千早茜著『透明な夜の香り』(集英社文庫ち66、2023年4月25日集英社発行)を読む裏表紙にはこうある。元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、客の望む「香り」を作っていた。どんな香りでも作り出せる朔のもとには、風変わりな依頼が次々と届けられる。一香は、人並み外れた嗅覚を持つ朔が、それゆえに深い孤独を抱えていることに気が付き──。香りにまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。35歳の若宮一香(いちか)は、兄が自死し、自分は何もできなかったことから心に傷を抱え、書店のバイトに行けなくなった。半年もすると貯金も残り少なくなり、家政婦募集に応募し、調香師小川朔(さく)と、営業担当で探偵の新城、そして菜園を世話する源さんと...千早茜『透明な夜の香り』を読む