絞り出すように言った答えに、服部は蜂の苦しい心中を察した。辛いことを聞いてしまったようだ。 「すまぬ。恩に着る」 服部と蜂を乗せた馬は、五条通りを東に向かって走っていた。 鴨川が見えて来る辺りで、雨が降り始めた。そして間もなく、大橋の中央に立ちはだかる馬と、その上の芹沢の姿を視界に捉えた。 服部は蜂に馬を止めるように伝えると、馬から降りて、そこからはゆっくりと歩いて芹沢との間合いを詰めた。 間近…
万一、彼らの情報で動いた服部が斬られるようなことになっても助けに入ることはない。最初に会った時に、そう明言されていた。 「服部さま」 今度は背後からの声に服部が振り替える。そこには一頭の馬と、その背に乗る蜂の姿があった。 「ご案内させて頂きます」 言いながら蜂が馬上から手を差し出した。考えている間はない。服部は蜂手を取ると、素早く馬上に上がった。すぐに蜂が手綱を操り、馬が走り出した。 息を切らせ…
猛烈な勢いで街中を走る服部が向かうのは、茶岡だった。布切れは、茶岡の暖簾の切れ端だったのだ。 何があったのだ。詩織は無事なのか。気ばかりが焦る。息が切れるのも構わず、服部は走り続けた。 やがて服部の視界に入ったのは、入口の戸無惨に破られた茶岡と、その店の前にある人だかりだった。 人だかりを横目に店内に走り込む。机や椅子が倒れたままで、詩織姿は愚か、人の気配もない。 服部は外に出ると、目の前の人だ…
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