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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百九十五)

    「大丈夫ですよ、その点は。特例中のとくれいだってことを伝えてありますから。新入りの藤本なんか、ぼくが何度いっても門前払いの吉田工業との取引を成立させたんですよ」と、しかしそれでもなお食い下がる服部に対して、「それでもだ。節操がない会社とおもわれる」と、取り合わない。「1回目は通常取引で、2回目からおまけ作戦をとりました。みんな営業に苦労している所ばかりなんです。特例として許してやってください」すがるような視線を、営業全員がいや富士商会社員全員が、武蔵に向けた。「しかしなあ……。まあ、お前たちの判断にまかせるといったのは事実か。しかし服部、事後承認でいいと言ったんだぞ」「はい、分かっています。でも『ダメだ』って言われそうだったんで、セール終了後にしようと思いました。すみません。責任はぼくがとります。給料を減...水たまりの中の青空~第二部~(三百九十五)

  • ポエム ~焦燥編~ =おふくろの詩(うた)=

    <pointadpointad-id="div-plaza-point-ad"pointad-text="#ブロ活広告#"/>あたりを闇がすっぽりと包みこみ、だれもが互いを干渉しなくなったときふと、こころをかすめる――あの空って、ほんとの空?宇宙につながるはずのこの空に、なにかが覆いかぶさり、すべての恵みをうばいさる闇が生まれる……、否、生まれた。おもいを遠くにはせ、おおい被さる闇をつきやぶり、宇宙のなかに溶けこむ。脳裏にうかぶ霞のたなびく果てに、赤い月がある。地上で見るよりはるかに大きい。そして、山のみどり、川のせせらぎ……みんなキレイだ!林をあるき回り、立ちこめる陽炎をはらい、いま、茶畑に立っている。湧きでる清水の流れをつたい歩く、あるく、、、いつの間にか山あいを緩やかに流れる川になり、魚やちいさな虫...ポエム~焦燥編~=おふくろの詩(うた)=

  • 青春群像 ご め ん ね…… 祭り (十九)

    手紙(三)ごめん、ごめん。きみが聞きたがっていること、そしてぼくが一番話したいことを、これから書くよ。ぼくね、いちど死んでるんだ。でも生き返ったんだ。ぼくは暗い井戸に落ちたんだ。どんどん沈んでいくんだ、水の中に。でもね、ちっとも苦しくないんだよ。「もう少しだよ、もうすこしだよ」って、声が聞こえるんだ。ううん、声じゃない。違うな、聞こえたんじゃないかもしれない。感じたっていった方が良いかもしれない。で、つぎには足を引っ張られるような気がした。ぐんぐん速度が増していく感じだった。そうだな、井戸の大きさは……直径は1mぐらいだったかな。両手を広げれば十分に壁につくと思うよ。だから力を入れれば、そこで止まれたかもね。でも、しなかった。でもね、怖くはなかったんだ、不思議と。死ぬという感覚がなかったんだ。でそのとき、...青春群像ごめんね……祭り(十九)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだらー~

    (七)人でなしの国そんな新一のことばに、わたしは黙した。独善的な新一に反論はゆるされない。一の反論に対して、十の再反論がかえってくるのが常だ。わたしが黙りこくると、新一は満足げにうなづく。正直のところ癪にさわるが、新一と口論してもはじまらないと、わたしがいつも矛をおさめてしまっている。ものわかりの良いわたしが、吐きだすことばをのみこんでしまう。おなかがいっぱいだ、ことばで。あい反する意見のふたりのあいだに、友情というものは存在しうるのだろうか。はたして、同一行動をとるふたりだからと、友情が存在しているのだろうか。わたしと新一のような従ぞく的関係でも、それは友情とよばれるのだろうか。わたしは新一が好きだ、尊敬もしている。新一もまた、わたしが好きだと言ってくれる。新一は言う。「愛憎の間に、人は住んでいるのじゃ...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだらー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十八)

    (吉岡一門二)すっくと立ち上がった清十郎は、ムサシに向かって一礼すると、静かに語りかけた。「先ずはムサシ殿に言上したい。先日の門人どもの非礼の段、お許し願いたい。師範代共々に留守に致した身共の失態でござった。血気盛んな若者ゆえの暴走とお許し願いたい」深々と頭を下げる清十郎に対し、傲然とムサシが言い放った。「いやいや、とんでもござらぬ。美味な馳走でござった。なよなよとした棒振りは、初めてのことでござれば」「おのれえ。数々の暴言、もう我慢ならぬ」どっとムサシに向かって門人たちが駆け寄った。「一対一と思っていたが、やはりのことに」せせら笑うムサシに対し、門人たちの怒りは頂点に達した。刀に手をかける者を先導するかの如くに、篝火の松明をかざして一人が飛び出した。「止めよ!恥の上塗りぞ」梶田の一喝に、渋々と後ろに下が...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二十八)

  • (10月26日)恐るべし! SSD

    10月18日に、ガマンの限界にたっして、HDD→SSDに換装することにしました。物語りを書くのに、ワープロソフトは「一太郎」を使っています。1995年からずっとです。いまのバージョンは、「一太郎2021」です。先週にお話しましたが、ブログでの「水たまりの中の青空」をホームページに移し替えようと思い立ちました。一気読みできる状態へとしたかったのです。なにせ400話を超えています。膨大な量のファイルです。コピペなんぞをしますと、例のグルグル○マークが出ましてね、進まないんです。漢字変換なんかでも時間がかかりますし。頭にきて、JustSystemに電話しました。「ファイルが大きすぎます」、「HDDによる処理問題です」ということ。そこでSSD換装することに。10月19日にGoodWillに持ち込みまして、「1週間...(10月26日)恐るべし!SSD

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十四)

    「もういい、やめろ!今夜はここまでた。これ以上ムリして、もっとひどくなったらどうするつもりだ。からだを休ませることも大事だぞ」。ギターをケースにしまい込みながら「ひさしぶりに一杯飲むか?」と、栄子にやさしく声をかけた。立ちすくんでいる栄子、返事をかえさない。じっと床を見つめている。ボタボタと落ちる汗を拭こうともせずに、なにやらぶつぶつと呟いている。健二を見ることなく、床を見つめたまま呟きつづけている。「勝手にしろ!」。捨てゼリフをのこして健二が去った。それでも栄子は微動だにしない。小さく床をふみ鳴らしている。先ほどの激痛ははしらないが、まだすこしの痛みが感じる。「どうしたの、どうしてなの。あたし、悪いことをしたかしら?」だれに言うでもなく、はっきり声を出した。トップダンサーを夢みて踊りつづ続けてきたこの二...愛の横顔~100万本のバラ~(十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百九十四)

    富士商会の次回納入時の交渉では、言った聞いていないの水掛け論となり、それならば「元の問屋との取引を再開する」と突っぱねられた。このメーカーとの取り引きによる恩恵は大きい。富士商会の信用度があがるし、すそ野がひろい業態であることで関連する企業も多い。2年越しで狙っていたメーカーでもあり、なんとしても口座を開かせたかったのだ。定石通りに通っていたのでは、この先何年もいや取引ができることも難しいかもしれない。お得意の素行調査をやってみたが、係長は落とせても謹厳実直を絵で描いたような課長は、難攻不落だ。家族にまで広げたけれども、どれも落とすことができるようなものはなかった。結局実利を与えることでしか、取引は成立しなかった。結果、値上げは見送りとなった。しかし武蔵にしても利益なしでの取引をつづけるわけにはいかない。...水たまりの中の青空~第二部~(三百九十四)

  • ポエム ~焦燥編~ (tears)

    夢を見た。夢であって欲しいと思った。そしてなによりも現実であってくれ!いくど祈ったことだろう。亜紀子はぼくをあふざけり笑うように見も知らぬおとこの胸に抱かれていた。一糸まとわぬ姿で。どんなに苛だったことか!どんなに悦びにみちたことか!蜜はくだけた。どれほどに腹だたしかったか。いくど叫びの慟哭をおさえたことか。戯れに触れられたほゝへの柔かいくちびるの感触……過ぎ去ったこと……ぼくはなにも言わずに背を向けそして……涙したそして目を閉じた――――敵前逃亡(背景と解説)欺瞞です。いや、矛盾、かな?自分の心に巣くう、幼児の――悪魔の心です。幼児って、悪魔だと思いませんか?残酷なまでに、自己チューだと思いませんか?でもでも、天使でもあるんですよね。にっこりと微笑みかけられると、すべてを許してしまうんですよね。ポエム~焦燥編~(tears)

  • 青春群像 ご め ん ね…… (十八)

    手紙(二)新一くん、覚えているかい。二年生のときだったね。クラス替えで一緒になったぼくたちだったね。ぼくが前できみが後ろだった。いや、ちがうか。となり合わせだったね。何列目だったっけ?真ん中あたりだったと記憶しているんだけど。まだ卒業して五年だというのに、もう記憶があやふやになっている。情けないね。体調をくずして給食を吐いてしまったぼくのことを、席がとなり合わせたというだけで、きみは助けてくれた。嬉しかった、ほんとに。君だけは信じられる、そう思ったんだ。他人との交わりをわずらわしいものとして敬遠してきたぼくだけど、きみだけは唯一こころを許せると思ったんだ。それで、きみとの友情を揺るぎないものにするために、へび女救出大作戦を考えたんだ。じつを言うと、あの見世物小屋には以前にいちど行っているんだ。そしてその時...青春群像ごめんね……(十八)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだらー~

    (六)原則「若者だって、そのくらいの計算はしているんじゃないか。どう猛な獣にいたぶられる小動物然として、よろんの同情を買ったのじゃないかな。だいいち君をして、マスコミに対し悪感情をだいたじゃないか。若者のためになみだを流したじゃないか。同世代の純朴な若者が攻撃されたのが、たまらなかったんだろ?」「それにだ。わずかではあっても、ヒッピーに対する偏見をとりのぞけらればと思ってのことかもしれないぜ。ひょっとして……」「そのものわかりの良さが、だめなんだよ」新一が私のことばをさえぎって言う。「流されちゃだめだ。ものの本質が変わるわけがない」「原則が大事なんだ。踊らされちゃだめだって」[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだらー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十七)

    (吉岡一門一)洛外蓮台野において。静まりかえっている境内は、煌々とかがやくかがり火で昼ひなかのように明るく照らされていた。そこに、本堂を背にして清十郎が陣どっていた。当事者以外には秘密にしていたにも関わらず、また冷え込む夜間にも関わらず、そしてまた洛外だというのに十数人の見物人がいた。門人たちが口々に「見世物ではないぞ」「帰れ帰れ」と叫んでいる。「騒がしゅうて申し訳ございませぬ。どうやら、ムサシが漏らしたようで。門人に取り囲まれるとでも思ったのでございましょう。まさに下衆の勘ぐりというもので」「いやいや、そうではあるまい。多数の門人だ。中には口の軽い門人もおるであろう。しかし事を穏便に済ませようと思ったが、これではそうもいくまいて。ムサシには悪いことをしたかもしれぬな」鷹揚な気質の清十郎を知る師範代の梶田...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二十七)

  • きのうの出来事 時間(その一)

    前回が8月7日でしたから、2ヶ月余ということですか。その間にもいろいろあって、お話しなければとは思っていたのですが……。それでははじめましょうか。まず簡単に自己紹介を。というのも、これからの話で予備知識があったほうが、と思いますので。昭和24年(1949年)6月生まれです。ことしの3月いっぱいで、職を辞しました。リタイア生活に突入です。中学卒業後からですから、58年間働いてきました。本当は切りの良い60年間にすべく、75歳まではがんばるつもりでした。が、1月に3歳上の兄を亡くしまして、やっぱりショックだったのでしょうか、どうも体調不良なんです。CRT-Dというペースメーカーの電池交換の年になる予定でしたので、そこらからも、でしょうか。医師に言わせると「それはないですよ」ということなのですが。さてさて、それ...きのうの出来事時間(その一)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十三)

    沙織とは、あの旅行を境として疎遠になっていた。いまはただ、自宅とバイト先を往復するだけの正男だった。夕方に出かけて深夜の二時ごろに帰り着くという日々をつづけている。母親の「身体をこわさないでね」という心配顔も、いまはうっとおしく思えたりする。襲いかかる淋しさが、母親に対する暴言となったりした。「お父さんがね、就職先を見つけてくれたんだけど、面接に行って…」「誰がそんなこと、頼んだ!親のコネなんてみっともない。そのうち、ぼくの実力を認めてくれる会社が見つかるさ。ほっといてくれ!」しかし翌日には「母さん。ぼくって、チャラ男なの?バイト先で店長に言われたんだけど…」と泣きつく。そして決まって「いまはチャラ男でも良いのよ。後のちそれがきっと財産になるから」と慰められた。正男のざらついた気持ちも、そんなひと言で落ち...愛の横顔~100万本のバラ~(十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百九十三)

    翌日のこと、社員すべてを集めての朝礼がはじまった。電話番としてひとり、徳子が事務室にのこった。いまではお局さま然として、女子社員を取り仕切ってる。かつては武蔵の愛人として君臨していたものだが、小夜子という姫が現れてからは、いやその小夜子自身に惚れ込んでしまい、女城主の警護係になっている。二階にある大食堂でのこと。武蔵の激しくもどこか誇らしげな声がひびいた。「セールを始めてから2ヶ月だ。どうだ、成果は上がったか?服部、営業の成績を発表しろ」ぐいと胸をそらせて、服部が黒板中央に立った。そこには折れ線グラフで、月ごとの成果表が示されている。「ええ。セールそのものは、8月の頭からスタートしました。1、2月は社長の新年の訓示もあり、不景気な世間とはちがい前年度なみでした。ところが、3月に入り、漸減傾向となり、5月6...水たまりの中の青空~第二部~(三百九十三)

  • ポエム ~焦燥編~ (death)

    冷たく吹く風の下で静寂を保つ海の世界にかくれているのは誰?そびえ立つビル街の片隅で鼠と戯れる新聞紙その朝(あした)には雑踏の中で光の下へ運ばれることなく死んだのです(背景と解説)すみませんねえ、三週続けて「死」という概念が出てきて。いや、[ことば]も含めると四週か……。別に、自殺を考えていたわけではないのです。まあ、観念的にはそうだったかもしれませんが。臆病者なんですよ、わたしの、真の正体は。自分を写す鏡を求めていたのでしょうね、今でもそうかもしれませんが。だから、毎月のようにあちこちに出かけるのかもしれません。“独りだって、どうってことないさ”確かにそうなんです、どうということはないのです。でも、雑踏の中に自分を置くことを、意識してはいませんが、置きたがるのですよ。弥生遺跡に身を置き、そしてまた縄文遺跡...ポエム~焦燥編~(death)

  • 青春群像 ご め ん ね…… (十七)

    手紙(二)新一くん、元気ですか。突然にこんな手紙が届いて、さぞかしびっくりしただろうね。考えに考えたあげくのことなんだ。きみにだけは、ぼくの気持ちを分かっていて欲しくて。母さんに話しても、多分泣くだけだろうと思うんだ。いや、本音を言えば、母さんには知られずにいたいと思う。こんな弱いぼくだなんて、絶対に知られたくない。お願いだ、新一くん。母さんには内緒にしていて欲しい。覚えているかい?もちろん覚えているよね、あのへび女のこと。あの件で、唯一の親友だったきみを失ってしまったんだ。きみのひと言はこたえたよ。そんな風に考えていたなんて、ぼくにはほんとに思いもかけぬことだったから。いちじはね、きみを憎んだりしたんだ。きみ、なんて言ったか、覚えてる?案外、覚えていないかもね。「ぼく、帰る。こんなの、やっぱり変だよ」っ...青春群像ごめんね……(十七)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだらー~

    (五)テレビわたしに向かって投げかけたことばかと思い、身がまえるわたしだったけれども、新一の目はわたし見ていない。テレビに視線は向いていたけれども、見ているようには感じられない。そう、ブラウン管に映っている新一自身を見つめている、そんな風に感じた。「おとなに分かるわけがない!そう主張するのなら、答える必要はない。そもそもテレビに出るなど、言語道断だ。文明社会を捨てて、大自然の中に戻るヒッピーなのに。文明社会の最たるもののテレビに出るなど、だ。明らかにギマンだ。あいつはヒッピーじゃない!単なるスネ男だ」「ヒッピーはすでに人間失格なんだろ?文明社会においては、生存の場はないんだろ?だったら、ただだまって、大自然にかえればいいんだ。トンボめがねをかけて、布袋を背にして、ゴム靴をひきずって。もどきだ、もどきだよ!...[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだらー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十七)

    (京の地六)明け六つの鐘が鳴る中、吉岡又七郎が一乗寺下り松の地に着いた。季節が春を迎えたとはいえ、まだ夜明け前では冷気で辺りを包まれていた。「若、ここにお座りください」梶田は、決闘の場として指定した場を広く見渡せる大きな松の木の下に陣取ることにした。態勢は万全だった。東西南北のいずれからムサシが現れたとしても、それぞれの要所に門人を配置していた。「若。大丈夫ですぞ。このように、多数の門人たちがお守りいたします。ムサシも、ここまではたどり着けませぬゆえに」梶田がしきりに又七郎に声をかける。まだ幼い又七郎では、緊張がとれぬのも致し方のないことと考えていた。干からびた声で「たのむぞ」と、又七郎が答えた。梶田が「ムサシの姿は見えぬか。あ奴のことだ、此度も遅参するであろうがの」そう言った矢先に、ガサガサという音が頭...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二十七)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十二)

    正男が目ざめたとき、沙織の姿はなかった。脇のテーブルに「さきにかえる」との走り書きがあった。沙織の行動が理解できない正男だった。しかし満足感一杯の正男には、どうということもないことだ。それよりも夢に出てきた栄子のことが気になっていた。はじめてのフラメンコという踊り、正男には衝撃だった。「たかがダンスだろうが…」という見くだした思いが、見事にくつがえされた。栄子というダンサーがステージ中央に立つと、ギターの調子が変わり、激しいビートを奏ではじめた。カンタオーラの声が、地の底からひびくかのごとくに正男の耳にはいる。パンパンとリズムに合わせた拍手と共に、正男を釘付けにしていく。タンタンと床をふみ鳴らして、悩ましく腰をゆらしながら手首がくねくねと動き、そして怪しげな指先が正男を魅了する。激しくゆれるスカートの裾が...愛の横顔~100万本のバラ~(十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百九十二)

    そよそよと多摩川の川べりから風が吹いてくる。きらびやかなネオンサインが焦がす空を、はるかに見ながらふたりして並んでいる。電柱にとりつけてある街灯にむらがる虫が、他の客だ。「どうです、いけるでしょ?」「うん、美味い!と言うのは、失礼か?仮にもプロの作るものだ、うまいのは当たり前だな。俺たちに合ってるな、この味は。五平にしちゃ、上出来の所を見つけたな」熱々のおでんを口にはこびながら、コップ酒を手にする。五平は、ちびりちびりと舐めるように飲んでいる。おだやかな表情の中に、ときおり見せる苦汁の色。武蔵が、口を開いた。「五平、なにを悩んでいるんだ。話してみてくれ。五平の悩みごとは、俺の問題でもあるんだ。俺たちは、血こそつながっていないが、義兄弟なんだ」じっと五平の横顔を見ながら、五平の口がひらくのを待った。しばらく...水たまりの中の青空~第二部~(三百九十二)

  • ポエム 焦燥編 (超人の国)

    ”荒々しい瞬間の暴力が飲み込んでしまう”そしてその飲み込まれた世界は、誰も居ない浜辺でたった一人で泳いでいるわたしを、もう一人の私が見ている所。”ぴかぴか光っているものは、一時の為に生まれたもの。本当のものは、滅びることなく後世に伝わります”人間の愛とは、所詮前者のようなものでしょう。彼は幸せ者です。私に殺された-唯その一点で、私の心に私を知る人の心にいつまでも記憶されるのですから。後世にまで伝わるのですから、たとえ記憶の片隅のことだとしても。”私が後世のことなぞかまっていたらだれが今の世の人を笑わせますか”この世から笑いという笑いが消え哀しみという哀しみが消え去る━そう、「人でなしの国」そしてそれが、「超人の国」でしょう[Suchislife,willoncemore!]=byNietzsche(背景と...ポエム焦燥編(超人の国)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 祭り (十六)

    手紙(一)その日を境にしてぼくと友人との間に、目に見えないバリアのようなものが張られた。ぼくの気持ちのなかに嫌悪感が生まれていた。おのれの馬鹿さ加減を見せつけられるようで、友人の顔を見ることができなくなった。そしてそれは友人にとっても同じことのように感じられた。廊下の先で見かける友人は、すぐに曲がってしまう。別棟の校舎に向かうこともあれば、他のクラスに入り込むこともあった。二人の間に流れたぎくしゃくとした空気は、卒業するまで消えることはなかった。二十歳になったばかりの時だった。突然に友人の母親から電話が入った。「実はね、聡が他界しました。一度目の折には蘇生してくれたのに、今回はだめでした。もう大丈夫だと思っていたのですけどね。病状の悪化で入院して……」最後は涙声になって、聞き取れないまま電話が切れた。すこ...青春群像ごめんね……祭り(十六)

  • [ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだらー~

    (四)反吐それにしても、マスコミという化けものの餌食となった若ものもあわれだ。錬達なカメラワークの中で、若ものはしだいに色をうしなっていく。とどのつまりが「あんたたちになにがわかる!」とどなり散らして、スタジオをあとにした。まだ年わかい、未熟な、そして無知な若ものをいたぶって、なにが面白いのか。コメンテーターたちの勝ちほこった顔がアップとなるに至って、わたしを嫌悪感がおそい、反吐がでそうになった。「あのヒッピーもどきが、つまりきみだ。コメンテーター=マスコミさ、マスコミの意のままに踊らされているんだ。ヒッピーがそのことに気づいて逃げだしたのか、あの若ものほどバカな男もいない。自然に生きようとする者が、なぜに人工物の最たるテレビにでるのか。気づいてのことなら……いや、あそこにたった段階で、若ものはヒッピー失[ブルーの住人]第四章:蒼い友情~まーだらー~

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (二十六)

    (京の地五)「ぐずぐずするな!昼餉までには戻るぞ」京都御所ちか近くに差しかかった折には「天子さまがおられます」と深々と一礼をする丁稚にならい、ムサシも一礼をした。それを見ていた周囲から失笑がもれて、丁稚の底意地の悪さに「お前は帰れ!」と追い返した。吉岡道場をのぞいた折に、そのあまりになよなよとした動きに呆れ果てた。〝これなら勝てる!〟そう踏んだムサシ、すぐさま京の町道場破りを繰り返した。そして「吉岡道場なるもの、公家衆御用達の棒振り剣法なり。日ノ本一武芸者宮本武蔵」という立て札を、宇治川、鴨川そして白川の橋近くに立てた。この立て札に激怒した清十郎が、返答と題した立て札を京の至るところに立てさせた。どこの馬の骨とも分からぬ男を、日ノ本一などと称することはできぬとばかりに、わざとひのもといちと書き込んだ。「ひ...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二十六)

  • 愛の横顔 ~100万本のバラ~ (十一)

    正男に言ったのかひとり言なのか「まず、セビジャーナスね」と、うなづいている。あくびをかみ○す正男だったが、ひとり現れたダンサーが、床をタンタンと踏みならした。腰を前後左右に振りながら、手の指をくねくねと回して踊る。「うんうん」とうなずく沙織、しかし正男にはなんの感動もない。舞台の両袖から、ふたりずつのダンサーが呼び出されるようにあらわれた。手をたたきあいながら、床を踏みならして踊りあう。互いに向き合ったダンサーたち、両手を高く上げてクルリクルリと回りあう。よく見ると左右対称の踊りになっている。そして迎えいれられるような形で、中央に進み出たスターダンサー。五人が一斉にスカートの裾をひるがえしながら床をふみ鳴らす。白い足に釘付けになった正男の視線の先に、日本人ダンサーを見つけた。栄子だった。素っ頓きょうに「お...愛の横顔~100万本のバラ~(十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百九十一)

    五平の自宅がある大田区田園調布近辺での酒盛りとなった。金持ち連中が居をかまえる場、富裕層が暮らす一帯だ。その地に居をかまえるなど五平には思いも付かぬことだったが、同居する真理江のたってのねがいで中古住宅を買いとることを決意した。幸いにも五平には結構な額のたくわえがある。誰とて遺してやることもない金だ。真理江のためならと、決断した。そんな真理江とは、かれこれ五年ほどの付き合いになる。ふらりと立ち寄った一杯飲み屋の女主人だったが、それがかつて女衒時代に遊郭に斡旋した女人だった。当初は気がつかなかった五平だが、ひとり静かに飲む五平にやたらと女主人がからんでくる。「なんだ、このおんなは?」。奇異な思いをいだいていたが、客が五平ひとりになったときにその旨を告げられた。まさかの再会におどろく五平であり、女衒としての後...水たまりの中の青空~第二部~(三百九十一)

  • ポエム ~焦燥編~ ( その死 )

    病死というわけでもなく自然死というわけでもなく他殺死でも事故死でもないその死……灼け付く太陽その砂漠で水を失っても生き得る時間は?太陽も月もなく雨も風もない孤独に耐えられる?その死……無音の部屋の中での光が失われた中での飢えと渇水によるその死……(背景と解説)事象は理解してもらえると思いますが、心象は不可解ですよね。正直のところ、わたしにも分かりません。ただ単に言葉を羅列しただけのことなのか、それとも意図を持って配置したことなのか、分からないんです。罰?を意識しているのでしょうか。飢餓地獄?と考えても見たのですが、違和感がありますし。当時は、地獄に意識があったようなのです。無音と闇、地獄でもないみたいですし。二十歳前後というのは、自分のことなのに、さっぱり分かりません。不思議なのは、そんな自分でも、何とか...ポエム~焦燥編~(その死)

  • 青春群像 ご め ん ね…… 祭り (十五)

    小屋のうら手に煌こうと電燈がともり、プンプンと酒のにほいがする別の小屋があった。十畳いやもう少し広いだろうか、板べいの小屋だった。ちいさな窓から中をのぞきこむと、七、八人が車座になってすわっている。そして並々と注がれたコップ酒を、次つぎにからにしていた。その中には、呼びこみの男がいた。短剣をなげて喝采を浴びた中国人風の男もいた。お手伝いをしていたチャイナ服がまぶしかった女性もいた。割りばしをチリ紙で叩きわった武士道の先生もいた。みな、顔を赤くしている。そしてそのなかにひと際大きな嬌声をはっしている、あのへび女がいた。舞台の上で着ていた真っ白な着物すがたで、やはりコップ酒を飲んでいた。おおきく胸元をはだけている。身ぶり手ぶり大きく、話している。白くもり上がった乳房が目にはいったとき、ふたりとも思わず目を伏せ...青春群像ごめんね……祭り(十五)

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