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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 28

    「おやまあ……」ユリアは、この前憑いたアイを目の前にしてにやりと笑う。「どう?右腕の痛みは消えた?」「え?何で……?」アイは戸惑う。さゆりを締めてやろうと屋上に行って、気がついたら、話し方が少し変だった麗子に助けられていた。その時、右腕が少し痛かった。「どうして、そんな事を知ってんだ?」「ははは、どうしてだろうねぇ……」ユリアは楽しそうに言う。「『知らぬが仏』って言うじゃない?あら、仏だってさ、このわたしが!きゃははははは!」ユリアはけたたましく笑う。アイは不安そうな顔をさとみに向けた。戦う事に臆したのではなく、事の真相を知りたがっているのだ。真相を知ったら、アイは落ち込むかもしれない。落ち込んだら、戦う気を失うかもしれない。「……どうしてあなたが谷山先生に憑いているのよ?」さとみはアイの横に並んでユリア...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪28

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 27

    しのぶが持って来た懐中電灯で先を照らし、皆で廊下をぺたぺたとスリッパの音も高く歩いている途中だった。屋上で履き替えられるようにと、各自靴を手にして歩いている。スリッパで戦うわけにはいかない。「……片岡さん、おからだは大丈夫ですか?」さとみが片岡に声をかける。笑顔を見せている片岡だったが、言葉を発していなかったので、さとみは心配していた。「大丈夫ですよ」片岡は相変わらずの穏やかな笑みをさとみに返した。「さとみさんは、良く気がつくお嬢さんですね」「いえ、そんな事、無いです……」まともに褒められて、さとみは照れてしまう。「……でも、ずっと大変だったって聞いたものですから……」「いえいえ、さとみさんのお仲間の皆さんが助けてくれましたから、思ったほどではありません」片岡は、豆蔵たちの事を言っている。「豆蔵から聞きま...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 26

    「あら、さとみちゃん」玄関の百合恵が言って、くすっと笑う。「相変わらず、ポコちゃんなんだ」「これって、動きやすいんです」さとみは開き直る。「百合恵さんだって、どこかのアニメキャラじゃないですか」百合恵は、ぴっちりとした黒いジャンプスーツに黒のブーツだ。「さとみちゃんじゃないけど、この格好が動きやすいのよねぇ」百合恵は言って、長い髪を右手で梳く。「百合恵ちゃ~ん、って感じ?」二人は笑う。「……良いわね。緊張はしていないようね」百合恵はうなずく。「じゃあ、行きましょうか?……忘れ物は無い?」「無いです!」さとみはちょっとむっとする。「もうお子ちゃまじゃないって、言ったじゃないですかぁ」「でもね、念には念を入れないとね。片岡さんからのお話だから……」「分かりました」さとみはオーバーオールの胸ポケットや両脇のポケ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 25

    日曜日、さとみは目を覚ますと上半身を起こして、机の目ざまし時計を見た。まだ朝の七時だった。集合時間は午後十時。百合恵が迎えに来てくれることになっている。「早すぎちゃった……」さとみはつぶやくと、もう一度ベッドに転がる。しかし、もう寝られない。緊張をしているわけではない。今日で終わると言う安堵感がある。豆蔵の言う「ふるめんばあ」での対決なのだから、とても心強い。程よく気合が入っている。武者震いと言うものだろうか。そんな状態だった。昨夜は遅くまで百合恵がいてくれたのも大きい。気持ちがすっかりと楽になった。百合恵がさとみを抱きしめる回数が多かったようにも思うが。段取りについては、百合恵から聞いていた。さとみが屋上に立てば、さゆりは現われるだろう。さとみとさゆりで遣り取りがされている間に、片岡が例の筒の蓋を開けて...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 24

    翌日の土曜日、さとみは「百合恵会」のメンバーに連絡をする。明日の日曜日の夜にさゆりと最後の決戦だと伝える。「会長が行けと言うなら、たとえ火の中水の中です。分かりました」アイは不敵だ。「分かりました。それで、カメラとか持って行っても良いですか?証拠を残しておきたいんです」しのぶの「心霊モード」が全開している。「分かりました!わあっ、今からわくわくしますね!」朱音がはしゃぐ。「えっ……」麗子は絶句する。さとみの「アイが守ってくれるじゃない」との説得(二時間も掛かった)で、渋々「分かったわよう……」との返事をもらった。「特別顧問の百合恵さんも来るのかな?」と、松原先生から電話があった。さとみは来ると答えた。「じゃあ、顧問のボクとしても行かなきゃならないなぁ……」と、松原先生が面倒くさそうに答える。しかし、にやに...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 23

    その日から、豆蔵たちは姿を見せなくなった。三人の祖母たちも同じだ。さとみは気になってはいたが、片岡が言っていた「からだや思いを十分に休ませておく事」を心に留め、出来るだけ気にしないように努めていた。不思議なもので、そうしていると、本当に気にならなくなってくる。屋上にも行っていないので、さゆりの事も気にならなくなっていた。自分が霊感を持っている事も忘れてしまう。もちろん、学校へ行けば、碌で無しの霊体どもが増えているのは見えている。だが、いると言うだけで、景色の一つの様なものになって来る。いや、景色にもなっていない。景色ならたまに立ち止まって見る事もあるだろうからだ。ぶつかっても素通りする霊体たちは存在しないも同然だった。「百合恵会」も、みんなが変に緊張するといけない(特に麗子)と思い、活動を休んでいた。その...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 22

    放課後、さとみの教室にアイ、朱音としのぶが来た。アイを見た途端、教室に残っていた生徒たちがそそくさと出て行った。「会長、お疲れ様でございますぅぅぅ!」アイを筆頭に朱音としのぶが大きな声であいさつをする。麗子はぶすっとしたまま自分の席に座っている。「会長」しのぶが言う。「顧問の松原先生からなんですが、今後の段取りを話し合いたいって言っているんですけど、どうします?」「そうねぇ……」さとみはおでこをぺちぺちと叩き始めた。その手が止まる。「松原先生に、この教室まで来てもらえるように言ってもらえるかしら?」「分かりましたぁ!」しのぶは教室からどたどたと駈けだした。北校舎に部室にしている空き教室がある。しかし、碌で無しどもの霊体が増えていて、しかも、北校舎に多い。さらに、麗子やしのぶにも霊力が見られるようになった。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 21

    その日はそれでお開きとなった。準備は出来た。後は実行あるのみだ。『百合恵会』のメンバーも気合が入っている。が、一人だけそうでは無い。麗子だ。校長室を出てから、ずっと黙ったままだった。すでに午後の授業が始まっていて、校内はしんとしている。教室へ戻る途中でさとみが呼びかけても、顔を向けようとしない。アイは二階の三年の教室へ、朱音としのぶは四階の一年の教室へと向かった。二年生の教室の並ぶ三階の廊下で、先に歩く麗子は立ち止まった。さとみも立ち止まる。「さとみぃ……」麗子はさとみに背中を向けたままで言う。「あのさぁ……」「なあに?」さとみは訊く。「どうしたのよう?校長室を出てから、ずっとだんまりでさぁ」「あのさぁ……」同じことを言いながら、麗子はさとみに振り返る。顔が青褪めている。「わたし……わたし自身が怖い……」...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 20

    「これは良い助け手を得たようですね」片岡は笑みを浮かべて麗子を見る。麗子は筒と蓋を持ったまま、頭を左右に振り続ける。「麗子!凄いじゃねぇか!」アイは言うと、麗子の肩をばんばん叩く。「片岡さんのお役に立てるって事は、会長のお役に立てるってのと同じだぜ!」「麗子先輩!凄い!」しのぶが瞳をきらきらさせて言う。「臆病だなんて、ひどい事を言いましたぁ!すみませんでしたぁぁぁ!」しのぶが麗子に向かい直角になって頭を下げる。朱音も「「わたしも、すみませんでしたぁぁぁ!」と言って直角になる。「会長の幼馴染だけの事はあるじゃねぇか!」アイはさらに肩を叩き続ける。「わたしじゃ無理だよ!」「いや、あの……」麗子は青褪めた顔でさとみを見る。「さとみぃ……」情けない声を出す麗子を、さとみはにやにやしながら見ている。「嬉しいわ。麗子...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 19

    「やあ、お待たせしましたね」校長室に入ってきたさとみたちを見て、スーツ姿の片岡は立ち上がり、笑顔を見せた。つられて末松校長と坂本教頭も立ち上がった。しかし、二人ともばつの悪そうな顔をしてすぐに座り直した。「片岡さん、ありがとうございます」さとみはぺこりと頭を下げた。それを見たアイと朱音としのぶたちは、直角にからだを曲げた。麗子は一歩下がって、無関係の風を装った。「ありがとうございますぅぅぅ!」あまりの大きな声に、坂本教頭が立ち上がり、アイたちを睨む。「こら!ここは校長室だ!しかも、お客様がいるのだぞ!我が校の品位を下げるつもりかね!」「……はあ?」アイがからだを起こして坂本教頭を睨み返す。「会長が頭を下げているのに、舎弟がふんぞり返っていられるわけねぇだろうが!教頭だって、校長がぺこぺこしたら、それに合わ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 18

    さとみは松原先生と谷山先生とに挟まれながら歩く。アイたちがその後に続く。「ちょっとぉ、あなたたちは関係ないでしょぉ?」谷山先生が振り返って、朱音に言う。一番言い負かせそうだと思ったのだろう。「午後の授業もありますからねぇ、お戻りなさぁい!」「……何だとぉ……」そう低くつぶやいて前に出てきたのはアイだった。「わたしたちに関係が無い、だとぉぉ!」アイは殺気を含んだ眼差しを谷山先生に向け、一歩前に出る。谷山先生は短い悲鳴を上げると、松原先生の陰に回った。「松原先生からも、何かおっしゃってくださいぃ!」谷山先生はきいきい声で言う。「先生が顧問をなさっておいででしょう?」「まあ、確かにボクは『百合恵会』の顧問です」松原先生はにやりと笑む。「そして、綾部も『百合恵会』ですからね。それに、この生徒たちも『百合恵会』です...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 17

    昼休みまでの授業時間を、さとみは『目を開けたまま眠る』で過ごし、すっかりと回復していた。昼休みになると、朱音としのぶ、少し遅れてアイが、さとみの教室の前に集まって来た。さとみは教室から廊下に出た途端、アイがからだを直角に曲げた。「会長!ご迷惑をお掛けしましたぁぁ!」アイが大きな声で言う。通りすがりの生徒たちは驚いてさとみたちを見る。しかし、さとみたちも慣れてしまったのか、そのような反応に全く構っていない。「いえ、良いのよ……」さとみは優しく言う。「無事で良かったわ。どこも何ともないの?」「はい。……ちょっと右腕が痛いかな程度で。でも、何も覚えていなくって……」「アイ先輩、何をしたんですか?」しのぶが割り込んで訊く。隣の朱音も興味津々だ。「まあ、ちょっとな……」「誤魔化さないで下さいよう!」朱音がじれったそ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 16

    「……麗子……」アイはつぶやく。「どうしてここに……?」「あ、いや……」みつは返答に困る。普段の麗子を知らないからだ。「気になって来てみたのだ」「え?」アイが驚いた顔をする。「麗子、何だか喋り方と声が変だぞ……?」「そう……かしら?」みつは咳払いをして誤魔化す。「慌てて来たから、じゃないかしら?……屋上に向かったって聞いたから、心配になっちゃったのよ……」みつは精いっぱい女の子言葉で答えた。ただし、ほぼ棒読み状態だった。「わあ、みつ様が女子言葉で!」冨美代が瞳を輝かせて言う。「素敵……」「うん、可愛いじゃない」虎之助もうなずく。「何だかんだ言って、みつさんもうら若き乙女なのよねぇ」「そうなのです。それでいて凛々しくって……」「分かるぅ!」虎之助と冨美代が手を取り合ってきゃあきゃあ言って飛び跳ねながら喜んで...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪16

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 15

    富が屋上への出入り扉まで戻ると、楓がいた。「何だい、威勢が良かった割には、ここでかくれんぼかい?」冨がからかうように楓に言う。しかし、楓は返事をせず、じっと扉にはめ込まれた窓から様子を見ている。富も楓と並んで様子を見る。アイと麗子が向かい合って立っている。アイの後ろにはさゆりが立っていて、麗子の後ろには、珠子、静、豆蔵、冨美代、虎之助が立っている。「まだ始まっていないようだよ……」楓がつぶやく。「こりゃ、長丁場になりそうだ……」アイ、つまりはユリアはにやりと笑んで、麗子、つまりはみつを見る。「ほう、女侍も生身に憑いたのね?」ユリアは楽しそうだ。「でも、わたしの生身の方が鍛えてそうよ。大丈夫かしら?」「いらぬ心配は無用」みつがきっぱりと言う。「麗子殿とは相性が良いのだ。お前がいかに腕が立とうが、不慣れな生身...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 14

    教室は騒然となった。事情を知らない者からすれば、麗子が授業を放棄して出て行ったと映ったからだ。「そう言えば、麗子って、あのアイと一緒にいる事が多いわよね……」「じゃあ、アイの卒業後は麗子が……」「……さとみを叩いていたけど、あれは何?」「とにかく、目が覚めたぜ……」「この授業、いっつも眠いからなぁ……」生徒たちは口々に喋っている。教壇の教師はどうして良いか分からず、ぼうっとしていた。さとみは幾度か目を瞬かせた。目の前にいる富とその横にいる楓とを認めた。さとみは富に笑顔を向け、楓にはむっとした顔を向ける。富が右手でおいでおいでと手招きをする。さとみは霊体を抜け出させた。「おばあちゃん……」さとみは言うと、大きな欠伸をする。目尻から出た涙を手で拭き取った。「……どうしたの?それに、楓がどうしてここにいるの?」...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 13

    富は目の前のさとみを見て、腕組みをして思案する。とは言え、何時までもこうはしていられない。珠子と静の時間稼ぎが何時まで出来るかもわからない。「さとちゃん……」富はさとみに声をかけた。と、そこで気がついた。……この子、生身だと、わたしたちの声が聞こえないんだった。富は困惑の表情だ。さとみの顔に向かって手を伸ばしてみたが、通り抜けてしまう。「やれやれ、困ったねぇ……」富はため息をつく。「目と鼻の先だって言うのに、生きてる者と死んでる者との距離って深くて遠いんだねぇ……」「富様、何をお嘆きですか?」声をかけて現われたのはみつだった。みつの腕に自分の腕を巻きつけた冨美代も一緒だった。「これはこれは、みつさん」冨が会釈する。「思いの外、早うございましたわ」「いえ、楓から一大事と聞かされて、馳せ参じたまでです」みつも...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 12

    アイに憑いたユリアは立ち上がる。左の爪先を軸にしてくるりと一回りした。「なかなか良い感じ」ユリアは言う。「こう言う生身ならずっと憑いていても良いかな?」「でもさぁ」さゆりが言う。「生身って重いんじゃない?」「この娘はそうでもないわ。実戦で鍛えたって感じがする」「そうなんだ……でも、わたしには面倒くさそうに思えちゃうわ。まあ、せいぜい楽しむ事ね」「あのさぁ……」ユリアが悪戯っぽい目をして言う。「この生身でさ、綾部さとみを倒しちゃってもいい?」「それはダメだよ」さゆりが即答する。「倒すのはわたしの楽しみ、じゃなかった、定めなんだから」二人は笑う。明るい日差しの中に冷たい風が吹く。それを屋上の出入り扉越しに見ていたのは、祖母たちと楓だった。アイが教室に行かずに階段を上り始めたので、気になって後をつけて来たのだ。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 11

    アイに背負われ、朱音としのぶが付き添ったまま、さとみは教室へと行き、自分の席に座らされた。さとみは机に突っ伏して、すうすうと寝息を立てている。「いいか、会長はお疲れだ。邪魔するんじゃねぇぞ。邪魔したヤツは後で絞めるからな」アイは周囲の生徒たちに言ってぎろりと睨む。皆、全力でうなずいている。「じゃあ、先輩、行きましょう」朱音がアイに言う。「午後には回復すると思います」と、そこへ麗子が来た。気持ちを落ち着かせるために少し寄り道でもしていたのだろう。麗子は驚いた顔をしながら、寝ているさとみとアイたちとを見比べている。「麗子」アイが言う。「会長を頼んだよ」「……分かった」麗子は答える。朝の事から想像はつく。「寝かせておけばいいんでしょ?」「まあ、そう言う事」「あれれぇ?アイ先輩、麗子先輩には口調が優しいですねぇ…...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 10

    しんとなった公園に、豆蔵たちは佇んでいる。騒ぎが治まったのを見て、浮遊霊たちが戻って来て、地縛霊たちも何事も無かったかのようにしていた。「……この事は嬢様に話さねぇ方が良いでしょうねぇ」豆蔵がつぶやく。「何しろ、責任感が強いもんでやすからねぇ……」「そうねぇ」珠子はうなずく。「『わたしがぐずぐずしていたから』なんて言い出して、わあわあ泣いちゃいそうだもんねぇ」「さとみちゃん、泣き虫だもんねぇ」虎之助が言う。「でもさ、さとみちゃんって、いっつも誰かさんのために泣いているわよね」「優しいお方です……」みつが言う。「わたしは、さとみ殿が好きですね」「あら、わたくしより、ですの?」冨美代が素早く反応する。みつは返答に窮している。「……でも、分かりますわ。さとみ様、本当に良い方ですわ」「何だか、妬けちゃうねぇ」楓が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 9

    それなりの得物を持った如何にも腕自慢の連中がみつに襲い掛かる。みつは刀を縦横に振るい「天誅!」の声と共に斬り伏せられる。深窓の令嬢風情がと冨美代を舐めて掛かってきた連中の一体が、冨美代の薙刀で真っ二つにされた。「お次はどなたですの?」冨美代の凛とした声が響く。虎之助を素手の女と思った連中が群がってくる。虎之助は突きや蹴りを駆使し、次々に碌で無しどもの山を築いて行く。豆蔵も石礫と十手を使い、体格の良い連中を仕留めて行く。楓も取り出した長煙管で、襲ってくる連中の頭や横面を殴りつける。年寄りの集団なら倒せると思った卑怯な連中が、三人の祖母たちを襲ったが、三人の凄まじい気の渦に巻き込まれ倒される。光から現われた連中のほとんどが倒され、霧散した。残っている者たちは、すっかり萎縮してしまい、すぐにでも光の中へと逃げ込...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪9

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 8

    「あらあら、『枯れ木も山の賑わい』ってところかしら?」ユリアが皆を見回してからかう様に言う。「あ、違うか。『烏合の衆』だったわね」言い放つと、ユリアは楽しそうに笑う。辰は、何が可笑しいのか分からないと言った憮然とした顔をしている。「ユリア、お前は、わけの分からない事を言い過ぎだぜ」辰が憮然としたままで言う。「そんな事よりも、だ……」「そうだったわね」ユリアの顔から笑みが消えた。それだけで、残忍な雰囲気になる。「楓のおばさん、どうして逃げたのさ?まあ、逃げるのは構わないけどさ、こうして逃げ道を残しておくなんて、やっぱり、おばさんはそんな程度なんだね」「おばさん、おばさんって、うるさいんだよ!」楓が怒鳴る。「さゆりのヤツ、わたしを消そうとしやがったんだからね。逃げ出して当然だろう?」「だって、おばさん、役立た...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪8

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 7

    不意に、皆の目の前に白い光の点が生じ、それが縦に細く広がった。皆は警戒する。みつは刀を抜いて中段に構えた。冨美代も薙刀を中段に構える。虎之助は軽く跳躍しながら何時でも飛び出せるように整えている。豆蔵は石礫を幾つか右手に仕込む。三人の祖母たちはうっすらと気を全体に立ち昇らせている。何があっても万全だった。縦に広がった光りから、それを左右に押し広げるようにしながら、人が出てきた。皆は一斉に仕掛けようとする。「ちょっと!お待ちよう!わたしだよう!」光から出てきた者は言うと、地面に座り込んだ。楓だった。汚れて皺になった着物の左袖が肩からほつれていて、白い二の腕が見えている。裾も破れていて、白い脛が二本とも丸出しになっている。顔も頬が叩かれでもしたように両方とも赤くなって少し腫れている。座り込んだまま、肩を激しく上...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪7

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 6

    「で?」静が珠子に訊く。富もうなずく。さとみの家の近所の公園だった。浮遊霊や地縛霊が物珍しそうに三人を見ている。静が周りを睨み回すと、浮遊霊はこそこそと居なくなり、地縛霊は目を閉じて耳を塞いだ。「ふん!」静は鼻を鳴らす。「臆病なくせに、大きなお世話なんだよ!」「違うわよ」冨がたしなめるように言う。「お母さんが怖いからに決まってるじゃないですか」「まあ、どっちでも良いさ……」静は言うと、再び珠子を見る。「で?話って、なんだい?」「お前も、うすうす気がついているだろう?」珠子は静を見る。「あれだよ……」「ははは」静が笑う。「殴り込みだろ?さゆりの所にさ」「さすが、わたしの娘だね」珠子も笑う。「じゃあ、今から行こうかね?」「でも、わたしたちでさゆりを倒せますか?」冨が言う。「さゆりは、今も集まって来ている碌で無...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪6

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 5

    さとみの目の前に富と静の顔があった。二人は驚いた顔をしている。それから心配そうな顔になって、さとみを見ている。口々に何か言っている。さとみは霊体を抜け出させた。「どうしたんだい?」静がやや強い口調で言う。「悲鳴なんて上げるから、こっちがびっくりしちまったよ!」「どうしたんだい?」冨は穏やかな口調で言う。「何か、怖い夢でも見たのかい?」静と富の顔を交互に見て、二人の対応に違いに戸惑いながらも、さとみは話す。「さゆりが夢に出てきたの」さとみは続ける。「さゆり、夢に潜り込むことが出来るって言ってたわ……」「なんだって!」普段温厚な富が声を荒げた。「あいつ、夢の中にだなんて!」「あ、でも、わたしと話がしたかっただけだって」「そんな事言って、油断させてんじゃないのかい?」「まあまあ、落ち着きなさいな、富さんよ」静が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪5

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 4

    真っ暗だった。目を開けても閉じても変わらない。目の前に自分の手を持って来ても見えない。光が無いのだ。そんな中にさとみはぽつんと立っている。そう、立っていると言う自覚しかない。何かがありそうな気配もない。そのくせ、ここが広いと言うのは分かる。縦横が果てしなく広がっているのだろうと言う感じがする。ひんやりとした空気が感じられる。「……ここはどこ?」当たり前すぎる問いをさとみは発する。つぶやくように言ったのだが、山彦のようにさとみの問いは繰り返され続け、果てにまで流れて行く。しかし、返事は来ない。ここに立っていても仕方がない、少し歩いてみよう。さとみは思い、歩きはじめる。何にも見えないのに、平気で歩いている自分に驚く。しばらく歩いていると、ずっと先の方に白い点の様なものが見えた。さとみはそれを目指して歩く。心な...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪4

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 3

    「楓……」さとみは、楓と辰が消えた壁を見つめてつぶやく。「辰の野郎、あっしらに知らん顔でやしたね……」豆蔵が言う。知らずに浮かんだ額の汗を拭っている。「でも、とんでもねぇ迫力で……」「さゆりが楓を連れて来いと言ったと……」みつが腕組みをする。「辰は、さゆりに忠誠な感じですね。ユリアもそうなのでしょうか」「一緒に来なかったところから考えると」珠子が言う。「ユリアもさゆりには頭が上がらなさそうだね。辰にだけ下知されたんだろう」「それを守ると言う事は、さゆりとは、相当の者ですわね」冨美代が言う。「楓が思っている以上に、さゆりの組織はしっかりしているのではないでしょうか?」「それは言えそうだ」静はうなずく。「うかうかしていられないよ!あいつらは、何としてでもさとみを引っ張り出そうとするだろうからね!」「さとちゃん...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪3

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 2

    「さとみちゃん、竜二ちゃんを助け出そうよ!」そう言って、さとみの目の前に立ったのは虎之助だった。涙目になっている。「さとちゃん!」冨が強い口調で言う。「気持ちは分かるけど、ダメよ!」「でも、富さん……」虎之助が富を見る。「竜二ちゃんは捕らえられているのよ?それが分かったんだから、助けたいわ!」「虎之助」静が言う。「辛抱する事だよ。楓の話が本当なら、竜二は消えちゃあいないんだ。時期を待つんだ」「でもさ……」虎之助はすんすんと泣き出す。その姿はどう見ても恋に一途な女の娘だ。「竜二ちゃん……」「仮に竜二を助けても、だ」静が言う。「珠の姿なんだろう?それをどうやって元に戻すんだい?虎之助、お前さん知っているのかい?」「……いや、知らない……」「そうだろう?ここにいる誰もが知らないよ」「そうだわ!」虎之助は楓を見る...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪2

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 1

    豆蔵たちが解放されて、数日が経っていた。さとみは自分の部屋にいる。豆蔵たち、祖母たちもいる。さとみも生身をベッドの上に座らせて霊体を抜け出さている。祖母三人は並んで床に座り、豆蔵はドアを背にして佇み、みつと冨美代は隣り合って宙を漂い、虎之助は机の椅子の背もたれを前にして足を拡げて座り、さとみは生身の時分の隣にちょこんと座っている。霊体とはいえ、大人数がいると、部屋が狭く感じる。「とにかくだ」静が言う。「これからが最後の対決になるんだよ」皆はうなずく。さゆりに対抗するための作戦会議だった。とは言え、具体的な案は出ない。さゆりは強いし、側近の辰とユリアも強い。強いだけではない。凶悪だ。あの黒い影など問題にならないだろう。「とにかく、どうやるかが決まらないうちは、さとちゃんは絶対に屋上へ行っちゃいけないよ」冨が...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第八章さとみVSさゆり最後の怪1

  • 月明りの下で

    月明かりの下で、ある公園のベンチに腰掛けている一組のアベック。「素敵な月ね……」「そうだね。……でも、君の方がもっと素敵だ」「あら……」彼女は彼氏の左肩に、トサカが付いて青黒くて細かなウロコでびっしりと埋まった頭を預けた。彼氏は三つに分かれた蹄の付いた右手で、彼女の顔を撫でる。「今夜は帰さないよ……」彼氏は赤い四つの目で彼女を優しく見つめる。「恥かしいわ……でも、嬉しい……」彼女は黄色い瞳の無い目で彼氏を見つめる。核戦争が起き、人類がすっかりその姿を変えてしまった未来の物語。月明かりの下で、二人の騎士が相対している。それぞれの手には剣が握られていた。決闘のようだ。「さあ、斬って来いよ!」「お前こそ、斬って来い!」剣を向けあったまま、二人は動かない。「斬れよ!」「お前こそ!」二人は泣き出した。「頼む、斬って...月明りの下で

  • 憂多加氏の華麗な日常 8) 紫陽花の彼女

    梅雨時の束の間の晴れた休日の午後、憂多加氏は散歩に出た。もちろん、緊急事態に備えている。大袈裟な言い方だが、何の事はない、傘を持って外出すると言う事だ。憂多加氏は何でも大袈裟に考える性質だった。梅雨だと言うのに、雨はそれほど降らない。降らないからと言っても、やはり梅雨だ。蒸し暑くなっている。傘を差すほどでもない時用にと思って着た薄手のジャンバーが暑苦しい。と言って、脱いで手に持つのも荷物になる。汗をかいたら、帰ってからシャワーでも浴びればいいさ、未だ独り身の気楽さから憂多加氏は思う。でも、「お帰りなさい、さあシャワーでもお浴びになって」なんて言って笑顔で迎えてくれる妻がいれば最高だと憂多加氏は思う。そんな事を考えながら歩いていると、色とりどりの紫陽花の咲いている庭を持つ家に出くわした。憂多加氏は思わず足を...憂多加氏の華麗な日常8)紫陽花の彼女

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 39

    「わああっ!みんなぁ!」さとみは歓喜の悲鳴を上げ、豆蔵たちに駈け寄った。豆蔵たちはさとみを囲む。さとみは一人一人の顔を確認するように見る。涙が溢れた。「ははは、相変わらず、さとみ殿は泣き虫さんですね」みつが言う。「そうではありませんわ。さとみ様は感受性が高いのですわ」冨美代が言う。「まあ、元気そうでよかったわ」虎之助が言う。「嬢様、御無事で……」豆蔵が言う。「うん……みんな大丈夫で良かった……いなくなっちゃったって思っていたから……」「たしかに、もうダメかと思いました」みつがうなずく。「ですが、気がついたら、座敷牢のような所にいました。豆蔵さんと虎之助さんが先にいて、わたしと同じくらいに冨美代殿もやってきました」「みんなで押し込まれちゃってさ、出入り口も無いんだもの、まいったわ」虎之助が言う。「牢屋は木枠...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪39

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