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中原中也・夜の詩コレクション86/蛙 声
蛙 声 郊外では、夜は沼のように見える野原の中に、蛙が鳴く。 それは残酷な、消極も積極もない夏の夜の宿命のように、毎年のことだ。 郊外では、毎年のことだ今時分になると沼のような野原の中に、蛙が鳴く。 月のある晩もない晩も、いちように厳かな儀式のように義務のように、地平...
2020/06/30 07:28
中原中也・夜の詩コレクション85/(土を見るがいい)
(土を見るがいい) 土を見るがいい、土は水を含んで黒くのっかってる石ころだけは夜目にも白く、風は吹き、頸(くび)に寒く風は吹き、雨雲を呼び、にじられた草にはつらく、 風は吹き、樹の葉をそよぎ風は吹き、黒々と吹き葱(ねぎ)はすっぽりと立っているその葱を吹き、その葱の揺れ方は...
2020/06/29 04:31
中原中也・夜の詩コレクション84/(卓子に、俯いてする夢想にも倦きると)
(卓子に、俯いてする夢想にも倦きると) 卓子(テーブル)に、俯(うつむ)いてする夢想にも倦(あ)きると、僕は窓を開けて僕はみるのだ 星とその、背後の空と、 石盤の、冷たさに似て、 吹く風と、逐(お)いやらる、小さな雲と 窓を閉めれば星の空、その星の空その星の空? 否、否、...
2020/06/28 08:14
中原中也・夜の詩コレクション83/お会式の夜
お会式の夜 十月の十二日、池上の本門寺、東京はその夜、電車の終夜運転、来る年も、来る年も、私はその夜を歩きとおす、太鼓の音の、絶えないその夜を。 来る年にも、来る年にも、その夜はえてして風が吹く。吐(は)く息は、一年の、その夜頃から白くなる。遠くや近くで、太鼓の音は鳴っていて、頭...
2020/06/27 05:12
中原中也・夜の詩コレクション82/青木三造
青木三造 序歌の一 こころまこともあらざりき不実というにもあらざりきゆらりゆらりとゆらゆれる海のふかみの海草(うみくさ)のおぼれおぼれて、溺れたることをもしらでゆらゆれて ゆうべとなれば夕凪(ゆうなぎ)のかすかに青き空慕(した)いゆらりゆらりとゆれてある海の真底の小暗きに...
2020/06/26 12:04
中原中也・夜の詩コレクション82/Tableau Triste A・O・に。
Tableau Triste A・O・に。 私の心の、『過去』の画面の、右の端には、女の額(ひたい)の、大きい額のプロフィルがみえ、それは、野兎色(のうさぎいろ)のランプの光に仄照(ほのて)らされて、嘲弄的(ちょうろうてき)な、その生え際(ぎわ)に隈取(くまど)られている。 ...
2020/06/25 06:12
中原中也・夜の詩コレクション81/疲れやつれた美しい顔
疲れやつれた美しい顔 疲れやつれた美しい顔よ、私はおまえを愛す。そうあるべきがよかったかも知れない多くの元気な顔たちの中に、私は容易におまえを見付ける。 それはもう、疲れしぼみ、悔とさびしい微笑としか持ってはおらぬけれど、それは此(こ)の世の親しみのかずかずが、縺(もつ)れ合い、...
2020/06/24 06:59
中原中也・夜の詩コレクション80/酒場にて(定稿)
今晩ああして元気に語り合っている人々も、実は、元気ではないのです。 近代(いま)という今は尠(すくな)くも、あんな具合な元気さでいられる時代(とき)ではないのです。 諸君は僕を、「ほがらか」でないという。しかし、そんな定規(じょうぎ)みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。 ほ...
2020/06/23 04:50
中原中也・夜の詩コレクション79/酒場にて(初稿)
酒場にて(初稿) 今晩ああして元気に語り合っている人々も、実は元気ではないのです。 諸君は僕を「ほがらか」でないという。然(しか)し、そんな定規(じょうぎ)みたいな「ほがらか」は棄て給(たま)え。 ほんとのほがらかは、悲しい時に悲しいだけ悲しんでいられることでこそあれ。 さて、...
2020/06/22 07:47
中原中也・夜の詩コレクション78/(宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて)
(宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて) 宵(よい)に寝て、秋の夜中に目が覚めて汽車の汽笛の音(ね)を聞いた。 三富朽葉(くちば)よ、いまいずこ、 明治時代よ、人力も 今はすたれて瓦斯燈(ガスとう)は 記憶の彼方(かなた)に明滅す。 宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて汽車の汽笛...
2020/06/21 03:58
中原中也・夜の詩コレクション77/(月の光は音もなし)
(月の光は音もなし) 月の光は音もなし、虫の鳴いてる草の上月の光は溜(たま)ります 虫はなかなか鳴きまする月ははるかな空にいて見てはいますが聞こえない 虫は下界のためになき、月は上界照らすなり、虫は草にて鳴きまする。 やがて月にも聞えます、私は虫の紹介者月の世界の下僕...
2020/06/20 16:01
中原中也・夜の詩コレクション76/コキューの憶い出
コキューの憶い出 その夜私は、コンテで以(もっ)て自我像を画(か)いた風の吹いてるお会式(えしき)の夜でした 打叩(うちたた)く太鼓の音は風に消え、私の机の上ばかり、あかあかと明り、 女はどこで、何を話していたかは知る由(よし)もない私の肖顏(にがお)は、コンテに汚れ、 その上...
2020/06/19 05:15
中原中也・夜の詩コレクション75/(疲れやつれた美しい顔よ)
(疲れやつれた美しい顔よ) 疲れやつれた美しい顔よ、私はおまえを愛す。そうあるがよかったかも知れない多くの元気な顔たちの中に、私は容易におまえを見付ける。 それはもう、疲れしぼみ、悔とさびしい微笑としか持ってはおらぬけれど、それは此(こ)の世の親しみのかずかずが、縺(もつ)れ合い...
2020/06/18 04:38
中原中也・夜の詩コレクション74/(ポロリ、ポロリと死んでゆく)
(ポロリ、ポロリと死んでゆく) 俺の全身(ごたい)よ、雨に濡れ、 富士の裾野(すその)に倒れたれ 読人不詳 ポロリ、ポロ...
2020/06/17 06:01
中原中也・夜の詩コレクション73/(月はおぼろにかすむ夜に)
(月はおぼろにかすむ夜に) 月はおぼろにかすむ夜に、杉は、梢(こずえ)を 伸べていた。 (「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。) ...
2020/06/16 05:58
中原中也・夜の詩コレクション72/(秋の夜に)
(秋の夜に) 秋の夜に、僕は僕が破裂する夢を見て目が醒(さ)めた。 人類の背後には、はや暗雲が密集している多くの人はまだそのことに気が付かぬ 気が付いた所で、格別別様のことが出来だすわけではないのだが、気が付かれたら、諸君ももっと病的になられるであろう。 デカダン、サンボリスム...
2020/06/15 04:40
中原中也・夜の詩コレクション71/悲しき画面
悲しき画面 私の心の、『過去』の画面の、右の端には、女の額(ひたい)の、大きい額のプロフィルがみえ、それは、野兎色(のうさぎいろ)のランプの光に仄照(ほのて)らされて、嘲弄的(ちょうろうてき)な、その生(は)え際(ぎわ)に隈取(くまど)られている。 その眼眸(まなざし)は、画面の中には...
2020/06/14 04:47
中原中也・夜の詩コレクション70/夜 店
夜 店 アセチリンをともして、低い台の上に商品を並べていた、僕は昔の夜店を憶(おも)う。万年草(まんねんぐさ)を売りに出ていた、植木屋の爺々(じじい)を僕は憶う。 あの頃僕は快活であった、僕は生きることを喜んでいた。 今、夜店はすべて電気を用い、台は一般に高くされた。 僕...
2020/06/13 06:27
中原中也・夜の詩コレクション69/夜空と酒場
夜空と酒場 夜の空は、広大であった。その下に一軒の酒場があった。 空では星が閃(きら)めいていた。酒場では女が、馬鹿笑いしていた。 夜風は無情な、大浪(おおなみ)のようであった。酒場の明りは、外に洩(も)れていた。 私は酒場に、這入(はい)って行った。おそらく私は、馬鹿面(ば...
2020/06/12 07:58
中原中也・夜の詩コレクション68/Qu’est-ce que c’est que moi?
Qu’est-ce que c’est que moi? 私のなかで舞ってるものは、こおろぎでもない、秋の夜でもない。南洋の夜風でもない、椰子樹(やしのき)でもない。それの葉に吹く風でもないそれの梢(こずえ)と、すれすれにゆく雲でない月光でもない。つまり、その……サムシング。だ...
2020/06/11 04:27
中原中也・夜の詩コレクション67/(風のたよりに、沖のこと 聞けば)
(風のたよりに、沖のこと 聞けば) 風のたよりに、沖のこと 聞けば今夜は、可(か)なり漁(と)れそう、ゆっくり今頃夕飯食べてる。そろそろ夜焚(よだき)の、灯ともす船もある今は凪(なぎ)だが、夜中になれば少し荒れよう。 しらじらと夜のあけそめに、漁船らは、沖を出発、帰ってきた、港の朝...
2020/06/10 08:21
中原中也・夜の詩コレクション66/カフェーにて
カフェーにて 醉客の、さわがしさのなか、ギタアルのレコード鳴って、今晩も、わたしはここで、ちびちびと、飮み更(ふ)かします 人々は、挨拶交わし、杯の、やりとりをして、秋寄する、この宵をしも、これはまあ、きらびやかなことです わたくしは、しょんぼりとして、自然よりよいものは、...
2020/06/09 04:45
中原中也・夜の詩コレクション65/湖 上
湖 上 ポッカリ月が出ましたら、舟を浮べて出掛けましょう。波はヒタヒタ打つでしょう、風も少しはあるでしょう。 沖に出たらば暗いでしょう。櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音は昵懇(ちか)しいものに聞えましょう、あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。 月は聴き耳立てるでしょう、す...
2020/06/08 23:28
中原中也・夜の詩コレクション64/消えし希望
消えし希望 暗き空へと消えゆきぬわが若き日を燃えし希望は。 夏の夜の星の如(ごと)くは今もなお遠きみ空に見え隠る、今もなお。 暗き空へと消えゆきぬわが若き日の夢は希望は。 今はた此処(ここ)に打伏(うちふ)して獣の如くも、暗き思いす。 そが暗き思い何時(いつ)の日晴れん...
2020/06/07 08:48
中原中也・夜の詩コレクション63/頌 歌
頌 歌 出で発(た)たん!夏の夜は霧(きり)と野と星とに向って。出で発たん、夏の夜は一人して、身も世も軽く! この自由、おお!この自由!心なき世のいさかいと多忙なる思想を放ち、身に沁(し)みるみ空の中に 悲しみと喜びをもて、つつましく、かつはゆたけく、歌はなん古きしらべを...
2020/06/06 05:09
中原中也・夜の詩コレクション62/寒い夜の自我像
寒い夜の自我像 1 きらびやかでもないけれど、この一本の手綱(たづな)をはなさずこの陰暗の地域をすぎる!その志(こころざし)明らかなれば冬の夜を、我は嘆かず、人々の憔懆(しょうそう)のみの悲しみや憧れに引廻(ひきまわ)される女等の鼻唄を、わが瑣細(ささい)なる罰と感じそが、わ...
2020/06/05 08:26
中原中也・夜の詩コレクション61/幼年囚の歌
幼年囚の歌 1 こんなに酷(ひど)く後悔する自分を、それでも人は、苛(いじ)めなければならないのか?でもそれは、苛めるわけではないのか?そうせざるを得ないというのか? 人よ、君達は私の弱さを知らなさすぎる。夜も眠れずに、自らを嘆くこの男を、君達は知らないのだ、嘆きのために、果...
2020/06/04 08:21
中原中也・夜の詩コレクション60/秋の夜
秋の夜 夜霧(よぎり)が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨(うら)む。 外燈の下(もと)に来かかればなにか生活めいた思いをさせられ、暗闇にさしかかれば、死んだ娘達の歌声を聞く。 夜霧が深く冬が来るとみえる。森が黒く空を恨む。 深い草叢(くさむら)に虫が鳴いて、深...
2020/06/03 12:36
中原中也・夜の詩コレクション59/詩人の嘆き
詩人の嘆き 私の心よ怒るなよ、ほんとに燃えるは独りでだ、するとあとから何もかも、夕星(ゆうづつ)ばかりが見えてくる。 マダガスカルで出来たという、このまあ紙は夏の空、綺麗に笑ってそのあとで、ちっともこちらを見ないもの。 ああ喜びや悲しみや、みんな急いで逃げるもの。いろいろ...
2020/06/02 04:45
中原中也・夜の詩コレクション58/夏の夜
夏の夜 一 暗い空に鉄橋が架(か)かって、男や女がその上を通る。その一人々々が夫々(それぞれ)の生計(なりわい)の形をみせて、みんな黙って頷(うなず)いて歩るく。 吊られている赤や緑の薄汚いランプは、空いっぱいの鈍い風があたる。それは心もなげに燈(とも)っているのだが、燃え尽...
2020/06/01 14:49
2020年6月 (1件〜100件)
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