白砂に落つ・・・3
其の日の朝であった。弥彦が定次郎の元にやってきた。弥彦にすれば、複雑な心境であろう。佐吉は弥彦の朋友といってよい。そもそも、お千香が佐吉としりあったのも、弥彦からなのである。兄妹といっても過言で無いほど弥彦とお千香も仲が良かった。朋友である佐吉とお千香が惹かれあい恋に落ちるともしらず、二人を引き合わせることになった、弥彦とて、定次郎の胸のうちでは、お千香の婿にと、夢を描いた男であった。無理じいはできまいが、お千香にだけは、「弥彦に貰ってもらったらどうだ?」と、ひそかにたずねたこともある。定次郎の眼の前にすわった弥彦は相変わらず、自分が佐吉とお千香を引き合わせたことをくやんでいるのであろう。お千香の死をおもえば、佐吉の処刑は当然の報いであるが、いよいよ、佐吉が処刑となると、友の立場で考えることが許されるなら...白砂に落つ・・・3
2022/12/16 09:37