蜃気楼
内田康夫/文春文庫2005年6月1日初版、シリーズNo.73。今回の「旅と歴史」は富山県を中心にしたもの。魚津市の蜃気楼、天の橋立、戦友歌碑、埋没林博物館や鬼の博物館が話の中で背景となって使用されている。主要な舞台は富山なのだが、東京にも縁があり、豊島区駒込、文京区本駒込、港区赤坂、品川区大崎、レインボー・ブリッジなどの背景を使う。豊島区、文京区、台東区、荒川区は先日読んだ「上野谷中殺人事件」でも背景に使用された「染井川」である。そして、ファッション界の後継者問題、伝統的な富山の売薬さん、薬学会で出世欲をつのらせる権化が絡み合う悲哀の籠った話だった。話の結末は「すべては蜃気楼だった」の一言に尽きる。「砂上の楼閣」と同様に、見えているものが実態の伴わない幻視、幻覚であることの例えによく使用されるように、犯罪によっ...蜃気楼
2019/11/29 12:31