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2010/08/09

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  • 第3464日目 〈子供ができると、人はこうまで変わるものか。〉

    電車のなかで幼児が泣いている。お母さんがベビーカーを押すのに難儀している。呆と過ごすカフェで子供が騒々しい。 いままでネガティヴな感情で眺めていた光景だ。事情を忖度するのは二の次、三の次。偏狭な男であった。 が、人間は身勝手だ。子供を授かった途端、そうした人々に寄り添うことができるのだから。 幼な子を育てる親の苦労や喜びが、身に染みてわかるようになった。困っている親を見たら声掛けしたり、手を貸すことが自然の振る舞いとなった。 その親の許ですくすく育つ子供たちを、優しい目で見ることができるようになった。赤ちゃんが泣いていても、泣かないと意思を伝えられないものな、と思う自分を見附けた。 日曜日、自転車の練習をする子供と、そばで見守る父親とすれ違った。ここ数ヶ月で見た幾つもの光景のうち、最も憧憬の念深いものだった。 かつてのネガティヴな感情は、自分がその光景のなかに置か..

  • 第3463日目 〈驕るな、無礼者。〉

    08月28日(日)朝日新聞の投稿欄〈声〉に載った投書である。投稿者29歳は「老害」に出喰わした。中華料理店で高齢の客が外国籍店員に怒鳴っている。原因はタブレット端末で注文する方法だった。「注文方法がわかりづらい、口頭で伝えた方が楽ではないか!」と店員に怒鳴ったのだ、という。珍しい光景ではない。 自分は時代に適応できないと満天下に自ら暴露した、と投稿者は客を断ずる。続けて、件の客にこんな疑問を投げるのである。時代に適応する努力をしているのか、と。 こんな軽々しい上から目線の台詞を、よくも吐けた。客が怒鳴るまでの店員とのやり取りや、店員が客に対してどのように説明したのか、投稿者は全体像を把握して斯く述べるのか。果たして投稿者に客の立場に立って物を考える配慮が、この人物にあったろうか。 「努力をしても時代についていけない、というのではない。彼のあの態度は人にお願いをするそれとしてふ..

  • 第3462日目 〈ヘイトの底にある感情。〉

    21世紀の日本人は、海外で大きな問題を起こしている国の国民や宗教の信仰者をターゲットにして、自らが抱えこむ閉塞感や「ままならなさ」といった行き場のない感情をぶつけて発散しているだけのように思える。少なくともそこに確固たる主張やエビデンスはあるまい。負の感情に囚われて、碌に自分自身で検証したりすることなく、自分にとって都合の良い主張に安易に便乗しているだけのように映る。 偉そうなことを書いてはいるが、とはいえわたくしにも、探ればヘイトの感情はある。先達て本ブログでも書いたが(第3447日目 〈『クルアーン』を買ってきた。〉)、9.11に遭遇して友人2人を奪ったアル・カーイダを憎んだ。知識も理解もないままイスラーム教徒を憎悪した。イラク戦争後に日本語学校の教室でイスラーム教徒の生徒たちを受け持たなければ、かれらへのヘイトは、あちこちで活動を始めていた大きな暴力の渦に身を任せて、そのまま先..

  • 第3461日目 〈知識の欠落部分を補いたい。〉

    最近は松井玲奈ロスで茉夏……いやいや、夏の猛暑を乗り切れそうになかったのですが、ワクチン接種した帰りの今朝、新聞を買いに立ち寄ったコンビニでお久し振りな総大将の笑顔が表紙を飾る某写真週刊誌が視界に入り、と同時に手が伸びて新聞と一緒にレジへ運んでホクホク顔な、生後4カ月の娘を持つみくらさんさんかです。 今日は、●●のお話。 中高で習う日本史はたいがい関東大震災あたりで終わり、その後はかなり駆け足で詰めこまれて、という感じで3学期の終業式を迎える。わたくしの中高時代はこんな風だった。現在もこの傾向はあてはまるのではないか。 近現代史の知識に則していえば、太平洋戦争の通史や個々の戦闘について相応に知るのは、興味を持ってその類の本を読み、ドキュメンタリー番組を観てきたからだ。が、その一方で陸軍の、特に大陸での数々の戦闘や事件については、教科書の1行以上のことを知らず大人になった。..

  • 第3460日目 〈あなたのパソコン、誰にも覗かれていませんか?〉

    市内某所のスタバにいる。例によって例の如し、だ。夏休みのせいか、普段なら空く時間帯でも席は埋まっている。そんなときはあたりをブラブラしてから戻り、うまい具合に空席を見附けてしばしの時間を過ごす。そこまでして……という嘆息がどこかから聞こえてくるが、聞こえないふりしてスルーしよう。 そのスタバも何年か前にリニューアル。円柱を取り囲むようにカウンター席が設けられた。そこは電源が埋めこまれているので、わたくしのようにノートPCを持ちこんで作業する向きには大人気の席である。そのカウンター席にあぶれるとすぐ後ろの丸テーブルの席か、同じ並びの丸テーブル席に座を占めるのがわたくしの定番的行為だ。 さて、本題である。 いまわたくしはカウンター席すぐ後ろの、窓際に面した丸テーブル席に坐っている。黄昏の刻、空は徐々に薄闇に染まってきた。 ぼんやり外を眺めているうち、カウンター席の客が席を立っ..

  • 第3459日目 〈責任者の悔恨、責任者の涙。〉

    奥方様が持っている『SP』TVシリーズDVD-BOXを観始めた。劇場版しか知らないこちらには各キャラクターの為人が新鮮に映り、第1話はあっという間に終わった。終わったところで先日の診察で渡された処方箋を手に、いつもの調剤局へ。 ふだん誰もいない調剤局は人でいっぱいだった。確認もあったので待つこと約30分、朝ドラの再放送と17時からのニュースをぼんやり観ていた。すると、── 警察庁長官と奈良県警本部長の辞意表明が報じられた。安倍元首相狙撃事件の責任を取ってのことだ。意外であった。「さぞ口惜しかろう」と口のなかで呟いた。 自分なりに事件の続報には注視してきた。警察幹部の処分が報じられない不思議さに小首を傾げたのはいつだったか。よしんば処分の報があったとしても、日々の膨大な報道に埋もれて気附かなかったのかもしれない。購読する以外の新聞(地元紙含めて)には掲載されていたのかもしれない..

  • 第3458日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第06話を観ました。〉

    日曜日から月曜日に変わる頃、録画していた『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第06話「DEKKAIDOW!」を観ました。あまり気乗りしないまま、観ました。 ○ 前回、集中的に糾弾した鬼塚の件に関しては──第1期の恋加入回程ではないにせよ、予定調和的かつ矛盾を脇に押しやって無理に整合性を整えた感を微量に漂わせて(物語上は)、解決しました。要するに、肝心な回であることをじゅうぶんに承知しながらも視聴者たるわたくしには「捨て回」としか映らなかった、ということでもあります。 ただ、鬼塚のマニー信仰がどこから来たのか、その由来を知ると、この子をヒール役とかどうとかいえなくなってしまうのも事実。たいていの人が1つの夢を実現させるためひたむきに努力して、見事それを実現させられるわけではない。挫折しても新しい夢を見附けて、実現のための第一歩を踏み出すことを繰り返してゆくばかりである..

  • 第3457日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;訳者あとがき(って程のものでもない)。〉

    5月終わり頃から翻訳作業を始めて、8月5日に全稿が仕上がった「浅茅が宿」現代語訳。 この間、もう本当に色々ありましたわ。大袈裟な物言いになるけれど、この約2ヶ月ちょっとはこの翻訳だけが生きる縁になっていた。享徳の乱を背景にした夫婦の物語へ耽溺した時間は、現実から逃れることができていたものね。 笑わば笑え。これが事実なることを知る人のみが首肯してくだされば、良い。 次に現代語訳する近世怪談がなにか、まるで決めていない。風邪が治ったらあちこち本を引っ繰り返して、3つ4つの目星を付けてみるつもりでいる。◆

  • 第3456日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。9/9〉

    寝ようとしてもなかなか2人共寝附けぬ晩だった。そんな晩、翁が問はず語りに聞かせた話に曰く、── 「儂の祖父も、そのまた祖父も生まれていない、ずっと古のことだよ。この真間に1人の、それはそれは美しい娘御がおったそうだ。手児奈、というてな。身装(みなり)は質素で髪も梳らず、素足のまま野を歩き土を踏む、まぁ、田舎娘といえばそれまでだが、美貌で鳴らした人らしくその顔は望月のように冴え冴えと輝き、花がパッと咲いたような笑顔の持ち主だったそうだ。朝廷に出仕する女御更衣がどれだけ豪奢に着飾り、化粧に精出し、着物に香を焚きしめてみたところで手児奈の美しさに敵うものではなかった、という。 そんな女であったから、里の男衆は勿論のこと、隣国や遠く都にまでその名は届き、評判を聞いた男は誰もが関心を抱き、なかには直接口説いてくる輩もあったらしい。が、手児奈はそんな男衆の浮ついた好意に靡くような女じゃなかっ..

  • 第3455日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。8/9〉)

    よくよく見ればその老翁は、勝四郎も知っている昔からの住人、漆間の翁である。勝四郎は翁の長命を寿ぎ、長の無沙汰をわびた。そうしてこの7年間の顛末を語り、昨夜の妻との一件を語った。 「なんでも家内の塚を拵えてくだすったり、水を替えるなどいただいているそうで、ありがたい限りです」 そんなことを話しているうちにも自然と涙が零れてくるのだった。 勝四郎の話を聞き、泣くのが収まるのを待って、漆間の翁は、勝四郎不在の間のこと、独り家に籠もってどこへも避難しようとしなかった宮木のことを語った(なんでも翁がここへ残ることになったのは、足が不自由で戦火を避けて逃げること困難だったため、という)。 「そう、避難だ徴兵だ何だ、で、宮木殿と儂以外、この里に住む人間はいなくなった。当然、里はどこもかしこも荒れ放題となる。そうした場所には樹神(こだま)なんぞという妖怪の類が棲みつく、という。こんな風に..

  • 第3454日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。7/9〉

    里の人で知る者はないか──そう思い立つと勝四郎は涙を拭き拭きして腰をあげ、ふらり、と家の外へ出て四囲を眺め渡した。既に太陽は中天近くにまで昇っている刻だった。外を往来する里の者らしき人は何人も目に付いたが、どれも昔からの住人ではなかった。いちばん近い家を訪ねても、それは同じだった。というよりも、むしろ勝四郎の方が里人から、何者、と怪しまれる始末。そこで勝四郎は、この見知らぬ隣人に丁重に挨拶を述べると腰を低うして、いった。 「突然で申し訳ありませぬ。わたしは昔、あの──」と、自分の家を指さした。「あの家に住んでいた者でございます。この7年の間、仕事でここを離れて京都におりまして、昨夜ようやく帰ってまいりましたら、あの有様です。留守の間は妻が独りで暮らしていましたが、どうやら亡くなったらしく、どなたかの手で塚が拵えてありました。家や妻のことでなにか御存知ではあるまいか、と思い、こうしてお..

  • 第3453日目2/2 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第05話を観ました。〉

    既にお伝え済みではありますが、初見の方もおられようゆえ、これまでの第05話に関する発言要旨を述べた上で、本題に入ろうと思います。 第01話から第04話までの平均登場時間、約2分強というシリーズ屈指のレアキャラ化していた鬼塚夏美。会社経営者である彼女が如何にしてLiella!に加入することになるか、それがようやく描かれてゆく第05話だったのですが、これを観てわたくしは胸糞悪くなった。斯くも人格の破綻した愚人がこれまでシリーズに登場した例しがなかったからである。 正直なところ、〝コレ〟の卑しさに呆れて、視聴を止めようかと考えたことは二度や三度ではない。が、第1期に引き続いて最終話まで感想を必ず書くと決めてしまった以上、事務的であっても書いてお披露目するが義務と荒ぶ気持ちを宥めて、筆を執っている。当然録画したものを観ながらの感想執筆となるので、再び腸煮えくり返ることもあるだろうけれど、..

  • 第3453日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。6/9〉

    夏夜にもかかわらず過ごしやすい晩だった。障子紙の破れ目から松風が途絶えることなくそよそよと吹きこんできていたせいかもしれない。勝四郎は寝苦しさを覚えることなく明け方まで、旅の疲れと帰宅した安心感からぐっすりと、寝入ったのである。 ──五更、というから、現代でいえば午前4時から6時の間。夏であるから空が白んで太陽が昇る頃だった。 幾ら涼しい夜だったとはいえ、流石に寒さを感じた。勝四郎は寝ぼけ眼のまま、そこにあるはずの夜着を被ろうと、手を伸ばして探った。なにやら、さやさやいう音が耳朶をくすぐるのに気附き、今度は本当に目を覚ました。 顔にひんやりとしたなにかが触れた。触れた、というよりは、零れてきた、という方が正しいか。おや、雨漏りでもしているのかな。勝四郎はぼんやりした頭でそんな風に考えた。が、それはすぐに新たな疑問に打ち消された──昨夜、雨なんて降ったっけ? 勝四郎はその瞬間、..

  • 第3452日目2/2 〈『LLSS』S2#05感想文について。〉

    標題の件、以下のように申しあげます。 本来なら既にお披露目されているはずの『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第05話感想文ですが、明日中に公開致します。 鬼塚夏美の愚人ぶり人格破綻者ぶりに腸煮えくり返る思いを抱くも、数日かけてどうにか抑えられるようになりましたので、上記のように申しあげる次第。 感想執筆等のため観返して再燃する可能性極めて濃厚ながら、最終話まで感想を書くと決めてしまった以上、今回(とおそらく来週の第06話も)は事務的にであっても片附けてしまおう、というわけであります。文章は感情を暴走させる、といいますのでその点はくれぐれも自重して。 単なるヒール役ではない、ただの精神構造と思考回路に重篤な欠損あるキャラクターを『ラブライブ!』シリーズでお目に掛かるとはね……。 うーん、かのんたちは株式会社オニナッツに対して法的措置を講じて、契約撤回を申し出ること..

  • 第3452日目1/2 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。5/9〉

    女の声が返ってきた。1日とて忘れたことのない、──記憶にある、若々しく溌溂とした声ではなかったけれど。随分とねびたれた(年齢を感じさせる)声ではあったけれど──たしかに妻の声である。夢ではないか? 否、現実だ。そうすぐに信じた。 勝四郎は震える声で、家のなかの女性──妻宮木にいった。 「俺だよ、宮木。勝四郎だ。随分と待たせてしまったが、いま京都から着いたところだ」われながら喉の奥から絞り出したみたいな声だった。「まさか、まだここにお前が住んでいるなんて……知る人のいなくなった浅茅が原に、まさかお前が独りで……」 刹那の後、扉の向こうで閂を外す重い音がした。それから、そっと静かに、扉が開かれてゆく。燈火の灯るのを背にして顔を覗かせた女人は、咨、幾分やつれこそしたものの、かつての面影を面に残した宮木である。 屋内からの明かりが、暗がりのなかを進んできた勝四郎の目には眩しく感じ..

  • 第3451日目2/2 〈このニュースに接したのも、「なにかのご縁」です。〉

    6753 08月16日 始値1,035円 終値1,024円 08月17日 始値1,031円 終値1,051円 病癒えて復調しつつあるこの1週間、自宅で購読する以外の新聞をコンビニで買って目を通している。エッセイ執筆準備の過程で新聞活用術・勉強術の類の本を読んでいるうち、その熱にあてられていろいろ買いこみ、各紙のカラーの違いや同じ内容の記事の読み比べを楽しむようになったのだ。そうした本に書かれているような、或る新聞では報じているが他では報じていないものがあることを、自分でも知った。 シャープが「液晶事業への回帰を進めている」と報じたのは、08月17日付朝日新聞の経済欄、中村建太氏の署名記事。 同社の液晶事業と聞いて株主でなくても脳裏を過ぎるのは、AQUOSの華々しいCMと、中国や台湾の新興メーカーに圧されて売上げが激減したニュースだ。一消費者としてはこれを以て日本は..

  • 第3451日目1/2 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。4/9〉

    世の動乱は箱根山の向こうの関八州のみに留まらず、次第次第に全国へ飛び火してゆく。飛び火した先では新たな動乱が生まれた。京都も例外でない。 まず、隣接する河内国で畠山家[18]の家督争いが勃発した。同族相食む争いは解決の糸口の見えぬまま泥沼化していった。3代将軍義満によって南北朝が統一[19]されて以後──少なくとも外見上は──泰平を謳歌していた都を、キナ臭い空気が覆った。人心も落ち着きを欠いていった。 その京都も災いに見舞われた。春のことだ。疫病が蔓延して、多くの人が命を落とした。往来には屍が棄てられ、積みあげられ、死臭が漂った。その光景は、あたかも人の世の終わりが現出したようだ。──罹患を免れて次の日を迎えられた人は、屍が無造作に打ち棄てられた町の様子を目にして、心の限りに悲しく、痛ましく思い、同時に、無情、ということを思わずにいられなかったのである……。 勝四郎も、件の光..

  • 第3450日目2/2 〈わが家の戦争体験。〜〈昭和から平成へ・特別編〉〉

    母方の祖父は戦時中、特高だかに拘留されて、2日程ながら留置所に入れられたそうだ。 小さいながらも商社の小売り部門に勤めていた祖父は当時、食料品の管理等を任されていた。その倉庫には砂糖や小麦粉など当時としては稀少品が保管されている。不勉強のため詳細は未詳だが、当時食料品倉庫には保管してよい食料と保管してはいけない食料があり、祖父の勤務するその商店の倉庫には両方が保管されていた由。 或る日。特高だかが来て倉庫の保管物をチェックし始めた。そこには、保管していてはいけない食料があった。それが、砂糖である。戦時中の砂糖は稀少品どころか贅沢品だ(輸入困難となっていたため)。ゆえに祖父は引っ張られた。 本来ならば商店の社長が引っ張られるところを、なぜ祖父がそうした目に遭ったのかわからない。社長はまだ若かったから、とか、そんな話を聞いたが、もはや実際は闇の向こうである。また、2日とはいえ拘留..

  • 第3450日目1/2 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。3/9〉

    さて、こちらは西国の勝四郎である。関東で多くの命が失われ、貧窮の一途を辿っていたのに対し、〈禅の精神に基づく簡素さと、幽玄・侘びを基調とした〉当時の京都文化[09]は華美を好む傾向がな装いが流行りだった。そのせいで勝四郎が持参した足利染めの絹は飛ぶように売れ[10]、思わぬ財産を築くことができた。 勝四郎はホクホク顔で売り上げを数え、その一方で帰郷の準備を始めもした。そんなかれのまわりでいろいろな人が様々な、東国にまつわる噂話を囁いている。その内容は気持ちを重くし、不安にさせ、帰郷準備の手を休ませるにじゅうぶんであった。 京都の人の口の端に上り、勝四郎の心をザワザワさせた噂話とは、大体次のようなものであった。曰く、── 上杉の軍勢が鎌倉攻めしてこれを陥落(オト)し、遠近へ四散した鎌倉の残党を追討している。勝四郎の故郷のあたりも戦渦に巻きこまれて、いまや住む人もいない荒れ地とな..

  • 第3449日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。2/9〉

    その年、享徳4(1455)年夏6月。遂に、関東で大きな戦いが始まった。後に、享徳の乱、と呼ばれる戦である。当時、関東支配の中枢を担う鎌倉には鎌倉公方という、たとえていえば地方長官がおり、その補佐役として、関東管領、という役職が設けられていた。 勝四郎が京都へ出発したその年、鎌倉公方には足利成氏が、関東管領には上杉憲忠が、それぞれ就いていた。 以前から折り合いの悪かった2人だが、享徳4年6月、それは決定的な局面を迎えた。即ち、鎌倉公方による関東管領の謀殺、である。これをきっかけに足利成氏は、鎌倉から上杉氏とそれに味方する勢力を一掃しようと企てた。 それを知るや幕府はただちに、殺された憲忠の弟、房顕を後任の関東管領に任命し、それを頭とする軍勢を差し向けた。幕府軍は鎌倉に到着すると、公方の館を跡形もなく焼き払った。足利成氏は自分の所領がある下総国古河へ逃れたが、幕府軍との戦闘は続け..

  • 第3448日目 〈現代語訳「浅茅が宿」;上田秋成『雨月物語』より。1/9〉

    足利幕府が8代将軍、義政[01]の時代である。あづま路の道の果てよりもなお奥つ方、下総国は真間と呼ばれる里に勝四郎という男がいた。 祖父の代からこの里に住んでいて、田畑を多く所有している。そのためもあって家はだいぶ裕福であった。 そうした家に3代目として生まれた勝四郎は、優しいというてしまえばそれまでだが、生まれながらにしてざっくばらんな性格で、物事をあまり深く考えぬ人であった。それが災いして家業にあまり身を入れることなかったため、家はかれの代になるとたちまち傾き、親族郎党の鼻つまみ者、厄介者となってしまったのである。 が、そんな勝四郎にもそれを気に病み、失地回復を図りたい、というつもりはあったらしい。どうにかして落ちぶれたわが家を再興する手段はないものか、とあれこれ思案に暮れていた。 その頃、足利染め[02]の絹の取引で京都から関東へ毎年来ている、雀部の曾次、という人が..

  • 第3447日目 〈『クルアーン』を買ってきた。〉

    『コーラン』はイスラム教の聖典。ムハンマドが西暦610年から約23年に渡って、アッラーの神から啓示を受けた内容を記した書物、である。『クルアーン』とも表記されるが、こちらは聖典をアラビア語読みしたもので、正確には定冠詞を伴って『アル=クルアーン』。『コーラン』とは日本で慣習化した欧州語由来の読みという。本稿では以後、『クルアーン』と表記する。 アラビア語で書かれた『クルアーン』のみを唯一とし、各国語に訳された『クルアーン』は「その国の言語で書かれた解説書」という立場しか持たぬ。 と或る新古書店で『クルアーン』を買った。世界三大宗教の聖典を新古書店に売った人もどうかと思うが、流石に買ったわたくしが意見する話ではないか。え、価格? 定価約2,900円のものが税込み約1,900円でした。ほんと、なんだかなぁ、だよね、恵さん。 ずっと本ブログをお読みになっている方のなかにはご記憶の方..

  • 第3446日目 〈シー・イー・オー、鬼塚夏美、〉

    まさか『ラブライブ!』で「日経平均」という単語を聞く日が来ようとは! 正直なところ、あの瞬間は耳を疑い、違うアニメを観ているのか、と錯覚もし。──むろんそんなことはない、07月24日放送の『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第02話「2年生と1年生」からの一コマだ。 さっそくではあるが、件の発言が飛び出した状況を確認しておこう。きなこが四季に促されて、メイをスクールアイドルに誘う場面でのこと。時間にして09分12秒-09分32秒の場面。曰く、── きな子;ほかの1年生かあ。 夏美;ナッツー! きな子;あ……? 夏美; (涙目で)これは想定外ですの〜。このままでは今月の目標が……。マニー、マニー、マニィー〜! (横目で夏美を見るきな子。「この人はないわぁ」というような眼差しがなんともいえぬ風情を醸している) きな子;──あっ! (メイをスクールアイド..

  • 第3445日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第04話を観ました。〉

    遅ればせながら『LLSS』S2#04「科学室の2人」の感想文です。だいぶ日数があいてしまった。 悪質な夏風邪のぶり返しもあって書こう、書こうと思いながら気怠さや疲労を理由に日1日と先延ばしにしてきましたが、流石にもうこれ以上の延滞は難しいと判断。次回第05話放送を前にした今日、まだ若干熱っぽさと倦怠の残る身体に鞭打ってキーボードに向かっている次第です。 なお本稿は買ったばかりの有線キーボードの慣熟テストを兼ねているため、いつもより分量がちょっとだけ少なくなることを、あらかじめお断りしておきます。 ○ 今回は前回予告通り、米女メイと若菜四季のLiella!加入回。 初登場時から限界オタクぶりが噂され、回を追うごとにその素顔が視聴者の前に露わとなっていったメイですが、一方でスクールアイドル好きを若菜四季以外の誰かに察せられるのを厭うて、きな子とクラスメイトがスクール..

  • 第3444日目 〈病癒えたる者の感謝の言葉。〉

    1回だけ気紛れに更新して以来音沙汰なしの本ブログでしたが、本日から定時更新を再開します。更新しようとしなかろうとアクセス数にさしたる変化なく、相変わらず時間帯によってアクセス数ゼロというこれまで経験したこと稀なる不穏な出来事あると雖も、却って気が晴れましたので(納得)、不遜な態度に更なる磨きをかけて(呵々大笑)更新してゆきます! とりあえず一昨日の昼間にようやく37度台に熱が下がり、翌日つまり昨日の午前からずっと平熱に戻って上昇する心配なしと判断、床上げしました。久しぶりのわが家……文字通り目と鼻の先にあるわが家に帰るのがこんなに嬉しくて、こんなに喜ばしいことだとは!! 歌おう、感電する程の歓びを!!! そうして独りの時間;最後の箇所に至って、気持ちを落ち着けて読もうと思い読み止して、なぜか数ヶ月が過ぎてしまっていた遠藤周作『キリストの誕生』を読了し、徳富蘇峰『近世日本国民史』..

  • 第3444日目 〈今月誕生日のと或る1人の女の子に。〉

    今月で25歳になる信州の女の子へ。 もうご結婚なさってお子様も生まれている頃かと存じます。末永くお幸せにお暮らしください。 あなたと一緒に仕事していた1年間は、色あせない思い出として残っています。良くも悪くも。 С днём рождения. Пока!◆

  • 第3443日目 〈病床で読む本について、つぶやき・なう。〉

    収まりそうにない咳と喉の痛みに悩まされて、全然眠れない。というわけで、今日は(暇つぶしを兼ねて)ブログ更新。『ラブライブ!スーパースター!!』第2期第04話の感想を書きたいが、そんな体力はない。 ノートPCほか荷物少々を携えていまも自主隔離、継続中。誰かの息吹も気配も、言葉も感じられないのが溜まらなく淋しい。ふと目を覚ました夜中、天井を見あげて何処にいるのか一瞬、わからなくなる。 プルーストの語り手ではないが輾転反側して、寝るのを(ちょっとだけ)諦めて枕許の本へ手を伸ばす。いちばん上にあった本は、寝こむ前々日に買いこんだものだ。未読である。楽しみにして巻を開いてページを繰ったところ、──これは病床で読む本ではない、と早々に悟り、放り出した。集中力を継続させること困難ないまのわたくしにとって、隔離先に持ちこんだ本はどれもそこで読むのに適さない本だったのだ……。 諦めて部屋の電気..

  • 第3442日目 〈コロナに非ず、但し発熱上昇中。〉

    ただいま体温、39.4度。数日前から喉の調子がおかしかったり、倦怠感を覚えるようなことがあった。でも、それでも体温は37.9度を超えることはなかったんだよなぁ。 既にコロナに非ず、の診断は受けているけれど、母と奥方様と娘に感染らぬよう敷地内のアパートの1室に自主隔離。ノートPCと本と布団を抱えて家を出る父を、娘が不思議そうな顔で見ているが、許せ、お姫さま、君のためなのだ。近いうちに帰ってくるからね。 また、上記の理由により数日、ブログをお休みします。◆

  • 第3441日目 〈メモワール〉

    9715 3,875円 4708 1,106円 (8031 2,967.5円) ただし、わたしたちがここで実名を挙げたのは、いずれも公職をもつかそれに準ずる立場にいた強い人たちである。本書を通じ、「弱い者いじめ」をした部分は1カ所もない。 鈴木宗男・佐藤優『反省』P11(「はじめに」より アスコム 2007/06) (本書では)研修生として親しい関係にあった武藤君との距離ができていく物語が進行してゆく。(中略)私が武藤君と会話を交わすことは、生涯ないと思う。しかし、武藤君が研修生時代の私にとってかけがえのない友人であったという記憶は一生消えない。 佐藤優『紳士協定 私のイギリス物語』P314-5(「あとがき」より 新潮社 2012/03) ○ コールセンター業界でのメモワールを概ね実名で書き続けています。まだ終わりは見えないが、お披露目の予定はありま..

  • 第3440日目 〈北極星の役割を果たした《第九》。──もはや筆を執ることなき「1枚のレコード」から〉

    楽聖ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの第九交響曲に多くの録音ありと雖も、わたくしにとって「この1枚」といえるのは、最晩年のカラヤンとベルリン・フィルの1983年盤をおいて他にない。 「苦悩を克服して歓喜に至る」──ベートーヴェン生涯の思想は、紆余曲折を経た後、遂にこの畢生の名作で結実した。 カラヤンの演奏も、まるで己の生涯を振り返るようにして成った、唯一無二の名演といえまいか。既に関係悪化の頂点に達していた指揮者とオーケストラであっても、本気になれば進行中の確執など思わせもせぬ、力強く生命力に満ちた演奏を物すのだ。 これを特に思い出に残る1枚として挙げるのは、これまでの人生でいつも、北極星のような役割を果たしてきたからだ。目標としていた夢を見失いかけたとき、壁に突き当たって思い悩んだとき、常に道標となり、立って前に進む力を与えてくれたのは、この《合唱》交響曲であった。 ..

  • 第3439日目 〈机に積みあげた本から始まる独り言。〉

    自分で稼いだなけなしのお金を叩いて本を買え。渡部昇一始め誰彼が異口同音にいうことだ。 買ってきたらひとまず机の上に積み重ねて、これだけ読まねばならんのだ、と自分にプレッシャーをかけろ。立花隆は『知のソフトウェア』(P108 講談社現代新書 1984/03)で説く。 ──今日、久しぶりに都内に出て、新古書店と新刊書店を回り、昨日買った本とあわせて机の上に積みあげてみた(古書店が含まれていないのは、今日の行動範囲から大きく外れていたためである)。うーん、壮観である。定規で測ってみたら、47センチばかしあった。改めて;うーん、壮観だ。 いつ頃からの習慣か忘れたけれど、どの本も買ったその日にざっとではあれ目は通すようにしている。勿論、頭のなかにはぼんやりした印象しか残っていない。でも意外と、キーワードや引っ掛かる箇所というのは朧ろ気ながら記憶に刻まれるようだ。 もっともそれゆえに..

  • 第3438日目 〈お披露目のお知らせ。〉

    かねて進捗をお伝えしていた『雨月物語』〜「浅茅が宿」現代語訳のお披露目は、08月第3週から行います。 註釈やコメントがすべて反映できたからではありません。というか、そのあたりの作業はまったく手を着けていない状態。それでも敢えて斯様に告知するのは、〆切のある方が真面目に、計画的に取り組むから。これ、プロもアマも関係ない、森羅万象の真実なのですよ……。 まずは上記、報告させていただきます。◆

  • 第3437日目 〈『ラブライブ!スーパースター!!』第2期03話を観ました。〉

    神回となることが宿命づけられた感のある第03話「優勝候補」。『ラブライブ!スーパースター!!』第1期第03話はかのんと可可が初めてステージを踏む回、換言すればかのんが過去のトラウマを乗り越えてふたたび歌を取り戻した<復活>の回でした。 それでは昨日の第2期第03話はどうであったか? 正直なところ、神回、の定義がよくわからないのですが──個人の嗜好で左右する部分もありましょうからね──、第2期にさしたる期待を抱かぬまま観始めてそのまま、やっぱり追っ掛けよう、と決めたわたくしには、紛うことなき<神回>たり得た回でありました。 では、どのような点に触れて、斯く思うたか? まずなによりもタイトル回収がされた点、1年生にスクールアイドルの愉しさが伝わった点、メイがスクールアイドルに入れこんでいるというよりはLiella!の熱狂的隠れファンたることが白日の下に曝された点、すみれと可可の掛..

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