雪穂は彼の顔を真っすぐに見つめると『はい』と、頷いた。「そうか…よかった」老紳士はニッコリと微笑んだが複雑な笑みだった。「大学は…?」探るように、彼は尋ねる。…
老紳士の後ろを俯き加減に雪穂は歩いた。ガラス張りのオフィスから2人の歩く姿は見えた。老紳士を驚きの眼差しで見る者は多かったが雪穂には訝しげな視線が向けられた。…
柴崎雪穂は大手自動車メーカーで事務員をしている。黒ぶちの眼鏡をかけきっちりと縛られた黒髪が彼女のトレードマークだった。「柴崎さん、これお願いします」『はい。わ…
マニキュアが入った袋を大切に抱えながら小走りで駅のロータリーへと行くと見慣れた白いミニバンが止まっていた。すぐに近寄り運転席にいたお父さんに手を振る。後部座席…
世奈の件で舞の心は沈みかけていたがしーちゃんの話を聞いて前向きに考えることにした。今は自分の気持ちを優先にして世奈にコンサートの話をするのは返って彼女を傷つけ…
「舞ちゃん、世奈ちゃんは?」しーちゃんに言われて初めて、舞は世奈の存在を忘れていたことに気が付いた。『あっ』慌てて辺りを見回すと遠くに世奈と菜緒ちゃんがいるの…
「え?しーちゃんとプライベートでも交流があるの?」菜緒は驚愕した様子で世奈で質問をする。世奈はうんと頷き声を潜めた。「うちら、しーちゃんの電話番号を知ってるん…
「そろそろ行こうよ」『うん!』開場時間よりもずっと早い時間だったがグッズの購入や他のファンとも話がしたかったために早めに会場入りした。コンサート会場に到着する…
「お父さんがしーちゃんを好きになるっていうより、舞がしーちゃんにゾッコンな気がする」世奈は不機嫌さを隠すこともなく舞に指摘する。一方の舞は確かに、しーちゃんを…
『お父さんに迎えに来てもらえることになったよ』しーちゃんに連絡をすると彼女はよかったねと返事をくれた。『お父さんがしーちゃんに会いたいってしつこくて…困っちゃ…
翌週の月曜日。舞はピンクの手袋をして学校へ登校した。学校の最寄に着くと世奈と待ち合わせをしている。『お待たせ』手を振りかけよると世奈が舞の手袋を褒めた。「それ…
世奈との電話を終えるころにはすっかり日が暮れていた。『え!?何時間電話してたの!?』独り言も呟きたくなるほどの長電話に舞は苦笑いをした。「舞!」ふと、下から自…
『しーちゃんってさぁ…本当にみんなには電話番号とか教えてないのかな?』舞は素朴な疑問を世奈に尋ねた。そんなこと世奈だってわかるはずはないのだが舞は確信を持ちた…
「舞ちゃんは唐揚げが好きなんだ」『そうなの!お母さんが作る唐揚げって本当に美味しいんだよ!』「たしか、お母さんってお料理教室の先生をやってるんだよね?」『そう…
自宅に戻るとお母さんと凜がパーティーの準備を進めていた。一目散にキッチンへと行くとお母さんの後ろから手元を覗き込んだ。『まだ唐揚げは作ってないの?』「揚げたて…
無事にケーキを購入しお父さんと共に帰路につく。「そういえばさ…」ふと、お父さんが言った。『なに?』舞はお父さんを見上げて返事をする。「舞のお友達のしーちゃんっ…
「あ、そういえばケーキってまだ買ってないよね?」お父さんがお母さんに話しかける。「うん。舞に買ってきてもらおうと思って」『え!?私の誕生日なのに私が買いに行く…
自宅に帰るとお父さんとお母さんがちょうど買い物から帰ってきたところだった。『おかえり!』「ただいま。ちょうどよかった」『今日のお昼何?』「ハンバーガー買ってき…
『あ、そういえば』「ん?」『今、レボスタと雑貨屋がコラボしてグッズを販売してるの知ってる?』「え?知らないけど」『前に、会社で舞の誕生日が近い話をしたら松原さ…
紗代ちゃんの役に立てることは喜びでもある。彼女が望むことは何でもしてあげたい。週末は舞の誕生日があった。「プレゼント買いに行くよ」舞と凛は隔週で土曜日も学校が…
『舞?』彼女の部屋をノックしてゆっくりと扉を開けると舞が楽しそうに電話をしていた。いつ気付くかとドア越しに舞を見つめる。「うん、うん。それでねミミちゃんのコン…
『ねぇ、琴美…』「ちょっと…浩くん」彼女は身を寄せる俺の体を力づくで離し膨れっ面をする。「ムードとか考えて」『ごめん』琴美は段取りに厳しく予定外のことはあまり…
昼休みになると倉本さんが元気よく珈琲を淹れて持ってきた。仕事を取られたような顔をして恨めしそうにそれを見つめる松原さんを俺は視線で宥めた。倉本さんが淹れた珈琲…
「ブログリーダー」を活用して、sayaさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。