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  • #2809 40代が動かすアメリカ

    3月30日、米国のトランプ大統領は米NBCの番組のインタビューで(憲法で禁じられている)3期目を目指す可能性について尋ねられると、「それを実現する方法はある」と答えたと伝えられています。トランプ氏の言によれば、「冗談を言ってるわけじゃない。(中略)私にそうして欲しいと大勢が望んでいるのだ」とのこと。2期目を終えた時点で既に82歳を迎えているはずのトランプ氏が「次の任期」にまで言及する姿には驚きを禁じえませんが、そこまで権力を追求する意欲を持ち続けられること自体、まさに稀代の「化け物」ということなのでしょう。合衆国憲法では、「いかなる者も、2回を超えて大統領の職に選出されない。また、他の者が大統領として選出された任期のうち、2年以上にわたり大統領の職にあった者あるいは大統領の職務を行った者は、いかなる者も1...#280940代が動かすアメリカ

  • #2808 「ゼロゼロ融資」とその後始末(その2)

    コロナ禍下における信用保証のついた「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)などの支援策によって落ち着いていた企業倒産が、昨年11年ぶりに1万件を突破し、現在も全国的に増加傾向あると多くのメディアが報じています。ゼロゼロ融資の返済時期の到来に加え、物価高、人件費の高騰、金利上昇など、企業経営への逆風が強まる中、中小企業・零細企業を中心に生き残りをかけたやり繰りの日々が続いているようです。もちろんそうした状況を、政府も黙って眺めているわけではありません。(ゼロゼロ融資借入金の)借り換え需要への対応を含めた中小企業への資金繰り支援や、経営環境の改善に向けた返済金の整理、経営改善計画の策定を通じた経営支援などあの手この手を繰り出しているようですが、その実効性については(いまひとつ)「心もとない」といった評も耳に...#2808「ゼロゼロ融資」とその後始末(その2)

  • #2807 「ゼロゼロ融資」とその後始末(その1)

    3月17日の日本経済新聞が、中小企業庁が各都道府県等の信用保証協会に対し、地域によってバラツキが見られる中小企業への支援状況を点検し、経営悪化の予兆の早期把握や悪化する前の経営支援に乗り出すよう求めたと報じています。(「中企庁、保証協会の支援状況点検へ悪化予兆の把握促す」2025.3.17)サラリーマンなどにはあまり知られていませんが、信用保証協会とは、中小企業や小規模事業者が銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける際に、(債務者が協会に対し一定の保証料を支払うことを前提に)その債務を保証する(つまり保証人となる)公的機関です。全国に51の信用保証協会があり地域に密着した保証業務を行っていますが、もちろん、保証金さえ払えば誰でも保証してもらえるわけではありません。経営状況や借入額などに対する審査が必要...#2807「ゼロゼロ融資」とその後始末(その1)

  • #2806 「五公五民」では既に足りない…という話

    「手取りを増やす」という国民民主党のキャンペーンとともに、最近よく耳にするようになった「国民負担率」という言葉。個人や企業が稼ぎ出した「国民所得」全体に対する、税負担と社会保険料負担の割合を指しているとのことです。ネットを手繰ると、国民負担率の計算式は「(税負担+社会保険料負担)÷国民所得」とのこと。いわゆる「税負担」には、所得税や住民税、法人税や法人住民税、さらには消費税や固定資産税等も含まれているということなので、個人の給料の明細書とはやや異なるかもしれませんが、社会保険料負担に含まれる年金や健康保険、40歳以上が納める介護保険等の保険料などはおなじみの項目かもしれません。財務省のWebサイト(「わが国の税制・財政の現状全般/負担率に関する資料」)によれば、1975年度に25.7%だった日本の「国民負...#2806「五公五民」では既に足りない…という話

  • #2805 米国発の大波を浮上の機会に

    人気芸人グループだった「ダチョウ倶楽部」の持ちネタ(「聞いてないよー」)ではありませんが、トランプ米政権が発表した関税の大幅な引き上げへの相手国や市場の反応は、まるで突然「熱湯風呂」に突き落とされたようなものだったと4月16日の日本経済新聞のコラム「大機小機」は記しています。(「日本株、浮上の機会を生かせ」2025.4.16)もちろん米国政府にとって、税収増が狙いならこんなショックは必要なく、徐々に引き上げればいいはず。ただ、それだとじっと我慢するうちにゆでガエルになる国もあり、経済は長期にわたり停滞する可能性が高まるだろうとコラムの筆者は指摘しています。ということは、米国が世界に対しただ不意打ちのような今回の高関税率発表の狙いは別にあるのではないか。(敢えて言えば)そこには、同盟国を世界の枠組みを大転換...#2805米国発の大波を浮上の機会に

  • #2804 コメが高いならパンを食え?

    米の価格高騰が止まらず、スーパーの店頭価格でも5キロ4000円を超える状況が今も続いています。昨年当初はだいたい2000円程度だったわけなので、1年で2倍に上がっているというのは、冷静に見てもただ事ではありません。備蓄米の放出を渋っていた農水省も(さすがに放置しておくわけにもいかず)売却を決定しましたが、その後も値動きに大きな変動はなく、どうやら大きく下がる見込みはなさそうです。なぜ米価が高騰しているのか。2022年中頃から上昇の気配を見せ始め、2024年から急激に値上がりが始まった市中のコメの価格。2023年まで減少していたコメの生産量は、24年には前年の716.6万トンから734.6万トンにまで18万トン増加したとのこと。不思議なことに、生産量が増えているにもかかわらず市場に流通する量が減少していると...#2804コメが高いならパンを食え?

  • #2803 トランプ大統領の世界観

    政権発足からまだ3カ月しかたっていないにもかかわらず、(突然の相互関税政策などにより)関係諸外国の間に大きな動揺や混乱を引き起こしている米トランプ政権。国内の製造業を再考させるというその目論見は分かるのですが、そもそもなぜトランプ大統領はここまで貿易赤字や関税にこだわるのかその背景として、トランプ氏の個人的な信念や経歴が影響しているのは(おそらく)間違いないでしょう。実業界に身を置き、不動産開発やビジネスで成功を収めたトランプ氏。そうした経験から、経済を「ゼロサムゲーム」と捉える傾向が強いと考える識者は多いようです。ゼロサムゲームとは、いわゆる「パイの奪い合い」、一方が得をすれば他方が損をするという考え方のこと。そうした感覚で、国家間のやり取りを(勝ち負けを決する)「駆け引き」の場としてとらえ、ディールに...#2803トランプ大統領の世界観

  • #2802 マッドマンへの対処法

    最近、「マッドマン・セオリー」という、これまであまり聞かなかった言葉をよく耳にするようになりました。これは、交渉の過程で相手の計算を崩す「交渉術」を指す用語で、わかり易く言ってしまえば、「アイツは何をするかわからない奴だ」と(意図的に)相手に思わせることによって、交渉を自分のペースに持ってくる手法を指すものだということです。さらに簡単に言えば、自分は「ヤバイ人間」だと強調することで、相手に要求を飲ませる(やくざのような)やり口のこと。どうせ言っても通じない。(アイツ腕力強いから)話がこじれて逆切れされるくらいだったら、(何とか)話を合わせながらうまくやっていこう…と相手を諦めさせることを狙ったものと言えるでしょう。ここまで言えば「ピン」とくる人も多いはず。確かに、第二次政権に入った最近のトランプ米大統領に...#2802マッドマンへの対処法

  • #2801 歴史の針を100年戻すトランプ政権

    トランプ氏ほど解釈が難しい人物は珍しい。世界で最も愚かな指導者に見える一方で、時に歴史的に極めて重要な人物として映る瞬間もあると、4月12日の英経済紙「TheEconomist」は報じています。彼は、常に被害者意識にとらわれ批判に敏感に反応するにもかかわらず、無能、不誠実、汚職、冷酷、偽善といった非難はほとんど意に介さない。その態度には筋の通った批判すら骨抜きにしてしまう力があり、まっとうな攻撃も政治的な影響力や常識的な正当性を奪われてしまうということです、世界経済を人質に、「相互関税」によって(単純に)自らの言葉の正しさを証明しようとしているトランプ氏。その本心は、側近たちにも読み取れていないようだと記事はしています。4月7日にインタビューで「相互関税は恒久的か、それとも交渉の対象なのか?」と問われたト...#2801歴史の針を100年戻すトランプ政権

  • #2800 リターンライダーが増えている…という話

    しばらくオートバイから遠ざかっていた50~60代がバイクに回帰した(いわゆる)「リターンライダー」が増加中だと、昨年9月16日の神戸新聞が報じています。(この先はあくまで推測ですが)オートバイブームが全盛だった1980~90年代に青春を過ごした彼らも、仕事や子育てを一段落させ、お金や時間にも少しは余裕ができてきた頃。友人同士が集まれば、昔話にも花が咲くというものでしょう。そんな中で出てくるのが、青春を彩ったオートバイの話。すっかり忘れていた「風を切って走る爽快感」のようなものを思い出し、(家族を説得できた人から順に)「リターンライダー」となっていく…といった流れが加速しているということでしょうか。記事によると、実際、新車(のオートバイ)を買う人の平均年齢は55.5歳(2023年)にまで延びているとのこと。...#2800リターンライダーが増えている…という話

  • #2799 「DEI」をスローガンで終わらせないために

    DEIと言えば、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)をまとめた概念で、組織や社会において多様性を尊重し、すべての人々を包摂的な環境で受け入れる方針を意味しています。米バイデン政権下で、官庁や企業の「目標」となったDEIは、「BlackLivesMatter」運動や性的少数者(LGBTQ)の保護とともに使われるようになった新しい用語と言えるでしょう。一方、トランプ新大統領は今回の(2回目の)大統領就任式直後に、連邦政府のDEIプログラムを廃止する大統領令に署名。それに呼応し、これまでリベラル色が強かったシリコンバレーの大企業、Meta、Amazon、Google、zoomなどが、軒並み「反DEI」へと方針を変えることを表明し始めたと報じられています。とはいえ、そもそも同...#2799「DEI」をスローガンで終わらせないために

  • #2797 トランプ関税は子どもの火遊び?

    ドナルド・トランプ米大統領の政治姿勢は、人々に注目されるものを取り入れながら日に日に大きく変化している。しかしひとつだけ、1980年代から一貫しているのは、関税が米経済を活性化させるうえでの有効手段だという信念だと、4月3日のBBC(JAPAN)が報じています。4月2日にトランプ氏自身が公表した相互関税政策については、世界中のありとあらゆるエコノミストが「この大規模な関税はやがてアメリカの消費者に転嫁され、物価を上昇させ、世界的な不況を招く」と警告している。それにもかかわらず、彼はこの日を「アメリカの解放の日」と呼び、「この日が、何年か後に人々が振り返って、『彼は正しかった』と言うような日になることを願っている」と話しているということです。もしトランプ氏が成功すれば、第2次世界大戦の焼け跡からアメリカが中...#2797トランプ関税は子どもの火遊び?

  • #2796 「日本はコメに700%の関税をかけている」はデタラメか?

    4月2日、米国のトランプ大統領は、「相互関税」と呼ばれる追加関税を世界の主要な貿易相手国に対して導入すると発表しました。日本に対しては、「われわれの友人である日本はアメリカ産のコメに700%の関税をかけている」などと述べ、24%の追加関税を課すとしています。「世界から搾取されてきたアメリカ。今度はアメリカが搾取する番だ」とまで豪語したトランプ大統領。今回の決定に関しては、(株価の下落などあまりに大きにな反響があったこともあって)4月10日未明に実施の90日間の延期が発表されたものの、当面は、抜いた刀を鞘に納めるつもりはないようです。それにしても、なぜ24%なのか?…厳しい数字を正当化する理由としてトランプ大統領が使ったのが、前述の「日本では、米の輸入関税が700%だ」という指摘です。しかしこの数字に関して...#2796「日本はコメに700%の関税をかけている」はデタラメか?

  • #2795 人生も「大企業型」と「地方型」とではかなり違う…という話

    ふるさと納税の総合サイト「ふるさとチョイス」を運営する(株)トラストバンクが、昨年11月に15歳~29歳の若者967名を対象に実施した「東京圏の若者の地方に対する意識調査2024」の結果を公表しています。調査報告書によれば、地方で暮らすことに「憧れる」と回答した若者は45.6%(「とても憧れる」「まあ憧れる」の計)と、約半数が地方暮らしに興味を持っていることが分かった由。理由は多い順に、①「地方でのスローライフに魅力を感じるから」(49.0%)、②「都会の喧騒から離れたいから」(32.9%)、③「心機一転できそうだから」(29.5%)…とされており、都会生活の疲れが地方への憧れを生んでいる実態が明らかになったということです。因みに、「理想の田舎暮らしができそうな都道府県」は、北海道、長野県、群馬県が上位を...#2795人生も「大企業型」と「地方型」とではかなり違う…という話

  • #2794 「トランプ関税」の辿る道はいかに?

    4月2日に米トランプ政権が発表した「相互関税」が、国際社会を大きく動揺させています。翌日の日米欧の各株式市場では時価総額で500兆円以上が吹き飛び、米国内では大規模なデモが発生したとも伝えられています。およそ科学的でない関税率の算定方法や、唐突で一方的な手法などで各国メディアが批判一色で染まる中、トランプ氏を第2次大戦の前の世界恐慌の引き金を引いた(とされる)「スムート・ホーリー法(1930年関税法)」を定めた、ハーバート・フーバー大統領(共和党)に重ねる論調も多くみられるところです。コロラド川に建設された「フーバーダム」で知られるフーバー大統領。国内産業保護を目的に1930年にスムート・ホーリー法で各国に高関税をかけ、それが貿易相手国との関税率引き上げ競争を生み「世界恐慌を悪化させた」ことで世界経済史に...#2794「トランプ関税」の辿る道はいかに?

  • #2793 で、アベノミクスは結局失敗だったのか?

    第45回衆院選で民主旋風を受けた野党第一党の民主党が圧勝し、初めて非自民を中心とする民主党政権(鳩山由紀夫内閣)が誕生したのは2009年(平成21年)のこと。しかしそのおおむね2年後、東日本大震災などの混乱を経て2012に野田佳彦内閣が倒れ、首相に返り咲いた安倍晋三氏の下で第2次安倍政権がスタートしました。そして、そのタイミングでアウトライン示された一連の経済政策が、広く知られるようになった「アベノミクス」というもの。(最終的に)2013年にまとめられた「日本再興戦略」で全体像が示されたアベノミクスは、①大胆な金融政策、②機動的な財政出動、③民間投資を喚起する(規制緩和などの)成長戦略の三つを(いわゆる)「三本の矢」として、経済成長を目指すという内容です。日銀と連携し大胆な緩和策をとった金融政策を中心にデ...#2793で、アベノミクスは結局失敗だったのか?

  • #2792 会社人生は「筏下り」と「山登り」

    就活情報サイトを運営する「学情」(東京都中央区)が昨年8月、インターネットを通じ、20代の(いわゆる)第二新卒を対象に「転職理由や転職で実現したいことに関する調査」を行っています。これによれば、社会人経験3年未満の「第二新卒」の転職理由の1位は「もっとやりがい・達成感のある仕事がしたい」(35.0%)で、以下「給与・年収をアップさせたい」(32.9%)、「より会社の風土や考え方が合う企業で働きたい」(30.0%)が続いたとされています。また、「転職で実現したいこと」の1位は「給与・年収が上がること」(41.4%)、2位以下には「希望する仕事に従事できること」(38.6%)、「プライベートな時間を確保できること」(32.9%)が続いたということです。学校を卒業し期待を胸に就職したのはいいけれど、あてがわれた...#2792会社人生は「筏下り」と「山登り」

  • #2791 必要なのは「どぶ板」に立ち返ること

    紆余曲折の後、4年の歳月を経て再びホワイトハウスの主となったトランプ大統領。今年1月の就任早々、国際機関からの脱退、関税の強化から紙ストローの廃止に至るまで、数々の大統領令に署名したと思ったら、その後もカナダや(パレスチナ)ガザ地区の領有やグリーンランドの買収に意欲を示したり、ウクライナの頭越しにロシアとの和平交渉を始めたりと、まさに「やりたい放題」の状況です。4月に入ってもその勢いは止まらず、メディアの取材に対して憲法で禁じられている「3期目を目指す」と口にしたと思ったら、今度は米国の貿易相手国に大規模な関税を発動すると発表することで、同盟各国をも大きく動揺させています。その内容は、全ての国に10%の一律関税を課し、その後、米国が巨額の貿易赤字を抱える約60カ国・地域に最大50%の「相互関税」を課すとい...#2791必要なのは「どぶ板」に立ち返ること

  • #2790 消えたコメは結局どこに?

    コメの価格が高止まりしている状況を受けて、政府は備蓄米の放出を決定し、今年4月後半には店頭に並ぶと報じられています。一方で、市中に流通するコメの絶対量が不足しているという状況は解消されない可能性が高く、大幅な価格引き下げにはつながらないと見る関係者も多いようです。豊作の影響もありここ数年安値で推移してきた米価ですが、昨年(2024年)に品薄状態となり、一時はスーパーの棚からコメが消え「令和の米騒動」などと騒がれたのは記憶に新しいところ。政府は「新米が出てくれば価格は落ち着く」と説明していたものの、新米が店頭に出回るようになった昨年の秋以降も、価格は5キロ袋で4000円台に張り付いたままとなっています。農林水産省によれば、2024年産米の生産量は679万トンと前年を上回ったものの、JAを中心とした集荷業者が...#2790消えたコメは結局どこに?

  • #2789 「米・中・ロ」大国時代の幕開け

    今からおよそ150年ほど前、1875〜1900年は帝国主義列強が世界を分割した時代だと歴史の教科書には記されています。第二次産業革命によって爆発的に生産力が向上した欧米の大国は、自らの経済的影響圏を確保するため挙って世界中を植民地化し、世界の分割が行われたとされています。植民地の格好の的となったのは、アフリカや東アジアの国々。1000年、2000年の昔からそこに暮らしてきた人々は、強大な経済力や軍事力を持つ大国同士の思惑によって、(自らの遺志に関係なく蹂躙され)帰属させられていくこととなりました。「帝国主義」と言ってしまえば(少しは)格好よく聞こえるかもしれませんが、要はイギリス、フランス、ロシア、そして米国といった大国による「分捕り合戦」によって、世界地図が色分けされていったということ。勢力圏確保のため...#2789「米・中・ロ」大国時代の幕開け

  • #2788 ゼロサムと非ゼロサム

    ゲーム理論と呼ばれる経済理論の類型のひとつに「ゼロサム(zero-sum)ゲーム」というものがあるそうです。「ゼロサム」とは、複数の人が相互に影響しあう状況の中で、全員の利得の総和が常にゼロになる状況下でのゲームとのこと。囲碁、将棋、オセロなどの二人対戦型のゲームは、限られた駒やスペースを互いに奪ったり奪われたりしながら勝負を決めるもののため、典型的なゼロサムゲームと言えるでしょう。また、競馬やパチンコ、宝くじなども、敗者から集めた資金を勝者で分け合うものなので、ゼロサムゲームの一つとして挙げられます。要は、ゲームの参加者を敵と味方に分け、お互いに手持ちの資源を取り合って勝者と敗者を決めるのが「ゼロサム」の本旨ということ。おもちゃやおやつを奪い合う子供のケンカから国家間の武力による資源争奪戦まで、世の中の...#2788ゼロサムと非ゼロサム

  • #2787 誰もが70歳まで働く時代

    組織・人事コンサルティングの「セレクションアンドバリエーション株式会社」(東京都千代田区)が、人事院の「民間企業の勤務条件制度等調査(2024)」を基に、近年の定年退職制度や再雇用制度の導入状況を分析しています。(「定年延長を含む高齢者に対する働く環境整備の取組状況」2025.2.4)これによれば、近年60歳が他年齢に比べ圧倒的に多かった定年年齢が、2023年は75.7%(2017年比▲10.5%ポイント)と減少傾向に向かい、多くの企業が定年を延長する傾向にある由。現状、60歳の次に多いのは65歳で、同年齢は2017年比で9.6%ポイント増加しており、65歳定年への動きが広がっているということです。またその一方で、定年後の再雇用制度を導入している企業は漸次減少している由。背景には、定年延長に伴い当該制度を...#2787誰もが70歳まで働く時代

  • #2786 転職サイトが人気な理由

    転職エージェントの株式会社エミリス(大阪府東大阪市)が、昨年11月、第二新卒で転職した経験がある158人を対象に「第二新卒の転職に関する意識調査」を実施しています。(インターネットによる任意回答、有効回答数女性94人/男性64人)これによると、第二新卒として転職に踏み切ったきっかけの1位は、「仕事内容が合わない(27.2%)」というもの。「思っていたような仕事ではなかった」「希望していない部署に配属された」などと言われると、「新人なんだからしょうがないじゃない」…と思わないでもありませんが、若者たちの「見切り」は案外早いということなのでしょう。また、「第二新卒での転職はしたほうがいいと思うか」という質問に対しては、「したほうがいい」と答えた人が86.7%にのぼり、実際に第二新卒のタイミングで転職した人の多...#2786転職サイトが人気な理由

  • #2785 生きた証を後世に残す

    2月9日の日本経済新聞が、亡くなられた人に相続人がおらず(結果)国庫に入れられた個人遺産が、2023年に初めて1000億円を超えていたことがわかったと伝えています。具体的に言うと、2023年度に相続人不在として国庫に入った財産は、トータルで1015億円。2022年度の769億円から32%、(記録が残る2013年度は約336億円だったことから)この10年間では3倍に増えている由。推計では、今後はさらに配偶者や子どものいない単身高齢者の増加が見込まれることから、(該当しそうな人は)各自で何らかの準備を進める必要があるだろうということです。こうした状況もあって、相続時に登記されなかった「所有者不明の土地」が全国で問題化し、土地については23年4月から(国が不要な土地を引き取り国有地とする)「相続土地国庫帰属制度...#2785生きた証を後世に残す

  • #2784 「裸の王様」にどう向き合うか

    トランプ米大統領は3月26日、米国への輸入車に例外なく25%の追加関税を課すと発表しました。もちろん日本からの輸入車もこの追加関税の対象となり、日本の対米輸出額の約3割を占める自動車産業へのマイナスの影響は避けられないところ。輸出の減少に伴って国内生産が減ると、最大で13兆円に及ぶ経済的な打撃を受ける可能性があると大手新聞各紙が報じています。いよいよ本格化するトランプ関税と、そこに端を発する貿易戦争。トランプ政権の高関税政策が傷つけるのは、もちろん輸出国の経済ばかりではありません。輸入品の値上がりによって、割高な商品を買わされるのは米国民も同じこと。ようやく落ち着いてきた米国のインフレが、再燃するのも時間の問題かもしれません。一方、こうした状況に対し、日本の石破茂首相は「(追加関税を)日本に適用しないよう...#2784「裸の王様」にどう向き合うか

  • #2783 「転勤」の季節がやってきた

    4月と言えば入学、就職の季節。不安と期待に胸を膨らませながら、新しい環境に飛び込む若者たちも多いことでしょう。そうした中、大手企業のサラリーマンにとって避けて通れないのが「転勤」の存在です。少し前の調査になりますが、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が2017年に発表した資料によると、「ほとんど(の社員)に転勤の可能性がある」と回答した企業は調査対象全体の約3分の1(34%)、社員数1000人以上の企業に限れば51%に達する由。ある日突然上司に呼ばれて「○○への転勤が決まったから」などと(軽く)伝えられ、「えー、聞いてないよ!」と驚き、「かみさんにどう伝えよう…」と心を痛めた経験を持つ人も多いかもしれません。かくいう私も、単身赴任の経験者。妻にも仕事があるわけで、わがままばかりも言っていられない。まあ...#2783「転勤」の季節がやってきた

  • #2782 高齢者の高齢化にどう向き合うか

    昭和の高度成長期を知る最後の世代も、そろそろ高齢者の仲間入り。気が付けばその下の校内暴力やギャル文化などを生んだ第2次ベビーブーマ世代も、着々と初老への道を歩みつつあるようです。今年は「昭和100年」という事で様々なイベントが計画されているようですが、昭和の世代が「明治100年」を祝ったのは昭和43年のこと。時の天皇陛下をお招きし武道館で行われた記念行事で佐藤栄作内閣総理大臣が式辞を述べる姿を、私も茶の間の白黒テレビで見ていた記憶があります。当時の「お年寄り」と言えば、「明治生まれの人」という認識が一般的でした。昭和43年時点の「明治生まれ」で最も若い人は57歳。「明治は遠くなりにけり」という言葉がよく聞かれたのもこの時代のこと。60歳を過ぎれば立派な老人であった当時の感覚からすれば、先の大戦前に大人だっ...#2782高齢者の高齢化にどう向き合うか

  • #2781 いつまでも引退できない日本人

    昨年7月4日の日本経済新聞(「Workstyle2030」)によれば、明治安田生命保険では現在65歳の従業員の定年年齢を、2027年度には70歳に引き上げる方針だということです。まあ、働くのが億劫になったら自ら退職を選べばいいだけのことでしょうが、少なくともこのまま(自分から辞めなければ)70歳まで働かされると考えれば、(人生を会社に搾取されているようで)その未来を気分良く受け止める人ばかりではないでしょう。もっとも、日本老年学会が昨年6月に公表した「高齢者および高齢社会に関する検討ワーキンググループ報告書」によれば、一昔前の65歳時点の体力・活力は現在では75歳の状況に匹敵する由。日本のシニアは(少なくとも体力的には)70過ぎても元気なようですから、後は気力の問題というところでしょうか。制度は制度として...#2781いつまでも引退できない日本人

  • #2780 イマドキの上司の理想像

    2月17日の「文春オンライン」が、『大谷翔平でも、大泉洋でもない…新入社員たちが「理想の上司」に選ぶ“意外な有名タレント”の正体』と題する記事を掲げています。明治安田生命が毎年実施している、「新入社員が選ぶ『理想の上司』総合ランキング」。男性上司、女性上司のそれぞれで「理想の上司」を(選んだ理由とともに)回答するものなのですが、なんとこれまで8年間以上、男女ともに(それぞれ)同じ人物がトップをキープし続けているということです。男性上司の1位は、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良氏。1964年7月生まれの60歳で、この年齢で新入社員から理想の上司に選ばれているのは極めて例外的だと記事はしています。一方、女性上司の1位は水卜麻美氏。現役の日本テレビアナウンサーで、実際に日本テレビで管理職を務めてい...#2780イマドキの上司の理想像

  • #2779 巷で「推し活」が流行るワケ

    「推し活グッズ」の企画・販売等を手掛ける企業OshicocoとCDGが今年1月、国内の15歳から69歳の男女23,069名を対象に「推し活実態アンケート調査」を実施しています。この調査によれば、推し活をしている割合(「推し活率」)は16.7%で、前年の14.1%から2.6ポイント増加。推し活人口は前年の1136万人から1383万人へと増え、約247万人が新たに推し活を始めた計算だということです。また、「推し活をした」と答えた人に対し「推し活にかけた金額」を聞いたところ、年間の支出額は平均で25万5035円に及んだとのこと。性別・年齢別で見ると、最も支出額が多かったのは35~39歳男性(44万5565円)で、次いで40~44歳の男性(37万2350円)だった由。女性のトップは30~34歳(33万6695円)...#2779巷で「推し活」が流行るワケ

  • #2778 日本人はいつの間にか「働きすぎ」ではなくなっていた

    労働時間の短縮や労働環境の改善、仕事のやり方の見直しに至るまで、今では当たり前のように使われている「働き方改革」という言葉。実は、一般に知られるようになったのはそんなに昔のことではありません。今から遡ること9年前、第3次安倍晋三内閣の下で2016年9月に「働き方改革実現会議」が設置されたのがその始まり。2017年3月に、「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など9分野で方向性を示した「働き方改革実行計画」がまとめられ、2018年6月に「働き方改革法案」が成立。2019年4月から「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が順次施行されるなど、制度的な形が整ってからまだ5年ほどしかたっていません。厚生労働省が公表している「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向け...#2778日本人はいつの間にか「働きすぎ」ではなくなっていた

  • #2777 「エモクラシー」に覆われる世界

    冷静であるよりも、(やたらと)「怒る」政治家が世界中で人気を得ているように見える昨今。感情をあらわにして訴えかけることが、なぜこれほどまでに現代人の心に響くようになったのでしょうか。「アフター・リベラル怒りと憎悪の政治」(講談社現代新書)の著者で同志社大教授の吉田徹氏は、朝日新聞の紙面(2024.9.30)で「現代の政治は『感情の時代』に入っている」と指摘しています。今世紀に入り顕著となった、ヨーロッパでの極右政党の躍進や世界的なポピュリズムの台頭。多くの先進国でラディカルな政治の蔓延が一般化し、怒りを持った政治家が出てくるようになったのは、そこに「需要が存在する」からだと吉田氏はインタビューに答えています。先進国でグローバル化が加速した1980年代頃から、製造業の衰退とともに中間層の没落が始まった。新た...#2777「エモクラシー」に覆われる世界

  • #2776 DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)

    生涯で自分がやりたいことにお金を使い切るよう提案する自己啓発書「ゼロで死ね(DIEWITHZERO)」(ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)が、2020年の日本語版刊行以来40万部を超え、反響を呼んでいるということです。その主張は、(簡単に言えば)「人はどうせ死ぬんだから、金をすべて使い切ってからあの世へ行け」というもの。妻や子に遺したって仕方がない。頑張った人は頑張ったなりに、それでも使い切れない人は寄付などをして、自分の思う通り使ってしまおうということのようです。翻って日本人の個人金融資産を見れば、長期間金利ゼロのデフレ時代が続いていたにもかかわらず、2024年3月末現在の残高は国家予算を大きく超える「2199兆円」とケタ違い。過去最高の金額に、日本人の多くが多額の金融資産をため込んでいるこ...#2776DIEWITHZERO(ゼロで死ね)

  • #2775 人事担当者、苦難の時代

    コロナ禍からの経済活動の正常化に伴う人手不足感を背景に、大学生の就職活動は学生優位の「売り手市場」が続いています。リクルートワークス研究所の発表によれば、2025年3月卒業予定の大卒求人倍率(大学院卒含む)は1.75倍と、2024年卒の1.71倍より0.04ポイント上昇している由。昨年8月1日時点の就職内定率も91.2%にのぼり、2017年卒以降で最高水準になったと報じられています。そうした中、「東洋経済ONLINE」が公表(2024/09/02)した、2025年春卒業予定者(大学生・大学院生)による『就活生1.5万人が選ぶ人気企業300社ランキング』によれば、トップは伊藤忠商事で5年連続で1位を獲得したとのこと。20時以降の残業原則禁止や「朝型フレックスタイム制度」の導入など、総合商社とは思えないホワイ...#2775人事担当者、苦難の時代

  • #2774 コミュニケーションの王道

    「人間の最大の罪は不機嫌である」…『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』などで知られるドイツの詩人、ヨハン・フォン・ゲーテは、そうした言葉を残したとか残さなかったとか。そういえば、私が入社したての新入社員の頃、直属の上司となった50歳がらみの係長は、だいたいいつも咥え煙草で、不機嫌そうに新聞を読んでいました。この人はよくもまあ、何でこうも機嫌悪そうなんだろう…とよく思っていましたが、当時は上司とはだいたい「そういうもの」。若い部下たちの前で威厳を保つため、(わざと)そうした態度をとっていたのではないかと思わないでもありません。そして、それから既に40年。オフィスを見渡すと大抵の上司は皆にこやかで、部下につらく当たることもありません。人手不足で採用難の折、若手職員に退職など切り出されたら査定に影響するからか...#2774コミュニケーションの王道

  • #2773 平成ニッポンは失敗ばかりしてきたのか?

    近年、「失われた30年」「失われた平成」などと言う言葉をよく耳にするようになりました。振り返れば、「歌舞音曲の自粛」や「バブル経済の崩壊」の中で「昭和」が静かに幕を引き、不安の中で迎えた「平成」は、日本経済の衰退の歴史を体現するものだといっても過言ではないかもしれません。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられ、しばらくはGDPランキングで(アメリカに次ぐ)2位をキープしていた日本も、2010年頃には中国に抜かれ、2023年には人口が約3分の2のドイツにも抜かれる有様です。2023年のアメリカのGDPはおよそ27.36兆ドル、中国は17.793兆ドル、3位ドイツは4.46兆ドル。一方、日本は4.21兆ドルで(少なくとも)上位2か国との間には大きな差があります。実は、1995年時点の日本のGDPは5...#2773平成ニッポンは失敗ばかりしてきたのか?

  • #2772 日本の賃金はなぜ低い

    昨年1年間、国内で働く人の1人当たりの現金給与の総額は、33年ぶりとなる高い伸びを示したものの、物価の上昇を考慮した実質賃金では0.2%減少し3年連続のマイナスだったと2月6日の新聞各紙が伝えています。厚生労働省の発表によると、基本給や残業代などを合わせた働く人1人当たり現金給与総額(2024年)は、1か月平均で34万8182円。前の年を2.9パーセント上回り、4年連続で上昇したとのこと。比較可能な2001年以降、過去最高の伸び率となったということです。しかし、これを物価の変動を反映した「実質賃金」でみると、前の年を0.2パーセント下回り、3年連続でマイナスとなった由。賃上げは大企業を中心に進んでいるが、働き手の多くを占める小規模な事業所では十分に上がらない状況も顕著になっているとされ、物価高に賃金上昇が...#2772日本の賃金はなぜ低い

  • #2771 大相続時代の不動産事情

    総務省の調査(2023年10月)によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%で、その数は5年間で50万戸増の899万戸と過去最多となっている由。特に問題視されているのが、長期にわたって不在で使用目的がない「放置空き家」で、2003年からの20年間で、1.8倍に増えているということです。放置空き家は建物の劣化が進みやすく、景観の悪化や悪臭・害虫の発生、倒壊の危険といった生活環境の悪化につながると懸念されています。こうした空き家は(人口減に歯止めがかからない)地方を中心に増え続けているとされ、都道府県別では、最も高い和歌山県と徳島県(21.2%)で、次いで山梨県(20.5%)、鹿児島県(20.4%)、高知県(20.3%)など、軒並み5軒に1軒が空き家という想像以上の状態です。因みに、首都...#2771大相続時代の不動産事情

  • #2770 「老老相続」が増えている…という話

    「還暦」の声を聴くようになるに従い、周辺から「相続」の話をよく聞くようになりました。戦前・戦中に生まれ、高度成長、オイルショック、バブル経済と崩壊、失われた30年と様々な局面を生き抜いてきた昭和世代の親たちも、いよいよ人生の最終局面を迎えるケースが増えているようです。一方、彼ら彼女らを送り出すのは、(こちらも)既に定年を迎えようとしている子供たち。「大往生だったね」などと言いながら、(漠然と予想していたこととはいえ)「で、あの実家はどうしようか…」などと、雑然と遺された様々なものの処分に戸惑いを隠しきれない様子です。当時は「ニュータウン」などと呼ばれた首都圏の郊外に位置する土地・建物や、捨てるに捨てられない遺品の数々。合わせればそれなりの額になる預貯金などについても、「もう少し早くもらえていれば使いようも...#2770「老老相続」が増えている…という話

  • #2769 「スマイル」も安いニッポン

    日本経済新聞の面白さは、固い内容ながらも時折(こうした)読者がちょっと「やられたな…」と感じるような、ひねりの効いた記事を掲載するところにあると思っています。今年2月2日の1面トップは、まさにそんな感じ。『「スマイル」も安いニッポン』という見出しを見れば、多くの人が一瞬「何のことかな?」と疑問を抱くところですが、記事を少し読み進めると誰もが「なるほど…」と納得させられるところがなかなかの手練れと言えるでしょう。記事の前提となるのは、「ビッグマック指数」と呼ばれる指標の存在です。ビッグマック指数とは、英経済誌「TheEconomist」が考案した、各国で販売されている(マクドナルドのハンバーガー)「ビッグマック」の米ドル建て価格を基準として、為替レートなどの水準を推し量る手法のこと。ビッグマックは世界各国で...#2769「スマイル」も安いニッポン

  • #2768 失われたマスメディアへの信頼

    年末年始のトップニュースと言えば、元SMAP中居正広(52)とフジテレビ幹部の性加害疑惑をおいて他にはないでしょう。2023年に起こった英国BBCの報に端を発するジャニーズの性加害問題が、芸能界ばかりではなく、現代日本を象徴する社会問題として大きくクローズアップされたのは記憶に新しいところです。にもかかわらず、自社の女性社員から出演タレントからの性被害を訴えられたフジテレビは、被害者を守るどころかその事実を隠蔽し、当該タレントを今まで通り時局の番組に出演させ続けた。被害者であるはずの女性社員は退職を余儀なくされ、結果、事実関係もあいまいにされたというのが今回の結末です。そもそも、自社の社員が(業務に関連する)関係者から性加害に遭ったのに、何の対応も取らないということ自体「性加害を容認した」のも同然であり、...#2768失われたマスメディアへの信頼

  • #2767 政治家の資質と「鈍感力」

    兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題で、3月5日、兵庫県議会に設置された「百条委員会」がまとめた調査報告書が(県議会)本会議において賛成多数で了承されました。自らのパワハラなどを指摘した匿名の内部告発文書を「うそ八百」と決めつけ、告発者を特定して懲戒処分とすることで口をふさいだ斎藤知事。報告書は、公益通報制度に基づく措置を取らずに告発者を処分した斎藤氏らの対応を、「告発者潰し」に当たると結論付けています。また報告書は、問題となった職員への𠮟責などについても「一定の事実が確認された」と認定。「パワハラと言っても過言ではない」と指摘し、知事らの対応を「行政として客観性、公平性を欠いており、大きな問題」と指弾しているところです。県議会は斎藤氏に対し、(報告書の指摘を)「重く受け止め、厳正...#2767政治家の資質と「鈍感力」

  • #2766 トランプ政権と凋落する欧州

    1月25日のオピニオンサイト『Wedgeonline』が、米国の政策決定に大きな影響力を持つハーバード大学のウォルター・ラッセル・ミード教授が1月6日付のウォールストリート・ジャーナル紙に寄せた論説の一部を紹介しています。(「アメリカが外交パートナーとしての評価を下げる3つの要因」2025.1.25)ミード氏によれば、トランプ氏が米国大統領に復帰する中、欧州の同盟国は不快な真実に気づきつつあるとのこと。それは、(簡単に言えば)トランプ氏が、「欧州は歴史上の王座の地位から退位した」…と考えているということだということです。今、西側の多くの国が衰退している。欧州連合(EU)と日本は数十年間、はかばかしい実績を示してこなかった。今のところ日本は覚醒しつつあるが、欧州の同盟国のほとんどが、経済的、政治的、戦略的失...#2766トランプ政権と凋落する欧州

  • #2765 「令和の列島改造」とは?

    1月29日の新聞各紙の朝刊に掲載された大きな穴の開いた交差点の写真に、一瞬、目を奪われた人も多かったかもしれません。報道によれば、1月28日午前10時ごろ、埼玉県八潮市の県道上で道路が陥没し、トラック1台が転落したとのこと。29日現在、地元消防が運転手とみられる男性1人の救助活動を続けているが、陥没でできた穴にたまった土砂に運転席部分が埋まった状態で救出の目途はたっていないということです。幹線道路の真ん中に。いきなり空いていた直径10メートル、深さ6メートルの大きな穴。事故に遭った運転手の方も回避のしようがなかったことでしょう。事故現場の地下約10・6メートル下には1983年に供用開始された直径約4・75メートルの下水管が通っていて、その劣化が陥没に影響した可能性があるとみて県が原因を調べているということ...#2765「令和の列島改造」とは?

  • #2764 供給力不足下での景気対策

    人材情報の株式会社リクルートが運営する「リクルートワークス研究所」は、およそ5年に1度のスパンで未来社会のシミュレーションを実施し、「人」と「組織」の未来に関する研究成果を公表しているとのこと。2023年に発表された、トータルでは4回目となる報告書『未来予測2040労働供給制約社会がやってくる』では、「労働供給制約」を今後の日本経済が直面する最大の課題と位置づけ、実態と解決策について報告しています。(報告書によれば)日本の人口動態統計を基に2040年の労働需給をシミュレーションした結果、明らかになった「労働供給制約社会」がもたらすのは、単なる人手不足にとどまらない由。高齢人口が増え続ける一方で、労働の担い手となる現役世代の割合が不足することで、日本人が国内で「生活を維持」するために必要な労働力まで供給でき...#2764供給力不足下での景気対策

  • #2763 人手不足に鍛えられる日本企業

    昨年(2024年)に「早期・希望退職募集」を行った上場企業は57社(前年41社)で、前年から39.0%増加。募集人員は1万9人(同3,161人)と3倍に急増し、2021年の1万5,892人以来、3年ぶりに1万人を超えたと企業情報の「商工リサーチ」が伝えています。構造改革プログラムの一環として1,000人を募ったオムロンや、「ミライシフトNIPPON2025」プロジェクトで1,500人を募った資生堂、グローバル構造改革でグループ全社2,400人に及ぶ募集を行ったコニカミノルタなど、相次ぐ大手メーカーの大型募集で人数が膨れ上がった由。「早期・希望退職者」を募集した企業の直近通期最終損益(単体)は、黒字企業が34社(構成比59.6%)と約6割を占めており、収益性の高い企業が更なる構造改革の一環として進めるケース...#2763人手不足に鍛えられる日本企業

  • #2762 「大国主義」の時代

    物別れに終わったウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談を踏まえ、ついに(「禁じ手」ともいえる)軍事支援の停止に踏み切った米トランプ大統領。トランプ氏は、自国抜きの交渉に強く反発するゼレンスキー氏を(自身が公約として打ち出した)早期停戦の障害になると見て、交渉から排除してく方針に切り替えたように見えます。米ロ主導の和平交渉に応じる姿勢を見せず、トランプ氏に対しロシアのプーチン大統領と妥協しないよう迫るゼレンスキー氏。一方のトランプ氏は、ウクライナにはこれ以上の消耗戦は難しいとして、ゼレンスキー氏の姿勢を「勝てる見込みのない戦争にアメリカを巻き込もうとしている」「第三次世界大戦をかけたゲームをしている」と、相当強い言葉で非難しています。こうしてみると、「米国は一体どっちの味方なんだ?」と思わないではありま...#2762「大国主義」の時代

  • #2761 「高額療養費」負担を増やす前にすべきこと

    政府が示していた(医療費が高額となった際に患者負担を抑える)「高額療養費制度」の負担上限額を2年間かけて3段階で引き上げる案について、石破茂首相は2月28日の衆院予算委員会で、一部を見直す方針を表明したと新聞各紙が報じています。具体的には、25年8月の最初の引き上げは原案通り実施するが、26、27年度に予定する2段階目以降の引き上げについては再検討を行う由。高額療養費制度は、大きなリスクから家計を守る「最後の砦」となる制度だけに、慎重な対応が求められているところです。ここで、「おさらい」ですが、そもそも「高額療養費制度」とはどのような制度なのか。日本の公的医療保険制度では、患者は窓口でかかった医療費の3割を自己負担するのが原則です。しかし、これには年齢に応じた軽減策が講じられており、75歳以上の負担額は1...#2761「高額療養費」負担を増やす前にすべきこと

  • #2760 行田にスタバは早すぎた?

    報道によれば、カフェチェーンを世界的に展開するスターバックスが埼玉県行田市に初出店する計画が、暗礁に乗り上げている由。今月着工し年内には市内の水城公園駐車場に開店する予定だったものが、駐車場付近に位置する公民館利用者ら8名から「駐車スペースが減る」などとして反対の声が上がり、同社は出店に慎重になっているということです。行田邦子行田市長によれば、誘致に反対する市民(団体)がスターバックス本社に建設中止を求める要望書を送ったことで、同社は市に対し「出店に対し懸念を示される意見がある以上、このままでは出店は困難」と伝えてきたとのこと。一方、こうした状況を受け、2月19日には、スタバの出店を求める市民団体の代表らが市役所を訪れ、「スターバックスの出店を求める署名」2082人分を行田市長に手渡したとの報道もありまし...#2760行田にスタバは早すぎた?

  • #2759 壁で得しているのは主婦ではない(その2)

    妻が夫の扶養家族となり、税金などさまざまな優遇を得られる「103万の壁」についての議論が国会で進む中、東京大学名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏は、昨年暮れ(12月19日)のライフスタイル情報メディア「TRILL」に「103万円の壁で得してきたのは主婦ではなくオジサン」と題する論考を寄せています。曰く、「1961年にできた配偶者控除、1985年に創設された主婦の基礎年金を保障する第3号被保険者、1987年の配偶者特別控除は、政治がつくった発明だった。それによってパートタイムで働く女性は増えたが、これは女性に育児や介護を担わせたままにしたい男性にとって都合の良い制度だ」とのこと。それでは、現代の日本において女性の就労を阻んでいる本当の「壁」とは、一体どこにあるのか?そして問題解決のためにはどのようにしていった...#2759壁で得しているのは主婦ではない(その2)

  • #2758 壁で得しているのは主婦ではない(その1)

    2024年12月、厚生労働省は2025年の年金制度改革において、「第3号被保険者制度の廃止は盛り込まない」方針を明らかにしました。厚生年金に加入している配偶者に扶養されている人が年金保険料を納めずとも年金が受け取れる「第3号被保険者制度」は、別名「主婦年金」とも呼ばれ、その不公平感や「年収の壁」の原因として批判の対象となることが増えています。今回、同制度の廃止に向けた動きが滞ったことで、「結局、専業主婦丸儲け」「恵まれている専業主婦のために、なんで私らが保険料払わなならんねん」といった不満の声も聞こえてくるところです。高度成長期に設けられた所得税の配偶者控除や、近年見直しが進む「扶養手当」も同じこと。成果主義、ジョブ型雇用が進む中、同じ仕事をしているのに、「仕事をしていない妻がいる」というだけで手取りが何...#2758壁で得しているのは主婦ではない(その1)

  • #2757 令和ニッポンは「逆・木綿のハンカチーフ」

    昨年4月、有識者で構成される「人口戦略会議」が、2020(令和2)年~2050年までの30年間で、子どもを産む中心になる年齢層の20歳~39歳の若年女性人口の減少率が50%を超えると予想される全国744の自治体を「消滅可能性自治体」としてリストアップし話題を呼びました。これらの自治体では将来、出生数が急激に減少し、最終的には自治体として維持できなくなる可能性が高い由。最も多かった秋田県では96.0%の自治体が、2位の青森県では87.5%の自治体が、そして3位の山形県ですら80.0%の自治体が、この「消滅可能性自治体」に当たるとされています。今から約10年前に始まった「地方創生」。国は雇用の創出などとともに、基本目標として結婚・出産・育児の「希望をかなえる」ことを掲げ、地方からの人口の流出と東京一極集中の是...#2757令和ニッポンは「逆・木綿のハンカチーフ」

  • #2756 私立高校の無償化とこれからの公教育

    2月25日、自民、公明両党と日本維新の会が国会内で党首会談を行い、高校授業料の無償化を柱とする2025年度予算案の修正に関する合意文書に署名したとの報道がありました。今回、合意のポイントとなったのは、維新の会が主張した「高校生のいる世帯に支給される就学支援金」の取り扱い。協議の結果、2025年度から公立私立を問わず「所得制限なし」(現在は910万円未満という所得制限あり)で年11万8800円を助成するほか、26年度からは、私立高生への上乗せ支給に対しても所得制限を撤廃し、支給額も(現行の年最大39万6000円から)私立高授業料の全国平均額にあたる年45万7000円に引き上げることで合意したとされています。上乗せ支給の対象者は、高校生全体の実に4割に当たる130万人に上る由。金額としては、25年度は1000...#2756私立高校の無償化とこれからの公教育

  • #2755 解決策は「相続税100%」②

    日本人の平均寿命が年々伸びて「人生100年時代」と言われる中、年齢が高い人同士で遺産が受け渡される「老老相続」が増えていると、昨年10月23日の日本経済新聞が伝えています。(『増える「老老相続」相続人の半数が還暦以上に』)内閣府の調査によると、2022年時点で相続人の半数超が還暦以上だった由。具体的には、遺産を相続する人のうち60歳以上の割合は52.1%に達し、現役世代である50歳代は27.0%、49歳以下は20.6%だったということです。60歳になって退職金が入り、大手企業に勤めていれば厚生年金のほかに企業年金も入ってくる。そこに(予定外の)親の遺産が入ってきても、定年を迎え子育ても終わった年齢では使うものも限られている。かくして、財産は定期預金に積まれたまま、本人は財産を使うこともなく80代で亡くなっ...#2755解決策は「相続税100%」②

  • #2754 解決策は「相続税100%」①

    子どもの頃、「もっとお金持ちの家に生まれていたら…」とか「〇〇ちゃんちの子だったらよかったのに」などと思ったことのある人も多いかもしれません。だけども、子どもに親は選べない。若者の間で使われるようになった「親ガチャ」という言葉が流行語大賞になるほど注目され一般化してから、かれこれ5年ほどもたつでしょうか。さて、令和3年12月に国税庁が発表した「令和2年分相続税の申告実績の概要」によれば、令和2年の「被相続人」数(つまり亡くなった人の数)は1,372,755人とのこと。そのうち相続税の申告を要する被相続人は120,372人で、課税割合は8.8%だったとされています。これは、亡くなった人のうち相続税を納める必要があったのは8.8%で、残りの9割以上の人には相続税が発生していないということ。因みに、相続税の基礎...#2754解決策は「相続税100%」①

  • #2753 「大国」と「それ以外」

    ロシアがウクライナを侵攻してちょうど3年。その間、ウクライナは兵士4万6千人が戦死し行方不明者も数万人と明らかにしており、ロシアにもそれを上回る死傷者が出ているとされています。一方、先月就任した米国のトランプ新大統領は、戦争終結に向けたロシアとの直接交渉に乗り出すとして、ロシアのプーチン大統領との間で交渉開始の合意を取り付けたと報じられています。さて、ここで問題なのは、米新政権のロシアに融和的な姿勢と言えるでしょう。トランプ大統領は米メディアのインタビューに対し、ウクライナは「いつかロシア領になるかもしれない」などと語り、ヘグゼス国防長官も(ウクライナ領内の)ロシア占領地域のすべてを取り戻すのはもはや「幻想的」…という態度を崩していません。近くサウジアラビアで両首脳の直接会談が予定されているということです...#2753「大国」と「それ以外」

  • #2752 死ぬまでに使い切るのは案外難しい

    「資産運用立国」の実現を掲げ、政府は少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeco)の拠出限度額の拡充などを進めていますが、ただただ(言われたとおり)貯め込んでいても、何かの形で使われなければ意味がありません。老後や自分の死後に、自分が稼ぎ出した財産を(あなたは)どのようにしたいと考えているのか。「全部使い切りたい」と考えている人もいれば、「子供の将来のために少しでも多く残したい」と考えている人もいるでしょう。金融広報中央委員会が行った「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」によると、「あなたのご家庭では、将来、遺産(不動産などの実物資産を含む)をどのようにしたいと思いますか?」という問に対し、①「自分たちの老後の世話をしてくれるかどうかや、家業を継いでくれるかどうか等にかかわらず、...#2752死ぬまでに使い切るのは案外難しい

  • #2751 「DEI」と差別のない社会

    米国の新大統領に復帰して早々、ドナルド・トランプ氏が矢継ぎ早に署名した大統領令の数々。大小さまざまなものがあったようですが、その1つが連邦政府の「DEIプログラム」の終了を宣言するものだったことに、「やっぱり来たか…」という感想を持った人も多かったかもしれません。この大統領令は、連邦政府と請負契約を結ぶ民間企業にDEIの廃止を求めるもの。従わなければ、政府との契約が打ち切られたり、補助金の支給が停止されたりしかねない内容となっています。ここで言う「DEI」とは、「Diversity(多様性)Equity(公平性)Inclusion(包摂性)」の略で、人種や性的指向、性自認などの属性を理由に不利な扱いを受けてきたマイノリティに「公平」な機会を与え、社会や組織に包摂するための取り組みのこと。具体的には、人種や...#2751「DEI」と差別のない社会

  • #2750 もともとアメリカとは「そういう国」

    1月20日、首都ワシントンの連邦議会議事堂で就任宣誓し、第47代米国大統領に就任したドナルド・トランプ氏。就任演説ではバイデン前大統領による政権運営を強く否定し、早速、「パリ協定」からの離脱や世界保健機関(WHO)からの脱退に関する大統領令に署名するなど、「米国第一主義」への回帰の色を鮮明にしています。第二次世界大戦以来、世界中に同盟関係を張り巡らせ、自由主義国の盟主として民主主義や「法の支配」を広げることに投資してきた米合衆国。東西冷戦終結後は、その突出した経済力や軍事力で世界の平和と安定に貢献してきたという評価は、(大きく見れば)あながち過大なものではないでしょう。しかし、米国国内の社会の疲弊や分断が広がるにつれ、かの国の持つ(移民国家・唯一の超大国としての)個性の一つであった(ある種の)おおらかさや...#2750もともとアメリカとは「そういう国」

  • #2749 職場から「上司」がいなくなる

    近年、米国企業では組織構造の変化により中間管理職の数が徐々に減少しており、従業員の業務負担に多大な影響が及んでいると、1月11日の「ForbsJapan」(『なぜ中間管理職はコロナ禍以降「6%減少」?それがもたらす問題』)が伝えています。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の調査では、コロナ禍以降、中間管理職の数は全米で約6%程度減少している由。当然、中間管理職1人あたりの管理業務は大幅に増加しており、1人のマネージャーが管理する従業員数の平均は、2017年比で実に3倍に増えているということです。スリムな組織階層が求められている背景には、コストを削減して経営を合理化したいという企業側の事情があるとのこと。そこで標的となったのが、給与や手当などが比較的手厚い中間管理職であり、中間管理層が薄い方がスムーズ...#2749職場から「上司」がいなくなる

  • #2748 今日のバラマキは明日の増税

    野党各党の要求が出そろった国の2025年度予算案の審議も、修正をにらみ実務者間で大詰めの協議が進められているようです。自民、公明両党と日本維新の会は、維新が求める所得制限を設けない高校授業料の無償化について2月中旬までに一定の結論を出す方向だと報じられています。衆院で過半数を持たない自公両党にとって、維新から予算案への賛成を引き出すことは最重要課題。財源が7~8兆円必要とされる「103万円の壁の178万円への引き上げ」にこだわる国民民主にはもう付き合いきれない。維新の議席を足せば衆院で過半数に達するので、6000億円と言われる財源には目をつぶって、こっちに乗り換えた方が「安上り」といった算段もあるのでしょう。政府の予算案を巡っていつまでこうしたやり取りが続くのかはわかりませんが、何かと物入りの政府に対し、...#2748今日のバラマキは明日の増税

  • #2747 アメリカの大学には医学部がない…という話

    私自身あまりテレビドラマは見ない方なのですが、たまたま見かけたTBSの『まどか26歳、研修医やってます!』という医療ドラマを、今では毎週(案外?)楽しみに見るようになりました。芳根京子さん演じる若月まどかは、総合病院に研修医として配属されたての26歳。先輩医師に厳しくも心ある指導を受けながら、仲間の研修医と切磋琢磨して一人前の医師を目指していくという、まぁ、よくあるといえばよくあるストーリーです。勉強ができたから、コスパがいいから、家が病院だから、親孝行するために…様々な理由から医学部に入り、6年たって一応卒業。国家試験は何とか通ったものの、医療現場の厳しさは想像以上。患者やコメディカルから、(いきなり)「先生」と呼ばれる立場になった新米医師たちのとまどいと試練の毎日を、ドラマは面白おかしく描いていきます...#2747アメリカの大学には医学部がない…という話

  • #2746 資産形成で忘れがちなこと

    新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まってまもなく1年。主要証券会社の専用口座を経由した個人の購入額は約11.9兆円となり、旧NISA時代の実績の4倍に膨らんだと、12月28日の日本経済新聞(「新NISA、資産形成の礎旧制度の4倍12兆円流入1~11月、長期志向で6割投信」2024.12.28)が伝えています。記事によれば、相場の上がり下がりに関係なく安定して流入する家計のマネーは、既に日本株相場の支えになりつつある由。昨年後半半にかけては投資信託への投資配分が7割に増えるなど積み立て投資が根付くきっかけになっているということです。昨年1月に始まった新NISAは、国内外の個別株と投資信託を購入できる①「成長投資枠」と、投信を積み立てる②「つみたて投資枠」を柱とするもの。投資上限額は年間360万円と、そ...#2746資産形成で忘れがちなこと

  • #2745 民主政はなぜ抜け穴だらけなのか

    私たちの社会制度の多くは「性善説」に基づいて設計されている。喩えて言えば、田舎の道にある無人販売所みたいなもので、「りんご5個で300円」と書いてあれば、普通の人はりんごを取って代価を置いておくようなものだと、神戸女学院大学名誉教授で思想家の内田樹(うちだ・たつる)氏が昨年12月16日の自身のブログ(「内田樹の研究室」)に記しています。こういうシステムでは、お金を払わずにりんごを持っていこうと思えば簡単にできてしまう。ついでに、置かれたままの代金まで盗んでゆく人たちは、「性善説を信じているやつらはバカだ」と高笑いするのだろうと氏は言います。しかし、りんご農家がこれに懲りて店番を置いたり防犯カメラを設置したりすれば、そのコストは商品価格に転嫁される。次は「りんご5個500円」に値上がりしたりして、結果、リン...#2745民主政はなぜ抜け穴だらけなのか

  • #2744 未熟の代償

    最近、テレビでニュースやワイドショーなどを見ていると、世の中全体が随分と「子供っぽくなったな」と思うことがよくあります。例えば、若者たちの間で「炎上」目当てに迷惑動画をSNSに上げることが流行ったり、ネットで集められた「闇バイト」の若者たちによる粗暴な犯罪が頻発したり。政治の世界で言えば、政治とはほぼ関係ない暴露系Youtuberが若者の支持を受けて国政選挙で当選したり、選挙のポスター掲示板に(合法的に)裸の女性やペットの写真が貼られたりと、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。一時は、そんな風に感じるのは「自分が歳をとったせい」で、世の中の動きについていけなくなったからかな…とも思ったのですが、こうした「事件」に対するメディアや世論の反応が総じてあまりにもシンプル(というか表層的)なところを見ると、一概...#2744未熟の代償

  • #2743 大麻取締法の改正について

    昨年の8月、大阪府内の市立中学で大麻や覚醒剤が見つかった事件で逮捕された中学3年の少年2人が、「売るために持っていた」などと転売目的で入手していたことが報じられ、世間を驚かせました。大阪府警によれば、少年2人は当時、大阪府和泉市内の別々の市立中に在籍しており、このうち1人は府内の男子高校生(17)から大麻を買い取り、SNSを通じて自分で客を見つけて転売していたとのこと。またもう1人は、同じ高校生から大麻を受け取り、高校生がSNSで見つけてきた客に売りさばいてマージンを得ていた由。大麻や違法薬物をめぐる犯罪の低年齢化は抜き差しならないところまで来ていることを実感させられるところとなりました。特に近年では、意識不明など体調不良となる人が続出した「大麻グミ」問題や、アメリカンフットボール界の名門「日大フェニック...#2743大麻取締法の改正について

  • #2742 「令和の米騒動」はいつまで続くのか

    私たちの生活に身近なコンビニや飲食店などで、(昨年に引き続き)コメ商品の値上げが相次いでいると1月24日の日本テレビが報じています。セブンイレブンは1月20日、おにぎりや弁当など一部商品を値上げすると発表。『塩むすび』は税抜き108円から128円と2割アップ、『唐揚げ弁当』は530円から580円に値上げされるということす。また、コメが欠かせない回転寿司でも、はま寿司が昨年末から約半数の商品を165円から176円などに値上げしたほか、ファミリーレストランのデニーズでも、ライスを税込みで44円値上げした由。いずれも、最近のコメの価格高騰が理由とされ、消費者の財布に直接打撃を与えています。さて、こうした報道を見ても、店頭から在庫が消え「令和の米騒動」と言われた昨年の夏以降、(令和6年産米が流通して久しい現在でも...#2742「令和の米騒動」はいつまで続くのか

  • #2741 一番給料が上がっているのは誰?

    厚生労働省が公表している「令和6年賃金構造基本統計調査(一次集計)」によると、フルタイム勤務者を指す「一般労働者」の平均所定内給与額は33万200円で、前年調査結果の31万8300円と比べて3.7%増加したとされています。これを年齢別(大卒)に見ると20〜24歳が25万800円、30〜34歳が32万5100円、40〜44歳で40万5900円、50〜54歳で49万600円、ピークを迎える55〜59歳では52万3800円と、私が新入社員だった40年前と比べ(少なくとも初任給は)ほぼ倍増していることが見て取れます。しかしその内訳を見ると、大学卒の20~30代前半の労働者の賃金上昇率が実質で1.7~2.8%アップとなっている一方で、40代後半~50代前半の賃金上昇率は-0.2%~0.3%(厚生労働省「賃金構造基本...#2741一番給料が上がっているのは誰?

  • #2740 市場では条件のいい物件から先に売れていく

    1970年ごろは年間100万組を超えていた日本の婚姻数。2011年以降は年間60万組余りでしばらく推移していましたが、コロナ禍に見舞われた2020年に前年比12.3%減と大きな減少を見せ、気が付けば2023年にはさらに6.0%減の47万4717組と、戦後初めて50万組を割り込む水準に減っています。一方、結婚した夫婦が持つ子どもの数(→完結出生児数)は、1970年代から2.2前後で推移し、21年も最低値を更新したものの1.9と大きくは変わっていない由。こうしたデータからは、昨今の少子化の(直接の)原因が、若者の「未婚化」にあることが見て取れます2020年の国勢調査によれば、「50歳時の未婚率」は(既に)男性が約28%、女性が約18%に達しているとのこと。昭和生まれの世代ですらこうなのですから、30歳半ばを迎...#2740市場では条件のいい物件から先に売れていく

  • #2739 助け合うのは「仲間」だけ

    「ジニ係数」とは、「所得や資産がどれくらい平等に分けられているか」を可視化するため、イタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案された数字とのこと。(細かな計算式は省きますが)ジニ係数が0であれば、その集団の所得が完全に均一で全く格差がない状態。ジニ係数が1であれば、集団全体の所得をたった1人が独占している状態を指し、その集団の所得格差を数字的に表す指標として使われています。因みに、このジニ係数には「警戒ライン」というものが存在していて、一般的には0.4を越えると暴動や社会騒乱が増加すると言われているようです。さて、国連が発表している「世界経済状況・予測2022(WorldEconomicSituationProspect2022)」によると、新型コロナウイルス感染症などによる経済への逆風が強まる中、先進...#2739助け合うのは「仲間」だけ

  • #2738 社会の流動性と「親ガチャ」

    イソップ寓話「アリとキリギリス」は、寒い冬に備えず夏を遊び暮らしたキリギリスが、食べ物がなくなってアリを訪ねるも「自業自得」と追い返される厳しい物語です。子供たちはこのエピソードから地道な努力の大切さを学ぶ…というか、「努力しないとひどい目に合うよ」と脅かされるわけですが、一方で、人一倍の努力をしたからといって成功が約束されるわけではないのが現実でしょう。かつて日本のプロ野球界を引っ張ったホームラン王王貞治さんは、「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」と話したと伝わっていますが、過酷な令和の時代を生きる若者たちには「それは将来に夢を持てた昭和の話だろ?」と一蹴されてしまうかもしれません。とはいえ、何の努力もしないまま大人になって、結果「闇バイト」などに走ってうえ...#2738社会の流動性と「親ガチャ」

  • #2737 米国の繁栄と危うさ(その2)

    他国を大きく凌駕する経済の発展が続く一方で、人々の様々な形での分断など、国内的には深刻な問題を抱えるとされる米国に関し、12月4日の英紙「フィナンシャルシャルタイムズ」に、国際ジャーナリストで同紙主任経済評論家のマーティン・ウルフ(MartinWolf)氏が、『病を抱え繁栄する米国活気と低福祉、表裏一体か』と題する論考を寄せています。各国の経済が振るわない中、世界の富を一身に集めているように見える米国だが、このような経済上驚異的な国がなぜ「最悪の国」にもなり得るのかと、ウルフ氏はここで疑問を投げかけています。米国の21年の殺人発生率は人口10万人あたり6.8人で、英国の約6倍、これは日本の約30倍に当たると氏は言います。米国の最新の収監率は10万人あたり541人(世界第5位)で、180万人以上が刑務所に収...#2737米国の繁栄と危うさ(その2)

  • #2736 米国の繁栄と危うさ(その1)

    東西冷戦の終結から30余年、その強大な軍事力や経済力をもって「唯一の超大国」として国際社会や世界市場に君臨してきた米国。いくつかの地域紛争や経済危機を乗り越えながらも常に自身を更新し、いまだにその地位をゆるぎないものにしている姿は、まさに「奇跡」と言えるかもしれません。しかしその一方で、米国内では人々の経済的な分断が進み、人口の僅か1%の富裕層が国富全体の半分を保有しているとされるほか、国民の貧困率は14.5%(4530万人)と先進国の中では飛び抜けて高いのが現実です。低所得層の下位20%の家庭に生まれた子供の約4割は成人しても同じ所得階層のまま。逆に上位20%の富裕層の家庭に生まれた子供のやはり約4割が同じ富裕層に留まっているといった状況は、もはや「アメリカンドリーム」の崩壊を示唆していると言っても過言...#2736米国の繁栄と危うさ(その1)

  • #2735 積極財政論は所詮“お花畑”

    経済学者で上武大学教授の田中秀臣氏は、12月17日の夕刊フジ「zakzak」において、今や「国民の敵」は緊縮主義の権化として減税を増税で取り返す、自民税調や財務省の幹部たち「懲りない面々」だと断じています。氏によれば、日本経済を長く低迷させてきた要因の一つは、財政政策の緊縮スタンスとのこと。不況から完全に立ち直るのを待たずに、増税や負担増をしてしまう。あげくには不況に苦しむ中小企業などを「ゾンビ企業」呼ばわりし、その淘汰を押しする。緊縮主義者たちは、中小企業が淘汰されれば日本の国際競争力が増すといっているが、それは単にトンデモだ…とその舌鋒に容赦はありません。こうして元気のよい積極財政論者に対し、(近ごろでは)財政のひっ迫を懸念し緊縮政策を唱える(ある意味真面目な)論者は「ザイム真理教」信者などと誹られ、...#2735積極財政論は所詮“お花畑”

  • #2734 折々の言葉

    2月5日の朝日新聞が、兵庫県姫路市が同市出身の哲学者和辻哲郎にちなんで設けた「和辻哲郎文化賞」の第37回受賞作品に、哲学者の鷲田清一(わしだ・きよかず)氏と甲南大学教授の平井健介(ひらい・けんすけ)氏の両氏を選出したと伝えています。和辻哲郎文化賞は、国内の哲学や宗教、思想といった領域における、特に卓越した著作や研究などをたたえるもの。今年の学術部門では、朝日新聞朝刊1面のコラム「折々のことば」の筆者で知られる哲学者の鷲田清一氏の「所有論」、一般部門では平井健介・甲南大経済学部教授の「日本統治下の台湾―開発・植民地主義・主体性―」が対象となったということです。受賞に際し鷲田氏は、「胸をお借りしたのは和辻さんの『存在』(有)をめぐる厚い論述。先行するそのお仕事なしに私のこの論はありえなかった。和辻哲郎文化賞と...#2734折々の言葉

  • #2733 子どもは「大人の予備軍」ではない

    私は知らなかったのですが、学習指導要領が改訂され、2022年4月から小学校・中学校・高校での金融教育が義務化されているのだそうです。学校での金融教育はこれまでにも行われていましたが、(今回の改訂により)その内容が小学校から高校まで一貫した「金融プログラム」にとなるよう一新された由。特に高校の家庭科には具体的な資産運用の学習が盛り込まれ、電子マネーや決済機能などの実践的な知識を身に着けられるようになったということです。おそらくそうした変化の背景には、民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられたことがあるのでしょう。これに伴い、様々な契約行為が本人の意志だけでできるようになる一方、若者が詐欺など金融トラブルに巻き込まれる可能性も大きく高まった。深刻なトラブルを避けるため、正しい判断ができるよう金融リテラシー...#2733子どもは「大人の予備軍」ではない

  • #2732 経済を回すのは「不安のない老後」

    日銀が12月18日に発表した2024年7〜9月期の資金循環統計(速報)によると、9月末時点の家計の金融資産残高は6月末に比べて1.5%減の2179兆円。前四半期末からの8四半期ぶりの減少となったということです。株式相場の下落や、円高による外貨資産の円換算額の低下がその原因とされており、その実相は消費に伴う減少とはいささか趣を異にしている様子です。実際、現預金は0.3%増の1116兆円で、保険・年金・定型保証は540兆円で横ばいが続いている由。構成比を見ても、現預金が51.2%、保険・年金・定型保証が24.8%と、1位、2位を占め、「老後の備え」に重きを置く家計の姿が見て取れます。一方、内閣府が今年8月に発表した経済財政白書によれば、年齢別でみた世帯あたりの金融資産の平均額は50代までは年齢が上がるごとに増...#2732経済を回すのは「不安のない老後」

  • #2731 「ザイム真理教」と国民生活

    政府の経済対策として、12月17日の参院本会議で2024年度補正予算が、自民、公明両党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数により可決、成立しました。一般会計補正予算の歳出総額は実に13兆9433億円に上る由。財源の約半分に当たる6兆6900億円は、新規に国債を発行して賄うとされています。財源不足が叫ばれる中、財政の在り方を巡っては、国債の発行を極力抑え「身の丈に合った支出」(→税収の範囲内での政府支出)とすべきとする財政均衡主義に基づく指摘がある一方で、(昨今では)政府は一時的な財政収支の悪化にとらわれることなく、必要な財政出動を行うべきとするMMT(現代貨幣理論)の台頭なども注目されるところ。中には、「失われた30年の真犯人」として(国民を脅し、常に財政出動に「待った」をかけ続けてきた)財務省の名を...#2731「ザイム真理教」と国民生活

  • #2730 ノリでやってきたツケ

    世の中がバブル経済に浮かれた1980年代後半から90年代中盤にかけての時代。日本のテレビ界で圧倒的な強さを誇ったのはフジテレビでした。(若い人の中には信じられないかもしれませんが)なにしろ当時のフジは、12年間に渡って年間視聴率三冠王者に君臨し続けた絶対王者的存在だったのです。そんなフジテレビが、建築家・丹下健三氏の手によるお台場の新社屋に移転したのは1997年のこと。私もちょうどその時期、3年間ほどテレビというメディアに大きくかかわる仕事をしていたので、街開きが済んだばかりのお台場の近未来的なあの建物にも、しばしば足を運びました。例えば、バラエティの世界では、『ザ・マンザイ』から『オレたちひょうきん族』『笑っていいとも』に至るまで、漫才ブームを引っ張ったのが(ほかでもない)フジテレビ。その後は、『オール...#2730ノリでやってきたツケ

  • #2729 七つの大罪

    「七つの大罪」(英:sevendeadlysins)は、キリスト教の主にカトリック教会における用語で、(簡単言ってしまえば)人間を罪に導く可能性があると見なされる7つの欲望や感情を指す言葉とのこと。現在広く知られているそれは、①傲慢、②強欲、③嫉妬、④憤怒、⑤色欲、⑥暴食、⑦怠惰…の七つで、時代の変遷とともに少しずつ修正が加えられてきたとされています。そうした中、2008年3月、ローマ教皇庁は、今までの7つの大罪はやや個人主義的な側面があったとして、今後憂慮すべき新しい七つの大罪を発表しています。それは、①遺伝子改造、②人体実験、③環境汚染、④社会的不公正、⑤人を貧乏にさせる事、⑥鼻持ちならない程金持ちになる事、⑦麻薬中毒の七つで、科学や資本主義の傲慢さ、そしてそれに伴う人心の荒廃に対する宗教上の危機感が...#2729七つの大罪

  • #2728 奪われた声を取り戻す

    1月23日、アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞の各賞の候補が発表され、ジャーナリストの伊藤詩織氏が監督を務めた「BlackBoxDiaries」が長編ドキュメンタリー賞の候補になったとの報道がありました。同作品は、伊藤氏がテレビ局の元記者に性的暴行を受けたとして訴えた民事裁判について(伊藤氏みずからが)関係者に取材を重ね、真相に迫る中で日本の司法制度のあり方を問う長編ドキュメンタリー。ノミネートの報に接した伊藤監督は、「性暴力のサバイバーとして、また、権力によって沈黙を強いられているすべての人に希望をもたらすもの」として受け止めるとし、「声を奪われてきた人々、そして今もなお声を上げ続けている世界中のすべての方々に、この瞬間を捧げます」とコメントしています。「声を奪われてきた人々の声を取り戻す」...#2728奪われた声を取り戻す

  • #2727 管理職になりたくない貴方へ

    「末は博士か大臣か」という言葉が示す通り、少なくとも昭和の高度成長期くらいまで、「出世」という言葉には人から羨ましがられる明るいイメージがありました(←本当です)。しかし、サラリーマンが臆面もなく「出世」を目指せたのも、(たぶん)団塊の世代まで。いつしかこの言葉は「気恥ずかしい」イメージを纏うようになり、「出世頭」などというのも、人を皮肉る時くらいしか使わないネガティブな言葉に変化しています。組織の中で出世するのは能力があるから。逆に言えば出世しないのは無能だからと単純に受け止められていた時代には、出世は皆が求める名誉なことであり、出世しないのは「落ちこぼれ」のレッテルを貼られるのと同じ。「うちの亭主はボンクラでうだつが上がらない」「隣の旦那は30代でもう課長」などと奥さんに言われ、(プライドが傷つき)つ...#2727管理職になりたくない貴方へ

  • #2726 The personal is political

    なんだかんだ言っても「社会経済研究所」を標榜する以上、現代社会を象徴するようなこの会見に触れておかないわけにもいきません。1月27日、引退を表明した元SMAPの中居正広さんと女性のトラブルに局員が関与していたと報じられた問題で、フジテレビは東京・台場の本社において、港浩一社長らによる「やり直し会見」を行いました。敢えて制限時間を設けなかった会見は(実際)8時間を超える長時間に及び、日付が28日に突入しても終わらなかった由。X(ツイッター)上では「オールナイト・フジ」がトレンド入りしたほか、「実録27時間テレビ」「月曜日から夜ふかし」「フジテレビで朝まで生テレビ」「生でダラダラ記者会見」など、まるで「大喜利」のような状態になったということです。共同通信の報道から経過を追うと、会見の冒頭でフジ・メディア・ホー...#2726Thepersonalispolitical

  • #2725 蔓延する「いい子症候群」(その2)

    生まれた頃から低成長の中で育った(注目の)Z世代が、いよいよ社会で働き始める時期がやってきました。少子高齢化が進む中、上の世代のような厳しい競争を経験していない彼らは、ガツガツとした闘争心のようなものとは無縁です。一方で、多くの情報やデジタルデバイスに囲まれ、また「コスパ」(コストパフォーマンス)や「タイパ」(タイムパフォーマンス)を重視するリアリストであることもまた彼らの特徴の一つ。第二次ベビーブーマーとして、あるいは就職氷河期のサバイバーとして時代を生き抜いてきた管理職やリーダーたちは、常にクールで効率性を見極める(デリケートで異質な)彼らとどのように向き合ったら良いのか。戸惑う管理職の皆さんに向け、金沢大学教授の金間大介氏が3月17日のビジネス情報サイト「東洋経済ONLINE」に、『リスクを負わず自...#2725蔓延する「いい子症候群」(その2)

  • #2724 蔓延する「いい子症候群」(その1)

    1990年代後半から2000年代生まれの(いわゆる)「Z世代」が、社会に出て働き始める時代となりました。彼らの特徴は、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブであること。インターネットやSNSを通じてリアルタイムで世界の情報を知る機会が多いことから社会問題への関心が高く、また多様な価値観に理解を示す世代として認知されています。一方、生まれた頃から低成長の時代で、さらに少子高齢化の下、上の世代のような厳しい競争を経験していない彼らのイメージは、ガツガツとした闘争心のようなものとは無縁です。常にクールで現実主義的な面があり、また「コスパ」(コストパフォーマンス)、「タイパ」(タイムパフォーマンス)を重視するリアリストの側面があることも、多くの識者に指摘されるところです。そうした中、第二次...#2724蔓延する「いい子症候群」(その1)

  • #2723 「楽しい日本」と地方創生2.0

    石破茂首相は今年1月6日の年頭記者会見で、「楽しい日本」を目指すと表明しました。唐突な切り出し方に「楽しい…?」と戸惑った人も多かったようですが、(よくよく話を聞けば)「強い日本」「豊かな日本」を目指してきたこれまでの政権とは一線を画す姿勢を明らかにした、(ある種の)決意表明とも受け止められます。首相曰く、国民一人一人が自分の夢を目指し、希望や幸せを実感する社会が「楽しい日本」の姿とのこと。「令和の列島改造」「地方創生2.0」と、立て続けに政策の新機軸を打ち出している石破政権ですが、少子高齢化が進む中、その道のりは容易いものではないでしょう。中でも気になるのは、人口減少が顕在化し、東京圏への一極集中が進む今の日本で、生活圏の在り方を根底から見直すための中核政策とされる「地方創生2.0」。2014年に安倍政...#2723「楽しい日本」と地方創生2.0

  • #2722 オールドメディアが衰退する理由

    タレントの中居正広氏の女性トラブルに社員が関与したと一部週刊誌で報じられた問題で、70社以上の企業がCM放送を差し止めに及んでいるフジテレビ。社員の関与が報じられる中、港浩一社長が記者会見で調査委員会の設置などを盾に詳しい説明を避けたことなどで、厳しい世論に晒されています。そもそもこの問題が世間の耳目を集めたのは、週刊誌の記事から始まったトラブルに関する報道が、(ネットメディアなどに大きく取り上げられているにもかかわらず)テレビの在京キー局や大手新聞各社がこの事件にほとんど触れようとしなかったからだと考えられます。ジャニーズ事務所による性加害の隠蔽やダウンタウンの松本人志氏の女性トラブルなどとも繋がるオールドメディアのこうした態度に、(「やっぱりな」と)不信感を募らせた人も多かったのでしょう。強力な発信力...#2722オールドメディアが衰退する理由

  • #2721 デフレ脱却と政治の流動化

    前回の衆議院議員選挙における自民党の敗北で流動化した日本の政治状況。折しも、米国や隣国韓国において政治の大きな混乱が生じる中、この日本でも従来の自民党中心の政治の不安定さが増せば、自衛隊と米軍の連携強化など安全保障政策の推進が遅滞するとの指摘もあるようです。前回総選挙の自民党の敗北により、国内においても政権運営に向けた政党間の交渉、せめぎあいがしばらくは続くと予想されています。その間、選挙の焦点となった裏金問題のみならず様々な政策論議が盛んになるでしょうが、特に(予算関連の審議における)経済対策については、一貫性を欠くものとならないよう財政的な裏付けについて注意していく必要がありそうです。それにしても、選挙で国民からキツイお灸を据えられたとはいえ、先の自民党総裁選であれだけ日本の未来を語っていた石破茂新政...#2721デフレ脱却と政治の流動化

  • #2720 「敵の敵は味方」という話

    米ワシントンで1月20日に開催されたドナルド・トランプ第47代大統領の就任イベントで、トランプ大統領を支持する米富豪イーロン・マスク氏が演説したとのこと。報道によれば、その際、マスク氏が壇上で行った右手を左胸にあててか、右斜め上にまっすぐ突き上げる動作が、まるでナチスドイツの敬礼のようだと物議をかもしているということです。同氏の所作の意味はともかくとして、米国で発足した新政権における、実業家イーロン・マスク氏の存在感が高まっているのはおそらく事実でしょう。トランプ次期大統領と蜜月関係を築き、トランプ氏肝煎りの新組織「政府効率化省(DOGE)」のトップへの就任が決まっているマスク氏。既に巷では、実質的な「共同大統領」との声もあると聞きます。マスク氏と言えば、世界有数の大富豪として知られ、総資産は実に3530...#2720「敵の敵は味方」という話

  • #2719 タイパ世代は就活だって2倍速

    タイパ(タイムパフォーマンス)という若者言葉があるが、エンタメから大学の講義まで動画を「2倍速」で視聴する現代の若者にとっては「就活」もその対象だと、12月3日の日本経済新聞(夕刊)が伝えています。(連載「就活のリアル」:『「2倍速」で就活する時代に学生・企業の双方に恩恵』)人材研究所代表の曽和利光氏によれば、就活生はスーツを着て出かけるような会社説明会にはもはや5社ほどしか参加していない(リクルート就職みらい研究所「就職白書2024」)とのこと。彼らにとっては「早送り」できない人の話を聞くのはもうつらいことで、オンラインによる参加を加えても12社ほどでしかないのが現実だということです。一方、そんな今でも、年間で100回を超えるほど「ライブ」の会社説明会を開いているような会社も多いと曽和氏はしています。会...#2719タイパ世代は就活だって2倍速

  • #2718 「ふてほど」から抜け落ちた平成

    年末に発表された恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞は、「ふてほど」であった由。「ふてほど」とは、(ご存じのとおり)昨年大ヒットしたTBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』の略称とのことですが、ネット上では「これって流行語なの?」と違和感を指摘する声もちらほら上がっているようです。世間で話題となった「ふてほど」は、昭和時代(1986年、安定成長期)からコンプライアンスが厳しい令和時代(2024年、低成長期)にタイムスリップした(阿部サダヲ演じる)主人公の体育教師が、人々の意識の変化の中で様々な問題を引き起こす物語。コンプライアンスという言葉すらなかった昭和の時代へのノスタルジーとともに、現代とのギャップをあっけらかんと描き話題をさらったところです。そういう私も毎週(結構楽しみに)見ていた口です...#2718「ふてほど」から抜け落ちた平成

  • #2717 103万円の壁の撤廃…そりゃ財務省は反対するわな

    政府が昨年11月22日に閣議決定した総合経済対策には、国民民主党が求める「103万円の壁」対策を行うことが明記されています。しかし、具体的にどのような措置を施すのかついては未だ決まっておらず、2025年度の税制改正の検討の中で本格的に議論されることとなるようです。一方、政府の試算によれば、国民民主党が求めるように所得税の基礎控除・給与所得控除額の水準を103万円から178万円まで引き上げ同様に住民税についても措置すれば、税収の減少額が7兆円から8兆円にまで達するとのこと。財務省はもとより、特に警戒感を強めているのが地方公共団体で、税収減による地域の行政サービスへの悪影響を強く主張しているところです。そうした中、この(103万円の壁の解消の)問題に関し日本経済新聞と日本経済研究センターが経済学者47人に聞い...#2717103万円の壁の撤廃…そりゃ財務省は反対するわな

  • #2716 日本経済が乗り越えるべき最大のハードル

    日本の生産年齢人口は、1995年に8726万人でピークを打った後、戦後のベビーブーマーの引退とともに減少に転じています。2020年には7509万人まで漸減してきており、さらに2032年には7000万人、2043年には6000万人、2062年には5000万人を割り込んで2070年には(ピーク時のほぼ半分の)4535万人まで減少すると予想されています。生産年齢人口とは、15歳から64歳までの労働や経済のる中核を担う年齢層のこと。この世代の人口が少なくなるというのは、つまるところ労働力が不足することを意味し、国内総生産(GDP)の減少や経済成長への悪影響をもたらすことに繋がるのは必至です。こうした生産年齢人口の縮小に対応し、日本の労働市場は女性や高齢者、そして外国人労働力の導入でそれを補ってきました。近年、パー...#2716日本経済が乗り越えるべき最大のハードル

  • #2715 プラトンが予言するこれからの米国

    欧州から米国に逃れたユダヤ系難民の両親のもとで育った米イェール大学哲学教授のジェイソン・スタンリー氏は、世界的なファシズムの傾向に対し、言語哲学や認識論の立場から警鐘を鳴らしてきた哲学者として世界的に知られています。そんなスタンリー氏は、米国大統領選挙後に行われたNHKのインタビューに応え、「トランプ氏は、『内部の敵を標的にし破壊しなければならない。さもなければ国家は滅びるだろう』と訴えることで、有権者の恐怖と不安をあおり、その解決者としてみずからを誇示している」と話しています。「内なる敵(enemiesfromwithin)」という言葉が指しているのは、アメリカ国内の民主党左派やリベラル系メディアのこと。前回の選挙戦までは、イラン、中国、ロシアなど外国を(こうした言葉で)「敵視」することが多かったトラン...#2715プラトンが予言するこれからの米国

  • #2714 Z世代の結婚へのハードル

    こども家庭庁が今年7月、15歳から39歳の2万人を対象に実施した結婚に関する調査(「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」)によれば、既婚者に結婚相手との出会いのきっかけを尋ねた設問に対し、4人に1人にあたる25%が「マッチングアプリ」と答え、最も多かったということです。因みに、2位は「職場や仕事関係」で21%、3位が「学校」の10%、そして「友人などからの紹介(9%)」、「パーティーなど(5%)」と続いています。調査を行ったこども家庭庁では、この結果を「若い世代を中心に出会いの場は多様化し、SNSの影響が増している」と受け止め、アプリを安全に利用できる環境整備を図るなどSNSを通じた出会いの支援を強化する方針と伝えられています。昭和生まれのオヤジとしては、「おいおい、いくら何でも(官民そろって)...#2714Z世代の結婚へのハードル

  • #2713 バズワードで見る現在の中国

    1970年代末に鄧小平政権が打ち出した「改革開放政策」以降続いてきた「高度成長」から、「低成長」時代に足を踏み入れたとされる中国経済。新型コロナウイルスの封じ込めやバブルの抑制、ネット産業の締め付けなど政府の統制強化が相次ぐ中、少子高齢化の進展なども足かせとなって中国の社会自体が変容の兆しを見せているようです。そうした変化が一番先に、そして如実に表れるのが「若者の文化」なのでしょう。ネット社会が進んだ近年、SNSへの書き込みには社会問題を端的に示した造語が溢れ、若者による数字やアルファベットを使った言葉遊びも各所に見られると昨年11月22日の日本経済新聞が伝えています。(「寝そべるか競争突破かバズワードで見る中国」)例えばその一つが「宅男」というもの。日本語の「オタク」に由来する言葉だそうで、日本同様(主...#2713バズワードで見る現在の中国

  • #2712 タワマンの後始末

    最近の首都高速道路を車で走ると、川沿いや臨海部のウォーターフロントを中心に(まさしく)林立するタワマンに目を奪われます。以前の日本ではあまり目にすることのなかった光景だけに、「ああいった場所に住んでみたいなぁ…」と思う若い人たちの気持ちもわからないではありません。しかし、例えば災害時の対応や停電の影響、荷物の受け取りからエレベータ渋滞に至るまで、その使い勝手についてはまだまだ不安の残るところ。そのうえ、100年後に建て替え時期を迎えた際に取り壊しに法外なお金がかかると聞けば、(特にシニア世代が)二の足を踏むのも致し方ないことかもしれません。そんなことを感じていた折、11月13日のビジネス情報サイト「ビジネス+IT」に、不動産ジャーナリストの榊淳司(さかき・じゅんじ)氏が、『湾岸タワマンは将来「負の遺産」確...#2712タワマンの後始末

  • #2711 タワマンの未来

    昨年6月、名古屋市内のタワーマンションに暮らす住人が、隣接地に建設された別のタワマンに眺望が阻害されたとして提訴したことが、不動産関係者の間で話題となりました。名古屋地方裁判所に提訴したのは、地上42階建てのタワーマンションの住人3人。大手不動産販売の積水ハウスなどに対し、同社が隣地で開発を進めるタワーマンションのうち30階を超える部分の建設中止を求めて訴えを起こしたということです。これを、「お金持ちの(独善的な)権利主張」と捉えるかどうかは別としても、地域の景観や文化、都市機能などに大きな影響を与えるのは大規模住宅開発の宿命のようなもの。特に、大都市圏を中心に超高層マンションの建設計画が次々と進められていく状況を見れば、今後は同様のトラブルが各地で発生してくる可能性は否定できません。こうした状況の中、1...#2711タワマンの未来

  • #2710 平等幻想がもたらす残念さ

    将棋棋士の羽生善治氏は著書『決断力』に、「何かに挑戦したら確実に報われるのであれば誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている」と記しています。「頑張れば何とかなる」と思ってやってきたのに、発射台の違いは如何ともしがたい。「親ガチャ」という言葉があるけれど、気が付けば先行者との差は開くばかりで、追いつく気力もなくなりそうだという若者の声も聞こえてくるところ。それでもモチベーションを維持していけるかが勝負だと言えるのは、やはり若くして七冠を独占した羽生善治氏が稀代の天才だからなのでしょう。そう言えば、「お笑い怪獣」の異名をとるタレントの明石家さんま師匠は、10年ほど前のラジオ番組(M...#2710平等幻想がもたらす残念さ

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