たぶん、太宰治が好きだ。様々 な作品を読んできたし、その中にはくり返し何度も読んだ作品もある。今は少し手放し、また少し買い戻したけど、一時期新潮文庫をコンプリートしていた。暇な時、何か読もうか、と思うとき、だいたい太宰治作品を読んでいる気もする。でも多分、というのは、例えばお米のようなものだからだと思う。私はご飯が好きだけど、それを感じることはあまりなく、ご飯を好むことは私の中で当たり前だからだ。そういう感じに似ている。 私が太宰を好きになったきっかけになったのが、 「駆込み訴え」という短編だ。冒頭から男がしゃべっている。男より偉いと思われる人物に。 そのたたみかけるような口調、言