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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • きのうの出来事 時間(その六 )

    診察です。今日は、偉い立場の医師です。ずっと以前に救急車をお願いしたことがあり、ことなきを得たことがあります。今度の手術は、以前のW医師です。8月30日、AM9:00に入り、手続きをすませることに。9:00なんて、わたしには酷なんですけどね。自宅から病院まで少なくとも40分はかかるんですよ。しかも、平日でしょ?渋滞しますよね?ということは、1時間は、最低みなくちゃ。さらには「自分での運転はやめてください」とのこと。帰りがね、えっと、速ければ9月2日(土)おそくとも4日(日)ということで、運転禁止なわけです。ひとり者のわたしです、やむなくタクシーということに。予約ですが、8:00ぴったりに来てくれるかどうか分かりませんので、さらに10分もしくは20分前に……。想像しただけでぞっとします。毎日9:00前後の起...きのうの出来事時間(その六)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十九)

    圧巻だったのは、ステージ最後の全員でのおどりだった。全員がうしろに控えるなか、栄子が軽快におどる。手拍子が高まるにつれて、栄子がうしろに下がり全員がそろう。大きな動きをしながらも互いを気遣うおどりは、壮観なものだった。会場のほとんどが総立ちとなり、手拍子で応える。「オーレ!」と会長がハレオを入れて、場を盛り上げた。一時間の予定を超えてのショーは興奮のるつぼと化して、女性たちの間から「あたしもやってみたい!」という声が飛びかった。互いをたたえあう声の中、控え室で帰り支度をしている栄子の元に会長が現れたことで、控え室が大騒ぎとなった。そこかしこで、パトロンの話ねとささやかれた。「よろしいかな、皆さん。今日はほんとにありがとう。みんな大喜びでした。ステージ上での素人相手のレッスン、実に良かった。入会希望者がたく...愛の横顔~100万本のバラ~(十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (三百九十九)

    きょうは来客の予定もなく、決済すべき案件もない。思案をめぐらさなければならないような取引先もいない。出張の予定も、いまのところなんの予定もない。五平も今夜は休肝日にしたいという。なにもかもが順調にすすみ、武蔵をどうしても百貨店へといざなおうとしている。「そうだ!アイスも買って帰ろうか。武士のおもちゃだけじゃ、へそを曲げかねんからな。小夜子も外出がへって、気分も晴れんだろうし」忙しげに行き交う人のあいだをヒョイヒョイとかわしながら、口笛でも吹きかねないご機嫌の武蔵だった。こんなに気分爽快な日というのは、年に数回ほどだ。「博打商売だと評される武蔵の勘がさえわたり、今年は大あたり品を生み出した。「こんなおもちゃが売れるんですかい?」と危惧する五平に対し、大丈夫、お坊ちゃんのご託宣だ!と強行した。それが当たりにあ...水たまりの中の青空~第三部~(三百九十九)

  • ポエム 焦燥編 (傘がない)

    雨が降ってきた!どしゃぶりの雨だ、傘をささなくちゃ。だけど傘がない……イタイ、痛いよお!突き刺すような雨だ、傘をささなくちゃ。だけど傘がない……サムイ、寒いよお!凍れるつめたい雨だ、傘をささなくちゃ。だけど傘がない……ゴメン、ごめんよお!きみを怒らせてしまった、きみを泣かせてしまった。けど、ぼくも泣いている……(背景と解説)平成30年(2018年)4月18日にスタートさせた[ポエム]です。黎明・白昼ときて、いま焦燥編です。中腹に辿りついたようです。まだまだ、終着駅までは長いです。こののち、黄昏そして夜陰編と続きます。ですがそこで終わりではなく、いえ流れとしては破滅に入ってしまうのですから終焉といって良いと思うのですが、諦めの悪いわたしは、グズぐずとつづけてしまいます。安心編(アンシンではなく、仏教語としの...ポエム焦燥編(傘がない)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(三)

    きのうのことだ。めずらしく岩田との車談義になった。性能云々ということではなく、無謀運転だと岩田にはうつっている彼の走り方についてだ。「罰金に、へたをすれば免停だよ。大損じゃないか」と諭すように言った。噛みあわない会話だとおもいつつも、なんとかへこましてやろうと、ムキになって反論する彼だ。「おまえのような模範生じゃダメだ。この気持ちが分かるはずがない。追い越しなんかで意地悪されるだろ」「そんなことはないさ。ちゃんと、交通法規通りに走っているんだ、大丈夫だよ」「分かってないな。そんなもん、破るためにあるんだぜ。ポリスという職業がある以上、だれかが違反しなきゃ。そうでなかったら、ポリスさんたちの存在意義がないだろうが。おれら青年はだ……やめた。おまえにこんなこと言っても始まらない」いつもこの調子で口論となる。朝...青春群像ごめんね……えそらごと(三)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十一)分からずじまいの方がパタパタという軽やかなスリッパの音で、ようやく新一の呪縛からのがれられた。きのうの回想からぬけでた。新一とわかれてこの地に来て、おだやかな朝を迎えたわたしだ。空気の美味しさを、いくどとなく繰りかえす深呼吸で、たんのうした。まるで故郷にかえったかと錯覚させられる。ふと思った。気心の知れた者との、棘のある会話のなかにみいだす愛。そしてまた、他人との穏やかな会話のなかにみいだす冷たさ。新一に気づかされる、物事のうらおもて。知らずにいた方が、分からずじまいの方が良いことも多々あるだろうに。夢を見ることしかなかったわたしが、その夢を実現すべく立ちあがる。そのための勇気を、新一からもらった。そしてゆめが現実となったとき、たしかに快感をえる。満足感にひたっている。幸福感に満ちあふれてもいる。...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(三十二)

    (吉岡一門六)明け六つの鐘が鳴るなか、吉岡又七郎が一乗寺下り松の地に着いた。季節が春をむかえたとはいえ、まだ夜明け前では冷気が辺りをつつんでいた。「若、ここにお座りください」梶田は、決闘の場として指定した場を広く見渡せる大きな松の木の下に陣どることにした。態勢は万全だった。東西南北のいずれからムサシが現れたとしても、それぞれの要所に門人を配置していた。「若。大丈夫ですぞ。このように、多数の門人たちがお守りいたします。ムサシも、ここまではたどり着けませぬゆえに」梶田がしきりに又七郎に声をかける。まだ幼い又七郎では、緊張がとれぬのも致し方のないことと考えていた。干からびた声で「たのむぞ」と、又七郎が答えた。梶田が「ムサシの姿は見えぬか。あ奴のことだ、こたびも遅参するであろうがの」そう言った矢先に、ガサガサとい...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十二)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十八)

    「大変お待たせ致しました。アトラクションに入らせていただきます。フラメンコショーでございます。ダンサーは、世界的ダンサーとして知られる…えっ?代わったの…」会場から失笑がもれ、失望の声がささやき交わされた。「やっぱり別れたんだ…会長」。「それでもフラメンコかよ、よっぽど好きなんだな」。「坂本香澄さんじゃないの、なーんだ」。そんな落胆のため息も漏れた。「失礼しました。では、ご登場願いましょう。木内フラメンコ教室の皆さまです。盛大な拍手をお願いいたします」屈辱だった。代役となったことが、マイクで拾われてしまった。栄子の名前も伝わっていない。そしてそして、なにより栄子を傷つけたのは観客の失笑だった、ため息だった。聞こえよがしに「歌謡ショーが良かったよなあ」との声が、そこかしこからあがった。「QUIENSERA!...愛の横顔~100万本のバラ~(十八)

  • ポエム 焦燥編 (太陽の詩(うた))

    海はいつか日暮れてぼくの胸に恋の剣を刺したままその波間に消えた追いかけてもきみは見えない白い闇が迫りくるだけ恋はいつか消えてぼくの胸に涙の粒を残したままその波間に消えていった追いかけてもきみは見えない白い闇が迫りくるだけ昨日も今日もそして明日も夏の渚に立ってきみを探してもあの日のきみはいないあの日のきみはもういない遥かな海………どこまでもどこまでも果てしなく……が、その海もまた…………限りない空……どこまでもどこまでも広がり続く……が、その空もまた…………水平線では、空と海が一つになるなのに………きみとぼくは追いかけても追いかけても水平線はどこまでも果てしなく広がり続ける……わからないわからない追いかけるほどわからない……(背景と解説)彼女が逃げていくわけではないのです。自分の想いと彼女の思惑がずれている...ポエム焦燥編(太陽の詩(うた))

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (三百九十八)

    武士のために玩具でもと思い立ち、珍しくはやめに帰宅しようと考えた。ぷよぷよする赤子のほほに、唇をふれたいのだ。小夜子のおっぱいをたらふく吸っている、武士のほほに吸い付きたいのだ。そして同じように小夜子の唇にふれ、小夜子をだきよせ、その耳に「世界一のしあわせ者だ、おれは」と、ささやきたいのだ。「専務、あとはたのむぞ」一階で竹田との打ち合わせ中の五平に声をかけた。「きょうはなにごともないことを祈りますよ」ここ二、三日のあいだ、五平に言わせれば「しょうもないことで」ということになるのだが、配達人の態度が横柄だという苦情がはいったという。連日の荷物量に音をあげたひとりが、店先に乱雑にほうり投げていったというのだ。本人に確認をしたところ、いつもとはちがう行動をしてしまったという。「どこに置きますか?」と確認をせずに...水たまりの中の青空~第三部~(三百九十八)

  • ポエム 焦燥編 (why?)

    青く澄んだ空のしたで緑におおわれた山のかげで朝日に映える川のうえでどうして人は傷付けあう?どうして終わりを知りつつ恋をする?どうして旅立つ人に愛を捧げるwhy?なぜに人はそれをする?どうして人は騙しあう?どうして涙をかくして笑うどうして怒りを隠して笑うwhy?なぜに人はそれをする?(背景と解説)いっそ、笑っちゃいますか?青臭いことを、臆面もなく言ってますよねえ。でもこの青臭さが、若さであり青春のまっただ中、ど真ん中なんじゃないでしょうか。多様性と言うことが言われていますけれどねえ……賛成です、確かに多様性は大事なことでしょう互いが互いの違いを認め合うということですからただ、己のイマジネーションを越えたところにあるものについてはたして許容できるか……正直言ってわたしには分かりません分かりませんがその努力だけ...ポエム焦燥編(why?)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(二)

    次第にラジカセから流れる声に、彼の動きがズレはじめた。となりの社員が大きく広げた手に、足がもつれた彼のからだが当たってしまった。それを見とがめた部長から「おい、そこ。キビキビとやりなさい!」と、声が飛んできた。みな一斉にふりむいて彼を見た。(なんでだよ、おれ以外にもかったるそうにやってる奴、いっぱい居るだろうが。というより、ほとんどみんな、そうだろうが。マジメにやってるのは、あんたとあいつだけだろうに。ジョーダンじゃねえぞ。くそ、もう辞めてやる!どうせ仕事にいや気がさしているんだから。なんでかって?そんなもん…)。すぐには思い浮かばない彼で、少しの間をおいてから、どす黒くたまっていたおりを吐き出した。(車が軽自動車だということだよ。出足・加速・クッション、ぜんぶ最悪なんだよ。まったく腹が立つ。なんだそんな...青春群像ごめんね……えそらごと(二)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (十)実のところはしかし、いまはどうだ?ライバル心むきだしといった観ではないか。いま、新一のアドバイス前に、事がはこべている。他人との接触において多分にしりごみしがちだったわたしが、積極的とは言わないまでもキチンと対している。弟子が一人前になることは嬉しいが、いちまつの寂しさも感じる――そういった心境なのだろうか。どうにも、そうとは思えない。[可愛さあまって憎さ百倍]というじゃないか。ことばを交し合う相手がわたししかいない新一にとっては、憎悪の対象となってしまったのか。だとしたら、わたしは以前のわたしにもどりたいと思ってしまう。新一の憎悪の対象にはなりたくない。が、いまの心地よさを失うということも、つらくはある。思いだせ、思いだすんだ。以前のわたしは、どうだった?新一との口論になると、きまって口をつぐんで...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十一)

    (吉岡一門五)よくじつ、「吉岡清十郎敗れる」の報が、またたく間に京の町をかけ巡った。日頃の吉岡一門の傍若無人さに腹をすえかねていた町人のあいだから拍手喝采のこえがあがった。そんな中で、吉岡道場は混乱の極みにある。足利将軍の剣術指南役をも務めた、名門中の名門なのだ。その当主が、日の本一を自負していた吉岡道場の当主がやぶれたのだ。あってはならぬ事態が起きてしまったのだ。床にふせる清十郎の枕元で、伝七郎が梶田をなじった。「なぜ言わなかった。このお役目は、わたしが勤めるべきことぞ。亡き父上より言いつかっていた、隠密裏に運ぶべきことぞ。わたしならば万が一のことがあったとしても吉岡の名に傷はつかぬものを。梶田、わかっているな。万が一にも身共が帰らぬおりには、細々でも良い、道場を残すことだけを考えてくれ。間違っても再々...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十一)

  • きのうの出来事 時間(その四)

    8月のお盆をはさんでの、2週間予定の入院です。覚えてみえます?8月上旬にご報告した件です。いわゆる「教育入院」というやつですけどね。結果は、10日間ですみました。頑張りましたよ~~じゃないんです。ほぼほぼ、がんばりません。きれいな栄養士さんと、理学療法士の若いお兄ちゃんの指導のたまものです。栄養士さんの方は、毎日の献立を用意してくれてるんですけど、だいじなのは、退院後ですよね。入院中はね、当然ながらHba1cは下がるんです。当初は、「8.5」ぐらいだったかな?退院時には、パンパカパーン!と「7.2」まで下がりました。「このままがんばってくださいね」。そんなおことばをいただき、「それじゃ、来月の診察日をたのしみにしていますよ」と、満面の笑みを。理学療法士のお兄ちゃんには会えなかったのですが、効果あり?かも?...きのうの出来事時間(その四)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十七)

    久しぶりのステージだった。会社創立五十周年記念パーティのアトラクションして、フラメンコダンスが指名された。会長の肝いりで決まったショーで、栄子の所属する教室に突然のオファーが舞いこんだ。会長がパトロンを務めるダンサーが突然に断ったゆえのことだった。スペインでのショー出演に飛びついたとの情報も流れた。そのため関係が切れたという噂も飛び交った。栄子にとっては、千載一遇のチャンスだ。会長に自身の踊りを見せることでアピールができるというものだ。パトロン関係が成立すれば、潤沢な資金援助を期待できる。うまくすれば独立することさえ可能なのだ。もちろんその裏には愛人という文字がちらついてはいる。八十に手が届こうかという年齢がどう転ぶのか…栄子には分からない。健二が顔を合わせる度に「やめろ、やめろ。年寄りの玩具になるつもり...愛の横顔~100万本のバラ~(十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (三百九十七)

    「大杉商店でしたか、日の本商会は。あそことは、因縁がありますなあ。社長の口ぐるまに乗せられて」と、五平が言ったところで。「おいおい、人聞きの悪いことをいうなよ」と、武蔵が苦笑いをする。「いやこりゃ言い過ぎだ。社長はわるくない。詐欺にはひっかかるし、しまいには番頭の持ち逃げときた。まったくハゲタカばかりですなあ、世の中。うちも気をつけなくちゃ」くわばらくわばらとばかりに、背広を頭にかぶせる仕草をする五平に「うちも、富士商会もハゲタカっていわれてるんだぞ。もっとも、そのハゲタカも気をつけなくちゃ他のハゲタカにやられかねんがな」と、相づちを打つ武蔵だった。「しかしなあ。あの大杉商店も、結局は店をたたんでたろうさ。生き馬の目を抜くっていわれるこのご時世に、あの人の好さはいただけねえ。老舗だってことで取引先も『悪い...水たまりの中の青空~第三部~(三百九十七)

  • ポエム 焦燥編 (グデン・ぐでん)

    わたしは今、とても酔っています。グデン、ぐでんの、泥酔状態です。わたしは今、とても淋しいのです。人恋しくて、人恋しくて、たまりません。わたしは今、とても泣きたいのです。ワアー、ワアーと、号泣したいのです。あのひとは今、どうしていますか。よっしゃ、よっしゃと、駆け上がってますか。あのひとは今、燃えていますか。ワッセイ、ワッセイと、囃し立てていますか。あの人は今、泣いていませんか。わたしを、わたしを、思い出してませんか。わたしは今、とても酔っています。グチャ、ぐちゃの、ハッピー状態です。(背景と解説)この頃のわたしは……この頃のわたしは、自信過剰な自分と度ツボにはまったジブンとの狭間に居た気がします。いわゆるモテ期と称される時期に、どっぷりとはまっていたんですね。ニヒル(って分かりますかね?)な雰囲気が身体全...ポエム焦燥編(グデン・ぐでん)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと(十四)

    朝食もそこそこに、約束の十時より一時間もはやく会社の駐車場についた。毎日つかっているからと、週末にはかならず洗車をしワックスがけもしている車から「はやいね」という声が彼に聞こえてきた。にが笑いを見せる彼で「二度ぬりすると色が沈みこんできれいですよ」とガソリンスタンドでアドバイスされたことを思いだし、もう一度ワックスがけをすることにした。その後エンジンオイルの確認をして、車内の掃除も念入りにした。すこし離れた場所からあらためて車をながめると、たしかにグレーの色が沈みこんだ状態になっている。思わず「渋いぜ」と口にする彼だった。空はあいかわらず、快晴だ。十時すこし前を、最新型の腕時計が指している。彼の自慢の腕時計だ。どうせ買うならやはり良いものをと、セイコー社の高級品を購入した。「どうだい」と見せびらかす彼にた...青春群像ごめんね……えそらごと(十四)

  • 青春群像 ご め ん ね…… えそらごと (一)

    午前八時二十分、始業時間十分前だ。三階建てほどの高さのある倉庫の前で、二十人近い人間が整列している。のりの効いた作業着を着た社長の甥である部長が「始めえ!」と号令をかけた。ラジカセから流れてくるラジオ体操の声に合わせて、みなが体を動かしはじめる。(ご苦労なこった)と思いつつ、二十歳の誕生日をつい先日にむかえた彼も、いかにもだるそうに小さく体を動かし始めた。(ああ、かったるい)。体を反らしたときに見えた空が、けさは快晴だ。ジリジリと焼けつく日差しが、もう届いてくる。(今日もきつい一日になりそうだ)。そんな思いを抱えながら、彼のいち日がはじまった。倉庫前での定例行事になっている体操に、(どうして大人はこんなにも従順なのかねえ。勤務時間にしてもらえねえ十分間だぜ。これは、資本家による搾取そのものじゃないか)とい...青春群像ごめんね……えそらごと(一)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

    (九)走る時間だけがある新一はいつも言う。「机上の論理をこねまわしてちゃだめだ。その前に、動いちゃえ。若いんだ、行動あるのみだ。青春時代には、考える時間なんてないんだ。走る時間だけがある」この新一の論理には、一もニもなく賛同した。そしてつねに行動することを意識して、そう、走りながら考えることを実行した。と、新一に微妙な変化があるように感じられはじめた。思い過ごしなら、それはそれで結構なことだ。むしろその方が嬉しい。しかし皮肉めいた新一のことばが気になるこのごろだ。新一流の人の分け方――愛と憎悪のどちらに位置するか――で判断するに、いまの新一は憎悪側に傾いたのか?愛に位置する人というのは、余力を持って人と相対しているわけだ。憎悪の念がつよいというのは、こころが荒んでいる――ふくらみすぎている――そういうこと...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三十)

    (吉岡一門四)冷笑を浮かべて本堂横を指さした。月明かりだけが届くだけの薄暗さだった。およそ五間ほどの巾で、奥行きは十間か十二間か。太い幹まわりの木が三間ほどの間隔にならんでいる。この場所ならば、ムサシの言うがごとくに多人数の乱入はできない。体の冷えが気になりはじめた清十郎は「体を温めてください」という梶田の進言をしりぞけた己の未熟を思いしらされた。ムサシの遅参もまた、体の冷えを誘わんがためのことかと、後悔の念にとらわれた。田舎武芸者と小馬鹿にした己のごうまんさが恥じいられた。亡父三代目当主である吉岡直賢の今際のことばが思い出された。「臆病であれ!」その意味を、いま知った清十郎だった。感慨にひたる清十郎に対して、ムサシが「参る!」と怒声をあげて、長さ三尺はあろうかという丸太を飛び降りざまに振りおろした。あわ...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三十)

  • きのうの出来事 時間(その三)

    前日からの時間調整。どういうこと?当日の起床時間は、9時頃とします。睡眠時間としては9時間は欲しいので、前夜は12時前です。というのも、時間が短いと日中に猛烈な睡魔におそわれるのです。睡眠が浅いのでしょう。予約時間は午前11:30なのですが、「すくなくとも30分前においでください」と言われます。病院までは、車で10分足らず。渋滞はありえないので、10分で十分です(5分でも良いくらいですけどね)。ただ、血圧等をはかりますので、もう少し前に着いておきたいですね。ということで、10:40に、アパートを出ます。起床から1時間半しかありません。そんなにあるのに、「しかなの?」でしょうね。わたし、起きてすぐには動きません。動けません。でその日は、椅子にすわってね10分ほどボーッとします。低血圧ではないですよ。体の面で...きのうの出来事時間(その三)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十六)

    こんやは人恋しくもある栄子だ。35才という年齢が、現実感をともなって栄子に襲いかかっている。そんなときの正男の出現だ。なにかしら運命めいたものを感じてしまう。正男にしてもそうだ。バイト先の居酒屋を出たのが、10時過ぎだった。平日の夜では、客の入りも悪い。先月に時給がアップされたとたんに、一日の時間管理がきびしくなった。この間までなら「沙織に会える」とばかりに小躍りする正男だった。しかし今夜は……。そのまま自宅に帰る気にもなれず、行くあてもなくタクシーに乗り込んでしまった。そして交差点での酔っ払い、車を降りたところで栄子を見つけた。正男が目ざめたとき、まるで見覚えのない部屋にいた。殺風景なへやで、廉価なビジネスホテルまがいに感じた。身体をおこして、まず目に飛びこんだのは、全身がうつりこむほどの特大ミラーだっ...愛の横顔~100万本のバラ~(十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (三百九十六)

    ((ご報告))あとさきになりましたが、(三百九十二)より、第3部(武蔵の死)とさせていただきます。屋台骨を失った、富士商会。武蔵は死の床で、どんな起死回生の手を打ってくるのか。そしてその後の、富士商会は……?(すこし企業小説的な要素が入っていますが、なにぶんにも会社勤めは経験不足ですので深く追求されませんようねがいます)その日の夜に、竹田・服部・徳子、そしてむろん五平が、社長室に呼ばれた。昼間のこうふんが覚めやらぬ中、おもむろに武蔵が口をひらいた。「どうだ、ソファの座り心地は。加藤専務がうまいことをいった。『雲のじゅうたんですなあ』。ふわふわだけれども、芯がしっかりしている感じだろう」まだソファ自慢がつづこうとするのを、五平が引きとった。「社長とは真反対だよな。ゴツゴツしているけれども芯はやわらかい、って...水たまりの中の青空~第三部~(三百九十六)

  • ポエム 焦燥編 (happy? はっぴー?)

    独立したわたしの部屋には、CDコンポがあります。ベッドがあります。冷蔵庫も、洗濯機も、あります。大変、嬉しいです。その上に、エアコンさえも取り付けてあるのです。わたしは倖せ、なのでしょう……でもわたしは、寒いのです。すべてが整いすぎていてそれが為にわたしは、人とのコミュニケーションを失くしているのです。すべてが、わたしの部屋で完結するのです。わたしは、いつも寒い思いをしています。これが大人になるための階段、なのでしょうか。大人になるための試練、なのでしょうか。だから大人って、我慢をしなければいけないのですか。それが大人と言うならわたしは、なりたくない!(背景と解説)「独立した部屋」というのは、「こころ」です。CDコンポにベッド等々は、むろんのこと比喩です。エアコンによって快適なこころ持ちを、いつも維持して...ポエム焦燥編(happy?はっぴー?)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 祭り (二十)

    手紙(四)お母さんの話では、病気を苦にしていたとのことだ。「一生を病人で過ごしてわたしに迷惑をかけるくらいなら、と自殺をはかったんです。この子は、あなたもご存じのとおりに、とても気のやさしい性格ですから」そしてまた、こんな話も。「元気でいてほしい、健康であってほしい、そう思いますよ。でもね、いざこうなってみると、親としてはどんな形にせよ、生きててほしいんです。たとえずっとベッドの中にいることになっても、やっぱり生きててほしいんです。それがあの子にはつたわらなかったのでしょうか…。それとも、これがあの子の復讐だったんでしょうか。母親であるわたしに対する復讐だったんでしょうか」「のぞまれない子どもだったんだ」と、苦しげに告白した友人。真夜中に両親のそんな会話を聞いたという友人。そのことを告げると、目にいっぱい...青春群像ごめんね……祭り(二十)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだらー~

    (八)詭弁「ひとつ目人間の国にまよいこんだ男が、年月が経つにつれて、ふたつ目のおのれを不具者と見てしまう。こわいことだけれど、いつの時代でも起きている。真理なんてものは存在していないのさ。そんなものは時代じだいで変わるものだ。『後世の歴史家が判断してくれる』って言い訳するけれども、あんなものは詭弁だね」「だってその時代に生きた者にとっては、後世の人間なんて関係ないだろうが。人間だれしも、幸せになるために生きてるんだろ?そのために一所懸命がんばるんだろ?但し、ただしだ。欲ばってはいけない。分相応ってやつを考えなけりゃ。戦争なんて、欲ばりの人間がひきおこすものさ」「仕掛けた方が欲ばりだと、断言はできないだろうけれどね。じっと我慢の子だった方が、もう我慢ならん!となる時だってあるだろうからさ」立て板に水のごとく...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだらー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十九)

    (吉岡一門三)しびれを切らした門人たちが、口々に「遅い、遅いのお」「怖じ気づいたのであろう」「刻限は伝えてあるよな」「もしかして文字が読めぬのか」と大きく笑いだした。大地からの冷気が身体を冷やしていく。足を踏みならす者や指に息を吹きかける者、互いの体をぶつけ合って暖をとる者もいた。「少しは落ち着かぬか、見苦しいぞ」「されど、こう冷えましては」梶田の声かけにも、門人たちは従うことなく体を動かしつづけた。「ムサシだ、ムサシが居るぞ!」「せんせえい。ムサシが、後ろに」本堂の欄干に足をかけたムサシがいた。獣の皮で作った肩掛けで体を冷やさぬようにしている。更に足首にも巻き付け、手には手ぬぐいが巻かれている。「なんとも面妖な、まるで猟師ではないか。軟弱者が!」一人の門人があざ笑った。「これは笑止な。肩や手を冷やすなど...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二十九)

  • きのうの出来事 時間(その二)

    SSDと純水の話、いかがだったですか?SSDなんですがね、自分で……というのは、余ほどに自信がある方以外はやめた方が良いみたいですよ。むろん、youtubeに動画はありますが、わたしには難しすぎたです。パソコンのカバーを開けてHDDを上手に取り外し(これ、こわい)、SSDにデータ移行をさせて(難しそう)、そして取り付け(これもこわい。どこかにひっかけたりしたら、そこでオジャン)ですからねえ。気の遠くなる話に感じませんか?わたしは、コスパを考えて、業者にお願いしました。ということで、なにかのお役に立てれば幸いです。さてそれでは、本題に入りましょうか。「時間」のことです。時計が教えてくれる、カチッカチッ、もしくは無音でスーッと動く、秒針と短針で教えてくれる(デジタルもありますね、いまは。それもふくめてです)の...きのうの出来事時間(その二)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十五)

    栄子が言うと、「酒の氷はね、手で割ったものが一番なの」とママが応えた。「味がやわらかくなるのよ。いいがけん、覚えなさい。バイトをしてくれてたころは手抜きばっかりだったわね。栄子!あんた、踊りのときに手抜きする?それと同じよ。あんたんちで飲むときも、そうするのよ」とママが付け足す。栄子が「はーい」と肩をすぼめている。今のいままで、神々しいほどの美女にみえていた正男だった。それがいまは、いたずらが学校の先生にバレたときの表情をみせた。その仕草が、はじめて沙織を抱いた翌朝に感じた愛おしさと同じく感じる正男だった。栄子には十年来のなじみの店だ。はじめての正男は栄子のとなりで小さくなっている。「そっちの若いのはなんにする?ハイボール?」すこし赤茶けたコースターの上にグラスをのせて、すっとふたりの前にすべらせた。薄め...愛の横顔~100万本のバラ~(十五)

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