夜も更けた頃。 「そうか。出来上がったか、」 初音は父に電話を掛けた。 「・・ありがとう。ほんま・・もう、びっくりしたわ、」 口を開くだけで泣けてきそうだった…
いろんな恋のカタチ。ちょこっと胸がきゅんとなるお話です。暇つぶしにケータイでも気軽に読めます!
ものすごく胸があったかくなって、ちょっぴり切ない気持ちになりたくなって書き始めました。私自身、もうそういう時間は通り過ぎてしまいましたが、もう一度そんな切ない時間を取り戻したい!
あれから初音からこの動画メールが特に説明もなく送られてきて。 例の件のことは全く音沙汰なし。 必ず返事をしますから の彼の言葉を信じるしかないのだが。 …
「ごめんなさいね。あなたに黙って、」 母の声は穏やかだった。 「いや。ええねんけど。でも・・北都会長の奥様とそんな関係だったとは。びっくりした、」 初音は部屋…
「今朝。NCに行ったら高原さんが徹夜で仕事してて。」 真緒はぼうっと話し始めた。 「あんなにすごい人なのに。めちゃくちゃ勉強してるんだよね。あたし。この年から…
「明るくしてたけど。相当傷ついただろうし。本当につらかっただろうし。それでも何とか立ち直って頑張ろうとも思っただろうし、」 母の言葉が真太郎の胸に突き刺さる。…
事業部を出ていくと、はす向かいにある秘書課から真太郎が出て来てばったり会ってしまった。 うっ・・ 真緒は一瞬足を止めたが絵にかいたような フン!! をしてその…
でも。 真緒はつっぷした格好のまま思った。 あたしが頑張ればいい。 高原さんのようにはなれなくても。 自分を生かせる分野の勉強をして。 資格を取って。 一人前…
「・・資格?」 真緒はポツリと言った。 「なんでもいいのよ。何か取れると自信にもなるし。これからの仕事に役立つかもしれないし。」 「なんか。考えもしなかったで…
「・・起業を軽く考えてるあいつの性根が許せないんだよ。ホント苦労もせずにこれまでのほほんと生きてきたくせに、」 そして絞り出すように真太郎は新聞をテーブルに乱…
南がそっと二人の間に入った。 「・・もう、やめよう。お互い傷つけたって何も生まれない、」 冷静にそう言った。 「・・あたしが。ホントに・・なんも考えてなくて。…
それにはカチンときて 「え、偉そうに言わないでよ!真太郎は昔から自分が頭がいいと思ってあたしのことなんかバカにして!自分一人でホクトの社長に収まったような顔し…
真緒は一大決心をしたように 「・・初音さんと。 野々村初音さんと一緒にやりたいんです!」 よく通る声で訴えた。 「・・・・」 それには真太郎も南も一瞬黙ってし…
初音はゆっくりと真緒に歩み寄り、右手で彼女の左の二の腕をそっと掴んだ。 びっくりして顔を上げた。 「・・ありがとう。ほんまに。ありがとう、」 優しい関西弁だっ…
真緒はただただ茫然として初音の言葉を受け止めていた。 「もうここには帰りたくない。ずっと東京で華やかな仕事をしていたい。そう思っている自分に気づいて。・・落ち…
それから。 祐奈は娘を迎えに行くから、と慌てて帰って行った。 「じゃ。また来てや。夏物のシャツの新作できたら送るわ、」 赤星もそのまま自分のテーラーに行ってし…
真緒は自分のグラスをコトっと置いた。 「あたしは。ずっとなんとなく生きてきたので。やりたいことさえ見つけられなくて。前に出たくても、今自分がどこにいるのかさえ…
「初音さん、やっぱり昔からモテモテでした?」 真緒が身を乗り出して二人に聞いた。 「そりゃモテモテに決まってるやん。顔良し、頭良し、性格良し。」 赤星が指を折…
自宅に戻って何が驚いたって。 「あ!おっかえり~~。長かったね!どこのホテル寄ってきたの~~???」 「もー、風太くんてば!そんな下衆なこと言っちゃダメ!!」…
後ずさりをしすぎて 「・・わっ!!!」 広場の淵の段差を踏み外して落ちてしまった。 「は、初音さん!!」 真緒が慌てて近づくと、80センチほどの段差を落ちてし…
毎日暑くて、しんどいですね・・ 年々暑くなるわ、自分は年を取ってるわで。 ホントしんどい って思う中。 またオリンピックがやってきて、終わりましたね・・ 東京…
彼のことが好き その思いは。 彼のその『感性』がとても好きで ずっと一緒に仕事をしたい という気持ちのすり替えだったのか。 真緒にはまだよくわからなかった。 …
初音はやや呆然としながらだらんと両手を垂らした。 そして彼女に背を向けた。 どうしよう・・ 呆れられたかな・・ 真緒はぎゅっと目を瞑った。 「・・ありが…
真緒はもう頭が混乱して。 このシチュエーションと、そして詰まりに詰まったこの思い。 この日初音と一緒になって作った料理や その素晴らしい仕上がり その美味しさ…
「ど、どういうことですか・・」 真緒は驚いて彼を見た。 「・・東京に天音の仕事ぶりを見に行きました。それを見ていて自分のやりたいことをもっともっとやってみたい…
初音はもう一度オーブンで温め直したパイ包みを持ってテーブルの上に置いた。 「真緒ちゃんは。今回仕事?」 赤星に聞かれてドキっとした。 「えーっと・・まあ・・」…
そこに 「こんちわーー」 赤星と祐奈がやってきた。 「・・あれ?」 初音が彼女を見て怪訝な表情をすると 「今日は彩乃がお友達の家にお泊りなの。だからあたしも…
台所のテーブルにはノートが置いてあり、そこにはたくさんの料理レシピが細かい文字とイラストで描かれていた。 「これ・・」 真緒はそれを手に取った。 「丹波焼の皿…
結果はどうあれ。 高野有希子の駆け落ちを後押ししたのが母ゆかりであることを思い出し、もし初音がこれを知ってしまったらどう思うだろうか と真緒は心配になってしま…
「や。おまえのやりたいことやればええんちゃうの。」 赤星は当たり前のように言った。 「だから!おれのやりたいことってなんやねん、てこと。」 初音は彼に八つ当た…
「・・それで・・どうするの、」 初音はやや呆然としながら尋ねた。 「すぐには決められん。でも。本当の気持ちを言うと・・やってみたいと思った、」 「は、畑は。ど…
両親が離婚して20年以上。 その間ずっと連絡を取っていなかったのに、こういう形で再会して。 特にわだかまりも何もなかったようで、この20年はいったいなんだった…
丹波篠山は4月の終わりとはいえ朝晩はまだ冷える。 父が東京に行っている間は叔母家族に助けてもらって一人で農作業をする。 自分が東京に行っている間はこうやって父…
そして天音は楽しそうにゆかりと話をしている母を見た。 「でも。お母ちゃんは帰ってこなかった。今も。『あそこには住めない』ってキッパリと言われた。」 「え、」 …
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夜も更けた頃。 「そうか。出来上がったか、」 初音は父に電話を掛けた。 「・・ありがとう。ほんま・・もう、びっくりしたわ、」 口を開くだけで泣けてきそうだった…
「んじゃ。邪魔しちゃ悪いから。帰るわ、」 赤星が腰を上げた。 「メシ食うていけよ。作りかけやねん、」 初音は台所を指さした。 「いやいやいや。もう真緒ちゃんが…
「なー、結婚式挙げへんの?」 風太は勝手に冷蔵庫から麦茶とコップを3つ持ってきた。 「式っていうか。パーティーはそのプロジェクトで関わったカフェレストランでや…
「素敵・・。 黒でも紺でも青でもグレーでもない、不思議な色・・」 真緒は光沢のあるそのタキシードにそっと触れた。 「そやろ?一点物で染めてもらったんやで。おっ…
そして真緒はふと庭の隅に置かれた原付を見つけた。 「あれ買ったんですか?」 それを指さした。 「え?原付? ああ・・NCの仕事でボーナスまで頂いたので。中古や…
ほんの数か月前まで 自転車さえ乗れなかった彼女が。 自分に会いに500kmの道のりを一生懸命やって来た。 初音はさっきまで心配していた怒りがどんどんと彼女への…
前の晩、かなりの雷雨があってぬかるんでいたこともありタイヤが回った瞬間、後ろにいた初音に思いっきり泥がかかってしまった。 「わっ!!!」 そして思い切りアクセ…
ヤバいよヤバいよ 日が暮れちゃう。 ここから山道だっていうのに。 高速より難易度高めだと言うのに。 真緒は何とか丹波篠山で高速を降りることができた。 しかし…
「え?すごいやないですか。奥さん、英語とフランス語ペラペラなの?」 みんなから送られて出た後、初音は課長に少し詳細を話をした。 「二人で将来飲食店プロデュース…
「は?連絡ない?」 真太郎は何だか心配で札幌出張先から真緒の連絡拠点の南に連絡をした。 「うん・・お昼ごろもうすぐ丹波篠山って連絡あったんやけどー」 南は時計…
そのまま眠ってしまったようで気がついたら夜中の1時だった。 「ヤバ・・」 真緒はむくりと起き上がった。 やっぱり運転って疲れるんだなあ・・ スマホを見ると初音…
隣を大型トラックがすごいスピードで走り抜ける度に心臓がバクバクする。 ・・だいじょうぶ。 真緒は小さくその言葉を口にした。 車の中には大好きなキースのジャズが…
「気を付けてね。ちゃんとあたしが言ったこと守るんやで。」 南は真緒にお守りを手渡した。 「ありがと。・・お父さん、お母さん。真太郎・・南ちゃん。本当にどうもあ…
「なに、この荷物・・」 初音は玄関前に並べられた段ボールを見た。 「ああ。浜松に送ろうと思って。宅配便呼んであるから。あっこの引き出しに金入ってるから払ろとい…
「・・あたし。昨日家帰ってきたの夜中の12時過ぎやったんですけど・・」 南は非常に迷惑そうに横の真緒を見た。 「だから!奢るから!お願い、」 真緒は必死な表情…
みなさんお久しぶりです。真緒&初音編のつづきです。 【これまでのお話】偶然にホクトのカフェレストラン造りの仕事をすることになった北都会長の娘、真緒と野々村初音…
My sweet home~恋のカタチ。 を読んでくださっている皆様。いつもありがとうございます。 もうなんか休み休みでホント申し訳ないなあと思っているんです…
小説再開までいましばらくお待ちください 小説(森野日菜) - カクヨムkakuyomu.jp 紗枝&陸編ただいま連載中。毎朝7時ごろ更新しています…
My sweet home~恋のカタチ。 いつもありがとうございます。 こんなにお休みしてるのに。 めちゃくちゃ忙しいわけでもないのに。 私も年齢を経まして、…
いつもMy sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっているみなさま。 ありがとうございます。 ここのところ休みがちでなんかホント自分のダメさに落ち込…
My sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっているみなさま。 いつもありがとうございます。 すみません、いつまでもお休みしてしまって。 しかもお話…
いつもMy sweet home~恋のカタチ。をご覧くださっているみなさま。 ありがとうございます。 高野楽器のパーティーで真緒の母、ゆかりと初音と天音の母有…
パーティーのホスト役、高野社長夫妻はゲストへの挨拶で大忙しのようだったが、天音の父・野々村直人はその合間を縫って挨拶に行った。 「ここに来られる立場ではないの…
一方、天音も。 ホスト側として忙しそうな母に疑問をぶつけられずにいた。 「天音さん?」 声を掛けられ振り返る。 「高野楽器の取締役の矢田部と申します。初音さん…
何とも拍子抜けしたが 「・・いや!『ナイショ!』じゃなくて! 高野副社長とどういう関係??」 真緒はさらに母を問い詰めた。 「どういう関係って。まあ・・むかし…
「まさかゆかりさんが来てくれるなんて、」 「あたしもね、息子夫婦が行かれなくなって。なんかユキちゃんともう一度会うようにって神様が言ってる気がして・・。」 「…
「・・真緒、さん?」 後ろから声を掛けられて振り返る。 天音がスーツ姿で立っていた。 「あ! 天音くん! え?なに?やっぱ来てたの??」 「コンクールのピアノ…
「え? ひょっとして。 一ノ瀬ゆかりじゃない・・?」 「ウソ。 ホクトグループの奥様になって完全引退したよね?」 「いや、たぶんそうだよ!」 高野楽器のアニバ…
父は少し考えた後 「・・じゃあ。少しだけ、」 とパーティーへの出席を承諾した。 え! 天音はぎょっとした。 絶対断ると思っていたのに。 どうした、お父ちゃん…
My sweet home~恋のカタチ。を読んでくださっている皆様。いつもありがとうございます。 お話の方は高野楽器のパーティーを舞台に意外な方向に転換してゆ…
でも母はそのまま芸能界からフェードアウトした。 真緒はコップをカタンと置いた。 「オファーの方はひっきりなしにあったようですよ。直接の電話も結構ありましたし。…
母ゆかりは真緒が部屋に入ってきたのを丸っきり無視するように 「真也さ~ん、」 と隣の部屋にいる父の所に行ってしまった。 「ねえ、どうかしら。このワンピース。若…
「おれらが高野の副社長の息子ってこと。ウチの会社の人たちや北都家の人たちに内緒ってことになってんねん、」 天音は母にそう言った。 「それは・・初音が色々考えて…
「あそこを離れることになった経緯は。正直あまりよく覚えてないの。でも。父も兄も離婚をしなくても別居をしてみたらどうかって言ってくれたんだけど。直さんが・・離婚…
ついこの間、いきなり 母 とカミングアウトされて。 いきなり なー、お母ちゃん~ なんて話もかけられんしな・・ 天音は距離感を迷っていた。 すると 「直さんは…
父は少し離れたところで椅子に座って天音が作業するのをジッと見ていた。 天音が父について調律に行くようになったのは中学生のころ。 学校が長い休みになると東京や大…
天音はなんとなく父をジッと見た。 するとそれを察してか 「いや。ワシはもうでけんで。」 秒で断られた。 「・・できるやろ?こういう事情や。頑張ってやってみ、」…
彼女が着ていたワンピースの柄も。 スーツケースの色も。 全部覚えている。 『私はもう家には帰りません、』 そう言って子供のように泣き出した彼女の顔も。 そし…
とても温和な紳士だった。 最初は社長とわからずいきなり声を掛けられて怪訝そうに会釈をすると 『社長の高野です。HIRAIにとても腕のいい調律師がいると聞いてい…
「おれ、その日の昼間にある高野主催の音楽祭のピアノ調律の補佐依頼されて。」 天音はスープの乗ったトレイをダイニングに運んだ。 「え、そうなの?すごいやん、」 …