chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館) https://blog.goo.ne.jp/avantgarde-october

「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!

財部剣人
フォロー
住所
未設定
出身
茨城県
ブログ村参加

2010/03/19

arrow_drop_down
  • 第一部 序章と第1〜5章のバックナンバー

    財部剣人です!第三部の完結に向けてがんばっていきますので、どうか乞うご期待!「マーメイドクロニクルズ」第一部神々がダイスを振る刻篇あらすじ深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの助太刀には天使たちがつくことになる。人間界に送り込まれたナオミは、一人の...第一部序章と第1〜5章のバックナンバー

  • 第一部 第5章−11 滅びへの道

    水と緑と空気と大地のエコシステムは、二十一世紀の声を待たずに完膚なきまでに破壊されようとしていた。オゾン層の破壊、地球温暖化、森林地帯の消滅などはほんの微熱に過ぎないほど、地球という「病人」の容態は悪化していた。警鐘を鳴らそうとする者には利益追求の権化の企業群と手先の政治屋たちによって、「狂信的な環境保護主義者」というレッテルが貼られた。ガイアにとって最大の脅威はカチカチと音を立てる人口時限爆弾だった。一九五〇年に二十五億人だった人類は、二〇〇〇年までに人口六十億を突破し、二〇五〇年までには九十億、あるいは百億に達すると予想されていた。わずか百年間で、それは四倍にもならんとしていた。ネズミ算ならぬ「人類算」という言葉が必要だった。気の遠くなるような歳月をかけて自然が作り出したエネルギー資源も、人類の手にかかると...第一部第5章−11滅びへの道

  • 第一部 第5章−10 哲学と歴史学

    会社の建て直しが一段落するとマクミラは、ヌーヴェルヴァーグ財団が所有する図書館で毎日を過ごすようになった。名門大学の図書館に匹敵する蔵書数を誇るだけでなく、宗教、哲学、歴史、神秘学などの分野では世界有数の文献がオーディオ化されていた。しかも、盲目のマクミラのためにどんな言語で書かれた文献も短時間で点字化する設備と人員が用意されていた。彼女は、まず哲学を調べた。冥界に来た哲学者や教祖の誰もが「なぜ人間は生きるのか」という問いに答えを出せなかったという話が気になっていたからだった。調べ出すと、ほとんどの哲学書はくだらない代物だった。哲学者とはまるで最初から存在しない埋蔵金のありかを捜そうとする山師だった。ニーチェにだけは、にやりとさせられたが答えが提示されているとは思えなかった。まあ、答えがないと開き直っている分だ...第一部第5章−10哲学と歴史学

  • 第一部 第5章−9 ようこそファンハウスへ

    列車がぶつかると、お化け屋敷そっくりのドアがギーッと音を立てて観音開きに割れた。終点に着いたのだ。巨大なベッドに男が横たわっていた。こぼれ落ちそうなほど巨大な両眼、不自然なほど高いワシ鼻、ナイフで刻み込んだような深いシワ。男は、南ドイツのバートヴァルゼーの魔女の仮面をかぶっていた。ジェフが真っ黒なゆりかごに寝かされていたマクミラを紹介した。「パパ、娘のマクミラです」「長生きはするものじゃ。麝香の香りを持つ赤子にまさか巡り会えるとは。いや、久しぶりというべきか」ドイツ訛りの英語はしゃがれており相当の年寄りとわかった。「わたしをしってるのでちゅか?」「いかにも」「なぜ?」「儂の名前が、かつてパラケルススだったと言えばわかるかね」赤子は、惚けたような、怒ったような顔をした。「ホッホッホッ興奮させてしまったね。すべては...第一部第5章−9ようこそファンハウスへ

  • 第一部 第5章−8 人間のくせに?

    気づくと机上で真っ黒なベビークリフが揺れていた。闇夜のように不吉な思いがよぎった。まあ、最後の願いくらい聞いてやっても罰はあたるまい。ベイビーの顔を見たらおいとましてこの会社の精算の算段でもすることにしようと思い直した。「お名前は?」「マクミラと言います」「めずらしいお名前ですな。パパに似てかわいいお顔をしてま・・・」最後の部分は、声にならなかった。赤ん坊のするどい爪がのどぶえを絞りあげたからだった。助けを求めて声を絞りだそうとするが、ただ意味のないうめき声だけが漏れる。「いいこでちゅね。もうすこしそうちてなちゃい」暗い影が近寄ると、首筋に冷たい唇を当てられたような気がした。その後、貧血を起こしたような気分になって気が遠くなっていった。その後、彼は追加融資を破格の条件で行う契約書を締結すると、最高級マンションの...第一部第5章−8人間のくせに?

  • 第一部 第5章−7 ヌーヴェルヴァーグ・シニア

    一九七二年秋。ここ数ヶ月でジェフェリー・ヌーヴェルヴァーグが行った改革は見事の一言に尽きた。賠償起訴を乗り切ったジェフは、遊休資産を次々有利な条件で売却し、リストラを徹底的に行った。さらにヨーロッパの製薬会社と提携話を成立させ、あっと言う間にヌーヴェルヴァーグ製薬の業績を回復させてしまった。社内の雰囲気も一変した。「わかるかい。頭のよい者が生き残るでもなければ、強い者が生き残るのでもない。変化に適応出来る者だけが生き残るのだ。ピンチは今まで変えられなかったシステムを変えるチャンスなのだ。だが、ピンチをピンチと認識出来ない者が社内にいたとしたらそれこそピンチだが」深夜にしか開かれなくなった会議でジェフが発言すると取締役連中の背筋が引き締まった。お坊ちゃまと思われていた彼からおどおどした雰囲気が消えて自信満々に物事...第一部第5章−7ヌーヴェルヴァーグ・シニア

  • 第一部 第5章−6 生きる目的

    「つくづくおもしろい子ね」マウスピークスは考える様子をした。「『人生はただ歩きまわる影法師、哀れな役者だ』。聞いたことある?」「はい」夏海が持っていた教科書で見かけたことがあった。「そう。でもわたしには、そこまでシニカルには考えられない」「シニカルでしょうか?」「文学的ではあるけれどシニカルとは思わないかな。わたしたちは、台本のない芝居を演じてるようなものだわ。『人生』を生きる。それはあなたがさっきしたように階段を上るようなもの。さまざまな出会い、楽しいこと、苦しいこともあって。時には立ち止まって、踊り場で休むことも必要。どこまで上れるかは誰も知らないし、最後に何が待っているかもわからない。他人の階段がどうなっているかもわからない。誰かと一緒に行くこともあれば途中から別れ別れになることもある。でも、あなたがみた...第一部第5章−6生きる目的

  • 第一部 第5章−5 ホモ・コントラバーシア

    少し歩いただけで足が痛み出す童話の人魚姫とは違って、ナオミの足は丈夫だった。少女時代の海岸遊びと訓練のたまものだった。講演が終わるとナオミはゴムまりのように弾んで階段をかけ抜けた。なぜ彼女はマウスピークスとの邂逅にそれほどまで興奮したのだろう。悩み続けてきた問題の答えが与えられる予感を得たせいかも知れなかった。ドアをノックすると返事を待つ間さえももどかしくドアを開けた。「元気のいいお嬢さん。階段を段飛ばしに上る音が聞こえたわよ」マウスピークスは巨体をカウチに沈めていた。竜延香・・・・・・ナオミが入ってきた瞬間、かすかに漂う香水に気づいた。興奮した犬のように息を切らしたナオミは言った。「すいません。二段飛ばしに来ました。ナオミ・アプリオールと言います」「つっ立ってないでおすわりなさい。何か聞きたいことがあるんでし...第一部第5章−5ホモ・コントラバーシア

  • 第一部 第5章−4 マウスピークスかく語りき

    「一九五〇年代に政治演説研究をしていた英文学部所属の学者たちが始めたのがコミュニケーション学部の前身になったレトリック学部よ。古(いにしえ)の哲人たちは『思索』と『批評』の両方をしていたのに、いつのまにか批評は哲学者の仕事ではなくなった。英文学部を飛び出した学者たちは文学という虚構の言説の批評に不満を持って、現実世界の言説の批評を目指してコミュニケーション学を発祥させた。アリストテレスの『レトリカ』は単なる美辞麗句を弄することを教えた本じゃない。いかなる場合にも可能な説得の手段を見つける能力を教える本よ。さらにプラトン以前に雄弁術を教えたソフィストと呼ばれた哲学者たちに始まる二千三百年の伝統を持つ学問、それがコミュニケーション学なの」マウスピークスは、コーヒーを口にした。「この後はくわしい説明を要しない。中西部...第一部第5章−4マウスピークスかく語りき

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、財部剣人さんをフォローしませんか?

ハンドル名
財部剣人さん
ブログタイトル
財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館)
フォロー
財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館)

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用