試験の最終科目。解答の見直しを終えて時間を確認する。あと十分で終わる。もう一度、見直しをしようと思った時に、ふいに不安になる。合格できるだろうか? 最善は尽くした。でも立ち昇って来た不安を消し去ることはできない。そっとお腹に手をやる。シャツの下にあるお守りがそこにあることを確認してほっとする。大丈夫。なんとかなるさと気を取り直す。そして最後の作業に取り掛かる。思い違いをしていないか、もう一度、確認する。やがて終了を告げるチャイムが鳴る。 「私はいいのよ。でも聡にとって今がどういう時期かわかっているの?」 父の浮気を咎める母の声がした。聞こえないようにしているつもりなのか? 聞こえるように言って…