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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • ジョージア・オン・マイ・マインド

    職場に来るお客様。この施設を見学することが目的で来日したというのだから驚いた。お二人だった。女性は日本人だった。男性は僅かに日本語が話せたのだが英語だとありがたい、そんな風に言うのだった。国際結婚は増えたが目の前の二人がミスター&ミセスとはあまり思えなかった。夫婦やカップルの持つ距離感とは違うように思えた。しかし観光スポットの職員としてはこれ以上の深入りはしない。色々な人たちがやってくるのだから。 職務上、自分は彼らがこの場所に居る以上は旅に関する安全を確保し不安を取り除き良い思い出を残してもらう必要がある。だから少しでも困った様子を見たならば話を聞く事にしている。仕事を通じて学んだ拙く滅茶苦…

  • サイクリングバッグ

    もうこの十年だろうか。街中で自転車を見かけることが多い。買い物用軽快車や電動アシスト付き軽快車の話ではなく、スポーツサイクルの話だ。その多く多分99%はロードバイクだ。荷物は持たないのだろうか。サイクルジャージの背中ポケットに、シートの下に小さなバッグを付けている場合も見る。デイパックを背負う姿もある。背中は蒸れるのに辛くないのだろうか?自転車にも流行りがある。十年前はクロスバイクが、三十年前はマウンテンバイクが主流だった。あ、忘れていた。四十年前までは・・。サイクリング車が主流だった。鉄のホリゾンタルフレームに泥除けがついてフロントにはバッグが付くように細工されている。そんなフランスの小旅行…

  • 風呂の手順

    社会人現役の頃、自分はカラスの行水を地でいっていた。まずシャワーを浴びて体を洗い頭を洗ってすべて流す。ここまで二分半。そして湯船に入る。さらに三十秒。まことにカップラーメンのような男だった。なぜそこまで急いだのか?湯上がりのビールを少しでも早く飲みたかったからだ。今も最初の二分半は似たようなものだが温めのお湯にゆっくり浸かるようになった。三分以上そこで温まると意識が何処かに飛んでいくこともある。このまま寝てしまい気づけば溺れてあの世に行く。病や犯罪が多い今の世で、これはある意味幸せな終わり方にも思う。冗談はさておきお風呂が好きになるとは年齢のせいかもしれない。 もっとも日帰り温泉は好きでよく通…

  • 別れの音楽

    この世から別れたときにどんな音楽が流れたら自分は嬉しいのだろう。そんなことを考えるのは今自分がこうして入院をしているからだろう。それは重篤な病ではなく、酒席でひどく酔い道路で倒れて頭を打った、そんな笑い話にならぬ、なんともお粗末な顛末だった。頭骸骨は固く、脳を守ったがそれでも外傷と内部に血腫が出来た。外傷性くも膜下出血と言う名前を医師は口にした。この血腫の行く末を見るために一週間ほど入院が必要となった。 病棟は心臓血管内科と泌尿器科の患者だった。そこに道路で転倒し頭に傷を負った人間が同居している。苦しそうな声が四人部屋に響き、痰のサクション、下半身洗浄、そんな音が聞こえる。廊下を歩くとある部屋…

  • 小さな行政

    高原の町に引っ越してきた翌日に転居の手続きをした。住民票登録、国民健康保険、マイナンバーカード、運転免許証、一通り変更が必要だった。 自分の住む市は二十年ほど前に周辺の町や村が合併して出来たものだ。烏合の衆と言っては失礼だがそんな小さな集団の結束の名残だろう、当時の町役場や村役場が今は市役所の支所として残っている。今でもそんな支所はどこかアットホームな雰囲気がある。 自分の住んでいる市の人口は4万4千人、そして町の人口は5千9百人という。市内の外国人人口は約2%にあたる865人という。そんなつまらない質問にも職員さんは最新データを調べ答えてくれるのだった。ちなみにこの地に転居前に住んでいた横浜…

  • 功と罪 テレキャスター

    身を取り巻くもの。自分を豊かにするものにも罪がある。しかし罪ばかり書いても仕方ない。功もあろう。功罪とはセットだから。 * * * ネットの楽しみ方の一つに趣味の情報を得ることがある。年齢を問わず好きなこと興味のあることはこんな脳みそでも真新しいスポンジのように吸収してくれる。それはありがたいが時に迷惑でもある。興味のあるモノはやがて手に取れるのなら欲しくなる。あるいは欲しくなったからネットで検索するのかもしれない。どちらが先かは分からない。最近自分がよく調べているものは何だろう・・・。まずはアコースティック・ベース。アコギ同様に今ではピエゾ素子のピックアップを内蔵した箱型のアコベが色々と出て…

  • 1800キロカロリーの日々

    入院したおかげで再び病院食を味わうようになった。味は悪く無い。そして量も丁度よい。強いて言えばご飯が多い。普段の二倍は出る。メインにはメンチカツも生姜焼きも煮魚も出てくる。そして生野菜が多いということもない。多くは煮物でありおひたしや酢の物だった。必ずしも一汁二菜ではない。味噌汁はつかないがミネストローネの時もある。零汁三菜の時もある。その分副菜にバリエーションがあり僕は御膳の蓋を開けるのが楽しみだ。 ご飯や麺などは口にしない、それは糖質ダイエットを試していた友人から学んだ。実際彼はそれで十キロは痩せて今もそれを維持している。体重を落とす良い機会だと3年前の入院で僕もそれを実践していたが即座に…

  • 図書の旅45 旧約聖書を知っていますか

    ●旧約聖書を知っていますか 阿刀田高 新潮文庫 1994年 スパイ大作戦、またはミッションインポシブル。人によっては、格好良すぎるトム・クルーズ演ずるイーサン・ハントの嘘のようなアクション映画を思い出すだろうし、あるいは渋いピーターグレイヴス演ずるチームリーダーのジム・フェルプスとメンバー達が活躍するテレビドラマだろうか。こちらのチームメンバーは個性あふれ魅力的だった。性格俳優マーティン・ランドゥ演ずるニヒルな変装者ローラン・ハンド、紅一点として美貌を用い色仕掛けもして相手の懐に攻め入るシナモン。力持ちのウィリー、電子・機械に精通したバーニー。見事なチームワーク。自分はテレビドラマをかなり熱心…

  • 功と罪 潤滑油

    お、気づいた?え、どちら様? そう言ったそうだ。僕はその飲み会を楽しみにしていた。新しい社会で新たに作った人間関係。お酒を飲みたいと思う相手が居るとする。そしてそんな時が来る。そんな飲み会は酒は進む。齢六十を過ぎているのだから酒との付き合い方など心得ているはずだ。 余程楽しかったのだろう。さんざん笑い空いたジョッキと杯は増えていく。トイレに行くときの立ち眩みが飲み過ぎかなと思わせる。あれ、会計はしたっけ? 払ってもらい返したかな?そうなってくると途端に怪しい。 気づけば自分は白く明るい部屋で横たわっていた。頭が痛い。枕に血痕がある。この無機質な部屋はよく分かる。病院か。友と彼の奥様の顔、そして…

  • アイルランドの音と香り

    会社員時代のオフィスは東京都内は山手線の中にあり時に外にもあった。安い家賃を求めて流浪したのかもしれない。品川区にあったオフィスはひどく臭いどぶ川とそれに沿って咲く桜並木と言う不思議な組み合わせの街にあった。一昔二昔前は低層階の建物や工場の街だったがいつかオフィスビルと高層集合住宅の街になっていた。そんな一角にアイリッシュ・パブがあった。仕事帰りにワン・パイントで一、二杯引っかけるのだった。ビールは当然「アレ」だ。アイルランドのビールと言えばきめ細かな泡立ちの黒ビール・ギネスになるのだろう。初めて飲んだときは強いコクに反して炭酸の薄さに物足りなさがあった。当時日本にはドライやラガーなどの下面発…

  • 地図を読める人・読めない人

    自分は読めると思っていた。山登りをするのだから地図が読めないとは登山の資格がないと言っても良いだろう。当然カーナビ画面もノースアップだろう。画面上が北を示す訳だ。それを頭の中の地形図に重ね合わせてゆくのだ。そんな一連の行為は知らない場所を走る際の醍醐味だろう。しかし今は車の進行方向に矢印が向いている方がやりやすい。脳の作業領域の中で行う方位の転換が出来なくなった。パソコンでいえばCPUの動作不良か、長年使い続けたせいでメモリ領域にゴミが溜まってしまったのだろう。 仕事先は広い森の中に広がっている。そこを小さな冊子を手にしてお客様がやってくる。しかし多くの場合こう聞かれる。「この建物にはどう行け…

  • ちゃんと燃やしてくれよ

    「どうもこの持ち主は俺を上手く使ってくれないな。」そんな不満が聞こえてくる。それはそうだろう、中々火が燃えぬとやたらに扉を開けるのだから。すると火勢は強くなるが同時にモワッと煙が出てくる。香付けチップは無いもののいつか部屋の中は燻製づくりの様相を呈する。 しばらく放っておいてくれれば良いものを。やたらと扉を開けるな彼は。まずは炉内に上昇気流が出来るまで焦らずにやってくれよ。そんな声が届くのか届かぬのか、ブツブツ言いながらやたらに扉を開けては咳き込んでいる。全く仕方のないヤツだ。薪ストーブはアウトドアマンなら冬の暖房装置として憧れるのはまあ分かる。チロチロと燃える火を育てる。ロックグラスに入った…

  • コロネーション・アンセム

    コロネ―ション・アンセムという曲がある。高揚感漂う壮麗な曲。単語を直訳すれば「戴冠式賛歌」となろうか。戴冠式とは王の即位を祝う式。あらためてこの曲を調べてみれば作品番号にして四つに及ぶ曲と知った。自分はCDに入っていたままを通して聴いていたせいか、四つの曲と聞いてもピンとこない。通して聴いても一貫性があり不自然ではない。 一曲目は華やかな勇壮感がありそれは興奮を呼ぶ。もしかしたらサッカーファンには馴染みがあるのかもしれない。サッカーには疎い自分でも何処かで聞いたように思う。「UEFAチャンピョンリーグアンセム」という曲がそれらしい。UEFAとは欧州サッカー連盟と言う事らしい。そのチャンピョンシ…

  • 功と罪 白い容器

    身を取り巻くもの。自分を豊かにするものにも罪がある。しかし罪ばかり書いても仕方ない。功もあろう。功罪とはセットだから。 * * * コンビニのレジに並んでいた。会計中の先客は八十歳に近い女性だった。この高原台地に住む高齢者はだれもが元気に見える。腰も曲がらずピンとしているのは農作業や庭仕事、身を取り囲む沢山のやる事とそれに伴う喜びのお陰だろうか。が彼女はなぜだが恥ずかしそうに後ろを気にしているのだった。そんな事はないのかもしれないがそう思えた。もし自分がその立場だったら、無意識でそうするだろうから。 そこはスーパーではなくコンビニだった。出来合いのお弁当はスーパーでも買えるようになった。いまや…

  • 趣味の雑誌

    本屋の縮小、撤退が相次いでいる。確かに文庫などはキンドルなどの電子書籍で読む方が多いのか。実は自分はよく分からない。便利そうに見えるのだが文庫本でも新書本でも雑誌でも、まず本を開き印刷と紙の匂いを嗅がなくては気が済まない。流石に古本はかび臭いだけだが新しいものはグラビアの有無やカラーの有無などで匂いが異なる。週刊漫画はまた独特の匂いがある。簡単にいうなれば紙とインクのにおいが好きなのだ。電子書籍ではそんな楽しみは味わえない。 本屋の縮小は悩ましい。すべての東海道新幹線が停車する駅は東京・品川の次は新横浜駅だ。丸善・紀伊国屋・三省堂・・このあたりが書店では老舗だろう。新横浜駅の高層駅ビル・ホテル…

  • ダッシュ・50mX4本

    ファンフォン・・警笛ではなくそれはタイフォンだ。すると彼は一瞬身を低くする。車影が視界の一部に飛び込む遥かその前から彼は臨戦態勢だがそれを僕が抑えている。視界に飛び込んでくると同時にリードを緩める。彼はすぐさま走り出しウサギの様に飛翔する。僕はリードを抑えながら・・そうしないと転倒するから・・追走する。駅舎で行き止まりとなる。その距離は50メートルか。彼は走り足らぬと息を荒立てながらも周囲を警戒する。 タイフォンを鳴らしながら入線してくるのは新宿から来る、あるいは松本から来る特急あずさ。いつの間にJRの特急車両がこんな小田急ロマンスカーや名鉄パノラマカーの様な間の抜けたタイフォンを使うようにな…

  • 霧と森の珈琲

    前線が停滞したのだろうか、海抜九百メートルの高原に飽きるほどに雨が降っている。雨音に気付いて遅くおきた日。まだベットの中でもう少し眠りたい。十一月の雨か。荒井由実の歌は一カ月後だったか、と苦笑する。今日は晴耕雨読だ。こんな日は庭仕事も取りやめて部屋にこもり本を読もう。何か良い日本語を識り、表現を学び、感受性は刺激され何らかのヒントも貰えるだろう。 何もしないのに午後など直ぐにやってくる。そうだ、たまには珈琲でも。そう思い立ち家内を誘い犬を抱いた。くたびれた登山用ウェアを引っ掛け農作業用のゴム長を履いて車に乗った。八ヶ岳山麓には犬連れには優しい店が多い。しかし多くはテラスやデッキまでなのだが店内…

  • 不遇な右目

    朝日を左手に浴びながら職場に向かっていた。ハンドルを切ると陽の光は目の前から射す。眩しい。右目がおかしい。危うくハンドル操作を誤りそうだった。とうとう再発したか、とショックだった。 高齢になったからか若くてもそうなのか分からない。紫外線が目にきつく感じるようになった。六十四機撃墜で太平洋戦争時の帝国海軍トップエースの一人だった故・酒井三郎氏。氏の最初の空戦記録である「酒井三郎空戦記録」またその後書かれて欧米でも読まれたという「大空のサムライ」、そのどちらか忘れたがこんな事を書いていたと記憶する。米軍パイロットは誰もサングラスをかけている。だから必ず死角が生じる。日本人の黒い瞳にはそれは不要だ。…

  • 期待膨らむバジル

    バジルを庭に植えたのは六月だっただろうか。しっかり育ってくれた。嫌になるほど多くの葉に成長し、その横を歩くだけで香りで足が止まるのだった。何度も摘んでパスタに入れたりしていた。十一月の声を聴いたころ生き生きとしていた葉も緑色から黒ずんできた。葉のほとんどを摘んだ。沢山になったので袋に入れて友人宅へ持っていた。友人はとうぜんだがバジルを植えておりもうすべて葉を取り茎も処分したといわれた。確かに我が家に園芸を教えてくれる友人宅にバジルが無いはずも無かった。うかつだった。聞いてみた。バジルの葉が沢山。何に使いますかと。ジェノベーゼソースだねと彼は言う。処分とは勿体ないが・・。一年草だよと友は教えてく…

  • デュッセルドルフ

    聴きたいんだけど、何故デュッセルドルフにはあんなに日本人が多いのかな? そう聞かれてしまった。確かに商社からメーカーまで多くの日本の会社のドイツ法人なり欧州本部がその街にあるのだった。 職場には一体一日何人の来場者があるのだろう。ざっといって五百人は下るまい。当然外国人も多い。何やらきょろきょろしているのを見ると話しかけてしまう。中国や韓国人も多い。英語は通じる事もあればそうでないこともある。ニホンゴワカリマスと返されることも多い。大学生の時には第二外国語の習得が必要だった。ドイツ語を選んだのは響きがカッコよかったからだが講義時間を間違えたりで二・三回講義を欠席したらもう分からなくなってしまい…

  • 好きになりたい猫嫌い

    学生時代の友人は今も言う。お前は猫が嫌いだったなと。履いていたサンダルをそのまま「ロケット弾じゃ」と言いながら猫に飛ばしていたよね…。そう、自分は猫が苦手なのだ。なによりも円形ではなく縦型の瞳孔が不気味だ。山羊の四角い瞳孔もかなり不気味だがともかく縦長はないだろう。たとえば好きになった女性の瞳孔が縦長だったら多分逃げるだろう。そして気まぐれにぷいと居なくなるという不思議な習性にはつきあいきれない。地域猫とも言われるのだろうか複数の家でそれぞれの名前で飼われている一匹の猫もいる。意味不明だ。恩知らずとも言いたい。カラスの様にジィッとして動静を伺っている。近づくと逃げる。またあの鋭利な爪。引っかか…

  • 小さな贅沢

    760円だった。この位良いではないか・・・。 毎週金曜日は胸が弾む。週に一度の贅沢日だから・・・。煙たなびく屋台。それは焼き鳥屋だった。 焼き鳥を初めて食べたのはいつどこでだろう。小学生の頃何処かのス―パーか、あるいはバス停近くの埃っぽい道路沿いにあった精肉店の店先で売られていたのだろうか。昭和四十年代にそんなものを売っていたのかは定かでないが母親がそれを買ってきたことを覚えている。まだまだ怪しげな肉が多かったのだろうか。ゴニョゴニョした食感のものがあった。その表面にはプチプチとした突起があった。不気味で呑み込めずに吐き出した。 焼肉屋に行っても食べるものはカルビとロースになる。どうも内臓肉や…

  • ハイキング手袋

    山歩きで手袋は必須だろう。自分はルート上の岩場や急な下り坂に手がかり足がかりがあればそれらをよく握り手を突くほうだ。何も掴まずにひょいひょい歩くことは出来ない。加齢とともにまずは恐怖心が先に来るのだから。前回の山歩きで手袋を持参せずに手にささくれでも刺さらぬかと不安だった。軍手は流石に山には不向きだ。濡れると乾かずに寒いだけとなるから。百円ショップの手袋を探してが庭仕事用のもので表面はゴムだった。これが良さそうに思えたが手が蒸れる事が分かった。思いのほか手は汗かきだった。これではまさに「手に汗握る」ルートのある山歩きには不向きだった。 値段は張るがやはりハイキング用のグローブが一番良い。これま…

  • 図書の旅44 深い川 遠藤周作

    ● 図書の旅44 深い川 遠藤周作 講談社 1993年 遠藤周作は自分にとっては、北杜夫がどくとるマンボウであったように、狐狸庵先生であり軽妙洒脱なエッセイストだった。しかし北杜夫が繊細な感性を持った作家であったように遠藤周作もまたキリスト教徒として人間の持つ罪を描いた作家だったと思う。原罪を書いた作家遠藤周作の本は重く、中高生の自分には重かった。 重たそうな題だな。しかし何かを得られるだろう。そう手に取った。 小説は五人の独立したストーリーを描き始める。 妻を癌で失う男。死の間際に妻は言い残す。私はどこかで生まれ変わるからどうか探してほしいと。 ある男はビルマのインパール作戦の生き残りだった…

  • 戦意喪失

    自分の様な軍用機ファン、それは決して戦争肯定論者ではないが・・メカとしての飛行機にたまらない魅力を感じる人間にとり第二次世界大戦のプロペラ機を中心とし朝鮮戦争やベトナム戦争、そして今日の軍用機へと、銀翼には憧れが尽きない。 米軍機も戦後はジェットとなりF86セイバーからF4Fファントムへ。いつしか映画トップガンで有名となったF14トムキャット、そして未だに航空自衛隊でも幅を利かすF15イーグル、シングルエンジンのマルチロール機F16ファイティングファルコン、空母艦隊の主力機F18ホーネット、そして自衛艦にもとうとう艦載されるというF35ライトニングIIへと、空軍や海軍の戦闘機も代替わりしている…

  • プラハ

    東ヨーロッパ諸国と呼ばれていた社会主義国家群が消滅したのは1980年代のベルリンの壁崩壊と前後していた。独裁政権は崩壊しルーマニアではそれまでの国家指導者が捕らえられ犯罪者として処された。それはまさに激動の時間でリアルタイムに映像を見ているとはらはらした。 プラハという街は多分東ヨーロッパが崩壊しなければ行く事も叶わなかっただろう。神聖ローマ帝国の首都がおかれた古くて美しい街と聞いていた。社会主義が崩壊しチェコスロバキアは西郡のチェコと東部のスロバキアに別れた。チェコ人とスロバキア人の統一国家だったが両者の経済格差が原因だったとネットにあった。ユーゴスラビアが辿ったような流血もなく無血で国家が…

  • 別れと抱擁

    パリにはいくつものターミナルがある。ピカルディ地方やその先国境を越えてイギリス、ベルギーに向かうのならノルド駅。アルザス、ロレーヌからドイツ・オーストリア方面ならばエスト駅。ノルマンディなどの北西に行くのならサン・ラザール駅。マルセイユなどの地中海そしてスイスに向かうならリヨン駅。ボルドーなど南西部を訪れるならばモンパルナス駅。スペイン方面ならオステルリッツ駅。どの駅も終端駅だ。リヨン駅は明るく光に溢れ大きい。パスポートコンコロールのあるノルド(北)駅はまるで空港のようだ。モンパルナスは近代的。比べてサン・ラザールはモネが絵に描いたままの風景を残す。エスト(東)駅はどうだろう。この駅に関しては…

  • 万歳三唱

    バンザーイ!これを三回繰り返し都度両手を上げる。これを表の拍とする。一人は万歳の裏拍で腰を折る。万歳とお辞儀はセットなのだろうか。 三十年以上も昔。学生時代の友人の結婚式に出た。奴とは四年間いつも一緒だった。彼は僕のアパートに来て寝泊まりし僕は彼のアパートに行き、まこと無駄で豊かな時間を過ごした。一年間が七百三十日、それが四年間あるように思えた。互いに見初めた女性相手に「恋の病」にかかりそれどころではない時もあったが、今度は進捗報告会だった。いずれもしょっぱい失敗談だった。 彼の式の最後にそれでは二人の前途を祈って万歳三唱を、と司会の方が言われた。これは困った。スマヌと口にして唱和はしたが手を…

  • 読めない文字

    文字の起こりはなんだろう。間違えなく象形文字だろうか。昔の壁画にもそれを見ることができるだろう。今見ても意味はわからぬ形だがそのようなものを用いて人間は意思疎通を行い何かを後世に残した。 頭の癌を取り除いたあと脳外科のベッドの上で自分が残した文字がある。小さなノートに一体何を書いていたのだろう。その手帳の表表紙にはこう書いてある。「お釣りで生きる人生ノート」と。しかし中を開くと象形文字ばかりだった。何かを残そうと必死だったのだろう。文字は時に強く書かれ鉛筆の芯は折れていた。何も読めぬ。ただ生きようとする必死さがそこにあった。 新しい職場に新しい職員が入ってきた。その仕事の定年は年齢不問で彼は後…

  • こんな奴だから仕方がない

    ああ、今日から三連勤か。そうやや重い心で僕はコーヒーを飲んでいる。出勤時にコンビニで昼食を買うついでにコーヒーを買いタイムカードを押せる時間になるまでは車の中で待機する。ここ最近はコンビニの珈琲も美味しいもので街中のカフェに負けていない。狭い場所で飲むコーヒー。その時間はとても好きだ。そこで書きかけの原稿にどう手を入れるか、次の稿の案はないだろうか、そんな事を考え浮かんだキーワードをメモ帳に落とす。 職場の扉を開けた。あれ、今日は勤務じゃないでしょう?そう言われる。信じられない事だが勤務表も月半ばで変わることもあるのだ。見落としてはいないはずだが・・。 更衣室へ向かう間、僕は同僚達と話す。彼ら…

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