地声の大きな佐原と清原の掛け合いは、ここ最近では御陵衛士の名物のようなものだ。2人が揃えば口論が絶えないが、そのくせ行動を共にすることが多い。 「服部よ。これでも出ていくつもりか?」 綻びかけた表情を整えてから、服部は篠原を見た。 「そもそも、芹沢がその気であればお前がいようがいまいが、奴は1人ででもここに討ち入って来るだろう。今この時に、単独行動を取る意味は小さいと思うがな」 「はい。その通りだ…
「服部よ。俺もお前さんとは長い付き合いだ。俺だけではない。ここにいる多くの者は江戸からの付き合いだし、そうでない者も互いに命を預ける同志として誓い合っている筈だ。違うか?」 「はい、私もそのつもりですが」 「では、何故この期に及んで一人で出て行こうとする?」 服部には言葉がなかった。図星だった。 「おおかた、芹沢のことを気にかけているのだろう。俺達を巻き込まないように、単独行動をとるつもりだった…
その時、店の戸が激しく打ち破られた。 驚きのあまり、詩織には悲鳴も出ない。彼女の眼前に立ちはだかった大きな影。芹沢鴨だった。 驚いた様子こそ見せているものの、悲鳴を上げるでもなく、芹沢を見据えたままで逃げる様子もない。そんな詩織の姿を見て、芹沢は笑った。無造作に歩み取ると、乱暴に詩織の腕を掴む。 「やはりそうか。今にして思えば、最初に会った時に気付くべきであったわ。女、貴様が異刻人だったのだな」…
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