ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズ喫茶『松和』は仮想喫茶店。大好きなジャズや70年代ロックの話題など、音楽三昧な日々をどうぞ。
春になると「ウィントン・ケリー」が聴きたくなる。ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。健康優良児的にスイングするところと揺らぎの翳りの対比が「春」の持つ雰囲気に似ていると思うのだ。春って、暖かくなって陽...
1950〜1960年代のブルーノート・レーベルには、レーベルにずっと所属した「お抱えジャズマン」がいた。アルト・サックスのルー・ドナルドソンとジャキー・マクリーン、テナー・サックスのアイク・ケベック、ピアノのホレス・シルヴァー、トランペットのドナルド・バードなど、ブルーノートをメインにリーダー作をリリースし続けた強者共である。ブルーノート・レーベルは中小規模の零細レーベルだったので資金力は無い。...
ブルーノート・レーベルは、有名なカタログとして、1500番台、そして、4000番台〜4300番台があるが、ブルーノートって几帳面だったんだなあ、と思うのは、この有名なカタログ番号に「飛び番」がないこと。きっちりとそれぞれのカタログ番号に100枚のアルバムが、それぞれしっかりと割り当てられている。これには感心することしきりである。Stanley Turrentine『Jubilee Shout...
ブルーノートの4100番台は、1962年〜1965年に渡ってリリースされたアルバムで全100枚。1962年~1965年と言えば、ジャズの世界はハードバップ全盛期を経て、多様化の時代に突入していた。そして、ブルーノートはこの4100番台で、この「ジャズの多様化」にしっかりと応えている。多様化とは、ハードバップからジャズのアーティスティックな部分にスポットを当てた「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」...
ブルーノートの4100番台の聴き直しを再開した。4100番台のカタログをチェックしていたら、まだまだ、当ブログにアップしていない盤がかなりあることに気がついた。どうも、4000番台について、全てのアルバムの記事をアップして、全部終わった気になったとみえる(笑)。で、この盤から再開である。The Three Sounds『It Just Got To Be』(写真左)。1960年12月13–14日...
このところ、天気が良くない。加えて、今日などは「寒い」。先週から3月としては暖かすぎる陽気が続いていたが、今日の、ここ千葉県北西部地方の最高気温は「冬」。昨日の最高気温から10℃以上下がったのだからたまらない。外は雨が降り続いているし、こういう鬱陶しい天気の日には、カラッとクールなウエストコースト・ジャズが良い。Tricky Lofton & Carmell Jones With The...
Smoke Sessions Records(以降、Smokeと略)。1999年、NYのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーが、2014年に設立したジャズ専門レーベル。「Smoke」に出演している人気アーティスト(ベテランが主)の録音を中心に「ポスト・バップ・ジャズ」、「メインストリーム」系のオーソドックスな作品が中心。今後のジャズシーンを担うであろう若手のリーダー...
最近、ユッコ・ミラーの新盤を「生活のBGM」で聴くことが多い。彼女のアルト・サックスは素姓が良く、オリジナリティーがある。作曲^アレンジの才にも長け、なかなか聴き応えがある。そもそも「ユッコ・ミラー」とは何者か、である。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー...
オスカー・ピーターソンの『ハロー・ハービー』や、『シェークスピア・フェスティバルのオスカー・ピーターソン』を聴いていて、とてもジャジーでブルージーなギターを弾く「ハーブ・エリス」のリーダー作を聴きたくなった。そう言えば、しばらく聴いていない。そそくさとライブラリの中から、ハーブ・エリスのリーダー作を探し当てる。Herb Ellis『Nothing but the Blues』(写真左)。1957...
Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降「ワシントンJr.」と略)の聴き直しと再評価を進めている。ワシントンJr.は、あのソフト&メロウなフュージョン・ジャズの名盤『Winelight』のイメージが強くて、我が国では、軟弱でイージーリスニング志向の「スムース・ジャズ」なサックス奏者というレッテルを貼られて久しい。しかし、ワシントンJr.のリーダー作を...
小粋なジャズ盤、それも「ピアノ・トリオ」盤を探していると、必ず出会うピアニストがいる。アンドレ・プレヴィンなど、そんなピアニストの1人で、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」音楽家だが、アレンジ能力にも優れ、スタンダード曲やミュージカル曲のジャズ・アレンジは、どれもが素晴らしい。André Previn with Mundell Lowe & ...
小粋なジャズ盤を探索して聴き漁っているうちに、小粋なジャズ盤に必須の「小粋な演奏」を量産出来る「相性抜群のコンビ」というものが存在するんじゃないか、と思い始めた。オスカー・ピーターソンとハーブ・エリスとか、ビル・エヴァンスとジム・ホールとか、この二人をコンビを組んで演奏すれば、絶対に「小粋なジャズ」が出来上がる。そんな「相性抜群なコンビ」というものがどうもあるみたいなのだ。『Teddy Wils...
我が国のジャズ・シーンにおいても、コンスタントに有望新人が出ている。何時頃からか、そう、21世紀に入って、2002年、ピアニスト山中千尋が初リーダー作を出した頃から、一気に将来有望な新人がどんどん出てきた。商業主義が反映されたボーカルを除けば、どの楽器でも、出てきた新人の多くは、今でも中堅として活躍している。吉野智子(Tomoko Yoshino) Quartet『Kaleidoscope』(写...
以前「幻の名盤」ブームがあって、そこには聴くことはなかなか叶わないが、小粋で味のある雰囲気の、知る人ぞ知る優秀盤のタイトルが多く上がっていた様に思う。しかし、最近、そんな「幻の名盤」の類が、サブスク・サイトからダウンロードで鑑賞出来る様になってきた。良い事である。Joe Newman with Frank Foster『Good 'n' Groovy』(写真)。1960年3月17日、Van Ge...
2日ほどお休みをいただきましたが、本日、ブログ再開です。さて、久々にイタリアン・ジャズのお話しを。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァである。1972年に初リーダー作をリリースしている。約50年間、イタリアン・ジャズの第一線を走ってきた。1939年の生まれなので、今年で84歳。イタリアン・ジャズのレジェンド中のレジェンドである。Enrico Rava Quartet『Ah』...
ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。北欧ジャズの担い手としては「古参」の存在。1980年代に、優れた内容のリーダー作を連発し、国際的に、北欧ジャズの担い手なる一流ジャズ・ピアニストとして認知された。Lars Jansson T...
CDの時代になって、アルバム1枚単位の収録時間が、LP時代よりも飛躍的に長くなった。それに伴って、LP時代には収録されなかった、お蔵入りの演奏や他のセッションでの演奏を「ボーナストラック(略してボートラ)」として収録されることが多くなった。すると、困ったことが起きる訳で、LP時代のオリジナル盤に収録されていなかった演奏が追加収録されて、全く違った内容のアルバムになってしまうのだ。これが厄介で、オ...
小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ・シーンでは、ほとんど名前が売れていないジャズマンの好盤に出くわすことが多い。こんなに優れたアルバムを出すジャズマンを僕はこれまで知らなかったのか、と思って慌ててネットでググって見ると、ほとんどが、ビッグバンドで長年活躍していたり、サイドマンがメインで活躍していたジャズマンで、ビッグバンドなど所属するバンドの中に埋没して、その個人名が表面に出てこない...
タル・ファーロウを聴いている。パッキパキのシングルトーンがなのだが、ファンクネスは控えめ。バップでリリカルな疾走感のあるテクニカルなギターが身上。この辺が他の黒人系のギタリストと一線を画すところ。とにかく、シュッとしていて切れ味の良いシングルトーンでバリバリ弾きまくる。一転、バラード演奏は味のあるシングルトーンのフレーズを響かせて、印象的に唄い上げていく。『The Interpretations...
ジャズは死んだ、なんて言われて久しいが、2023年になった今でも、ジャズの新盤はコンスタントにリリースされているし、有望な新人もコンスタントに現れ出でている。今回も、なかなか将来有望な、米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニストの最新のリーダー作を聴く機会に恵まれた。Emmet Cohen『Uptown in Orbit』(写真左)。2021年12月1ー2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、E...
「小粋なジャズ」を探索していると、これは聴いたことないぞ、と思って聴いたら「当たり」という盤に出くわすことが良くある。もちろん、ジャズ雑誌の新盤紹介や、様々なジャズ本紹介本、そして、ネットでのジャズ盤レビューの記事を参考にしてはいるのだが、こういう「当たり盤」に出くわすと、何だか一日が明るくなるから不思議だ。Joel Weiskopf『Devoted To You』(写真左)。2005年11月3...
ゴリゴリのモード・ジャズや静的スピリチュアルなニュー・ジャズなど、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズ盤を聴き続けていると、演奏のテンションが基本的に高いが故、時々、息抜きをしたくなる。息抜きをしたくなると、スイング時代からのジャズ演奏の雰囲気を継承した、ビ・バップでもなく、硬派でストイックなハードバップでもない、純粋に「古き良きジャズの音」をキープした中間派ジャズが聴きたくなる。Pe...
北欧ジャズは好きなのだが、このところちょっと北欧ジャズを聴くのが途絶えていた。しかし、最近、Helge Lien Trio『Revisited』を聴いて、北欧ジャズ禁断症状が出てきた(笑)。今、北欧ジャズの好盤をチョイスしている最中。今年は「北欧ジャズ・イヤー」にしようかと企てている。Lars Jansson Trio『The Window Towards Being』(写真)。1991年2月、...
イタリア・ジャズも隆盛を維持して久しい。レジェンド級のベテランから、若手新人まで、コンスタントに好盤をリリースし続けている。聴き比べると意外と良く判るが、イタリア・ジャズにはイタリア・ジャズなりの独特の雰囲気があって「統一感」がある。マイナー調でクラシック風のモーダルなフレーズが個性的。Enrico Rava & Fred Hersch『The Song Is You』(写真左)。202...
しかし、ウェイン・ショーターの逝去はショックが大きい。ジャズを本格的に聴き始めた頃から、ずっとお気に入りのテナーマンとして、リーダー作を収集し、ウェザー・リポートのアルバムをコンプリートしたりして、ショーターのテナーを愛でてきた。とにかく、あの「不思議ちゃんな、心地良く捻れたモーダルなフレーズ」がお気に入り。大きな音でストレートにブワーッと吹き上げるのも良い。出てくるアドリブ・フレーズが唯一無二...
ウェイン・ショーターが逝去した。89歳。僕がジャズを本格的に聴き始めてから45年。45年前、ショーターはウェザー・リポートにいた。それから、ハービー、ロン、トニー、そして、フレディと「V.S.O.P.」なる、メインストリーム志向の純ジャズ・バンドを結成。純ジャズ復古の機運に拍車をかけた。それから、ずっとショーターのリーダー作は、リアルタイムで聴いてきた。ジャズ史上、最高のテナーマンの1人だった。...
Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降、ワシントンJr.と略)。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名サックス奏者。しっかりと情感が込めて、力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。非常に優れたサックス奏者の1人だと思うのだが、何故か我が国では人気がイマイチ。...
Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア)。このサックス奏者は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの代名詞『Winelight』が大ヒットしたが故、かなり誤解されているなあ、と感じることが多い。彼のリーダー作の全てを聴き直してみると、やっぱり、彼の評価に偏りがあるなあ、と感じることが多い。グローヴァー・ワシントン・ジュニアと言うと、ベテランのジャズ者の方...
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ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズ(JM)のそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立場のメンバーを選び出し、バンドの演奏トレンド、演奏志向は、この「音楽監督」に任せて、一切、口を挟むことは無かった。『Art Blakey and the Jazz Messengers(1961 album, Impulse!...
ジャズを本格的に聴き始めた頃から「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」はお気に入り。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの演奏トレンド、演奏志向の歴史が判る。ブレイキーは、リーダーでありながら、バンドの演奏トレンド、演奏志向には口を出さなかった。ジャズ・メッセンジャーズのそれぞれの時代で、メンバーの中から「音楽監督」的立...
ホレス・シルヴァーと袂を分かって、ブレイキー単独となったメッセンジャーズ。ブルーノートに移籍してブレイクする前のアルバム群。以前のジャズ盤評論としては「ブレイク前のメッセンジャーズの暗黒時代」とされる時代のアルバム達。しかし、そうだろうか。僕はこのアルバムを実際に自分の耳で聴いて、この盤は決して「暗黒時代」の音では無い、と判断している。Art Blakey & The Jazz Mess...
レコード・コレクターズ 2024年11月号の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴き直し&初聴きしている。今回のアルバムは、実は初めて聴く「初聴き」盤である。Barre Phillips『Three Day Moon』(写真左)。1978年3月の録音。ECM 1123...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集「ECMレコーズ」にある「今聴きたいECMアルバム45選」。この「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入って、掲載されているアルバムを順番に聴いている。以前聴いたことがあって、今回聴き直しのアルバムもあれば、初めて聴くアルバムもある。どちらも「今の耳」で聴くので、意外と新鮮に感じるから面白い。Enrico Rava『...
今月発売の「レコード・コレクターズ 11月号」の特集に「ECMレコーズ」があった。これは「創設者マンフレート・アイヒャーのコンセプトと55年の歴史の概説」と「今聴きたいECMアルバム45選」の2本立ての特集。特に、後半の「今聴きたいECMアルバム45選」のアルバム・セレクトが実に気に入った。ということで、この45枚のアルバムについて、ブログ記事としてアップしようと思い立った。Wolfgang D...
今日で「僕なりのジャズ超名盤研究」シリーズの三日連続の記事化。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、はや3年。やっと第1巻の終わりである。ジャズを本格的に聴き始めたのが1978年の春。フュージョン・ジャズの名盤の何枚かと、純ジャズのアルバム、MJQ『Pylamid』、 Herbie Hancock『Mai...
小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで32枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは2枚。今回はキース・ジャレットの登場。 Keith Jarrett『The Köln Concert』(写真左)。1975年1月24日、当時の西ドイツ、ケル...
この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立って、今回までで31枚の「超名盤」について聴き直して、聴き直した時点での感想をブログ記事に綴ってきた。そして、いよいよ、残すは3枚。Chick Corea『Return to F...
まだまだ夏日が顔を出す、暖かいというか、蒸し暑い日が続く10月だが、真夏日以上という「酷暑」は去ったので、様々な類のジャズを聴く時間が増えた。特に、この10月は、何故だか判らないが、和フュージョンと合わせて、和ジャズの名盤・好盤を探索したり、聴き直したり。特に、学生時代から、若き社会人時代に聴きまくった盤を聴くことが多い。古澤良治郎『キジムナ』(写真左)。1979年10月16~20日、東京、日本...
フュージョン・ジャズ時代、そのアルバムの成り立ちが変わっている例として、高中正義『オン・ギター』をご紹介した(2024年10月10日 のブログ記事・左をクリック)。この『オン・ギター』は、ギター教則本の付属レコードとして発表されたものだった。ゼロ戦『アスファルト』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、大谷和夫 (key), 長岡道夫 (b), 鈴木正夫 (ds), 佐野光利 (g)...
フュージョン・ジャズの時代、インスト中心のアルバム作りが主流で、ボーカルがメインのアルバムは少なかった。ボーカル入りのアルバムはあったが、どちらかと言えば、ファンクネスな要素の彩りが欲しい時の「ソウル、R&B志向のボーカル」で、フュージョン・ジャズとして、「ボーカリストの歌を聴かせる」盤は希少だった。阿川泰子『Lady September』(写真左)。1985年6~7月、東京での録音。ちなみにパ...
我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。意外と超ストイックなバンドで、結成時(1976年)から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの第1期の活動の中で、10年以上、常にカシオペアはグループとしての活動を優先、ソロ活動は一切御法度という厳しい規律の上でバンド運営されていた。1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を容...
ジャズの演奏で大切なものは色々あるが、リーダーのフロント楽器の特性に応じた「アレンジ」は特に重要な要素。そして、その「アレンジ」に適したリズム・セクションの手配。この「アレンジ」と「適したリズム・セクション」がバッチリ合ったセッションは優れた結果になる。J.J. Johnson and Kai Winding『Jay & Kai + 6: The Jay and Kai Trombone...
ここヴァーチャル音楽喫茶「松和」では、「夏だ、海だ、高中だ」ではなく、「秋だ、爽快だ、高中だ」というキャッチが蔓延している(笑)。とにかく、この2〜3日前から、ググッと涼しくなった関東地方。涼しくなって、空気が爽快になって、高中正義のアルバムの聞き直しの続きである。高中正義『Brasilian Skies』(写真左)。1978年のリリース。リオデジャネイロの「PolyGram Studios」と...
この2〜3日、関東地方では気温がグッと下がって、昨日などは、11月中旬の陽気になって、ちょっと寒いくらい。慌てて、合物の服を出して、夏物のほとんどを衣替えである。これだけ涼しくなると、音楽を聴くのにも良い環境になって、夏には聴くのを憚られたハードなジャズやロックなども聴くことが出来る。高中正義『オン・ギター』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄 (ke...
「Jay&Kai」のアルバムを聴いていて、改めて「トロンボーンの音色ってええなあ」と思った。もちろん、トロンボーンを吹く上でのテクニックが優れていることが前提なんだが...。テクニックに優れたトロンボーンの音色って、ブリリアントで、エモーショナルで、ニュアンス豊かで、柔らかで優しい。そんなトロンボーンの音色が好きで、今でも時々、ジャズ・トロンボーンの好盤を引っ張り出してきては聴き直している。K...
「A&Mレコード」が牽引役を担ったのが、聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した「クロスオーバーなイージーリスニング・ジャズ」。そのカラクリは「聴き易さと分かり易さと適度な刺激を追求した、ロック&ポップスとジャズとの融合」と考えると、A&Mの諸作は実に興味深く聴くことが出来る。J. J. Johnson & Kai Winding『J&K: Stonebone』(写真左...
1960年代半ば以降、ビートルズをはじめとするロック・ミュージックの台頭によって、ジャズのシェアは下降線を辿り始めた。一般聴衆は、聴き易く分かり易く適度な刺激のある「ロック&ポップス」を好んで聴くようになる。ジャズは「古い時代の音楽」として、その人気は徐々に衰え始めていた。一方、ジャズは多様化の中で、ハードバップから派生した大衆志向なファンキー&ソウル・ジャズ、そして、ハードバップの反動から派生...
ブラウン~ローチ・クインテットの始動後、『Clifford Brown & Max Roach』と『Brown and Roach Incorporated』の直後、同一日、同一メンバーでのジャム・セッションの『Clifford Brown All Stars』と『Best Coast Jazz』は、ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)にとって、1954年8月のロスでの、怒涛の「名演...
ブレッカー兄弟が立ち上げ、エレ・ジャズ・ファンクの代表的バンドとして、一世を風靡した「ブレッカー・ブラザーズ」。1994年にて活動を停止、2007年には、弟のマイケルが骨髄異形性症候群から進行した白血病によって逝去。このマイケルの逝去によって、「ブレッカー・ブラザーズ」は永久に活動停止となった。The Brecker Brothers『Out of the Loop』(写真左)。1992年4月〜...
そろそろ、日野皓正の「渡米後」のフュージョン・ジャズからコンテンポラリー・ジャズについて、このブログでコメントせんとなあ、と最近、思い始めた。和フュージョン・ジャズを語る上では、日野皓正のフュージョン・ジャズ盤は避けて通れない。日野皓正『Daydream』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、日野皓正 (cor, flh), Dave Liebman (ts), John Trop...
初代「John Abercrombie Quartet」について、昨日の続きを。ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレッド・アイヒャーとリッチー・バイラークとの喧嘩の件、この双方が最終的に決別したのが、初代「John Abercrombie Quartet」の3枚目のアルバムの録音時のことであったらしい。John Abercrombie Quartet 『M』(写真左)。1980年11月...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のリーダー作のディスコグラフィーと、このブログでのジョンアバのリーダー作の記事化の有無をチェックしていて、あるパーソネルのECMレーベルでのリーダー作のみが廃盤になっているのに気がついた。ジョンアバは長年、ECMレーベルのハウス・ギタリストの位置付けだっただけに不思議なことである。どうも、よくよく見てると、リッチー・バイラークが入っているパーソネ...
ジュリアン・ラージの『View with a Room』は傑作だった。ラージとフリゼールのギター2本の絡みが素晴らしく、官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」というラージのギターの独特な個性全開。フォーキーで、どこか懐かしい、哀愁感漂う米国ルーツ・ミュージックの音要素を融合して、ジャズのフォーマットに乗せる「アメリカーナ」でジャジーな音世界は見事だった。Julian L...
ドナルド・バードは「機を見て敏なる」トランペッターだった。トランペッターとして、テクニックは優秀、端正でブリリアントで理知的な吹奏。破綻無く、激情に駆られて吹きまくることなく、理知的な自己コントロールの下、常に水準以上のバップなトランペットを吹き上げる。そんなドナルド・バード、ハードバップ初期の頭角を表し、ハードバップの優れた内容のリーダー作を幾枚もリリース、その後、ファンキー・ジャズに手を染め...
ジョン・アバークロンビー(以降「ジョンアバ」と略)のギターの音世界が好きで、1970年代から、ずっとジョンアバのアルバムを追いかけている。欧州ジャズらしい、彼しか出せない叙情的なサスティーン・サウンドが、とにかく気持ち良い。特に、ECMレーベルでの、ECM独特の深いエコーに乗ったジョンアバのギターシンセには、聴くたびに惚れ惚れである。John Abercrombie『Current Event...
僕は「チック者」である。チックを初めて聴いたのが、1970年代半ばだったから、2021年2月9日に逝去するまで、かれこれ既に半世紀、チックをずっとリアルタイムで聴き続けてきたことになる。よって、チックのリーダー作については、当ブログで全てについて記事にしようと思っている。現時点で、あと十数枚、記事にしていないアルバムがある。今日は、その中の「異色作」について語ろうと思う。Chick Corea...
チック・コリアのリーダー作の「落穂拾い」。当ブログに、まだ記事化していないチックのリーダー作を順に聴き直している。意外とソロ・ピアノ集が多く、記事化されていない。あまり興味が湧かなかったかとも思ったのだが、聴き直してみると、どのアルバムもチックの個性が散りばめられていて、聴き応えのあるものばかりである。Chick Corea『Children's Songs』(写真左)。1983年7月の録音。E...
チック・コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブは凄く相性が良い。ジャズ特有のファンキー色を限りなく押さえ、ブルージーでマイナーな展開を限りなく押さえ、硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し、現代音楽の様なアブストラクトな面を覗かせながら、メロディアスで流麗なフレーズを展開する。楽器は違えど、音の性質は同類の二人。Chick Corea & Gary Burton『Lyric Sui...
向井滋春は、和ジャズを代表するトロンボーン奏者の一人。1976年に初リーダー作『For My Little Bird』でデビュー。当初は、コンテンポラリーな純ジャズがメイン。しかし、1979年、約1年間、NYに在住した折にフュージョン・ジャズに触発される。そして、いきなり、フュージョン・ジャズに転身する。向井滋春『Spacing Out』(写真左)。1977年9月28日、日本コロムビア第1スタジ...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」を眺めていて、向井滋春のアルバムが目に入った。懐かしい。和フュージョン全盛時、もともと、トロンボーンの音色が好きなこともあって、向井滋春のフュージョン盤はよく聴いた。意外とトロンボーンって、フュージョン・ジャズに向いているんですよね。向井滋春『Hip Cruiser』(写真左)。1978年10月2~6日...
月刊誌「レコード・コレクターズ」2024年6月号の特集、「フュージョン・ベスト100 邦楽編」に挙がったアルバムを聴き直している。当時、ヘビロテで聴いたアルバムも多くある。当ブログに記事としてアップしていないアルバムも結構ある。当時の耳で聴いた感覚と今の耳で聴いた感覚、意外と変わらないのが面白い。松岡 直也 &ウィシング 『The Wind Whispers』(写真)。1979年の作品。...
1973年の再結成後、順調に内容のあるアルバムを2枚、リリースしてきた、マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。そろそろ「マントラの音志向」を確立するタイミングでもあった。The Manhattan Transfer『Pastiche』(写真左)。1976年12月から1977年9月の録音。1978年のリリース。ちなみにパーソネルは、Ti...
1973年、一旦解散したマンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)。その後、まもなく、リーダーのティム・ハウザーは、ローレル・マッセ、ジャニス・シーゲルと出会う。そして、アラン・ポールを紹介され、新生マントラを立ち上げることを決意、『The Manhattan Transfer (Atlantic, 1975) 』(左をクリック)で再デビュー...
マンハッタン・トランスファー(The Manhattan Transfer=以下「マントラ」と略)は、1969年にティム・ハウザー(Tim Hauser)が中心となり結成したジャズ・コーラス・グループ。マントラと言えば、1973年にティム・ハウザーをリーダーとして、アラン・ポール、ジャニス・シーゲル(1979年からシェリル・ベンティーン)、ローレル・マッセーの4人組という印象だが、これは再結成後...
シビアで硬派で「即興が命」の純ジャズを聴き続けた合間、耳休めにウエストコースト・ジャズを聴くことが多い。ウエストコースト・ジャズは、1950年代後半から1960年代全般にかけて、米国西海岸、ロスアンゼルス、サンフランシスコを中心に流行ったジャズの演奏トレンド。ハイテクニックを駆使して流麗で聴き心地の良いパフォーマンス、聴き手に訴求するキャッチーなアレンジ。「聴かせる」ジャズを旨とした、ジャズの演...
リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、バークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは、学者然とした「理詰め」の雰囲気が強い。ピアノの個性は、リリカルで耽美的、そして「多弁」。ハイテクニックを駆使して、多弁なフレーズを弾き...
ジャズ・インストを聴き続けた合間、耳休めに女性ジャズ・ボーカルを聴くことが多い。もともとジャズ・ボーカルは得意では無い。流石に、レジェンド級の、低めの声で唸るような、こぶし豊かな、日本で言う「演歌系」のような本格派の女性ボーカルは得意では無い。聴くには聴くが、申し訳ないが、ジャズ・ボーカルの勉強の為に聴くことがほとんどで、ジャズ・インストの合間の「耳休め」に聴くことは無い。合間の「耳休め...
現代のジャズ・シーンにおいては、ギタリスト人材が豊富に感じる。そんな中でも、突出した存在の一人が、ジュリアン・ラージ。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリストである。音の志向は、現代のコンテンポラリーなジャズ・ギターで、パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、過去のレジェンド級のコンテンポラリー...