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2014/10/11

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  • あれから

    矢口敦子/幻冬舎文庫2011年10月15日初版。この作品は「償い」と「赦し」の間に書かれたもので、登場人物の関連性は無い。お題(あれから)が何となく気に入って、つい手に取ってしまった。「痴漢」の問題は、非常に微妙な問題だ。被害者と加害者がはっきりしていたら何も問題はない。法に定めた通りの処理を進めるだけだ。しかし、被害者と加害者の関係がはっきりしない場合、とんでもないことになってしまう。「あれから」は、その現実を背景にしたミステリアスな作品だった。父、周一を信じ、冤罪を証明しようと姉妹が立ち上がり、捜査を開始。しかし本のPageはまだ中程である。冤罪を証明してHappyEndではあまりにも単純すぎる。案の定、話は被害者の野中瑞江の方へシフトしていった。本人の軽率さもあるのだが、それを中学生に求めるのは難しい。や...あれから

  • 赦し

    矢口敦子/幻冬舎文庫2012年9月20日初版。著者の作品は初めてお目に掛かる。この作品「赦し」は「償い(つぐない)」の続編になるものらしい。「償い」はおよそ10年前に書かれたものだが、続編が10年後というのは、その間の構想(葛藤)は如何ばかりかと思う。そのくらい「赦し」には緻密さがある。この作品は、二つの話しの流れから、両方に関わる主人公が、自信が抱え込んでいる問題との関係性問う。一つは「貴風莊」の大家の石岡(黒木)華子のこと、もう一つは低血糖の息子を抱えた若い母親の沼田一美のことだ。最後、主人公は意識が薄れていく中で妻の広恵、息子の大輔と話しながら、「赦し」を得ることが出来たのだろうか。「人の罪を赦せないと思うことが赦されるような、高潔な人間ではなかった」はずなのに。「死んでしまった人間よりも、生きている人間...赦し

  • 孤道

    内田康夫/講談社文庫2019年3月15日初版。「孤道」内田康夫2019年3月15日初版。「孤道」―金色の眠り―内田康夫・和久井清水浅見光彦シリーズ最後のNo.116。著者はこの作品の完成半ばで倒れ、作品の流れを継いだのが和久井清水さんということらしい。多少の筆致の違いは感じるが、気にするほどのことはない。今回の作品の面白いところは、やはり「鈴木義麿」の手記ではないだろうか。この手記の中には多くの人間ドラマが含まれている。手記の中の当時の人々と現在に生きる人々の対比が実にリアルな感じで描かれている。それを感じるのは浅見光彦と読者だけだ。今までも力作は勿論あったけれども、シリーズ最後を飾るにふさわしい作品だった。著者の作品の多くは、「旅」は水平軸で地域や場所の広がりを、「歴史」は縦軸で、二世代三世代まで時間を遡り、...孤道

  • 逃走

    ―新米女刑事―南英男/文芸社文庫2019年8月15日初版。著者の作品は今まで「密命警部」「潜入刑事覆面捜査」「抹殺者」等を読んでいるが、いずれも警察モノ。今回の「逃走」も副題にあるように新米女刑事が主人公の警察モノだ。主な事件としては「最中に仕込まれた毒物による殺人事件」と「新米女刑事が抱える友人の行方不明」。これが、どのような形で結び付くのかというのが話のキモか。自分が住み暮らしている街が話の舞台と言うのはどうも気恥ずかしいような気がして独特である。「まほろば駅前便利軒/三浦しをん」も同様だが、そう感じるのは作品に原因があるのではないように思われる。明らかに他の街が背景になっているのとは異なり、街の中をある程度具体的に知っているだけに、それをどのようにどこまで書き込むかということにも実に興味が湧いてしまうもの...逃走

  • 風の盆幻想

    内田康夫/文春文庫2017年8月10日初版。シリーズNo.97。八尾という富山の小さな町で起きたある事件を追って、今回は浅見と内田先生が出動する。二人とも事件には妙に深入りするタイプだから途中で投げ出したり諦めたりするということはない。性格の不一致から反目しながらも鋭く事件に切り込んでいく。今回のテーマは「交換結婚」と「越中おわら節」の舞い。終わってみれば事件自体はさほどのことはない。身の丈以上に望んだために足を踏み外してしまった人間が起こした事件だった。しかし、「交換結婚」はそれほど簡単なことではない。作中では、これで20年も周りを欺いてきたという話しになっているが、世の中には実際こんなこともあるのかも知れない。松本清張の「砂の器」は確かにリアリティがあるけれども、「交換結婚」とて、あり得ない話ではないような...風の盆幻想

  • 歌枕殺人事件

    内田康夫/角川文庫1996年4月25日初版、2019年1月30日第23刷。シリーズNo.40。今回の旅は宮城県多賀城市、かつて大和朝廷の陸奥国府があったとされる小さな町らしい。そして宮廷文化の象徴的な短歌を背景にして殺人事件が起きる。今回は珍しく4年前、12年前の迷宮入り寸前殺人事件の真相追求である。カルタ会の話しも面白かった。「チラシ」「源平」などの遊び方があるとは知らなかった。昔は日本中でこのカルタ会が流行っていたものらしい。私の田舎(北海道)でも子供の頃盛んに行われていた。未だ電気も水道も無い頃だったように思う。近所、親戚が夜な夜な集まって、薄暗い石油ランプの下で二列に並び札取りに熱中していた。遊び方はもっぱら下の句のみの読み上げで、緊張と共に出だしの一文字で手が伸びてくる。読み札は厚紙で出来ているが、取...歌枕殺人事件

  • 津軽殺人事件

    内田康夫/光文社文庫2012年6月20日初版。シリーズNo.26。太宰治を介して東北人(津軽人)の人間性に迫る渾身の一作、というほどでもないかもしれないが、著者から見て津軽人に内包された生活観、人生観、価値観を機会あるごとに分析しながら、殺人事件を解決するという長編ミステリー。316p津軽人、東北人の人間性、中央への不信、結束の固さ、反面の偏狭さ。喜びや誇りの裏に、含羞と自責の念、成功したことを恥じる気持ち。著者自身も幼い頃は東北の育ちではあるが、日本中を駆け回って取材した中で触れ合った人々が比較の対象になっているのかもしれない。それは民俗学的考察でもあるように思う。津軽人を決して否定はしないけれども、犯人(加部)をして、「もはや津軽人ではない」、と断じるところは、さすがに著者の中の東北人の矜持がそれを許さなか...津軽殺人事件

  • 我が闘争

    堀江貴文/幻冬舎文庫2016年12月10日初版。別段好んで読んでみようと思ったわけではないが、とにかく目の前にあったので手に取ってみた。著者と言えば「ライブドアの社長」ということで、それはあまりにも有名で、知らない人は居ないくらいの人である。お題は随分いかめしく、何か殴られそうな雰囲気であるが、中身はそんなことはない。幼少の頃から始まって、刑務所を出るまでの間の紆余曲折の自叙伝である。そもそも著者は幼少の頃から人並み外れた能力の持ち主で、それがために、周囲の同級生や両親さえも理解し難い疎外感を抱き続け、しかし持ち前の合理的な性格の元、頑張り続けて来たのだということがよく判る。人並みの凡人には理解し難いことだとも思う。そんな中で、小学一年の頃、曽祖父が亡くなった。このとき「死の恐怖」を知る。人はいずれ死んでしまう...我が闘争

  • 任侠書房

    今野敏/中公文庫2007年11月25日初版、2015年9月25日改版。著者の作品は2015年の「義闘」から始まって「山嵐」「欠落」「遊撃捜査」「パラレル」「熱波」「隠蔽捜査」「陽炎」「初陣」「去就」と続く。特に選んで読んできたわけではないが、やはり警察モノ、そして武闘モノというイメージがある。そんな中で今回の作品は、お題からしてやはり武闘モノかと期待した。しかし、読み進んでみるとちょっと違う。今までの著者のイメージを覆す、随分ソフトな武闘モノだった。ローカルな昔気質の小さな組が、「企業再建」に乗り出すというもの。ただし、引き受けた仕事の流れや組長の気まぐれで極めて消極的に仕方なく、である。何かしら計画がある訳でもなく、ひたすら目の前の困ったことに真剣に対応することで道が開けてゆく。こんな風にうまくいくことは現実...任侠書房

  • 教室の亡霊

    内田康夫/中央公論新社2010年2月10日初版。シリーズNo.107。著者としては珍しく、今回は「教育界」の不正を背景にした話である。不正の成り立ちは、やはり「教員採用試験」に関わるもので、民間以上に情実やコネがまかり通る世界である。そこに県議会議員が介在すれば、更に不明瞭な采配が行われることは明らかである。このような事実が発覚するたびに、教職の「神聖」は失われて来たというのが現実である。クレーマーというのも、そんな背景があっての出現なのかもしれないが、そもそも教職或いは教育委員会等に携わる人間だけが「神聖」であるはずもなく、正義の警察に冤罪や不正があるのと同じように、教育もそれ以上に閉鎖的な職域の一つであることは確かだ。しかし、こと「教職」だからといって、どんな試験をしてもどんなコネを採用しても不実な人間が紛...教室の亡霊

  • 悪魔の種子

    内田康夫/講談社文庫2015年3月13日初版。シリーズNo.99。茨城県、山形県、新潟県を結んで、農業研究所、水産試験場、農業生物資源研究所などのような遺伝子編集技術を背景にしたミステリー。この手の話しには、どうしても長期に渡る大きな投資が必要で、要するに「カネ」が無いと成り立たない。それが国の補助、助成であれば、今度は理不尽な中止や変更、指導を受けざるを得ない。同時にその研究成果は現状を破壊的に変革する力を持つこともあるだけに、人間の生活を豊かにするだけでなく環境への脅威になる可能性もある。ましてや人間の欲望を掻き立てることは容易い。今回は、「花粉症」という恒常的な国民病と、それを穏やかにする「花粉症の緩和米」というコメの新種開発の話しで、研究の成果を「お安く」手に入れようと画策した製薬会社の思惑が殺人事件に...悪魔の種子

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