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中原中也インナープラネット http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/

中原中也ファンのブログです。

およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!

チューヤ
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2009/05/04

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  • 中原中也・夜の詩コレクション117/雨が降るぞえ――病棟挽歌

    雨が降るぞえ ――病棟挽歌 雨が、降るぞえ、雨が、降る。今宵は、雨が、降るぞえ、な。俺はこうして、病院に、しがねえ、暮しをしては、いる。 雨が、降るぞえ、雨が、降る。今宵は、雨が、降るぞえ、な。たんたら、らららら、らららら、ら、今宵は、雨が、降るぞえ、な。 人の、声さえ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション116/道修山夜曲

    道修山夜曲 星の降るよな夜(よる)でした松の林のその中に、僕は蹲(しゃが)んでおりました。 星の明りに照らされて、折(おり)しも通るあの汽車は今夜何処(どこ)までゆくのやら。 松には今夜風もなく、土はジットリ湿ってる。遠く近くの笹の葉も、しずもりかえっているばかり。 星...

  • 中原中也・夜の詩コレクション115/夏の夜の博覧会はかなしからずや

    夏の夜の博覧会はかなしからずや 夏の夜の、博覧会は、哀しからずや雨ちょと降りて、やがてもあがりぬ夏の夜の、博覧会は、哀しからずや 女房買物をなす間、かなしからずや象の前に余と坊やとはいぬ二人蹲(しゃが)んでいぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ 三人博覧会を出でぬかなしからずや不...

  • 中原中也・夜の詩コレクション114/暗い公園

    暗い公園             雨を含んだ暗い空の中に大きいポプラは聳(そそ)り立ち、その天頂(てっぺん)は殆(ほと)んど空に消え入っていた。 六月の宵(よい)、風暖く、公園の中に人気(ひとけ)はなかった。私はその日、なお少年であった。 ポプラは暗い空に聳り立ち、その黒々と見...

  • 中原中也・夜の詩コレクション113/断 片

    中原中也・夜の詩コレクション113/断 片 断 片 (人と話が合うも合わぬも所詮は血液型の問題ですよ)?…… 恋人よ! たとえ私がどのように今晩おまえを思っていようと、また、おまえが私をどのように思っていようと、百年の後には思いばかりか、肉体さえもが影をもとどめず、そして、冬の夜(よる...

  • 中原中也・夜の詩コレクション112/小唄二編

    小唄二編 一 しののめの、よるのうみにて汽笛鳴る。 心よ起きよ、目を覚ませ。 しののめの、よるのうみにて汽笛なる。 象の目玉の、汽笛鳴る。 二 僕は知ってる煙(けむ)が立つ 三原山には煙が立つ 行ってみたではないけれど 雪降りつもった朝(あした)...

  • 中原中也・夜の詩コレクション111/一夜分の歴史

    一夜分の歴史 その夜は雨が、泣くように降っていました。瓦はバリバリ、煎餅かなんぞのように、割れ易いものの音を立てていました。梅の樹に溜った雨滴(しずく)は、風が襲(おそ)うと、他の樹々のよりも荒っぽい音で、庭土の上に落ちていました。コーヒーに少し砂糖を多い目に入れ、ゆっくりと掻き混...

  • 中原中也・夜の詩コレクション110/夜半の嵐

    夜半の嵐 松吹く風よ、寒い夜(よ)のわれや憂き世にながらえてあどけなき、吾子(あこ)をしみればせぐくまるおもいをするよ、今日このごろ。 人のなさけの冷たくて、真(しん)はまことに響きなく……松吹く風よ、寒い夜の汝(なれ)より悲しきものはなし。 酔覚(よいざ)めの、寝覚めかなし...

  • 中原中也・夜の詩コレクション109/雲った秋

    雲った秋 1 或(あ)る日君は僕を見て嗤(わら)うだろう、あんまり蒼(あお)い顔しているとて、十一月の風に吹かれている、無花果(いちじく)の葉かなんかのようだ、棄てられた犬のようだとて。 まことにそれはそのようであり、犬よりもみじめであるかも知れぬのであり僕自身時折はそのように...

  • 中原中也・夜の詩コレクション108/桑名の駅

    桑名の駅 桑名の夜は暗かった蛙がコロコロ鳴いていた夜更の駅には駅長が綺麗(きれい)な砂利を敷き詰めたプラットホームに只(ただ)独りランプを持って立っていた 桑名の夜は暗かった蛙がコロコロ泣いていた焼蛤貝(やきはまぐり)の桑名とは此処(ここ)のことかと思ったから駅長さんに訊(...

  • 中原中也・夜の詩コレクション107/大島行葵丸にて ――夜十時の出帆

    大島行葵丸にて ――夜十時の出帆  夜の海より僕(ぼか)唾(つば)吐いた ポイ と音(おと)して唾とんでった 瞬間(しばし)浪間に唾白かったが じきに忽(たちま)ち見えなくなった 観音岬に燈台はひかりぐるりぐるりと射光(ひかり)は廻(まわ)った僕はゆるりと星空見上げた...

  • 中原中也・夜の詩コレクション106/十二月(しわす)の幻想

    十二月(しわす)の幻想 ウー……と、警笛が鳴ります、ウウウー……と、皆さん、これは何かの前兆です、皆さん!吃度(きっと)何かが起こります、夜の明け方に。吃度何かが夜の明け方に、起こると僕は感じるのです ――いや、そんなことはあり得ない、決して。そんなことはあり得ようわけがない。それ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション105/月夜とポプラ

    月夜とポプラ 木(こ)の下かげには幽霊がいるその幽霊は、生れたばかりのまだ翼(はね)弱いこうもりに似て、而(しか)もそれが君の命をやがては覘(ねら)おうと待構えている。(木の下かげには、こうもりがいる。)そのこうもりを君が捕って殺してしまえばいいようなもののそれは、影だ、手にはと...

  • 中原中也・夜の詩コレクション104/坊 や

    坊 や 山に清水が流れるようにその陽の照った山の上の硬い粘土の小さな溝を山に清水が流れるように 何も解せぬ僕の赤子(ぼーや)は今夜もこんなに寒い真夜中硬い粘土の小さな溝を流れる清水のように泣く 母親とては眠いので目が覚めたとて構いはせぬ赤子(ぼーや)は硬い粘土の溝を流れ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション103/誘蛾燈詠歌

    誘蛾燈詠歌 ほのかにほのかに、ともっているのはこれは一つの誘蛾燈(ゆうがとう)、稲田の中に秋の夜長のこの夜さ一と夜、ともっているのは誘蛾燈、ひときわ明るみひときわくらく銀河も流るるこの夜さ一と夜、稲田の此処(ここ)にともっているのは誘蛾燈、だあれも来ない稲田の中に、ともっているのは誘...

  • 中原中也・夜の詩コレクション102/星とピエロ

    星とピエロ 何、あれはな、空に吊るした銀紙じゃよ              こう、ボール紙を剪(き)って、それに銀紙を張る、それを綱(あみ)か何かで、空に吊るし上げる、するとそれが夜になって、空の奥であのように光るのじゃ。分ったか、さもなけりゃ空にあんあものはないのじゃ そりゃ学者共...

  • 中原中也・夜の詩コレクション101/野卑時代

    野卑時代 星は綺麗(きれい)と、誰でも云(い)うが、それは大概、ウソでしょう星を見る時、人はガッカリ自分の卑少(ひしょう)を、思い出すのだ 星を見る時、愉快な人は今時減多に、いるものでなく星を見る時、愉快な人は今時、孤独であるかもしれぬ それよ、混迷、卑怯(ひきょう)に野卑(...

  • 中原中也・夜の詩コレクション100/月下の告白 青山二郎に

    月下の告白 青山二郎に 劃然(かくぜん)とした石の稜(りょう)あばた面(づら)なる墓の石虫鳴く秋の此(こ)の夜(よ)さ一と夜月の光に明るい墓場にエジプト遺蹟(いせき)もなんのそのいとちんまりと落居(おちい)てござるこの僕は、生きながらえて此の先何を為すべきか石に腰掛け考えたれど...

  • 中原中也・夜の詩コレクション99/秋岸清凉居士

    秋岸清凉居士 消えていったのは、あれはあやめの花じゃろか?いいえいいえ、消えていったは、あれはなんとかいう花の紫の莟(つぼ)みであったじゃろ冬の来る夜に、省線の遠音とともに消えていったはあれはなんとかいう花の紫の莟みであったじゃろ ※ とある侘(わ)びしい踏切のほとり草は生...

  • 中原中也・夜の詩コレクション98/咏嘆調

    咏嘆調 悲しみは、何処(どこ)まででもつづく蛮土の夜の、お祭りのように、その宵(よい)のように、その夜更のように何処まででもつづく。 それは、夜と、湿気と、炬火(たいまつ)と、掻き傷と、野と草と、遠いい森の灯のように、頸(うなじ)をめぐり少しばかりの傷を負わせながら過ぎてゆく。 ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション97/夜明け

    夜明け 夜明けが来た。雀の声は生唾液(なまつばき)に似ていた。水仙(すいせん)は雨に濡(ぬ)れていようか? 水滴を付けて耀(かがや)いていようか?出て、それを見ようか? 人はまだ、誰も起きない。鶏(にわとり)が、遠くの方で鳴いている。――あれは悲しいので鳴くのだろうか?声を張上げて鳴いて...

  • 中原中也・夜の詩コレクション96/童 謡

    童 謡 しののめの、よるのうみにて汽笛鳴る。 心よ起きよ、目を醒(さ)ませ。 しののめの、よるのうみにて汽笛鳴る、 象の目玉の、汽笛鳴る。                                                                  ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション93/夏の記臆

    夏の記臆 温泉町のほの暗い町を、僕は歩いていた、ひどく俯(うつむ)いて。三味線(しゃみせん)の音や、女達の声や、走馬燈(まわりどうろ)が目に残っている。 其処(そこ)は直(す)ぐそばに海もあるので、夏の賑(にぎわ)いは甚(はなは)だしいものだった。銃器を掃除したボロギレの親しさを、...

  • 中原中也・夜の詩コレクション92/虫の声

    虫の声 夜が更(ふ)けて、一つの虫の声がある。 それはたしかに庭で鳴いたのだが、鳴き了(おわ)るや、それは彼処(かしこ)野原で鳴いたようにもおもわれる。 此処(ここ)と思い、彼処と思い、あやしげな思いに抱かれていると、 此処、庭の中からにこにことして、幽霊は立ち現われる。よく...

  • 中原中也・夜の詩コレクション92/虫の声

    虫の声 夜が更(ふ)けて、一つの虫の声がある。 それはたしかに庭で鳴いたのだが、鳴き了(おわ)るや、それは彼処(かしこ)野原で鳴いたようにもおもわれる。 此処(ここ)と思い、彼処と思い、あやしげな思いに抱かれていると、 此処、庭の中からにこにことして、幽霊は立ち現われる。よく...

  • 中原中也・夜の詩コレクション91/(宵の銀座は花束捧げ)

    (宵の銀座は花束捧げ) 宵(よい)の銀座は花束捧(ささ)げ、 舞うて踊って踊って舞うて、我等(われら)東京市民の上に、 今日は嬉(うれ)しい東京祭り 今宵(こよい)銀座のこの人混みを わけ往く心と心と心我等東京住いの身には、 何か誇りの、何かある。 心一つに、心と心...

  • 中原中也・夜の詩コレクション90/(とにもかくにも春である)

    (とにもかくにも春である)  ▲此(こ)の年、三原山に、自殺する者多かりき。  とにもかくにも春である、帝都は省線電車の上から見ると、トタン屋根と桜花(さくらばな)とのチャンポンである。花曇りの空は、その上にひろがって、何もかも、睡(ねむ)がっている。誰ももう、悩むことには馴れたの...

  • 中原中也・夜の詩コレクション89/Qu’est-ce que c’est?

    Qu’est-ce que c’est? 蛙が鳴くことも、月が空を泳ぐことも、僕がこうして何時(いつ)まで立っていることも、黒々と森が彼方(かなた)にあることも、これはみんな暗がりでとある時出っくわす、見知越(みしりご)しであるような初見であるような、あの歯の抜けた妖婆(ようば)のよ...

  • 中原中也・夜の詩コレクション88/(蛙等が、どんなに鳴こうと)

    (蛙等が、どんなに鳴こうと) 蛙等が、どんなに鳴こうと月が、どんなに空の遊泳術に秀でていようと、僕はそれらを忘れたいものと思っているもっと営々と、営々といとなみたいいとなみがもっとどこかにあるというような気がしている。 月が、どんなに空の遊泳術に秀でていようと、蛙等がどんなに鳴こう...

  • 中原中也・夜の詩コレクション87/(蛙等は月を見ない)

    (蛙等は月を見ない) 蛙等は月を見ない恐らく月の存在を知らない彼等(かれら)は彼等同志暗い沼の上で蛙同志いっせいに鳴いている。 月は彼等を知らない恐らく彼等の存在を思ってみたこともない月は緞子(どんす)の着物を着て姿勢を正し、月は長嘯(ちょうしょう)に忙がしい。 月は雲にかく...

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