どんな内容なのか言葉で表現することは私にはできない。なぜなら、すくった途端に零れてしまう、もしくは蒸発してしまう物語群だから。最初の一文をまずはしっかりと握っておいてページをめくっていくのだが、いつのまにかそれは掌から消えている、感触もなく。読後感の言葉が水の面に浮かんでいる、それらを掬い上げようと手を伸ばす。けれどわずかの揺らぎであっけなく沈んでしまう、光を帯びて。果てしもない描写で緻密に埋められていく細部に目が眩み、だからこそ焦点が定まらずに足下が崩れる、もしくは三十度の傾斜にゆっくりと滑り落ちていく、為す術もなく。作者はたぶん、自分で書いた文章を読むのをことのほか愛でる(淫する)人なのだろうと思う。純粋に読む悦びを味合わせてくれた本でした。あまりにも漠とした感想なので、本文を少し。灰色のゼラチン質の光のな...金井美恵子短編集
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