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飲んじゃ兄(ニィ)
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佐倉市
出身
葛飾区
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2010/03/19

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  • 僕が僕でなくなるとき・・・35

    三十五 寝顔を見つめながら昔を想う橙の心にはっきりと彼の姿が浮き上がった。 母の前を何度も何度も行きかう。必死にボールを蹴り追いかけてはつま先を使いはじいた。 得意な彼の表情は、その母の視線を意識し

  • 僕が僕でなくなるとき・・・33

    三十三 狐を呼び込む餌は出来ていた。 この場合、呼び込むというよりかは、注目せざるを得ない状況に陥れたと言った方が正解であろう。 結果として彼女は足かせを付けられたまま、明かりの乏しい地下の、外部

  • 僕が僕でなくなるとき・・・34

    三十四 運よく彼女は刺客よりも先に大黒と接触することができた。 民家も混じる路地の、随分と入りくんだ、細く街灯もあまり役に立たない様な袋小路に立つ、いたってシンプルな佇まいの小料理屋で仕事仲間と何や

  • 僕が僕でなくなるとき・・・32

    三十二 「シュウ君といったわよね?」 彼女は画面から目を放しピーターの顔を見たうえで、すぐにシュウの方に視点を移した。 「あなた、奇妙な音……聞いたこと……あって?」 音という響きに敏感であった彼に

  • 僕が僕でなくなるとき・・・31

    三十一 また一人、外にいる者と同じ簡易制服のような薄手の上着の男がテントの中に入ってきた。 胸元には朝顔の花のような紋章がつけられていた。 「どうやら同じ足跡のようです」 重々しい空気をかもしつ

  • 僕が僕でなくなるとき・・・30

    三十 ドッペルゲンガ―なるものの研究はすでに一世紀前に終わっている。 これ以上の学術的な成果は期待され得ないと結論付けられてしまっていたのである。 ただ、一部の信者のみ、同体を見ただの他国にいるだ

  • 僕が僕でなくなるとき・・・29

    二十九 美しい音色だ。 隙間風の雑音の上に丁寧に雅楽を奏で直すことでこの部屋に澄んだ時をもたらす。 それは、波立つ湖面に凪ぎを広がるように心の落ち着きを取り戻した。また、指揮者がタクトを振りかざ

  • 僕が僕でなくなるとき・・・28

    二十八 橙を車から抱え出した利二は辺りを見渡し横になれる場所を探した。 廃墟とは言いながらも、部屋らしき格好はとどめ、また床はまだ十分に認められる。 井草はささくれ立ち、所々穴が開き朽ちてはいる。そ

  • 僕が僕でなくなるとき・・・27

    二十七 シュウはバスの中にいた。何かに導かれるように虚ろな眼差しで一段高くなった、一番後の端の席に腰かけていた。 利二の問い掛けにも応えずすうっと立ち上がり、家の、玄関の木戸を跨いでからこうしている

  • 僕が僕でなくなるとき・・・25

    二十五 「橙の忠告は嘘だと思ったんだ。はったりとな。だからそれからも構わず調べ続けた。最初は確かに気にはしておったが、一年も過ぎればそんなことは全く気にならなくなったもんさ」 そう言って後ろの書棚か

  • 僕が僕でなくなるとき・・・26

    二十六 この滝はかつての落水、緩やかに蛇行し滑らかに水を落とすそれなどではなかった。 まるで、女性の曲線美を思わせるような岩肌をスルスルと這う優しい感じなどではない。 利二はこの滝が以前と今と

  • 僕が僕でなくなるとき・・・24

    二十四 シュウの利二を見つめる瞳孔が大きくひらいた。 「私が古い文献の痕跡をたどってこの地の羽衣伝説を調べていると、随分と派手な今風のおなごがあらわれた。そして私の傍にやってくるなりこういうたんだ」

  • 僕が僕でなくなるとき・・・23

    二十三 シュウは再び利二の庭に立っていた。今度ばかりは八方塞がりであった。 それだけではない。父の生死がかかっている。 何か手立てはないか湖を探ったが手がかりはおろか、これだけ広大である湖面を監視す

  • 僕が僕でなくなるとき・・・22

    二十二 城の中に大きな足音のような地響きが続く。 「万事うまくいった。ようやく手に入ったぞ」 「来たか、五陰の主」 例のごとく、ずかずかとあらわれ、勝手を知ったように女の傍に座り込んだ。 「コレだコ

  • 僕が僕でなくなるとき・・・21

    二十一 シュウとピーターの顔が変わったのは低い山並みがきれ視界が広がる中で、湖岸に沿って続く道の、繰り返し現れるカーブの、その最後と思われる箇所に差し掛かった時であった。 「お父さんの車だ」 ピック

  • 僕が僕でなくなるとき・・・20

    二十 「ある人を経由して私のところにやってきましてね」 はじめてみたその石は全く化石のように模様が石の表面に見えるだけのものであった。 いわれれば確かに大きな魚や蛇の鱗のようにも見える。あるいは、

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