浅見の事件の結末は「武士の情け」が定番だが、今回は犯人の旧知の仲間たちが引導を渡した。勿論、そこに至るには浅見の鋭い真相追求がある。シリーズのミステリーとしては並みの出来かと思う。大作と比較すれば小品ということになるのかもしれない。町の個人商店主たちの苦悩、商店街の衰退など、現代の社会問題を背景に取り込んだ、なかなかリアルなミステリーであった。東京の下町、谷中界隈が今回の「旅と歴史」の背景。訪れたことは無いが、空襲も免れて江戸時代の名残を街のあちこちに留めるところらしい。家屋は新しくなっているだろうが、狭い道路と道筋は意外と昔の姿のままであることが多い。通り名や地名がそれを示している。時代小説の「谷中」は、中央から結構離れており、悪党どもが隠れ住む...上野谷中殺人事件

  • エネルギー(下)

    黒木亮/講談社文庫2010年9月15日初版。ここまで来て、この作品は「サハリン、イラン」の石油開発、利権とオイル・マネー市場の資金の流れの3本の話しで出来上がっている。登場人物は石油開発に懸ける商社マンと支援する政府の人間、そしてオイル・マネーに翻弄される人間である。勿論、その周辺には開発援助(投資)の銀行や、当事国政府の政治的な思惑も絡む2007年までの壮大な物語になっている。資源のない国、日本の立ち位置を理解するうえでエネルギーの持つ重要性がドキュメンタリー風の作品になっている。勿論そこにはエネルギー開拓に命懸けで取り組む商社マンたちの長い戦いがある。プロジェクトは簡単ではない。開発地域とその国の状況、政治体制の問題、莫大な開発資金調達の問題、そして環境保護の問題がある。更にエネルギー市場の取引、資金の流れ...エネルギー(下)

  • シャドウ・ドクター

    ―警視庁公安J―鈴峯紅也/徳間文庫2018年11月15日初版。著者の作品は初めてお目に掛かる。警察モノではあるが、ちょっと風変わりな傭兵のような「公安」。組織の中でもかなり無視されているが、カネと力によって存在を維持しているようなところがある。カネもあって能力もあって、小さいながらも組織もあって、何等不足、不満の無いヒーローが主役では、たとえどんな活躍をしたとしても面白くないのではないか。人間、我儘なもので強いものに同調し、弱いものをいじめると同時に、強いものに逆らい、弱いものに味方する。しかし、話の構成はなかなか面白かった。カンボジア近代小史のような話と、その中に組み込まれた小児臓器移植売買というシンジケート、クメールルージュの中で、人間不信と憎しみの権化となった兄弟とその妻が、娘の臓器を取り戻しにやって来る...シャドウ・ドクター

  • はちまん

    内田康夫/文春文庫上、2009年5月10日初版、下、2009年6月20日初版、シリーズNo.80。例によって東京を中心にして石川、高知、秋田、兵庫、熊本と縦横無尽に駆け回ることになった浅見。横軸のスケールの大きさもあるが、縦の時間軸も面白い。更に今回は日本人にとっては極めてセンシティヴな「愛国心」、そして極めて日本的「神道」を話の根幹に持ってきて、その起源から現在に至るまでの変遷をたどりながら「殺人事件」の真相を追求する「旅」である。浅見ではないが、初詣に鶴岡八幡宮へ行ってもそこに祀られている祭神が何かさえ気に掛けないものだから、「八幡神社」の何たるかも知る由もない。その意味で今回は大いに勉強になったことは確かである。「愛国心」も、その素朴な「原器」とでも言うべき郷土愛から守護神「八幡」、そしてその政治利用と極...はちまん

  • 透明な遺書

    内田康夫/祥伝社文庫2007年6月20日初版、2012年4月11日第4刷。シリーズNo.58。今回は「旅と歴史」というよりも「政治家とカネ」の話である。著者の作品の中ではかなり社会派的な味付けである。但し、頑迷な研究家や歴史家としてではなく、あくまでも自由市民としての見解である。そして、営々と続く日本の政治の中で相変わらずの体質に苦言を呈することになる。政治家の不正やその幕引き、みそぎについては今までも事あるごとに苦々しく思っていたであろうことは、多くの作品の中にしばしば見られることだが、今回はその集大成のような作品だった。浅見光彦は今までどちらかと言うと警察のよき理解者で、文句を言いながらも協力的な設定だったように思うが、今回は「警察権力」とは言えこれも人が作る組織、基本的には体制擁護の組織であり、強味も弱味...透明な遺書

  • ホームズの娘

    横関大/講談社文庫2019年9月13日初版。著者の作品は初めてお目に掛かる。ホームズの娘というのは探偵一家の一人娘、北条美雲(主人公)のことである。交換殺人などの殺人事件は出て来るものの、言ってみればHappyEndだ。「探偵モノ」+「怪盗モノ」+「警察モノ」の良いとこ取り、軽快でテンポよく読める。しかし、先を急ぎ過ぎたのか、刑事部長の磯川のその後と肝心の三雲玲のその後がスッポリ抜けているのが残念。話しの展開としては、サスペンス或いはミステリーというより劇画風の流れで、あまり個人の心情に立ち入らないスタンスがある。扱っている内容が殺人など深刻な内容であるにも関わらず、かなり軽めに統一された読み物だった。社会的な現象として、現実に「自殺(幇助)サイト」や「殺人(請負)サイト」などの闇サイトの存在があり、詐欺組織も...ホームズの娘

  • エネルギー(中)

    黒木亮/講談社文庫2010年9月15日初版。「エネルギー(上)」を読んだのは丁度6年前の今頃だった。もう6年も経ってしまったかと思うが、あのエネルギー資源に対する情熱と壮大なスケールは忘れていない。今回機会があって再び続きを読むことになった。サハリンの石油、ガス開発、中東の石油開発という巨大プロジェクトを巡って、それに関わる各種銀行、商社、既存のメジャーのしのぎあいが同時に繰り広げられる。更にここに開発に否定的な環境保護団体が加わってあらゆる方面に圧力をかける。エネルギー(石油、ガス)は世界経済の動力源(熱源)、同時に金融、インフラ、物流、あらゆる投機的欲望を掻き立てる。常日頃、自分が何気なく使用しているガソリンや石油、或いはガスといったものがどのようにして入手されたものなのか、今更ながら驚く。これらの活動に派...エネルギー(中)

  • 靖国への帰還

    内田康夫/幻冬舎文庫2015年10月10日初版。浅見光彦シリーズ以外の作品を読むのは珍しいことだが、お題に魅かれて読んでみることにした。構成としてはちょっと安直で、大戦末期、主人公の武者滋は「月光」でB29を攻撃中、流れ弾に当たり、厚木へ引き返す途中、暗雲の中に引き込まれ気を失い、1945年(S20)から2007年(H19)へ、62年先へタイムスリップ、というもの。しかし、お題の通り、この作品は「靖国神社問題」である。御存じの通り靖国神社は戦前の国策神社であり、神道の神社なのだが、伊勢神宮や出雲大社とは異なる独特の形態を持つ。それは最初からあったのではなく、そういうものを「作ってしまった」とも言える。宗教的側面もあり、政治的側面もある。他のどのような意味付けをしようとも、それを免れることは出来ない。この矛盾と欺...靖国への帰還

  • 償い

    矢口敦子/幻冬舎文庫2003年6月15日初版。2008年6月15日第21刷。先日の「赦し」を読んで、その前編を読まないなどと言うことは考えられない。ということで、早速調達して来た。日高英介の話しは埼玉の光市から始まった。自暴自棄の男が、(妻子の命を奪ったというのに)自殺を試みないことで命に固執している自分に気づく。日高は事あるごとに広恵と大輔を思い出し、自分の欠けた部分を確認し、そして猛省する。時々ドキリとする言葉が語られる。「人生は欺瞞だと思う。それをしなかったら人の社会は成り立たない。」57p「笑って死ねれば、どんなに人生にマイナスがあったとしても、そこですべてがプラスに逆転する」129p「心も体も同じ材料で出来ている。心も致命傷を受ければ死んでしまう」251p「人の心を殺しても罪にならないのは不公平」13...償い

  • 薔薇の殺人

    内田康夫/中公文庫2010年7月25日初版。シリーズNo.53。比較的シンプルなミステリー、「薔薇」は宝塚の「ベル薔薇」のこと。背景はやはり宝塚を中心にして、神戸、大阪、東京を浅見が走る。家族或いは親子という因果関係と派手な宝塚の演劇を例によってシンメトリックに描くことでその表裏を際立たせている。近年「レイプドラッグ」という薬物による犯罪が横行しているが、今回の事件は何となくその前触れのような犯罪。人間の尊厳を(薬物によって完全に)無視したような犯罪は、見た目軽微な行動であっても、ちょっとした冗談のつもりであっても、とても許されるものではない。既に確立した「悲しくも美しく終わりたい」という終幕の出来はどうだったか。犯人が男の場合と違って、スッパリ腹を切る等ということはなかなか難しい。著者もきっと悩んだことだろう...薔薇の殺人

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