「あぁぁ、あ!もっとぉ…!ひびきさ、もっと、」 もっともっとと強請る陽詩の声はとろけるような艶を帯び、後孔の内壁は激しくうねって収縮し響生を貪ろうとする。こたえるように蠢くなかを穿たれ、シンクについた陽詩の手がぶるぶる震え、水滴をなすった。いいところをさんざんこすられて、性器はみなぎって先端から粘液をあふれさせている。 響生の手が腰から腹にまわり、胸へとのばされる。触れられもしないでぎゅっと凝って...
BL小説『いつか君に咲く色へ』連載中です。人の感情を色で把握できるDKとその色をもたない同級生のおはなし。ゆっくり恋になっていきます。
『ありえない設定』⇒『影遺失者』と『保護監視官』、『廃園設計士』や『対町対話士』(coming soon!)など。…ですが、現在は日常ものを書いております。ご足労いただけるとうれしいです。
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「あぁぁ、あ!もっとぉ…!ひびきさ、もっと、」 もっともっとと強請る陽詩の声はとろけるような艶を帯び、後孔の内壁は激しくうねって収縮し響生を貪ろうとする。こたえるように蠢くなかを穿たれ、シンクについた陽詩の手がぶるぶる震え、水滴をなすった。いいところをさんざんこすられて、性器はみなぎって先端から粘液をあふれさせている。 響生の手が腰から腹にまわり、胸へとのばされる。触れられもしないでぎゅっと凝って...
響生と恋人同士になってから、2週間がまたたくまにすぎた。恋人というものができるのがはじめての陽詩には世間一般そういうものなのか、それとも自分たちが特殊なのかはわからなかったけれど、ひまさえあれば会って、会えばセックスした。試験期間あけだったので、大学生の陽詩は実技の授業がない日はそれほど忙しくもなかったし、響生の仕事も閑散期らしい。唇や触れてくる指、なかを穿つ性器まで、余すところなく記憶してしま...
もったりと生ぬるい湯に浸かっているような意識のなかで玄関のドアがひらいて、閉まる音を聞く。あ、響生さん帰っちゃうんだ。起きなきゃ、声をかけなきゃ、と思う頭はまくらに糊付けされたかのように動かない。あれ、おかしいな、でも響生さんが帰るんだったら声をかけたい。ぽこりぽこりと浮かんでは流れる思考は端からふわっとはじける。はじけた先にはやわらかいいとおしさがあって、陽詩は口もとだけで微笑んだ。 ……響生さ...
はぁはぁと息をついていた響生が、陽詩を見下ろす。そっと目が細められ、優しい手が髪を撫ぜる。ちがうの試してみよっか、と邪気なく言われたとき、陽詩はだから、よもやまだ性交がつづくのだとは思わなかったのだが。髪に触れていた手が背中にまわり、ぐるっと体勢を変えられた。陽詩が響生のうえになる。挿入の角度が変わり、あたらしい性感の息吹に陽詩はうんと背をしならせた。「や、や……きもちいぃの、もう、こわい…」「怖...
響生がいる浴室から、水の粒が床を叩く音がする。先にシャワーをすませた陽詩はパックごはんを温めてレトルトカレーの封を切った。こんなことなら、ちゃんと自炊をしておけばよかった。後悔は先に立たずで、響生が髪をぬぐいながら脱衣所から出てきたときに陽詩に準備できたのは、オールレトルトの夕飯だった。それでも響生は「いーにおい」とうれしそうにわらう。「おなか減ったね」 陽詩が食卓について響生にも向かいに座るよ...
おひさしぶりです。管理人の砂凪です。いろいろあって(本当にいろいろあって)今月上旬に自殺未遂事件を起こしました。心停止までいきましたが、そういうふうになっているのか死なずに生きてます。いまは全て休みつつ、好きなことをしてます。「成長」も「頑張る」も「輝く女性」も、まえは目指してていまはできないことをしなくていいよってだれかに言われたいです。好きなYouTubeの動画で笑ってるほうがずっといいよって。憐れみ...
玄関のドアにもたれて、どのくらいそうやって泣いていただろう。あまりにもやりきれなくて、手からこぼれるその感情があふれるような涙だった。ほとほとと、遠慮がちに背中を接している扉をたたく音に気がついた。肩をびくりと揺らす。追いかけてきて、くれた?あんなにひどいやり方で突き放したのに、それでもまだ求めていてくれる?「陽詩くん」呼ぶ声がする。震える心を物理的に鎮めるように、両手で胸を押さえた。そうでもし...
ちゃぷちゃぷと揺れる波を眺めているうちに、眠たくなってきた。思えば、きのうの夕刻から急展開で、心を置き去りのまま現実が進んでいる。思いがけない再会、二回目のセックス、響生のときどき心に引っかかり波紋をもたらす言動。さっきの「……ごめんな」はいったいなんに対するどういう謝罪だったんだろう。気持ちにはこたえられないということ?おなじ気持ちにはなれないということ?かすかに落ち込みながらも、睡魔にどっぷり...
うそというのは、つきなれていないととっさに声にならないことを思い知る。酸素を求める魚よろしく口をあけたり閉じたりしていると、見かねた響生が助け舟を出した。「俺は、陽詩くんの親戚」 ……になるはずだった人。陽詩は心のなかで付け足す。相沢は感じのよい笑みで「あ、そうなんですね」と笑う。ミルクティー色の髪をした彼女は「仲良しでいいなぁー」と、邪気のない瞳で言った。陽詩は急いで頭の中からこの場を収めるのに...
昼まえに響生のアパートを出た。電車とバスを乗り継いで、水族館を目指す。思えばふたりだけで公共交通機関をつかうのははじめてで、デートみたいと思う。これを、どういう外出と位置づけたらいいのかわからない。「ひさしぶり。水族館に行くなんて」「俺、大学んとき年パス持ってた」「魚が好きなんですか?」 響生が「んー」とうなった。返答を選ぶときの癖らしい。ややあって、「海を知らない魚たちって、ちょっと考えちゃう...
一瞬、あまりにも大きすぎる言葉の意味をとらえきれなかった。おなじことを思うって?それはつまり、響生さんが、僕を。「いつから……」 あいまいな問いだけが、喉からあふれた。いったいいつから?あの四年前の夜、あたらしい扉に手を伸ばした。暗闇へと続く扉とわかっていてあけた、あのつめたいドア。のしかかる闇を覆す光など、ないと思っていたのに。響生が「んー」とうなった。「ぶっちゃけ、ああやって抱いてみてから。触...
交わりのあとの緩慢な充足のなかで、響生がシャワーを使う音を聞く。その音がドライヤーの音に変わったあたりで、ゆるやかに眠気が這い上ってきた。とぎれとぎれに、温風を吐きだす機械の音のむこうで響生の声がする。聞き取れないので、「なんですか?」とすこし声を張った。ぶおん、と音が止まる。寝室に、響生が戻ってくる。「あした、予定がなかったらいっしょに出かけないか」 寝巻きに着替えた響生に覗き込まれ、陽詩はゆ...
響生が指で陽詩の唇に触れた。優しくなぞる。自分の唇の輪郭というものを、とたんに意識した。「抱かせて、陽詩くん。いいだろ?」 問いかけの声がかすかにふるえて聞こえた。陽詩だってこの状況で拒めようはずもないのだが、なにかにとてもおびえているような声だった。陽詩は目を開けた。視線で響生をとらえる。またひとつ、と思う。またひとつ、この人を好きになってしまった。「……僕も、響生さんとしたいです」 響生がそっ...
照明を絞った部屋は暗みががったオレンジに沈んでいて、響生の表情はよくうかがえなかった。それでも、陽詩の身体を撫ぜる手がやさしいので怖くはない。肩から腰までをそっと撫でおろされるとあまい痺れが走る。性的な意図よりは慈しむような手のひらの温度に戸惑った。「響生さん?」 優しさを示されるはずはないのだ。愛されているわけではないのだから。こんなふうに触れられるのはつらい。もしかしたらと期待してしまうから...
アパートの最寄り駅の雑踏のなかで声を聞き取ったのはイヤホンの調子が悪かったからだった。耳から引っこ抜いて接続を確認していたら、義兄になるはずだった人の声が耳に滑り込んできた。「……陽詩くん?陽詩くんだろ」 のろのろと数回まばたきするあいだにも、声は名前をなぞる。軋む首を動かして見遣れば、コートを羽織った響生が立っていた。陽詩が取引を持ち掛けた夜から四年が経ち、獣医学部の三年目にさしかかっていたのに...
ひとけのない冬の海は鈍色に濁り、朝の陽の光を弱々しく跳ね返していた。波打ち際をあるく蒼羽はつよい風を避け、マフラーに首をうずめる。それでも舞い上がった砂粒がぴしぴしと頬を打つ。 かちん、とトングを鳴らした。金属音でリズムを取りながら、小学生のころにはやった男性ボーカルの曲を口ずさむ。足元と、手で鳴らすリズム、自分の声に意識を集中させる。だからだろうか、背後から声をかけられるまでひとの気配に気がつ...
ベージュの砂の上に、手のひらをすべらせた。ひとつかみ、ぎゅっと握って持ち上げる。ぱっと空で指をほどくと、さらりと散る。散り落ちた砂粒はもう他と見分けがつかなかった。人の心も。水銀灯だけが照らす夜の公園の砂場、通勤リュックを背負った佳尚(かなお)はしゃがみこんだまま思う。人の心も、細かく細かく砕いたのなら、こんなふうに扱ってもいいのだろうか。それとも、こんなふうになった心はもう心の機能を果たせない...
むかし、大好きだった人が死んだと聞いた。よくない死にかただったようなので、ようすを見に行ってみることにした。 てんてんと道をたどっていくと、遠くにそれらしき影が見える。うわあ、と声が洩れた。腰から下がほとんど液状になって、満足に歩くこともできないみたいだ。あれは相当ひどい。いったいぜんたい、彼の身になにがあって、なにがなくて、あんなふうにここにいるのだろう。 じゅうぶんに距離を保ったまま、彼の姿...
時間が、朝と夜のすきまに見せる色が好きだ。夜が明けきるまえの薄い青、陽が沈んで闇に覆われるまえのはかない橙。まぶしい朝、てらされる昼、真っ暗な夜、雨音(あまね)は地軸が揺らぐように自分の居場所を見失うから。ベッドのなかで青がだんだんと光に浸食される時間、雨音の肺はしだいに金属でできているかのように呼吸がむずかしくなる。このまま光に溶けてしまいたい、という物思いすら容赦なく照らされて消えてはくれな...
僕が「薄荷」と呼ぶものを、彼は「ミント」と呼ぶ。犬派の僕と愛猫家の彼。なにもかも相容れないのに、接点が恋心だというのはいったいどうしたことだろう。作哉が一億万回は考えたことをまた脳内でこねくりまわしていると、ミントで猫派の作哉の彼氏、学人が本屋の紙袋(いちばんサイズがでかいやつだ)を提げて休日昼間のごった返したフードコートに戻ってきた。「また本を増やす……」 作哉の視線に学人はうへへと笑った。「学...
いまでも、あの日抱いた感情の名前をさがしている。ずっと、ずっと、いまも。 大学受験を控えた夏休みだった。休みとは名ばかりの、夏期講習と模擬試験と判定に一喜一憂する日々に埋め尽くされた、スケジュールもメンタルもぎゅうぎゅうに追い詰められるような、あの夏。 講習から帰り、昼ご飯をかきこみながらリビングのバラエティを眺めていた。ひとときの休息の時間で、一時間くらい昼寝できるかななどと考える頭の表面にテ...
ひとりでいいから。ちいさなうそをつくたびに、すこしずつ孤独に鈍くなった。 だれでもいいから。これまたうそを口にすれば、すこしずつ夜を乗り越えるのがじょうずになった。 ほんとうは、たったひとりがほしい。ずっと。ずっと前から。 すこしずつ、それを声に出せなくなるのは、なぜ。 部屋を出ようとすると、夜のなかに雨が降りしきっていた。一瞬、ごくわずかに躊躇した椎菜の背中に声があたって、転がる。「傘持ってん...
記憶のなかから立ちのぼってきた、なつかしい声を聞く。自分の、保育園に通っていたころの声だろうか。あどけなくてふわふわとした、高い声。「あいりせんせい、けっこんしたの?」「そうだよー、ひろくん」「ええとねえ、ええっと……でめとー?おでめとー?」「わあ、ありがとう」 応じる保育士の声がふっといたずらっぽく揺れた。「ひろくんはだれとけっこんしたいかなぁ?」「だれと?」「けっこんは、すきなひととずうっとい...
煙草の煙が漂ってくると、パブロフの犬もあきれ返る勢いの反射で彼のことを思い出す。僕を抱いた後は煙草が吸いたくなるといった彼。ゆうらりとくゆる一本きりの煙の時間をひっそりとベッドのなかから見守っていた。眼鏡をかけるほどではない軽い近視だった目が、遠くを見るように眇められる、それが色っぽくて好きだった。あの視線が、なにを映していたのかを僕が知るすべはもう、どこにもない。 よく晴れた冬の日曜日の昼下が...
「お疲れさま、ふたりとも。先にあがるね。あ、そうだ!透琉(とおる)くんに教えてもらったレシピ、このまえ試してみたの」「うわあ、ありがとうございます!どうでした?」「レンチンでぜんぶ作れちゃうのね、時短わざは透琉くんに聞けってね」 はじける笑い声を歩生(あゆむ)は背中で聴く。話題そのものに、ものすごい遠心力で弾き飛ばされたのを感じる。相容れない、水と油のように。 バイト仲間の透琉はモテる。主に、パー...
ルーティンというものは破られたときのほうが、守られたときより「そこにある」ことを主張しはじめる。 由糸(ゆいと)の場合、ウィークデーならこんな感じだ。決まった時間に起きて、毎朝飲むサプリメントを服用し、軽く胃に食べものをいれて出勤。帰ってきたら食事のまえに簡単に風呂をすませ、休日に作り置いた数品やスーパーの半額シールの貼られた惣菜で夕食をとって、本や新聞をめくり、だいたい日付が変わるころにベッド...
こんなことでもなければ、20代でふるさとの地をもう一度踏むことはなかっただろう。 視線をめぐらせ見あげる空から、気まぐれに三月の雪が降ってくる。そういえば、この地では死んでいく冬が最期の力を振り絞るように、こんな雪が降ることがあるのだった。襟足から容赦なく冷気が忍び込んでくる。薄手のコート一枚でやってきたことを後悔した。音もなく降る雪に、無沙汰を咎められている気がして、柚希(ゆずき)はちいさく肩を...
もうなにも出ないから、もういいから、と訴えても、やめてもらえなかった。なかの刺激がよくてよくて、無意識にまだ、とかもっと、と口走ってしまうたびになんども奥に射精された。なにも出ないままでいかされたとき、脳髄ごとけいれんを起こすような快感に絶叫した。溺れそうで苦しくて、苦しいことがしあわせだった。 果てのない交合が終わったのは、夜明けちかかった。あちこち痛む身体をなだめすかして起き上がると、響生が...