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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

  • 思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(3)

    少年たちにとって、マツ子の存在は眩しすぎるものだった。好奇心を最大に膨らませながら、戸惑い、戸惑いの後に排斥のポーズをとった。学校が終わって家に帰るマツ子を追って、男子生徒たちは後方から囃し立てた。「メンス、オンス、メンス、オンス」二組に分かれて、単純な掛け合いを繰り返すだけなのだが、しばらくすると皆気が滅入ったようになって、声が小さくなった。喜市も、将太や三郎とともに村はずれの雑木林まで付いて行き、マツ子が振り返って駆け出すのを見送ったあと、それが目的だったようにクヌギの大木に近づいて、虫が舐めた樹液の跡を確認する。木肌に残る茶色のおがくずが、夜通し働いた昆虫たちの宴のあとだった。虫や動物に対する喜市の執着は、彼の生命の源でつながっていた。近くの枝に、まだカミキリムシが隠れていないか、足下の草むらにウマ...思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(3)

  • 思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(2)

    日が傾きかける頃、喜市は川漁師の父と連れ立って、カエル獲りに出かけた。ライギョの生餌にするため、こぶりの青蛙が必要なのだ。沼に続く湿地には、蛙だけでも何種類も生息している。ニホンアマガエル、ニホンアカガエル、トノサマガエルに、食用蛙とも呼ぶウシガエルもいる。そのあたりには、他に蛇や蜥蜴もいる。草の実や稲穂が間近にあるから、鼠も隠れている。だが、川漁師の目的は蛙だけである。そのカエル獲りには、喜市が欠かせない存在なのだ。名人喜市は、濡れた草むらを中腰で進む。人の気配に驚いた蛙が、あちこちからピョンピョン飛び出す。その瞬間、喜市もまた蛙のように地面を跳び、着地したばかりの生餌を手で押える。捕らえた蛙は、竹で編んだ平たい魚籠に入れる。蓋を閉じ、次の獲物を狙って、再び忍び足で前に進む。追っ手の気配に怯えた蛙が草陰...思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(2)

  • 端午の節句は終わったが

    5月5日はこどもの日、行事的には端午の節句ということになる。みなさんのブログを拝見していても、この日の前後には鯉のぼりが泳ぐ雄々しい画像がたくさん登場していた。関東北部のある地方では毎年ジャンボ鯉のぼりが話題になる催しがあり、ブロ友さんとNHKのニュースで同時配信していたので大いに興味をそそられた。それにくらべるといささかショボい話で恐縮だが、我が家でも孫の節句を祝ってベランダ用の鯉のぼりを購入し昨日まで泳がしていた。実はこどもの日と誕生日が近いので取り付けたままにしていたのだが、昨日やっと晴れたので取り外しの作業をした次第である。しかし、この間よく雨が降ったよね。鯉のぼり自体はナイロン製だから濡れてもすぐ乾くのだが、かなりの風がなけtれば泳がない。それでも上部に取り付けた矢車と金飾りがクルクル回るのを見...端午の節句は終わったが

  • 思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(1)

    喜市は、夏が一番好きだ。川漁師の父親とともに、近くの沼で雑魚や小海老を採り、また、さまざまの仕掛けを使ってライギョやウナギを獲る。きらめく夏の日々は、喜市にとってわくわくする時間の連続であった。昭和二十年代の半ば、喜市が小学五年生になった頃のことである。沼の北西で、事件が起こった。それは新聞に載るほどの出来事ではなかったが、ふだん平穏な生活に慣れている村人に、めったに無い話題を提供した。とりわけ子供たちは、興奮のために夜寝つきが悪くなった。その事件は、彼らの村から林の中を通って沼に至る坂道の途中で起こった。一人の中学生が狂犬に遭遇し、勇敢にも犬を撲殺したのである。犬は灰色の中型犬で、口から涎を流していたという。目は黄色に濁り、坂の上からまっすぐに中学生に向かってきた。中学生は道端に転がっていた棒切れを拾い...思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(1)

  • 新企画『ととのいました』(18)

    〇「ひきこもり」治療とかけて「不親切な役所」とときますそのこころは「窓があるのに(心の)窓が開かない」でしょう〇「生成AI」とかけて「いのしし」とときますそのこころは「暴走すると手に負えない」でしょう〇「村上春樹」のノーベル賞とかけて「大勲位」とときますそのこころは政治が優先されるが「文学としては最高レベル」でしょう新企画『ととのいました』(18)

  • 思い出の短編小説『猫』

    素封家の新座右衛門には、なかなか跡取り息子ができなかった。二十歳の時に嫁に来た最初の妻は、五年間生活を共にしたが子ができずに離縁した。二度目の嫁も、妊娠はするのだが五か月目を待たずに流産し、二度三度と失敗して自ら実家に出戻った。新座右衛門に子種があることは明らかだから、すべては女の側の問題として片付けられた。三度目の嫁にも子ができないと分かった時、三十五歳を超えて焦りの見える当主は、飼い猫のタマに疑いを持った。人づてに、猫が好きな女は子ができにくいと聞かされたからだ。タマはもともとこの家で飼われている三毛猫だ。最初の結婚のときから新座右衛門の家にいたから、猫好きの嫁が連れて来たというわけではない。それでいて嫁が猫好きに見えるのは、いつの間にかタマがすり寄って甘えるようになるからである。タマには人の心を蕩か...思い出の短編小説『猫』

  • 紙上『大喜利』(21)

    〇「ウクライナの反転攻勢はいつ始まるんだ?」「ワグネルの創始者ブリゴジンによればもう始まっているらしいですよ」〇「そういえば、クレムリンへの無人機攻撃もその一つと言ってたな」「レーダーをかいくぐって良く上空まで近づけましたね」〇「一説ではワグネルがロシア国内から飛ばしたんじゃないかと・・・・」「ブリゴジンは武器・弾薬の不足でプーチンや国防省を激しく非難していましたからね」紙上『大喜利』(21)

  • ポエム355『薔薇の矜持』

    画像は(季節の花300)より赤い薔薇クリーム色の薔薇並んで咲いて共に美しいこの美しさは薔薇だけに授けられた気品もてはやされながら高ぶることのない矜持赤い薔薇には赤い薔薇の気品クリーム色の薔薇にはクリーム色の薔薇の矜持並んで咲きながら互いに邪魔しない紅い薔薇にもクリーム色の薔薇にも犯しがたい美しさ5月の抜けるような青い空の下競うでもなく誇るでもなく二つの薔薇が咲いているポエム355『薔薇の矜持』

  • 川柳『代理戦争』

    〇米中対立ガーナは日本に援助させ(中国の債務の罠にはまったガーナなどアフリカ諸国へのテコ入れ)〇北朝の核脅威には韓国を(バイデンは韓国の尹錫悦大統領を訪米させて金正恩に対抗)〇バイデンの足元を見る中露かな(チキン・レース=次期世界大戦の脅しを仕掛ける)〇ウクライナは欧米兵器で代理戦争(プーチンのロシアはワグネル=民間軍事会社が代理)〇今の世はフェイクニュースの海と化し(トランプが元凶)〇名人戦藤井聡太が連勝で(渡辺明魔王はもう心が折れている)〇13試合連続ヒットにまさ(吉田正尚)かねえ〇赤い靴下(レッドソックス)穿いて広角打法冴え(吉田正尚に全米注目)〇八村(塁)は蜂のように刺し蝶のように舞う(ダンク&スリーポイント・シュート)〇石川佳純が引退愛ちゃん二世と言われたが(昔日の感)川柳『代理戦争』

  • ポエム354『壁』

    2011.3.11の東日本大震災から12年2か月あの時石巻にもに水の壁が出来たその6年も前に病を押して指一本でキーボードを叩き自意識の壁に挑んだ『自分自身への審問』図らずも死者との壁を予感しようとは辺見庸よあなたは今何を思う五体が朽ちても魂だけは残っているはずあなたは沈黙の壁は存在しないもう一度聞きたいあなたの言葉を故郷石巻市の海を自在に語ってくれないかポエム354『壁』

  • 紙上『大喜利』(20)

    〇「おい、大谷翔平が猛打賞&2盗塁、トラウトが2発も…“なおエ”だってよ」「ご隠居、これからは救援というのをよしましょう。休演にしちゃうんだから・・・・」〇「AI論議が盛んにおこなわれているが、この先どうなると思う?」「あっしにはわかりません。藤井聡太6冠を諮問会議に呼んだらどうでしょう」〇「フィリピンから強制送還された強盗指示の容疑者4人はどうなった?」「さあ、ルフィに聞かないと何もわかりません」紙上『大喜利』(20)

  • ポエム353『未来という危うきもの』

    ミライへ育む予算ある広報に載っていた言葉だ子供たちの未来へ予算を増やしていくという意味だろうがミライへ育む予算・・・・といわれると自信無げに聞こえる目の前に組まれた予算ではなくこれから育む予算のようだ意気込みはいいが当てにできるのだろうか市の行政にまやかしはないだろうが岸田総理の「異次元の少子化対策」には期待より疑念ミライと片仮名で表記される違和感はキツネとタヌキの親分子分に見えるからここで本気にならないと子どもの数はどんどん減っていくミライがミイラにならないように総理も市長さんも頼みますよポエム353『未来という危うきもの』

  • 紙上『大喜利』(19)

    〇「おい、屋根裏の散歩者が捕まったらしいな」「ご隠居、まさかの江戸川乱歩ですね。アパートの仕切り板を壊して隣の女子大生の部屋を盗撮してたんですから」〇「それだけじゃないだろ?」「知ってますけど、それ以上はネ」〇「ところで、月面着陸は失敗したようだな?」「惜しかったですね、寸前で燃料が切れたらしいですよ」〇「民間企業で初めての月面着陸は来年きっと成功するよ」「月周回軌道から着陸予定地点まで近づけたデータは貴重ですよね」紙上『大喜利』(19)

  • 新作短編小説『指』

    銀座にある東方画廊での従業員同士の会話。「ちょっとさん、さっき外国人のお客様が入ってきたんだけど、あなたが爆睡していたので帰っちゃいましたよ」「あら、やだ。起こしてくれればいいのに」「それがさ、ぼくが起こそうとしたら唇に指をあてて制止するんだ。寝かせておけと言われちゃどうしようもない」「へえ、いくつぐらいの人?」「40歳ちょっとぐらいかな。ブラビに似た人だった」「わオ、起こしてよ。ほんものだったらどうするのよ」「ぼくだって、蹴り飛ばしてやりたかったさ。客逃したかもしれないぜ」7月の昼下がりの事である。ちょっとさんと呼ばれた従業員は、何か用事を言いつけられると必ず「ちょっと待って」というのでつけられたあだ名である。画廊主の友人の娘で、最初はアルバイトで入ってきたのだが、ちょっとさんの知人がボチボチやって来て...新作短編小説『指』

  • ポエム352『半世紀ごしの思い』

    おいしい味を消したくないからぼくはお茶を飲まない初めて就職した会社の社員食堂で同期入社のその男はそう言った意想外の独白を聞いて頭の中が混乱したえ?そんなこと考える人いるの?緑茶の旨味に慣れ親しんできた身にはとても耐えられない発言だったその人のせいとは言わないが入社して一か月で退職した紆余曲折のあった人生だが昨夜ふとあの時の感覚を思い出した半世紀ごしの感覚がまだ納得のいかないまま残っていた人間っておかしな生き物だねこんな些細なことを引きずってきてあと何年あるかわからない余生をかさぶたを抱えたまま生きるのだろうかポエム352『半世紀ごしの思い』

  • 紙上『大喜利』(18)

    〇「大谷翔平の5号ホームランは幻に終わったな」「ヤンキースのジャッジがジャンプして捕ったんですよね」〇「それだけじゃないぞ、グラブで弾き落として素手でキャッチしたんだ」「一瞬落としたかと思ったのにしっかり掴んでましたね」〇「おまけにジャッジは6号ホームランだ、すごいね」「ご隠居、ジャッジにほれ込んでますね、だけど大谷は2本差ならまだいけますよ」紙上『大喜利』(18)

  • 新作短編小説『耳』

    別部刑事は容疑者のアパートに踏み込んだ際、包囲網をすり抜けられるという失態を演じた当事者である。容疑者のヤマワキは同棲していた女性の首を絞めて殺し、深夜JRの線路に死体を横たえて轢死に見せかけた知能犯でもある。遺体の検証は困難を極めたが、司法解剖によって轢死する前に遺体の一部に皮下出血の痕跡があることがわかった。所轄署の刑事4名は逮捕状を取るなど準備を整えて翌々朝容疑者のアパートを急襲したのだが、すばしっこいヤマワキの動きに幻惑されて取り逃がしたのは前述したとおりである。すぐに非常線を張ったもののヤマワキは網にかからず、行方知らずの状態が幾日も続いた。警察への批判が相次ぎ、まもなく公開捜査に踏み切った。モンタージュ写真を載せたビラを大量に刷って主要駅やバスターミナルで配布する一方、テレビや新聞で公開手配し...新作短編小説『耳』

  • ポエム351『時計草』

    トケイソウ画像は(季節の花300)より時計草は大地の腕に巻いた腕時計めしべにはお洒落な長針と短針スイス製の奇抜な職人の最高傑作どうやって時間を見るの?現代人はいつも「時」に縛られているこれは時を忘れるために創った時計だ大地の腕に巻いた腕時計には聖なる愛の花言葉が送られた八月の太陽にも平然と咲く大地の花大地はなんて素敵な存在なんだこんな腕時計を贈られて時を忘れられたらあなたにも贈呈します、とスイスの奇抜な時計職人の元にはまだ9個の腕時計が残っていて遺言と共に保管されているそうだポエム351『時計草』

  • 紙上『大喜利』(17)

    〇「腹立つなあ」「わかった、原辰徳監督にハラ立っているんでしょう」〇「あれだけの戦力を持っているのに中日にも負けて最下位だぞ」「どうしてクビにならないのか不思議ですね」〇「佐々木朗希は山本由伸に投げ勝ったな」「長いイニング163キロのストレートを投げさせて労基法違反じゃないですか」紙上『大喜利』(17)

  • ポエム350『菜の花』

    菜の花畑(季節の花300)一面にひろがる菜の花畑きれいに咲いた菜の花を見ているうちにやがて実になって油を出すんだよなどこに油が潜んでいるのだろうと疑問を持ったそういえば胡麻でも大豆でもエゴマでも植物の種はみな油分を含んでいるんだ子孫のために必要な油なんだろうな将来子孫が生きるために歯車をまわすんだこうした植物の栄養をいただきながら人間はその生態を真似するだけ脂汗をかく油を搾られるすみません何一つ実態の伴わない空虚なことばプラファスナーでも飛行機でも先生は自然界人間は飛びぬけた真似し小僧のほっかむり発明だ特許だと我が物のように主張して自然界から搾取するだけまあいいさ花や実に畏敬を抱き称え続ける謙虚さがあるうちは菜の花の黄色は幸運のシンボル菜の花畑を眺めて今日も幸せポエム350『菜の花』

  • 紙上『大喜利』(16)

    〇「おい、サクラも終わったな」「ご隠居、連日花見に行ってましたがどこが良かったですか」〇「どこの桜を見てもクラサを感じてな・・・・」「やだやだ、ご隠居もっと陽気にいきましょうよ」〇「千鳥ヶ淵を見てみろよ、戦没者を慰霊する場所だぞ」「そりゃそうですけど、楽しむだけのために植えたサクラの名所がたくさんありますよ」紙上『大喜利』(16)

  • ポエム349『シャガに雨』

    シャガ画像は(ウィキペデイア)よりシャガの咲く季節になってこの花は幾多のイクサを鎮撫して長い歴史を見守ってきた花だと実感するなにかの縁でこの地に移り住んで山襞に群生するシャガを愛でてきたが天然の要塞を彩るにふさわしい慰撫の花だとも戦にスポットを当てれば歴史はイクサ少ない耕作地を耕して実りを得た人びとは歴史からは記録をたどれない山では狩猟海では魚や貝や海藻をもくもくと採る生活を営んできた関東武士が開府した六百年前の記憶の裏でなんと哀れなイクサ人よ墓もつくれずに野ざらしとなるしゃれこうべいつの世にも繰り返される闘争の成れの果て安らかに眠れ鎮撫の花シャガが休みなく咲く小止みなく降り雪ぐ梅雨前(さき)の雨ああ忍耐の花シャガに雨が降るポエム349『シャガに雨』

  • 裏山にシャガの花

    裏山に目を転じるとシャガの花がポツポツと咲き出した。これがあっという間に群生になるのだから、うかうかしていられない。追いかけるように山吹の花が光を集めている。山吹色には縁がないが、なんとなく安心な古風植物。ちなみに上記画像は2020年5月初めにアップしたものです。今年は20日ばかり早い感じです。(春・2)裏山にシャガの花

  • キウイがくれる元気の素

    冬の間ごぶさたしていた庭畑は、ほぼ野生化していた。クワを入れていないので、去年の野草や花たちが好き放題に咲いている。スイセンは西洋スイセン、スズランスイセンが花を競っていたが、あまり注目されないうちに季節が過ぎた。ふと目の高さに新芽をつけたキウイの枝が・・・・。冬の間に追肥をあげなくちゃと思いつつ、何倍にも薄めた液体肥料で事を済ます横着者。それでも自然な落葉をたい肥にして新芽をつけてくれた。葉っぱの下にはもう花の蕾もビッシリと。これが実になるのだからけなげなもんだ。蔓は上へ下へと勢いのまま伸びるから、地面を這う枝は支柱を入れて持ち上げなければなるまい。いやでも元気を見せなければならない季節の到来だ。(春・1)キウイがくれる元気の素

  • ポエム348 『撫子の歌』

    撫子の花画像は(季節の花300)よりなでしこは撫子色に咲くむかしから変わらない優しい色しとやかで慎ましくお嫁さんに最も望まれた女性の象徴ひとの通る散歩道の傍らでくさに紛れてひっそりとうえを見る者には気づかれないしたを見る者には嬉しい足もとの花おもいでは数知れずいまさら披露するのは恥ずかしいあなたに学んだ生き方だからあなたにだけは耳打ちするねなでしこさん撫子さんまた会えるといいねさようならポエム348『撫子の歌』

  • 川柳復活5 『大リーグ開幕』

    〇大リーグ開幕大谷(翔平)零封も逆転負け〇いつか来た道天使はいるのかエンゼルス〇弱すぎるリリーフ陣に特大ため息〇9回まで投げなきゃ勝てない?嘆き節(大谷ファン)〇エンゼルスはジャパン(WBC)のストッパー誰か買え〇大谷の降板待ってひと仕事(相手チーム)〇吉田正尚(レッドソックス)マルチヒットで好調維持〇三振をしない男の異名も冴え(吉田正尚)〇ヌートバー(カージナルス)もヒットを打ってクールな顔(ペッパーミル卒業)〇千賀(メッツ)に期待ケガ完治して4番手先発?川柳復活5『大リーグ開幕』

  • ポエム347『時告げ鳥』

    東の空が明るみはじめると田舎の集落は賑やかになるコケコッコーウウウー雄鶏が首を伸ばして声を振り絞るオンドリャー早く鳴かんかいボスが若いオスをひと睨みするとどの家の鳥小屋からも騒がしい足踏みが始まり時告げ鳥の声で夜の幕を巻き揚げられるつられて若い女房たちが夜具を抜け出し竈に松葉を突っ込んでマッチで火をつける細く割った薪をくべ火吹き竹で風を送るいっせいに立ち昇る白い煙の揺らぎ何百年続いてきた万葉の風景めんどりは卵をポトンと生み落とし腹が減ったと地面をつつきまわるああ夢の中のことではなくそのままでいい目覚まし時計など必要ないよ時告げ鳥がいるじゃないか少々眠い目をこすりながら火加減を見るやがて重い蓋を突き上げる湯気の匂い米が飯になる甘いかおり腹がグーッと鳴りこちらも時を告げるああなんという健康な集落よ忙しい世の中...ポエム347『時告げ鳥』

  • 紙上『大喜利』(15)

    〇「ロシアがベラルーシに戦術核を供与したな」「戦況が行き詰ると核をちらつかせる、プーチンの常套手段でしょ?」〇「心配しなくていいのか?」「ご隠居、ものごとはどこでどう変化するかわかりませんからね」〇「英国がウクライナに劣化ウラン弾を供与したのも問題だろ?」「ロシアに口実を与えましたからね。紙上『大喜利』(15)

  • ポエム346『絶望の海』

    絶望の海に青い月が昇る海霧が後退し混沌の海が明らかになる人間は何万年もかけて蠢いてきたが遂にまた絶望の海を目前にしているもっと賢く進化すると夢見て来たのに手にしたのは究極の鉄器だった火と石斧に歓喜の涙を浮かべ踊り狂った記憶はまだ能皮質にあるのに月は嵐の予感に震えている海霧は跡形もなく消え去ったというのにますます濃くなる原始の海波もなく絶望の気配だけが満ちている青い月よ三日月のまま照らす月よ人間はまた原始の海に舞い戻ってきたふたたび箱舟を造る気力などあるわけはなくただただ究極の鉄器の感触を撫でさする絶望の海に青い月が昇る何万年も蠢いてきた記憶も今夜雲散する希望の欠片が残るかどうかなどもはや意中にない月夜が青く広がるポエム346『絶望の海』

  • 紙上『大喜利』(14)

    〇「WBCは世界一を勝ち取って国中大フィーバーだけど、その後いく日焼き直し画像を見させるんだ?」「そういうご隠居も朝から晩まで見ていたじゃないですか」〇「翠富士は連日がんばっているけど2連敗しちゃったな」「大相撲ですか、ドングリを並べたようなものですから誰が転がっても不思議はありませんよ」〇『この次はサッカーで盛り上がるか」「そうですね。ウルグァイ戦に三苫が先発するそうですし」紙上『大喜利』(14)

  • 新作短編小説『炭焼き善治』

    え~、この度はコンコン亭しん庄の口演によくぞおいでくださいました。ざっと見まわしますと、チケットの半券を握りしめたお客様がちらほらと今か今かと待ちわびておられる大盛況で、コンコン亭も精いっぱい努めさせていただきますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。さて、秋田県の海沿いの村に炭焼き善治という男が居りまして、本日はこの男の噺を披露させていただきたいと存じます。善治は子供のころから神童と呼ばれた頭のいい男の子でしたから、村の中学校の校長先生の推薦で県の奨学金を与えられ無事に高等学校を卒業いたしました。しかも卒業前の二月には東京一の大学を受験しらくらく合格したという顛末でございます。郷里の期待はエリート官僚とか将来ノーベル賞を取れるような科学者になってくれることを願っておりましたのですが、二年後には誰も予想も...新作短編小説『炭焼き善治』

  • 紙上『大喜利』(13)

    〇「おい、シリコンバレー銀行が破綻したぞ」「へっ?シリコンで作ったバレーボールがどうかしたんですか」〇「おまえ、何も知らないのか。影響でクレディ・スイス銀行も危機に陥ったらしい」「ご隠居、知ってますよ。万が一救済できなかったらリーマンショック以上の混乱が起こるんでしょう?」〇「いよいよ、タカ&トシの出番か」「欧米か、ですものね。特にヨーロッパの弱体化は避けられないでしょう」紙上『大喜利』(13)

  • 思い出の短編小説『鐘鳴山』

    水戸の城下町を少し離れたところに、鐘鳴山と呼ばれる海抜六百数十メートルの山がある。この山の頂上近くに小さな沼があって、そのほとりに古風な社がひっそりと祀られている。地元では「鐘鳴大明神」と呼ばれ、あたりには古木が鬱蒼と生い茂り、昼も暗く陰森の気を漂わせている。沼は碧く、深くしずかに死の色をたたえて、大蛇でも棲んでいるのではないかと思わせるほどだ。沼の縁の一方には、軒が傾き苔むした社の影が張り付くように映り、組み合った枝の間から吹き入る風が、ゴウゴウと重い響きをたてていた。凄まじい気配に恐れをなしてか、普段はほとんど人影をみることはない。ただ、陰暦七月十五日の祭礼の日ばかりは例外で、近郷の老若男女がこぞって参拝に訪れる。その日になると、社の前では花車や見世物などが催され、夜になると麓から頂上まで提灯や松明の...思い出の短編小説『鐘鳴山』

  • ポエム345『ハクモクレンが眩しい』

    ハクモクレン画像は(季節の花300)よりバス停の近くに白木蓮の花が咲いているバスはなかなか来ない時刻表を確かめるともう10分遅れている振り返って見上げる白い花が眩しいバス停に着く寸前にバスが行った後だからもう30分ほど次を待っているハクモクレンの花を何度見上げたか太陽にまみれて焦げそうなほど眩しい最初は一人だったがいつの間にか列ができた後ろの若い男は時刻表など見ないスマホでバスの現在位置を知っているのだろうそれにしても遅延状態じゃないか正午近くに出かけるのは花見だろう陽気に誘われてサクラ見物に出かけるのかなバスが到着しても車内は混みあうはずだハクモクレンがこんなに綺麗なのにおおやっと来たか遅延バス思った通り超満員だ窓越しに見ても輝いてるよハクモクレン君のおかげでイライラしないで済んだよポエム345『ハクモクレンが眩しい』

  • 思い出の短編小説『リュウジの里帰り』

    宮城県の栗原から福島県の勿来へ嫁いだ佐藤ふみ子は、このところ夜中に胸騒ぎのようなものを感じて目を覚ますことが多かった。正確にいうと、胸騒ぎというより右胸のあたりに得体の知れないものが這い上がってきて、ざわざわと蠢いているような感覚なのだ。(まさか、ムカデじゃあんめいな?)ふみ子自身はムカデなど見たこともないのだが、船乗りである夫が寄港地の東南アジアで出合ったという大ムカデの話が忘れられないのだ。暗闇の寝室でひとり目を凝らすふみ子は、ひとまず夏掛けから手を出して胸元をさぐってみた。洗いざらしの木綿の浴衣が、ざらっとした感触を指の腹に伝える。はだけた肌まで指先をのばすと、乳房のあたりがしっとりと湿り気を帯びていた。勿来は海に近いせいか、栗原とは比べ物にならないほど温暖ではある。この夜も六月のはじめというのに汗...思い出の短編小説『リュウジの里帰り』

  • 紙上『大喜利』(12)

    〇「ワールド・ベースボール予選は3戦とも大差だな」「ご隠居、第一戦以外は先制点を取られましたけどネ」〇「韓国戦はもっと接戦になると思ったぞ」「ダルビッシュが打たれたけどあっという間に逆転しましたから」〇「それよりチェコには驚いたな、先制されるし球団(アマチュアらしい)があるとは知らなかったぞ」「そりゃ、ご隠居だけじゃないでしょう。逆転するまでは栗山監督も心配そうでしたよ」紙上『大喜利』(12)

  • 思い出の短編小説『豹のエチュード』(2)

    狭い階段を襟首から吊るされるような形で引き上げられた。コットン生地のブルゾンが、まるで拘束衣のように体の自由を奪っていた。偶然そうなったのか、それとも喧嘩慣れした彼らの技の一つなのか、二本の腕が後ろにまわされて固定されたような束縛感だった。隆也に恐怖心がないわけではない。しかし、ブルゾンに自由を奪われている感覚が、間抜けと言おうか冷笑に値する出来事に思われた。現役時代には、検察事務官の一人として検察庁の業務の一端をになってきた。検察官とともに取り調べの実務に当たったり、実体的真実の立証や適正な公判手続の確保を全面的にサポートするというのが任務だ。取調室の一隅で、検察官の取り調べに立ち会ったことも数知れない。後には矯正局に所属して、受刑者の自立に寄与する仕事に邁進した。年に一度、受刑者がつくった家具や木工品...思い出の短編小説『豹のエチュード』(2)

  • 思い出の短編小説『豹のエチュード』(1)

    隆也は向かいの10円麻雀と書いてある看板をぼんやり見ていた。彼の年齢は六十二歳、いわゆる団塊の世代と呼ばれる年代に属していた。長年勤めた国家公務員を定年退職し、その後ニ年間の外郭団体勤務も先月末で満了となったところだった。(新宿へ行ってみよう)何かと厳格さを問われる身分から解放されて、心が軽くなるのを感じていた。緊張が緩んだこともあり、漠然とした期待に引き寄せられるようにミラノ座前の広場に来ていた。西武新宿線の野方に住んでいる彼は、休みの日の愉しみといえば将棋のテレビ対局にかじりつくか、新宿で映画を観ることぐらいだった。二度ほどコマ劇場で歌謡ショーを見たことがあったが、それらは田舎から出てきた母親を喜ばせるためのもので、彼の趣味というわけではなかった。最初に母親が上京したとき、大通りに面した「すゞや」とい...思い出の短編小説『豹のエチュード』(1)

  • ポエム344『チューリップのまどろみ』

    チューリップ画像は(季節の花300)より咲いた咲いたチュー―リップの花があたまの中で唱歌が鳴りひびくそうか埋めたままの球根が花開くころだ億劫がらずに庭へ出てみようかおう咲いた咲いた見事なもんだ季節にうながされてみな一斉にだけど不思議だなあまだまどろんでるよ咲いては見たもののまだ眠い眠い、と遠くオランダから渡ってきた原産地ものだぞ日本の土に埋められて目覚めさせられたがどういうわけか眠気が取れないようだ起きているように見えてまどろむチューリップわかった花粉が飛んでいるせいだ原産国の空気とは全くちがうんだろう眠気の元は花粉のせいだったのかしっかり目を見開いていたいが眠いんだなポエム344『チューリップのまどろみ』

  • 思い出の短編小説『やもめの大往生』

    私鉄駅から徒歩数分の場所にある老朽アパートのオーナーがとうとう亡くなった。太平洋戦争では予科練に憧れていたが、15歳に達していなかったのでやむなく断念したという愛国少年だった。二年遅れて海軍に入隊し、南方戦線で補給任務にあたっていたものの、アメリカ軍の爆撃を受けバシー海峡に六昼夜漂ったという戦歴を刻んでいる。九死に一生を得て帰還してからは、親の残した土地に木造のアパートを建て、結婚もして妻とともに長年アパート経営に専念した。町内会の役員として奉られたこともあったが、妻亡きあと70歳を目前にある会社の共同経営に参加し、見事に失敗したところからいっぺんに権威を失っていた。単に事業が行き詰まっただけなら名誉をなくすこともなかっただろうが、その事業がアダルト・ビデオ制作会社だったとバレて家主の信用はがた落ちになっ...思い出の短編小説『やもめの大往生』

  • 紙上『大喜利』(11)

    〇「柿の種埋没したりピーナッツ」「ご隠居、いきなりどうしたんですか。木の芽どきにはチト早いですよ」〇「切りつけ事件が多発だな」「なるほど逼塞した社会に埋没したピーナツがいきなり浮上した・・・・」〇「近くの風呂屋も廃業したぞ」「ゆでだこの浪曲ももう聞けませんね」紙上『大喜利』(11)

  • 思い出の短編小説『こっちへおいでよ』

    迂闊といえばうかつだった。歩道で自転車にぶつかられて転倒するなんて、まったく考えてもいなかった。高校生が人混みを縫うように飛んできて、避ける間もなくボクの腹めがけて突っ込んだのだ。救急車で運ばれ、病院の手術室に横たわるボク。倒れた拍子に頭を打ち、脳挫傷、硬膜下血腫をおこしたらしい。もちろん昏倒以後のことは意識にないはずだが、どういうわけか知っているのだ。鴉の眼といったらいいのか、天井の高さからボクがボクを見ている。ボクはたくさんの白衣に囲まれて、ベッドに括りつけられていた。煌々と輝く手術燈に照らされて、ほとんどボクの命脈は尽きかけているようだ。救急車で運ばれているときは、しばらくスティービー・ワンダーの「アイ・ジャスト・コールド・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー」が聴こえていた。ヘッドホーンから漏れていたせい...思い出の短編小説『こっちへおいでよ』

  • ポエム343 『春雷は季節のつかい』

    花粉で空が黄色くなるとどこだか見えない場所で痴話げんかが始まるあんた雪女にも気があるんでしょう女神の言いがかりに男神が目を三角にするまた季節の発作が始まったかなに誤魔化してるのよこの浮気者手元にあった鍋やフライパンを投げつけるガラガラドシャーン見えないのをいいことになんていう癇癪持ちなんだ下界じゃ痴話げんかみたいなんて言ってるぞみっともないからやめようよ雷神の子供が入学前のお稽古を始めた事にしようそうそう突然鳴り響くのは雷神のお稽古子どもだから長続きしないゴロゴロ音だけでもうどこかへ行っちゃったとわたしたち調子がいい夫婦ねでもそろそろ引きどきねわたしの気も収まったことだしほんとに春が来るんじゃないかしらポエム343『春雷は季節のつかい』

  • 思い出の短編小説『鳥を呼ぶ女』

    秋の高空に、忘れ柿が三つ浮かんでいた。山梨県の長坂町に建てた別荘に妻を移り住ませて、二年目に見る風景だった。「みゆきさん、あれを見てごらん」松村は道端にサイドカーを停め、傍らの妻に指差してみせた。「・・・・ほら、柿の実が陽を受けて輝いているよ」すると、ぽうっと空を見上げていた妻が突然側車から降り、柿の木に向かって右手を挙げ小さく弧を描き始めた。「あの子、ずうっとわたしに従いてくるわ」なんのことか分からず、松村は妻の示す空の一角を凝視した。柿の実は依然としてそこにあった。「ああ、舞ってる舞ってる・・・・」ほとんど葉の落ちた柿の枝が大手を広げる上空を、いつの間に現れたのかトンビが輪を描いていた。妻のみゆきは、トンビの動きに合わせるようにゆっくりと腕を回す。ヴァイオレットのセーターから覗く白い手の指に、昼下がり...思い出の短編小説『鳥を呼ぶ女』

  • 紙上『大喜利』(10)

    〇「アメリカじゃUFOが公聴会で話題らしいな」「そう、空飛ぶ円盤と呼んだ頃は情報をひた隠しにしていたのにね」〇「そう言えば、中国は優秀な空飛ぶ自動車を開発したらしいじゃないか」「ご隠居、それはUFOじゃないですからね」〇「シャンシャンが中国へ返還されたな、涙目で見送る人もいて」「後ろ姿を見た人はバックシャンだと喜んでいましたよ」紙上『大喜利』(10)

  • 思い出の短編小説『たった一人のグランプリ』

    三田村ソラは、スタート地点に向かいながら、武者ぶるいをした。長い直線とカーブのきついバンクを抱えた立川のスタンドが、目の前にひろがっている。顔見せに一周した時とは違った緊張感があった。(いよいよ、この日が来た・・・・)ソラは両手で軽く頬をたたいた。同じスタートラインに立つのは、各地を転戦してきた先輩と数名の新人たちだ。このレースに出走を斡旋された選手が、九人順に並んでいる。ソラは第8コースからの発走だ。戦法はすでに頭にある。できれば自在に動ける中段につけて、あとはラインの出方を見て捲るつもりだった。(俺には誰にも負けないアシがある)競輪学校の卒業記念レースで、並みいるライバルを退けた自負もある。デビュー戦での苦戦を予想しながらも、ぎりぎり差し切るシーンを何度もイメージトレーニングしてきた。(冴子さん、見て...思い出の短編小説『たった一人のグランプリ』

  • ポエム342 『カルミアに魅せられて』

    (カルミアの花)(季節の花300)よりお菓子の国からこぼれ落ちたのか色も形もちがう花弁のひとひらよ舌の上に載せると溶けてしまいそうな米菓子江戸時代から伝わる金平糖もまじっているたしかに優美な女性のようでもある大きな希望の花言葉も似合っているだけど野心や裏切りも裏表?なぜか人間の二面性を見るようだ葉っぱに毒を持つアメリカシャクナゲこどもの夢のお菓子の国では今もままごとの真っ盛りこのまま見守ってくださいねさあどうぞ召し上がってくださいなおいしいおいしいカルミアよ舌の上に載せると雪のように消える白いお菓子と金平糖よポエム342『カルミアに魅せられて』

  • 思い出の短編小説『幽霊船』

    ジョージのクルマは、幽霊船と呼ばれていた。1960年代の大型キャデラックで、塗料の剥げかけたツートンカラーの車体がくたびれて見えたことが一因だった。そのキャデラックは、毎週金曜日の夜に銀座七丁目の路地裏に現れた。ほの暗いクラブの前にやっとたどり着いたというように停められ、なんとも厄介な印象を与えていた。クラブの真向かいには花屋があり、若い店主は以前からそのクルマを気にかけていた。週末の人通りの多い路上を大きな図体が占領しているものだから、近辺の飲食店や輸入雑貨店などが影響を受けているのだ。客足だけでなく、本来なら店の入り口に横付けして納品したい業者なども、わざわざ重い荷物を台車に積み替えて運ばなければならなかった。宅配便の運転手を始め他の業者とも顔見知りだったから、花屋の店主は彼らとたまには愚痴を言い合っ...思い出の短編小説『幽霊船』

  • 紙上『大喜利』(9)

    〇「春が来たと思ったらまた冬に逆戻りだな。これが三寒四温というやつか、」「え?ご隠居がまともなこと言うと地震が揺らぎますよ」〇「新型コロナの感染者が減り続けてるな」「へえ、ご隠居の毛羽立ったマスクもやっと外せますね」〇「ウクライナにはなかなか春が来ないな」「そうですね。侵略者が兵器産業とズブズブですから」紙上『大喜利』(9)

  • 思い出の短編小説『遮断』

    宮島大輔は病院のベッドに横たわっていた。苗場でスキーをやっていて、突然進路を変えた初心者を避けようとして転倒したのだ。間一髪、衝突は免れたが、原因となった若い女は、周囲の者が集まって来ると早々に姿を消していた。クソッと力んでみたが、大腿骨に違和感があった。その時点では大した痛みを感じなかったが、利き足全体が硬直したようになり、その場で立ちあがることができなかった。程なく駆けつけたレスキュー隊の青年二人に救助され、地元の救急病院に搬送された。すぐにレントゲン写真を撮られ、右足大腿骨の骨折が明らかになった。複雑骨折だと手術をすることになるが、きみの場合は損傷が少なくて幸いだったと慰められた。診察したのは体格のいい中年の医師で、大学の運動部を出てきたような風貌をしていた。看護師への指示も命令的で、怪我人の扱いに...思い出の短編小説『遮断』

  • ポエム341 『シクラメンの眠り』

    正月を共に過ごしたシクラメンつぎつぎと花を開いて未だに健在だ大寒をやすやすと乗り越え家族の期待に応えてくれたシクラメンよありがとぅ花に衰えが見えたらやさしくひねり葉っぱも枯れてきたらむしり取るときどき薄日をあてて幸せ色を取り戻すキミはいつまで咲き続けるんだ夏になれば花は打ち止めとなり葉っぱも枯れて命が尽きたような姿になるが実は夏越えの方法はいくつかあるらしい球根を風通しのいい日陰に置いて冬になったら鉢を代えてやるらしい一方休眠させる方法は面白そうだどうぶつは冬眠だがシクラメンは夏眠だ休眠せよシクラメン時期が来たらぼくが手伝ってやる冬中家族を慰めてくれた苦労を暑い時期に癒してほしい少しばかりの手間を惜しまなければキミは今年の夏を越せるはずだその前に命運が尽きないように水のやりすぎには気をつけるよお休みシクラ...ポエム341『シクラメンの眠り』

  • 思い出の短編小説『真夜中の寝台車』

    ちょっと怖い話を思い出してしまいました。もっとも、怖いと思ったのはぼくだけで、他の方にはどうということもないかもしれませんが・・・・。まあ、怖いか怖くないかは最後にご判断ください。その出来事があったのは、かれこれ三十年も前のことだったでしょうか。当時ぼくは伝統ある製薬会社の営業マンをやっていまして、漢方薬の販売先拡張のために関東以北の県をを飛び回っていました。本社は東京の赤坂にあり、昼間は都内でさまざまな打ち合わせをしたあと、夜には寝台特急で青森へ向かう予定になっていました。予約していたのは上野発の「はくつる」で、確か夜十時前後の出発だったと憶えています。急行や寝台車など列車での移動には慣れていましたから、あらかじめ構内の売店で弁当と缶ビールを買い込みました。寝台車両が機関車に押されて入線したあと、車内の...思い出の短編小説『真夜中の寝台車』

  • 紙上『大喜利』(8)

    〇「どうする家康ーが低視聴率らしいな」「ご隠居、待つ順(松潤)なんですよ大河の。来年は高視聴率に戻りますって」〇「おい、日曜討論見てたら庶民はクラクラしたぞ」「ご隠居、経団連の十倉(トクラ)会長が出てましたからね。物価あがっても、こっちはベースアップなしだし」〇「近ごろクスリの飲み忘れが多くなってな」「ヤキが回ったったんですかね、焼き芋でも買ってきましょうか」紙上『大喜利』(8)

  • 思い出の短編小説『拍子木を叩く者』

    風邪をひいて寝込んでいた正輝は、微かに拍子木の音を聞いたような気がして目を覚ました。彼は昨日まで警備会社に勤める傍ら、夜勤明けの数時間を牛丼店のアルバイト店員として働いていた。厨房に入って出勤前の客のために盛り付けし、仕事が終われば自らも奥の控室で遅い朝食を摂った。彼にとって時給のほかに朝飯を確保できることは願ってもないことであり、長らくそうした生活を維持してきた。それが風邪をひいたことで狂ってしまった。寒さの中で二重に仕事を続けてきた無理がたたったのかもしれない。そうまでして稼ごうとするのには、彼が置かれた境遇が関係していた。中学三年生の時、両親が営む小料理屋が火災に遭い、二階に寝ていた父と母が二人とも焼死してしまったのだ。正輝は高校受験を控え三階の静かな勉強部屋を与えられていたため、駆けつけたハシゴ車...思い出の短編小説『拍子木を叩く者』

  • ポエム340 『どじょう』

    もぐれもぐれ上澄みばかりが世界じゃない泥の中には栄養がいっぱいだもぐれもぐれ泥にもぐれば敵の目からも逃れられるほら稲の方に行くなたがめがじっと待ってるぞあの足につかまったら雁字搦めだ生きたままバリバリと食われるぞああ上澄みに住む者にはわかるまいザリガニさんもそうだが興奮がいっぱいの泥濘生活泥水を飲んで呻く人間よどじょうもザリガニも泥水などへの河童栄養だけ漉して腹に収める知恵者だ上澄みに浮いてフワフワしているといつの間にか栄養失調で元気をなくす泥水を怖れずに潜れもぐれポエム340『どじょう』

  • 思い出の短編小説『お高という女』

    中国の少数民族の一つにミャオ族(苗族)がある。ミャオ族の多くは山川草木のすべてに霊魂や生命が宿ると考えていて、古代から同じような感性を受け継いでいる日本人には大変近しく感じられる。祖霊や祖先に対する祭祀を重んじる習慣も似ていて、年越しの日には祖先に感謝する祭りを行うのだそうだ。その際、男性は葦笛を吹き、女性は華麗な髪飾りと豪華な刺繍を施した衣装を着て舞うのである。年頃の男女が一堂に会するのは年に一度のことで、この祭りが男女の自由恋愛の機会でもあることはいうまでもない。女性陣がユーファンと呼ばれる歌による呼びかけを行い、男女が互いの感情を歌に託してプロポーズしたり返事を確かめたりする。山の奥深く、澄んだ空気を震わせて呼びかけ合うミャオ族の少女の歌声は、岩襞を這い苔をつたって天にも届くかと思わせるほどだ。一度...思い出の短編小説『お高という女』

  • 紙上『大喜利』(7)

    〇「さいたま市見沼区で縄文時代の丸木舟を発掘する映像が出てきたらしいな」「へえご隠居、考古学にも興味あったんですか」〇「奈良の富雄丸山古墳からは鏡と長剣が出てきたしな」「ご隠居、ますます嬉しそうですね」〇「今日は古墳デーじゃないのか、一緒に祝おう!」「ご隠居、帰りますよ。では、さい奈良」紙上『大喜利』(7)

  • 思い出の短編小説『自販機に敬礼』

    大正時代から酒屋をやってきた升喜屋の前を、養護施設の生徒たちが毎朝通って行く。五十メートルほど離れた通りの先に、パン工場を兼ねた養護施設があるのだ。幸恵は毎朝九時に、宅配便の取扱いを知らせる立て看板を出す。店先にはかなり広いスペースがあって、酒類をはじめお茶やコーラなどを扱う自動販売機が三台並んでいる。店内にも商品は置いてあるが、通りがかりの客はほとんど自動販売機で目当ての飲料水を買い求めるのだった。その中でたった一人、顔を合わせると幸恵に挨拶をしていく養護施設の生徒がいる。大柄な女の子で、ポッチャリした丸顔をしている。西の方から東へ向けて、ゆったりとした足取りで通り過ぎていく。身ぎれいな服装をしているので、親が気配りをしている様子がうかがえた。動きに安定感があるので、見た限りではどこに障害があるのかわか...思い出の短編小説『自販機に敬礼』

  • 新企画『ととのいました』(22)

    〇「民主主義に無関心の国民」とかけて「ワクチン接種を怠る犬の飼い主」とときますそのこころは「やがて強権(狂犬)に噛まれる」でしょう〇「徴用工問題解決なるか」とかけて「困ったルイ・アームストロング」とときますそのこころは日韓の立場の違いで「にっちもサッチモ」行かないでしょう〇「大雪で立ち往生」とかけて「即身仏」とときますそのこころは「座って(座禅)いても往生した」でしょう新企画『ととのいました』(22)

  • 思い出の短編小説『合図者』

    秋本早苗は、マンション4階の窓から隣の工事現場を見下ろしていた。半年前までは広々とした空き地だったところに、次々と建築用の重機や資材が運び込まれていた。早苗は通販会社の電話オペレーターとして勤務していたから、昼間の進捗状況を逐一見ていたわけではない。また、夜間には工事現場全体が丈の高いボードで囲われていたから、地上からの視点で眺めたということもない。ところがこの日、早苗は風邪をひいて会社を早引けしてきた。まもなく三月になろうかという季節になってから、用心していた風邪に捕まってしまったのだ。午後二時のマンション4階は、南からの光が射し込んで一足早い春がやってきたような錯覚に陥る。それでいて寒気がするのは、急激に熱が上がってきた兆候にちがいなかった。自分の体調もそうだが、工事現場の様相にも変化があったことを何...思い出の短編小説『合図者』

  • 紙上『大喜利』(6)

    〇「アニサキスは兄弟らしいな」「ご隠居、またダジャレですか」〇「関東の連続強盗事件は怖いな」「ご隠居が襲っても金目のものは金切り声だけですけどね」〇「また値上げかどうする家康?」「ご隠居、はやりの言葉を使ってみたいんでしょう」紙上『大喜利』(6)

  • 思い出の短編小説『馬なり』

    納富竹次郎は、工作機械メーカーに三十五年勤め、定年を五年残して退職した。その一年前に女房を乳がんで亡くしている。彼が会社を辞めたのは、意気消沈してやる気を失くしたのではないかと噂された。だが、実は竹次郎は一時期やもめ暮らしを喜んでいた。独り身が現実のものとなって、憧れの生活を手に入れることができたとほくそ笑んでいたのだ。口うるさい女房がいなくなって、馬じゃないがのびのびと走れるようになった。彼の好きな競馬用語を借りれば、<馬なり>で馬場を一周してくるようなものだ。何をするにも自分の思いのままという解放感。女房の目を気にしてできなかった浮気も、今となれば好き放題にできそうに思えた。だから広告を見てバイアグラも手に入れた。浮気の機会を狙って、外飲みの回数も増えていった。散歩がてら立ち寄った近場のスナック「ちょ...思い出の短編小説『馬なり』

  • 紙上『大喜利』(5)

    〇「オミクロンも型落ちしたな」「は?さてはご隠居テレビでも買い替える魂胆ですね」〇「石川さゆりは冬景色だが伊藤美誠は春景色だな」「ご隠居なにをごっちゃにしてるんですか、石川佳純が怒りますよ」〇「高嶋ちさ子が出ずっぱりだな」「ザワつくに怖いお父さんまで引っ張り出して、テレ朝も必死ですから」紙上『大喜利』(5)

  • 思い出の短編小説『攫う』

    貞夫は目覚めの不確かな感覚の中で、それを見た。夜をしっかりと眠ったあとだったのか、それとも中途半端な昼寝の途中だったのか判然としないが、目覚めたその目でありありと見てしまったのだ。場所は黒姫に近い山里の萱葺の家だった。仰向けに目覚めた視線の先に、煤けた構造物がむき出しになっていた。木の骨組みの上に、夥しい量の萱が編みこまれている。貞夫にとっては見慣れた風景で、目覚めの違和に気づいていなければ再び眠りに引き込まれていたかもしれない。だが、貞夫は見た。目覚めた布団の中から、それを見た。座布団二つ分離れた囲炉裏の火が、ほんのりと熱を送ってくるのを感じながら、背筋に寒気が走ったのを覚えている。(なに?)見られている気がした。視線の先に、貞夫の視線を押し返す圧力があった。貞夫に気づかれているのに、相手はまったく動じ...思い出の短編小説『攫う』

  • ポエム339 『誤変換』

    近ごろ誤変換が多くて参っている多くはこちらのうっかりミスだが物覚えの悪いパソコンの怠惰な態度にも原因があるもう5年も付き合う仲だろうオレに慣れろや例えば「百舌の贄」など類似語がなければ間違わない褒めた途端に「なければ」を「泣ければ」には泣かされるどうして普段使う言葉を誤変換するのだい単純に前の使用例をなぞるのはやめてくれこんなことだとオレだって頭に来るぜ目茶目茶なんてさ目が茶を飲むか見せてくれ踊ろ踊ろしいじゃまるっきり喜劇じゃないか真冬のお化けが毛皮でも着て出てくるかさあ今度めちゃめちゃと入れたらどうなる?やっぱり次の変換候補は「目茶目茶」だめちゃで区切ると「滅茶」と出るおまえ文章を覚える能力がないのかもういいオレの頭は破壊されたこんな作業に時間を盗られて時間貧乏だそれそろ新しいパソコンを買えってかあなた...ポエム339『誤変換』

  • 思い出の短編小説『花子塚』

    <霊山筑波の麓に立ちこめた霞の奥から、西へ西へと稲田の間を流れて、ついに利根川にながれこんでしまう一筋の小川がある。この小川の利根への落ち口からかなり離れたところに、危なそうな土橋が架かっている。この土橋の袂に一つの塚がある。「花子塚」という。塚の裾はきれいな小川に洗われている。>ここまで読んだ時、三郎は頭の一角でカチッと音がして8ミリ映画のフィルムが回りだすのを感じた。常陸の伝説をまとめた郷土史風の和綴じ本を、おもむろに机の上に置き、去来する映像の一コマ一コマを頭の中で繋ぎ始めた。・・・・あれは終戦後二、三年過ぎた頃だろうか。三郎は一家とともに茨城県の西部に疎開したまま、五行川のほとりで七歳の冬を迎えていた。三郎たちが世話になっていたのは三郎の父の兄で、三郎にとっては伯父に当たる人であった。先代から受け...思い出の短編小説『花子塚』

  • 紙上『大喜利』(4)

    〇「ほんとに行動制限ナシでいいんだな?」「ご隠居はダメです。おかねを手にするとどこへ行くかわからないから」〇「宇宙でも日米安保か」「ご隠居、日本はついに米国のサテライト(衛星)化したようですよ」〇「ワールドサッカー後は三苫の株がうなぎ上りだな?」「ご隠居の株は落ち鮎みたいですけどね」紙上『大喜利』(4)

  • 思い出の短編小説『定食屋の女』 Ⅱ

    漆畑は、朝からそわそわしていた。多歌子が出勤する前に、入口の自動ドアの具合を確かめたり、靴拭きマットの位置を直したり落ち着かなかった。表に出てみると、太陽は東から南に回ろうとしていた。御代田の街も、上信越道が走るあたりも、光のさざ波に覆われていた。近頃はますます家並が増えて浅間の裾野を遮っていたが、追分から道の駅「雷電」にかけて続く樹林の帯が、そこから上の山の領域を神々しいまでに輝かせていた。(いつ、多歌子に声をかけようか)いきなりディナーに誘うというのも、なんだか子供じみているなと気後れした。多歌子に警戒感を与えるだけで、今日一日が落ち着かないものになってしまう。やはり、昨日拾った子供の髪飾りをきっかけに、多歌子の日常に迫ってみようと頭の中で段取りを決めた。しかし、客の落し物かそれとも多歌子の持ち物かと...思い出の短編小説『定食屋の女』Ⅱ

  • 思い出の短編小説『定食屋の女』 1

    多歌子が面接に現れたのは、昼の客が一段落した午後三時半ごろのことだった。それまで配膳を手伝っていた町内の小母さんが、突如体調を崩して辞めることになったため、ハローワークに求人依頼をして間もなくのことだった。しばらくの間、弟夫婦と三人で「味楽」を切り盛りしていかなければなるまいと覚悟していた矢先のことなので、面接希望者が現れたのは店主の漆畑にとっても予想外のことだった。「うちのことは職安で?」つい、古い呼び名を口にした。「いえ、入口に張り紙がしてあったでしょ。あれで・・・・」女は少し上目遣いに漆畑を見てニコッとした。「ああ、道理で・・・・。申請してまだ二日しか経っていないのに随分早いと思って」店主は空いている食卓の椅子に女を掛けさせ、店側の条件を説明して反応を見た。履歴書は持参したかと訊くと、案の定用意して...思い出の短編小説『定食屋の女』1

  • 紙上『大喜利』(3)

    〇「クリスティアーノ・ロナウドがサウジのアルナスルに高額移籍したらしいな」「ヘイ、ご隠居、(ボル)トガルですから」〇「クリスチャンからアッラー・ロナウドに宗旨替えしたってわけか」「そりゃご隠居の邪推でしょ」〇「マネーにあかせてモドリッチやメッシも狙ってるんだろ?」「そうなっても(リッチ)になってすぐ(モド)りますよ。メッシは飯に困ってないから抜かれないでしょ」紙上『大喜利』(3)

  • 思い出の短編小説『エア・ギター』

    <風向き党>の党首になって一年が過ぎた又俣イカルは、思いがけない女性スキャンダルに巻き込まれて窮地に陥っていた。ヒラ党員時代から辛抱に辛抱を重ね、やっと手中にした首領の座を、こんなくだらないことで手放すなどあってはならないと大慌てをしていた。以前にも献金問題でミスを犯し、カミさんから「脇が甘い」と叱られたことがあったが、今回のことはその時以上のダメージだった。カミさんにも隠し通していた下半身問題を、週刊誌に嗅ぎつけられたのだから当然だ。相手とは七年越しの関係だし、充分に手当てをしているので、オンナの側からスキャンダルが漏れるとは思ってもいなかった。ところが、首領からの手当てを上回る記事ネタマネーの威力は絶大だった。よもや漏れると思っていなかった体位や睦言まで、週刊誌の特集告白記事として暴露されてしまったの...思い出の短編小説『エア・ギター』

  • ポエム338 『道しるべ地蔵』

    村はずれにあるたった一体の地蔵の肩がブルブルッと揺れたおっと、そっちは暗い森への道だ引き返して珍念和尚の許へ行くがいい今ごろ新年の法話をやっている頃だゆく年くる年のような鐘はないがありがたい話を聞くために村人がたくさん集まっているぞ引き返した蓑笠の後ろ姿を確かめて地蔵はまた道端の地蔵になる誰が手向けたか椿の花が一輪足もとに置いたままいつもの姿に雪が降るししんと降り積もる珍念和尚の庵の方から人が来るいい話だったわねと話しながら村の方へポエム338『道しるべ地蔵』

  • 川柳復活5 『罹病30周年』

    〇糖尿や主治医変われどヌシ変わらず〇デキストリン医師に教えしこともあり〇少食に慣れし身時代が追い付いて〇自主管理任せられるや引継ぎで〇ヘモグロビンA1Cの浮き沈み〇律義なりインスリンの多寡神ほとけ〇低血糖体のサインに頼りつつ〇血糖値針さす場所の悩ましく〇明年も明日も同じ記録つけ〇不自由も喜び質素に松かざりみなさま、よいお年をお迎えください。川柳復活5『罹病30周年』

  • 思い出の短編小説『飼われた男』

    荏原伸二は、都心にある巨大企業の社員である。東大を卒業し、入社まもなくから会社の開発部門の研究者として将来を嘱望されていた。現在の住まいは、中央区勝どきに竣工したばかりの38階建高層ビルの17階。入社五年目の2015年、独身者としては贅沢とも思える2LDKの一室に引っ越してきた。朝は7時20分に起き、40分後に家を出る。契約している大手のハイヤー会社から迎えの車が来ているので、それに運ばれて大手町のオフィスに出勤するのだ。「おはようございます」助手席側にまわった年配の運転手が、客席のドアをひらく。「あ、どうも・・・・」青年はうまく応対できないまま、仏頂面でハイヤーに乗り込む。毎朝、親父ほども齢の離れた運転手にうやうやしく迎えられるのが苦手なのだ。北陸の漁村でいまも船に乗っている父親の姿が脳裏をよぎり、朝の...思い出の短編小説『飼われた男』

  • 紙上『大喜利』(2)

    〇「なんだ、あのブラボーというのは」「ご隠居はベラボーといいたいんでしょ?」〇「政府というのはすぐ乗っかるな」「長友を次の公認にしたいんでしょ」〇「八咫の鴉が呆れてる」「一羽だけ飛んでますね、ご隠居」紙上『大喜利』(2)

  • 思い出の短編小説『幽霊談義』

    考古学における新発見を発表した蒲原は、大学時代の同級生だった医師の新谷と詩人の曽根崎を自宅に招いて旧交を温めることになった。きっかけは曽根崎からのお祝い電話の中で、かつて男子寮で夜通し語り合った「幽霊の正体」について、いまならどう思うかと尋ねられたことにあった。「アハハ、きみはちっとも変っていないな」蒲原は呆れたように笑い、「・・・・新谷は医者になったというが、元気にやっているんだろうね?」と懐かしそうに問いかけた。「ああ、相変わらず金儲けに忙しいみたいだよ。きみと違って国からの研究費が得られるわけじゃないから、自力で病院を大きくしようと懸命なんだ」「そうか、それで安心した。あいつ学生時代から株だの為替だのに夢中になっていたから、将来そっちの方で身を誤るんじゃないかと心配してたんだ」「たしかに、一度大失敗...思い出の短編小説『幽霊談義』

  • 紙上『大喜利』(1)

    〇「おい、あのいい男は何者だ」「へい、講談師(好男子)です」〇「正月に飾る餅を重そうに持ち上げたな」「へい、屈み持ち(餅)ですから」〇「鎌倉の人気ももう終わりだな」「はい、今年は(大雪で)カマクラの出番でしょう」紙上『大喜利』(1)

  • 思い出の短編小説『ラブレター焚書の一件』

    <千年風呂>の経営者である荷車三吉は、朝から青いため息をついていた。女房の好恵が昨日とうとう家を出て行ってしまったのだ。カラオケで知り合った若い男に夢中になり、いくら諌めても言うことをきかなかった。「離婚するのはいいが、原因はおまえにあるのだからビタ一文やらんぞ」半ば脅して翻意させるつもりであったが、返事はあっさりしたものだった。「こんな借金まみれの風呂屋なんかに、いまさら未練はありませんよ。ただ働きさせられるだけで何一ついいことなんてないんだから」たしかに好恵の言うとおりだった。しかも未練があるかないかの対象は<千年風呂>であって、三吉のことなど端から相手にしていないのだ。風呂屋の経営に限ってみれば、ここ数年中東紛争の煽りがつづいていて、業者から買い取る重油の値段は上がる一方だった。元売りの値を決めるは...思い出の短編小説『ラブレター焚書の一件』

  • 川柳復活4 『FIFAワールドカップ』

    〇アルゼンチンメッシ躍動滅私奉公〇サッカーは見ちゃダメ妊婦早産危機〇エムボアはハットトリックハットリくん(まるで忍者のよう)〇フランスは連続ならずラ・マルセイエーズ(団結の歌から追悼の歌へ)〇クロアチア苦労の末に国一体(民族紛争の過去)〇ネイマール頼みで寝入ったブラジルサッカー〇モロッコが初の4位欧州離れ急(フランスの植民地だった)〇暴動は余計モロッコカサブランカ(米の名作映画)もかい?〇メッシのPK日本も学べよ針の孔(正確かつ腹芸も)〇三苫いずこへ(海外クラブ移籍)認(みとま)たクラブはリーグ優勝川柳復活4『FIFAワールドカップ』

  • 思い出の短編小説『鴉の話』

    八百屋の店先で、店主と客のばあさんが大声で話している。「いやあ、まったく油断のならない野郎だ」七十過ぎの親爺が、たったいま起こった出来事を手ぶりを交えて説明している。「ほんと、素早いんだから・・・・」ばあさんも負けじと声を張り上げる。「追っかけたけど追いつくわけもない。ほれ、向こうの屋根の上でバカにしたようにこっち見てるだろ?」店主が商売を忘れて遥か先の瓦屋根を指さす。「なんだか袋みたいなものをくわえてるねえ」と、ばあさん。「ポテトチップスだよ。これから安全な所へ運んで破るつもりだよ」どうやら青果物の横に並べて置いたスナック菓子の一つを攫われたらしい。興奮の度合いから見ると、この店での被害は初めてらしかった。「ひやー、そんなものを・・・・。わたしなんざ、お肉を攫われたからね」今度は被害自慢のようだ。「図々...思い出の短編小説『鴉の話』

  • ポエム337 『クーリング・オフ』

    我が家にやってきた自走掃除機ル〇バ広々としたフロアを念頭に作られたんだろうに机や椅子の脚だらけの部屋であっちへ行っちゃゴツンこっちを向いちゃゴツン2~3日ですっかり気の毒になってしまったおまえ傷つかなかったかい?ぼくは丸い性格だからぶつかっても大丈夫相手もぼく自身も傷つかないように設計されているんだ障害物に引き留められて立ち往生はするけど動ける隙間を探していつかは自走するるんだだけどさあ父ちゃんはおまえが可哀そうだからクーリング・オフ期間中におまえを返すつもりだこんな狭い所でおまえの能力を殺してしまうのは父ちゃんとしては忍びないんだわかってくれぼくはいやだというのかい返されるのは辛いとああ困った困った駒ヶ岳大雪が降って立ち往生の心境だよ父ちゃんのダジャレが出るうちは大丈夫だガンバレガンバレげ~んさんガンバ...ポエム337『クーリング・オフ』

  • 思い出の短編小説『失踪』

    バタンと音がした。愛犬のトイプードルを追いかけていた庄三の胸が、びくっと反応した。前方の木々の間に、さびれた別荘が見える。音は、その建物の蔭から聴こえてきた。庄三は、太った体を揺すって雑木林の小道を走った。急いで走っているつもりだが、よたよたした小走り程度のスピードだったかもしれない。「リリー!」声がかすれていた。ほとんど悲鳴に近かった。自分の声が、いやな予感を連れてきた。(もしや、リリーが・・・・)あの音は、自動車のドアを閉める音のようだ。ひょっとしたら、リリーは事故に遭ったのではないか。あるいは・・・・。悪い連想が、つぎつぎと去来した。そもそも散歩の途中で、リリーのリードを外したことが悔やまれた。散歩中、リリーに束の間の自由を与えてやりたくて、足元に放してやったのだ。いままでも、そうやって放したことが...思い出の短編小説『失踪』

  • ポエム336 『藤原新也の犬』

    藤原新也の犬にたじろいだのはいつのことだったかほんとうに『メメントモリ』のなかだろうか人間は犬に食われるほど自由だと呟いた男の年老いた今をNHKのドキュメンタリーで再確認したしかしニコンの望遠レンズを手動でブラしながら鉄砲百合を撮っていたのは藤原新也の幻だ黄色い息をはきながら死にゆくものの気配を嗅ぐ犬それを己が食われるが如く表現した新也が本物だメメントモリは確かに詠みました『鉄輪』も読みました麻原彰晃の兄のことも知ってます水俣病のこともでも真実はいつか靄に包まれ雲霧仁左衛門になるようだ老いるとはそういうことなのか新也さんあなたに生と死のすべてを教えられたかつての若者は全著作を愛撫しながら涙を流したでしょう犬はズドンポエム336『藤原新也の犬』

  • 思い出の短編小説『辻占』

    晩秋の黄昏どき、銀座八丁目の角に着物姿の男が佇んでいた。汚れたたっつけ袴に錦半纏をまとい、頭には翁頭巾を載せている。足元は草鞋を履き、見知らぬ場所で途方に暮れたように目の前の通りを眺めていた。ここは新橋に近い金春通りのどん詰まり、博品館にも近い一画である。デパートやブランドショップから流れてきたというより、この一帯を好んでうろつく通行人の姿が見られた。男の商売は黄表紙などで見かける飴売りだったが、街流しの宣伝口上で商売敵の刃物屋を腐し過ぎたために、悶着を引き起こしていたのである。「あんた、うちの包丁を誉めてくれるのはいいが、木屋のモノは俎板まで切れてしまうから使えないとはどういうことだ?」面白おかしく囃すのはいいが、嘘八百と思われたらこちらの料簡が疑われる。事実、相手方から苦情がきて主人が平身低頭させられ...思い出の短編小説『辻占』

  • 新企画『ととのいました』(21)

    〇「日本サッカーベスト8逃す」とかけて「運じゃない能力の差(無限大)とときます」そのこころは「PK能力が8との差をを∞にした」でしょう*ここまでの健闘は見事だったが、クロアチア戦はシュートの力強さ・正確さに欠けた〇「銘酒・越乃寒梅」とかけて「ゴールキーパー権田」とときますそのこころはどちらも「銘酒(名手〉の誉れが高いが上には上がある」でしょう〇「吉田正孝」とかけて「レッドソックス入団はインフレ相場」とときますそのこころは〔よしなマサタカ・レッドじゃ(鈴木誠也の内心」でしょう*ファンの方ごめんなさい新企画『ととのいました』(21)

  • 思い出の短編小説『ほめあげ屋』

    謹厳実直で知られた亭主の塙謙吉が死んだのは一昨年の秋だった。翌年の年賀状を欠礼し、代わりに歯科医だった謙吉の死を知らせるハガキを三百枚ほど書いた。当然のことながら、元旦に届けられる郵便物は目立って減り、謙吉あての郵便物は、医療器具メーカーや業界団体からのものを含め十数通となった。妻の澄子に来た賀状も十枚ほど、出した数より少ないのはいつものことだった。謙吉が生きていたときは、毎年スチール製の郵便受けからゴムバンドで留められたハガキの束を抜き出し、ずしりと掌に受けとめたものだ。亭主の権威などあまり気にしたことはなかったが、世間的にはまだまだ儀礼の対象と受けとめられているのかと、満更でもない感慨を抱いたこともあった。そうした存在だった塙謙吉も、二年目の今年の元旦を境に完全に過去の人となった。長身で痩せぎすの肉体...思い出の短編小説『ほめあげ屋』

  • ポエム335 『インドの魔力』

    世の中でサイババがブームになっていたころぼくは身体術に凝っていた彼と知りあった大学の体育館にぼくを誘って身体術のイロハを説いた阿吽の動作から手ほどきしてくれたがなんだかインド的な思想でヨガを連想したあ・え・い・お・う~~ん両腕を上にあげて胸を広げその腕を掻き抱いて気を吸い込む体を小さく折ってう~んと息を吐く彼と出会うと毎回それの繰り返し身体術の何たるかもわからないうちに彼は突然インドへ旅立った何年かして彼から便りが届きインド人のように黒光りする顔で我が家に現れヨガの師の下で修業したことを告げた土産は浴室の排水溝を詰まらす垢の山女房が嫌がるので一日限りの客となった話を聞きたかったがそれっきりの縁ああ魔力魔力インドの魔力一番たぶらかされたのはこの僕らしい身体術のお話は未だ悟れないまままだポエム335『インドの魔力』

  • 思い出の短編小説『松原遠く』を投稿しました

    「敏彦さァ、あそこに一本だけ立っている松はなんで一本だけなんだろうねえ?」九十二歳のヨシ婆が、眼脂のたまった瞼を眇めながら孫に訊いた。テレビ画面には被災した陸前高田の海岸が映っていて、多くの人に愛されてきた高田松原が跡形もなくなくなっている惨状を目にしているところだった。跡形もないという言い方が当たっているのかどうか、津波が攫って行ったあとの光景はさっぱりしすぎている。一本残った松の枝ぶりの良さが際立っていて、感情を超えた喪失感に満ちていた。(ばあちゃん、あの松がなんで残ったのか、俺にもわからないよ)ヘリコプターから高台に降り立った為政者が、防災服の袖をはためかせながら一般人と大差ない感想を口にするのを画面の中で追っていた。樹木も建物も電柱も選り好みせずに持ち去った津波の本性を前に、いまだ思考のまとまらな...思い出の短編小説『松原遠く』を投稿しました

  • ポエム334 『ムサビという男』

    ムサビとあだ名したあの男はいつも絵の具で汚れたジーパン姿でぼくの部屋にふらりと現れた最近画いたというルオーに似た絵を提げ絵の具代でいいから買ってくれというぼくも同じような境遇だから気安く応じたフランスに留学するのが夢だったがある日とうとう実現しそうだと告げに来た同期のお嬢様が応援してくれるのだそうだいかにもムサビらしいと笑って祝福した3年間フランスに行っていたが帰って来たとき近々結婚するのだといった山王育ちの同級生だった女性は彼のどこにほれ込んだのだろう彼の絵かそれとも人懐っこさか突き抜けろ突き抜けろ雲の上まで突き抜けろ出来なかったら天から墜落する覚悟で口に出して言ったわけではないムサビの意気込みを共有していたから内心そう励ましたかっただけだその後彼からの音信はなくなったいいさ子供でもできていいパパになっ...ポエム334『ムサビという男』

  • 思い出の短編小説『夜の旗』

    義妹夫婦が帰ったあと、聡子は台所の片付けをしながら、ひとり思い出し笑いをしていた。「なんだ、どうしたんだ?」骨董品を対象にああだこうだと鑑定する人気番組を見ていた正人が、ゲストのタレントに笑いの原因でもあるのかと問いかけの視線を投げかけた。「いや、そんなんじゃないの。千恵子ったらとんだおっちょこちょいなんだから・・・・」終いまで言わずに、聡子はまた笑った。「一人だけ笑っているなんて、いやらしい奴だな」「そう、ほんとにいやらしいのよ」聡子はエプロンで手をぬぐいながら、正人のいるソファの前まで戻ってきた。そしてテレビの上の箱を指さしながら、「・・・・あなたの大事な旗を、合図のサインだと勘違いしているのよ」聡子が示した旗というのは、割り箸に7センチほどの四角い紙を糊づけしたミニサイズの手作り国旗である。紙の中央...思い出の短編小説『夜の旗』

  • 新企画『ととのいました』(21)

    〇「富安のシュート」とかけて「高安のカチアゲ」とときますそのこころは「どちらも悲劇→→歓喜」を呼び込むでしょう〇「森友哉」とかけて「イメージ一新」とときますそのこころは金は動くが「森友学園」ではないでしょう〇「山賊焼き」とかけて「落語の師匠」とときますそのこころは「トリ(鶏)は定番」でしょう新企画『ととのいました』(21)

  • 思い出の短編小説『いびつな月』

    入鹿は、数日前からいらいらしていた。頭の周りで、なにかチリチリとはじけるような波動が感じられるのだ。(なんだろう?)沖の方から追いかけてくる目に見えない不安が、全身の皮膚を粟立たせる。親から受け継いだ精密な感覚が、音ともいえず唸りともいえない底鳴りを感知して未知の信号を送って来るのだ。「おまえ、何か変なものを感じないか」入鹿は、近づいてきたサブに訊いた。「はい、ボスもですか」入鹿の傍でいつもサポートしてくれるサブが、すかさず同意した。「うん、少し疲れが出たのかと思ったのだが、俺だけでもないんだな?」偏頭痛の類かと考えた瞬間もあったが、他の仲間も同様の感覚を訴えたので、共通の原因があることを確信した。入鹿が率いるのは、遠く歴史時代からルーツを一にする権藤一族とその仲間である。豊かな恵みを求めて、日々移動して...思い出の短編小説『いびつな月』

  • 新企画『ととのいました』(20)

    〇「冬の味覚おでん」とかけて「歌舞伎役者」とときますそのこころは「大根(役者)も味が染みると旨くなる」でしょう〇「冬場のコンビニ」とかけて「サンド伊達と冨澤」とときますそのこころは「多くの人は肉まん(憎まん)」と思うでしょう〇小結「豊昇龍」とかけて「片岡球子の日本画」とときますそのこころは「どちらも面構え」がすごいでしょう新企画『ととのいました』(20)

  • 思い出の短編小説『親指コンプレックス』

    マツ子は、自分の足の親指が人一倍大きいのではないかと悩んでいた。意識するようになったのは、小学三年生になった春のあの日からだった。「あら、あなたの親指ずいぶん大きいのね」新学年になって間もなく健康診断があり、身長計測器の台に乗った瞬間、担任の女性教師がじっとマツ子の足元を覗きこんで言ったのである。「・・・・」普通、背伸びをしていないか踵の位置を確かめたりするものだが、先生はいきなり足の指に注意を向けたのだ。面と向かって足指が大きいと言われたのは初めてで、ショックを受けたのは確かだ。しかし、ニュアンスは違うが、お祖父ちゃんから「マツ子の指がちょうどツボにはまって気持ちええわあ」と喜ばれたことを思い出していた。うつ伏せになった背中を、ときどき押してくれと命じられるのだ。肩や首筋を、親指でじわーっと押すこともあ...思い出の短編小説『親指コンプレックス』

  • 川柳復活3 『じじいの時事ばなし』

    〇防衛費増やすぞ負担は税金で(国債もイヤ、税金もイヤ=庶民の本音)〇ツイッター大量首切り自分切り(有能社員も退職希望でマスク氏大慌て)〇ポーランドにミサイル着弾さあ、どっち?(ロシアが狙った?ウクライナの迎撃ミス?)〇日本サッカーパスつながらず楓(カナダ)色(カナダの国旗が揺れる)〇大相撲自信の眼光高安場所?(初日に若隆景を破り勢いが)〇さあ皆さんお手を拝借シャンシャンシャン(来年3月、上野のパンダ中国へ返還)〇クリスマス今年もクルシミマスは勘弁して(コロナ・インフルエンザのタッグ攻撃か)〇われと来て遊べや親のない子供(厚労省の育児支援)<我と来て遊べや親のない雀=一茶>〇羽生ロスゆづ喪失で見る気なし(NHK杯男子フィギア)〇「りくりゅう」(三浦璃来、木原龍一組)がペア優勝で批判され(仲が良すぎて)川柳復活3『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の短編小説『国旗屋』

    月の光が煌々と降り注いでいた。川辺のススキが、風を受けて穂先を揺らしている。夜半の土手は、人っ子一人通るはずもない。その土手道を人影が横切った。風に押されるように進む、前かがみの女の姿に見えた。銀色の穂先は、なびく髪だったのだろうか。光と闇のはざまで、人影が妖しく通り過ぎていった。隼人は、胸苦しさを覚えて目を覚ました。またも同じ夢を見たのか。いや、わずかに違うようだ。月光に照らされた川堤の上、揺れ動くススキの間を進む女の横顔が、前より若かった。それに、腕に抱えた赤子のようなものはなんだ?追われるように足早に立ち去る姿は、以前の夢にはないものだった。隼人が初めて築堤の光景を見たのは、二週間ほど前のことだった。枯れたススキの簾の中、杖にすがった老婆が鵺(ヌエ)のように紛れていた。二度目は、茣蓙を抱えたみすぼら...思い出の短編小説『国旗屋』

  • 川柳復活2 『じじいの時事ばなし』

    〇「インフレ」も「インフラ」もすべてあの男(西側のインフレ、ウクライナのインフラ破壊)〇イギリスにボロ負けラグビー形無し(肩ナシ)で(スクラム、キックで大差)〇久々に石川(遼)優勝了とする(3年ぶりもさらに上を目指す)〇正代は強いの?弱いの?正体(正代)不明(実力が測りづらい)〇マサカリがまさかの焼死謎残し(失火前のドタンバタンほか)〇暗号資産破綻そのはず内部も暗号(破綻理由の深部は解読不能)〇共和党赤帽の人(トランプ=手荷物運び)からディサンテスへ(2年後の大統領候補予測)〇カタールに足りるかカタールに落ちるか日本サッカー(いざ決勝ラウンドへ)〇外交に活路見出す外構(外堀)埋められる(岸田内閣)〇やれ撃つな米中握手する足は蹴る(一茶)川柳復活2『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の短編小説『死神とワルツ』

    それは、紅葉の季節も終わり、富士山に初冠雪があった十一月半ばのことだった。「ねえ、ねえ、知ってる?あの志水さんが死んだんだってよ・・・・」咲子のもとへ知世が大慌てで電話をかけてきたのだ。志水というのは、この地方では評判の自然観察指導員で、咲子たち<山ガール>も何回か世話になっている人だった。「え、どうして?」「リフトに引っかけられて、高いところから落ちたらしいの」詳しい状況は分からないが、まさかと思うことが現実に起こったらしい。山仲間から聞いたという知世からの報告を受けて、咲子はあらためて人の命のはかなさに思いをめぐらした。(家を一歩出たら、再び戻って来られる保証はない)もともと運命論者の咲子は、日頃の持論が当たってしまったことで、深いショックを受けていた。「人間なんて、いつ事故や災難で命を落とすか分から...思い出の短編小説『死神とワルツ』

  • 川柳復活1『じじいの時事ばなし』

    〇朝っぱらハンコを押して昼飯は?(カレーにするかラーメンか)〇このトップ話にならない法務省(葉梨さん勘弁してよ)〇目立つことやりたい死刑じゃ物足りない(頭の中は大臣ランキング)〇死刑のハンコあれ?デジタル化は関係なし?(デジタル相天を仰ぐ)〇飯も食えないほど悩む人「俺じゃない」(上川前法相とは違うよ)〇この人をクビにできない岸田さん(ボロを出しても知らん顔)〇寄る辺なき内閣国葬・与太話(もう押し通す以外ない)〇プーチンもレッド・ウェーブ仕損ねて(トランプならロシア有利の目?)〇共和党トランプ離れの好機来る(トランプが後押しの候補落選に)〇金正恩も二年後期待で固唾のむ(米中間選挙の結果に一喜一憂)川柳復活1『じじいの時事ばなし』

  • ポエム333 『神様のひっこし』

    空の上の方でガラガラと音がするどうやら神様がひっこしを始めたようだこのところ無謀な人間が増えたから住み慣れた場所が安全じゃないらしいいま吉祥寺のバーバラにお告げがあったとかバーバラってハモニカ横丁の占い師?神様も今どきの通信技術は信用してないらしいそれでお告げを利用したのか神様は空に見切りをつけたのかさらに上へ行っても何かの監視の目があるこれじゃ公平な審判も出来ないってわかったけどどこへ引っ越すの?さあそれは誰にも分らない地球上はウソと電波に占領されたから人間の目が届かない所へ避難するってああ神様それだけは・・・・ポエム333『神様のひっこし』

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