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幕末血戦録 http://thshinsengumi.seesaa.net/

若者達が異なる信念の元に命を賭した時代、幕末。新撰組と御陵衛士を中心に、人々の生き様を書き記します。

服部武雄
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2013/12/07

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  • 鬼の章(97)

    「なかなかどうして、思い通りにはいかぬものだな」 深い溜め息を吐き出し、続ける。 「清河は儂を裏切ったのだ。元々、儂に異刻人としての存在やその力を教示したのは、他でもない清河だ。時間という横軸に対する刻という縦軸が存在し、刻にはその数だけの歴史が存在する。隣り合った刻は似たような歴史でも、全く同じという事はない。その刻を超えることで、常人にはない能力が身に付くことがあるという。剣技では劣る清河が…

  • その日の朝~11月18日(2)

    やがて幾つかの白刃が同志を捉えた。 篠原泰之進が、加納鷲雄が、三木三郎が倒れた。富山弥兵衛が、毛内監物が斬られ、地に伏した。 残った藤堂平助も、無数の敵に前後左右を取り囲まれて成す術なく切り倒されてしまった。 声が出ないばかりか、助けに行きたくても身体が動かなかった。大きな力で、胸元をがっしり押さえつけられている感覚だった。 心なしか呼吸も苦しくなって来ていた。 同志達の名前を何度も何度も叫んだ…

  • その日の朝~11月18日(1)

    気付いた時、服部は暗闇の中に立っていた。 膝を緩めて僅かに身を落とす。顎をひいて視界は広く保ち、周囲の音も聞き逃さないように意識を鎮める。 物音は愚か、衣擦れも呼吸の音も聞き逃さない自信があった。しかし、闇夜には静寂だけが広がっていた。 それでも、服部は感じ取っていた。 体温で、匂いで、空気の流れの僅かな変化で、周囲を取り囲む数十人の敵の存在を感じ取っていた。 やがて、視界の先に横たわるものが見…

  • その日の朝~11月17日(4)

    この猫に会うために、境内に出て来たのか。猫の世話などしていることを同志達に知られたくなくて、それで言い淀んでいたのだろう。 「みすけ、と言うのかい」 「はい。少し前からこの周囲の寺に出入りしているらしくて」 藤堂はみ助と呼んだ猫の頭を撫でながら答えた。み助は気持ち良さそうに喉を鳴らしていた。 み助が藤堂の着物の袂に鼻を寄せた。思い出したように、藤堂は袂から懐紙に包んだ秋刀魚の頭を取り出す。み助は…

  • その日の朝~11月17日(3)

    目を閉じた服部の神経は、普段よりも鋭敏になっていた。音よりも先に空気の流れが、僅かな変化となって服部の感覚に触れた。その少し後に、ゆっくりと境内に出てくるものがいた。 「藤堂君か?」 まだ暗い境内から不意に声を掛けられて、藤堂平助は思わず声を上げてしまった。声を上げてすぐに、早朝であることを思い出して自身の口を両手でふさぐ。 「服部さんですか。驚かさないでくださいよ」 文字通り胸を撫でおろしな…

  • その日の朝~11月17日(2)

    明け六つの鐘が鳴らされる。 息が軽く上がる中、服部は素振りを止めた。身を切るような冷たい朝の空気の中で、大量の汗をかいた服部の全身から湯気が立ち上る。 薄暗い境内の中で、服部は目を閉じ、立ち尽くしたまま息を整える。自身の胸中に蠢く不安のもとを1つ1つ辿ってみた。 新撰組からの加入の要請に応じて上洛。 武力倒幕派の先鋒である長州藩などの恩讐を一身に受け止めた新撰組での活動。 時代の複雑な情勢を把…

  • その日の朝~11月17日(1)

    慶応3年11月16日。 旧暦11月16日は、新暦では12月11日にあたる。寒さも厳しくなり本格的な冬に入っている。そんな身も凍えるような寒さと、うっすらと朝靄が立ちこめる高台寺の境内。そこで空を斬り裂く鋭い音が、幾度となく繰り返されていた。 最初からその様子を見ていた者がいれば、無尽蔵とも思える体力に呆れもし、微塵も衰えない気迫に気圧されもしただろう。 服部武雄は、胸中に広がる漠然とした不安を斬り裂くように…

  • 鬼の章(96)

    「この国の未来と正しい歴史のために」 嘗て聞かされたその言葉が蘇った。 正直、その様なことが自分に出来るのか半信半疑だった。1人の武士でしかない自分に、国やその歴史に関わるなどということは想像さえも追い付かないというのが本心だった。 しかし、今この時、眼前には歴史を造り上げると平然と言ってのける人物がいる。ならば、この男は、芹沢鴨はこの場で止めなければならない。 「3人の異刻人と言いましたが、もう…

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