2022年2月
「護衛ですか。監視の間違いではございませんか?」 憎まれ口が戻ったのが嬉しくて、土方は思わず笑ってしまった。それだけの元気があれば大丈夫だろう。 「達者でな」 颯爽と羽織をひるがえして、土方は茶岡を後にした。 持ち出す荷物は少なかった。 午後には市中を離れ、西に向かった。急ぐ道中でもないが、夕方には宿場に着いておきたかった。 この日は朝から晴れて、歩いていると暑いくらいだった。 宿場も近くな…
「知っていたのか?」 「少々、不思議なご縁がございまして」 それ以上は語ろうとしない。問い詰めても無駄だろうし、そんなことをしても意味がない。 「その姉弟が、この国の未来がどうとか、本来の歴史とは違っているとか、良くそんなことを言っていたよ。芹沢の狙いが異刻人だと分かって、俺達は奴の情報を隠した。そういう意味では、あんたを捨て石にしてしまったとも言える。そして結局、服部一人に始末を押し付けてしま…
茶岡の破られたままの戸口の前には、2人の若い新撰組隊士が立っていた。この日は朝から晴れて、頭上には真っ青な空が広がっていた。 店の中は、先日の芹沢が乱入した時のままだったが、見かねた隊士達が倒れた机を直し、椅子を並べた。壊れた机や椅子は、一時的に店の外に積み上げていた。 薄暗い店内では、詩織がうなだれるようにして椅子に腰を下ろしていた。小さな机に向かい合う形で座っているのは、新撰組副長の土方歳三…
2022年2月
「ブログリーダー」を活用して、服部武雄さんをフォローしませんか?