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2014/10/11

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  • ねじまき鳥クロニクルⅢ

    ―鳥刺し男編―村上春樹/新潮文庫1997年10月1日初版、2003年10月5日第14刷。最後まで読んで判ることは、以外にも主人公の生きることの目的探し、心象風景、その変遷描写はあるものの、もう一つ「汚れ」という問題があることが判る。この「汚れ」の問題は、皮剥ぎボリス、元・中尉の間宮、妻のクミコ、加納クレタ、秘書の牛河それぞれの「汚れ」がある。これに対し笠原メイの透明な汚れの無さ、赤坂シナモンの清潔さが際立つ。そんな中に主人公の立ち位置がある。「穢れ(ケガレ)」、「瀆れ(ケガレ)」或いは「汚れ(ヨゴレ)」ではなく、何故「汚れ(ケガレ)」なのだろうか。この場合の「汚れ」とは何なんだろう。一見、透明で「汚れ」とは縁のなさそうな笠原メイでさえ、実はその「汚れ」を抱え込んでいる。そして例え元・中尉のように「抜け殻」のよう...ねじまき鳥クロニクルⅢ

  • ねじまき鳥クロニクルⅡ

    ―予言する鳥編―村上春樹/新潮文庫1997年10月1日初版、2014年11月10日第47刷。ほぼ「泥棒かささぎ編」で既に登場した人物で構成され、その後の顛末を語る。今回は、宮脇家(笠原メイの隣家)の古井戸であったり、区営のプール(巨大な井戸)であったり、間宮徳太郎元・中尉が経験した続きのように「井戸」にこだわる。水無し井戸が余程気に入ったように見える。この話はプラトンの「洞窟の比喩」とよく似ているような気がする。視点は異なるが、見えることで問われる本質(洞窟の壁に映る影絵)が、逆に見えないこと(漆黒の闇の中)で浮かんでくる本質を追求する。「限定された窓、何かが見えて、何も見えない世界」。クレタ島へ行っても何も解決しない。主人公はこの作品では「少なくとも自分には待つべきものがあり、探し求めるべきものがある」ことで...ねじまき鳥クロニクルⅡ

  • ねじまき鳥クロニクルⅠ

    ―泥棒かささぎ編―村上春樹/新潮文庫1997年10月1日初版、2010年11月15日第41刷。最初の出だしは、既にどこかで読んだことのある話し。はて、これは既読の作品かと思ったが、どうやら2018/09/02に読んだ「パン屋再襲撃」と同じものを使っているらしい。道理でね。何故かと言うと、「パン屋再襲撃」の続きという位置づけで、その後のことを書いているからで、頭出しが別冊では具合が悪かったのかもしれない。猫の「ワタヤ・ノボル」探しとその時知り合った女子高生の笠原メイはその後も何かと登場する。今回の主な話しは、二人(岡田亨とクミコ)が結婚した頃に時々訪れていた占い師(本田大石)のこと。二人のよき理解者だった本田のことは、戦場で生死を共にした間宮徳太郎(元・帝国陸軍中尉)によって語られる。この話が総ページの1/3を占...ねじまき鳥クロニクルⅠ

  • 朝日殺人事件

    内田康夫/角川文庫1996年9月25日初版、シリーズNo.57。現場に残された陶器の破片のようなもの。事件に関係があるのか無いのか。この時点で、この破片が事件解決の決定的なモノになる、というちょっと安直な示唆が最初に出て来る。今回は「アサヒ」なる名前にこだわって、右往左往する訳だが、何故か偶然にも「アサヒ」のあるところに事件解決の糸口があるのである。かなり強引な関連付けなのだが、判っていてもつい読んでしまう。ミステリーは、とにかく死人が出る訳だが、今回は遂に「旅と歴史」の少ないスタッフの中からも死者が出てしまう。浅見も結構焦ってしまったに違いない。話しは既得権益を自分の実力と勘違いしている官僚と、それを取り込もうとする建設業界に住む魑魅魍魎が共謀して公共工事を独占しようと画策するもの。更にその関係の中に割り込も...朝日殺人事件

  • 藍川京/幻冬舎文庫2002年6月25日初版、2009年12月20日第10刷。著者の作品は初めて読む。「炎(ほむら)」というのは男と女の情念であり、陶芸家の作品に対する情熱であり、それを実現する1300度に及ぶ灼熱の窯の炎である。その美意識は女性の肌であり志野焼の肌である。著者は官能小説の大家と言われているようだが、ストーリーの根底にあるのは徹底したエロチズムである。最初から倒錯気味のエロチズムがストーリーを覆っているが、別に殺人事件が起きるわけでもない何でもない。終わってみれば、若い陶芸家の求めるものが「土は女」であることを悟るまでの修業のような女遍歴であった。特に琴夜の存在はその究極を高めるための道程であった。紫織にあっては、その最終段階にある「炎」の全てである。主人公はきっと、琴夜との約束のもと、至高の作品...炎

  • 浅見光彦殺人事件

    内田康夫/角川文庫1993年3月10日初版、1993年10月10日第六刷。シリーズNo.48。ストーリー自体はそれ程凝った作りではない。けれども、光彦の偽物が登場するという仕掛けがある。矛盾というほどでもないが、話の整合性にぎこちない所があるような。この作品もまた「伊香保殺人事件」に似たような背景を採用している。「日なた道と日かげ道」である。下川健一は気の毒としか言いようがない。何の罪も責任も無いのに、である。原因を作った父親は、その責任を問われたのであろうか。偽光彦の最期を思うと、何かしら悲哀と怒りが湧いてくるようだ。トランプの絵柄が付いた表紙の冊子は北原白秋の詩集「OMOIDE」。白秋と言えば「雨」や「この道」など、どちらかと言うと曲の方で有名だが、その詩集の中に仕組まれた一枚の写真が物語る真実に、人間の限...浅見光彦殺人事件

  • 幻香

    内田康夫/角川文庫2010年9月25日初版。シリーズNo.103。完成までに足掛け12年を要した「幻香」の苦節は自作解説に書かれているが、390pの長編大作は確かに面白かった。成る程、こんな成り立ちがあったのかと、一味違う「幻香」を改めて振り返った。「匂い」だけでここまで書けるものかと感嘆する。調香師の三人の娘を「三美神」に例えるのは、いささか固地付け気味だが、確かにそれは「幻香」だった。人間の生活の中でどれだけ「匂い」に関わりがあるかと言えば、あまり関心のない自分については光彦同様、優先順位はかなり低いのだが、確かな認識の無いうちに実はいろいろな匂いに関わっているのかも知れない。調香師のような人間にとっては雑多な匂いは黙認することのできない、我慢のならないものなのかもしれない。駐在を定年まで勤めあげた警官の息...幻香

  • 逃げろ光彦

    ―内田康夫と5人の女たち―内田康夫/幻冬舎文庫2008年10月10日初版。シリーズNo.98。「他殺の効用」以来の短編集。〇埋もれ火〇飼う女〇濡れていた紐〇交歓殺人〇逃げろ光彦5本収録の内、浅見が登場するのは最後の「逃げろ光彦」1本だけで、他は登場しない。著者は短編が苦手ということで、短編の数は多作の長編に比べて非常に少ない。まあ、それはどうでもよろしいが、「こんなものも書けるんだぞ」という挑戦的なもの、試作的なものがあるのが面白い。「埋もれ火」「飼う女」「交歓殺人」など。しかし、シリーズの流れからすれば、やはり本流ではないだろう。例え書けたとしても、シリーズのような読者からの支持が得られるとは思えないからである。更に、今回短編の特色として、著者の「女性観」というものがある。副題にあるように、作品ごとに女性が登...逃げろ光彦

  • 失踪

    ―浅草機動捜査隊No.5―鳴海章/実業の日本社文庫著者には2019/06/30に「情夜/シリーズNo.10」でお目に掛かり、同シリーズの今回作品で2回目。警察モノと言えば圧倒的に新宿、池袋周辺を舞台にしたものが多い中、改めて、何故「浅草」なのか、という疑問が浮かんでくる。浅草の町は確かに古くて、新宿とは違う何かしらカビ臭いような雰囲気すら漂っている。その辺は作品からも感じられる。身近に起こる事件も、何か江戸時代の刃傷沙汰やかどわかし的なある種優しさのようなものが伝わって来る。背景や人物描写だけでなく、同じヤクザでも香具師の元締めのような古いタイプの、しかも破門されたような元ヤである。近くには元・吉原もあり、考えてみると何だか江戸時代と差ほど変わらないような感じがしないでもない。官権という上から目線の話しではなく...失踪

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